地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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評価と感想ありがとうございます!!!


第57話

 思ったよりスローな流れ。 

 前につけた私にとっては願ったり叶ったりデスけど。

 

 このままの展開なら直線で後ろの仕掛けを待ってから追い出せば十分勝てそうデスね。

 まぁ、そう上手くいかないんでしょうけどネ。

 

 順当に行けばスペちゃんが相手筆頭デス、ただそれじゃ面白くないデスよね。

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 自分のピークが昨秋だったことは分かっている。分かっているからこそ、前走は叩きに費やした。ハッキリ言えば、ティアラ路線のウマ娘相手なら仕上げきらずとも勝てると思っていたからだ。

 

 結果は3着。

 

 ドーベルには申し訳なかったが、勝てない相手ではなかった。ただ、それを引きずる私ではない。

 元々、目標はこのジャパンカップ。ここで勝つことこそが最大の目標だからだ。

 

 チアフュージティブが、出遅れたのは誤算だったが結果的にはハナを切ったくれたので問題はない。

 やつが逃げたレースは基本的には前で決まることが多い。簡単な話、チアフュージティブの刻むペースだと後ろも脚が溜まらないからだ。

 

 狙うは札幌記念の再現。

 敵はエルにスペシャルウィーク。

 特にスペシャルウィークの差し足は格別なものがある。エルを差し切りスペシャルウィークの末脚を凌ぎ切るのは至難の技だ。

 とはいえ、それをやるために私は走っている。

 

 いくつもの罠を乗り越えて、数多の刺客を退けて、女帝のハートは今燃えている。

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 いつもより脚が重い。

 ダービーと同じ舞台なのにどうして?

 いつもより前の位置を取ったから?

 初めてのシニア混合戦だから?

 

 それとも…。

 

 いずれしろ、私の精一杯を尽くすだけ。

 

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 どこで仕掛ける?   

 向こう正面半ばで私は迷っている。

 

 すでに、視界には残り1,000mの標識が見えている。

 正直に言うと、脚にはかなり余裕がある。ただ、私に余裕があるということは周りの娘たちにも残っているわけで。

 さて、どうしようかな?

 

 ………決めた!

 どうせ直線まで我慢しても勝ち目はない。

 

 展開頼みだけどしょうがない、ここで押し上げる。

 

『向こう正面半ばで隊列に変化はありません。‥いや、後方からカナメが位置を上げていきます』

 

 さぁて、私の脚はどこまで持つかな?

 

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 後ろで誰かが動いた?

 スペちゃんとエアグルーヴ先輩は見えるところにいマス。

 

 ということは‥

 

「来ましたか、カナメちゃん」

 

 まったく、よくやりマスね。残り1,200mくらいから仕掛けるなんて普通はあり得まセン。

 さて、どうしましょうカ?

 

 このまま動かないでいたとしてもカナメちゃんは垂れマスね。ただ厄介なのはカナメちゃんの捲りに誰かが乗ってきた場合デス。

 1番面倒なのはスペちゃんデスけどそれはない。後はカナダのウマ娘、アメリアクラウンくらいデスかね。まぁ、その場合でも差しきれる自信はありマスけどネ。

 

 とはいえ、対策しておくに越したことはありません。要はカナメちゃんを出させなければいいんデス。少し外に張ってコーナーで合わせれば後ろに乗ってきた子も前に出れませんからネ。そのくらいなら私の脚も使いませんし。

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 なーんてエルちゃんは考えているんだろうね。

 でも、私の狙いは違う。

 

 最初は単純にロングスパートで勝負を賭けようかと思ったけど、流石の私でも分かった。

 あ、これは勝てないなって!? 

 流石にこのメンバー、このコースで捲りきるのは無理。

 

 なら、どうするかって?

 最初の作戦に戻るだけ。結局、それが一番勝率が高い。

 

「3-4コーナー中間で先頭はチアフュージティブ。しかし、カナメが2番手付近まで上がってきました!前に出られるか」

 

 エルちゃんのペースが上がり体が僅かに外に流れる。そうだよね、私を出したくはないよね?

 お陰で最高のポジションが取れる!

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 来ましたねカナメちゃん。

 残念デスけど、前には出させまセン。

 

 少しペースを上げる。

 

 これで外に振ればそれでおしまいデス。仮にそれでもカナメちゃんが前に行くなら私が切り替えてついていけばいいだけデスから。

 

 さぁ、勝負デスよカナメちゃん。

 共同通信杯の時は相手になりませんでしたからネ!

 

 ここで本気の勝負と行きマスデスよ。

 

 …

 ……

 …………おかしいデス。カナメちゃんがまだ上がってこない? 

 

 もしかして既に垂れちゃいましたカ?

 

 まぁ、ロングスパートを仕掛けているわけだし、その可能性も否めない。少し拍子抜けではあるけれど、そう思って後ろをチラリと見る。

 

 ケッ!?

 

 カナメちゃんがいない?

 一体どこに。

 

「ハァッ、ハァッ」

 

 後ろから聞こえる荒い息遣い。

 ‥これはやられましたカ。

 

 ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 取った!!

 エルちゃんの真後ろの位置。代償としてかなりの脚は持っていかれたけど、勝負圏内には残れる。

 

 

 後は私の根性次第! 想定より1,500m後ろでつかんだ絶好位置。ここから狙うのはゴール前でのちょい差し。精々エルちゃんには風除けになってもらわないと。

  

 とにかくエルちゃんのスパートに何とかついていく。

 エルちゃんが他の娘に差されたら? 

 その時は共倒れで仕方ない。

 

 さぁ私のために頑張ってねエルちゃん。

 

 

 

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