地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第58話

『さぁ、直線手前で先頭チアフュージティブのリードが詰まってきた。虎視眈々と前を狙っているエルコンドルパサー! その後ろにはピタリとカナメがマーク。エマニュエルは苦しくなったか? エアグルーヴ、スペシャルウィークが続きます』

 

 日本のレースはレベルが低い? 

 誰だ、そんなことを言ったのは。

 

 私、アメリアクラウンは昨年のエクリプス賞の最優秀芝ウマ娘だ。そんな私がここまで動けないでいる。本来なら私の得意パターンは捲りを打ってからの4角先頭で押しきることだ。

 ただ、このレースは私が仕掛けるよりも早く捲りを打ったウマ娘がいた。それを見てしまったのがよくなかった。先行集団が踠き合うならよかったが、このざまだ。

 あの捲りを打ったウマ娘は相当切れる。お陰で私の勝ち筋はかなり薄くなってしまった。

 

 とはいえ、私の最大の武器は直線での末脚だ。日本のバ場はスピードが出るのは分かっている。後方番手のこの位置からでもやれるだけのことはやってやろう。

 

◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

 ちょっとアメリア、まだ仕掛けないの?

 流石にこの位置は厳しいわよ。

 

 私、エミールにとってこのレースで最も警戒するのは北米芝チャンピオンのアメリアだ。昨年のブリーダーズカップの走りは見ればそう思うのも仕方ない。

 私も重賞を6勝しているけど、それと比べても彼女の力は生半可なものじゃない。

 

 それでもこの位置からは届くのアメリア? いっそ、私一人で仕掛けようかしら。いや、それはないわね。私が勝つならアメリアの仕掛けに乗るしかない。

 

 あぁもう早く仕掛けてよアメリア。

 心のなかで私のすぐ後ろにつける彼女に悪態をつく。

 

◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

『さぁ直線を向いてスペシャルウィークは早くも外に出している。先頭はエルコンドル、エルコンドル。後ろにはカナメがピタリと続く。インコースからはエアグルーヴ』

 

 やっぱり脚が重い。

 ただそれでも…!!

 

 思い切り脚を踏み込む。前のエルちゃんを捉えれば私の勝ちだ。ただそのとき、視界が僅かに歪む

 

「えっ?」

 

『スペシャルウィーク、スペシャルウィークが来た! しかしここでスペシャルウィーク、少し寄れたか!?』

 

 何が、一体何がだめなの? 

 ダービーと同じ舞台のはずなのに。あの時は差しきれたのに。

 

◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

 

『さぁ直線を向いてスペシャルウィークは早くも外に出している。先頭はエルコンドル、エルコンドル。後ろにはカナメがピタリと続く。インコースからはエアグルーヴ』

 

 よし。完璧なレース運びだ。道中常にラチ沿いをワンペースで走った私が、このレースで一番展開利を得ている。

 

 あの様子ならスペシャルウィークはエルには届かない。なら相手はただ一人、エルだけだ。

 

 昨年は例のあの人に阻止されたジャパンカップ制覇が見えてきた。

 

 何とか身体を併せられれば必ず私が先着できるはずだ。昨年の天皇賞でもそうだった。認めたくはないが、私は筋金入りの負けず嫌いのようだ。

 

 ただ、それが誤算だった。

 

◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇

  

 キツイ、キツイ、キツイ!!!

 やっぱり脚を使いすぎたかな? 

 

 エルちゃんの後ろを何とか追走しているけど、やっぱり辛い! エルちゃんは速いっていうのが改めて実感できたなぁ。

 

 とはいえ仕掛けるしかないよね。まだ僅かに仕掛ける体力がある内に仕掛けないと勝つ可能性は0だし。このまま走れば2着も夢じゃないとは思うけどね。

 

 そうと決まれば問題は内か外か。

 ただ、エルちゃん間違いなく外を警戒しているはず。

 

 ‥よし決めた。内に飛び込む。身体を併せられればチャンスは0じゃない。それなら仕掛けるタイミング多少は脚が鈍る坂の登りだ。

 

 よし今!

 

 

 その瞬間、ドンという音と激しい衝撃が左肩を襲う。

 

「いった!!」

 

 思わず声が漏れる。いや、本当に痛いからねこれ。ただ、私は体幹には自信がある。

 

『おっと、坂下でエアグルーヴとカナメが接触。エアグルーヴは体勢を崩したか、しかしそれでも立て直す。これが女帝の意地か』

 

 チラリと横を見ればエアグルーヴが後退するのが見える。これで進路は取れたと思ったのもつかの間。

 

「やってくれたな」

 

 すぐさま、エアグルーヴが私の横までポジションを戻す。どうやらこの女帝さんは非常に負けず嫌いのようだ。

 

「お互いさまですよ。それに…」

 

 あなたに構っている暇はない。

 前を見ればエルちゃんとの差は少し広がっている。後ろからは足音も聞こえてくる。

  

 それでも。

 

「勝つのは私だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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