地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

60 / 92
第60話

 ジャパンカップの翌週、私は阪神レース場に来ていた。天気は生憎の雨、バ場も稍重発表だ。まったく、先週のコンディションがこれだったらよかったのに。

 

 まぁ、それはおいておいて今日の目的はあるレースを見に来ることだった。阪神4レースのメイクデビュー戦、それが今日のお目当てだ。

 

 そのパドックを見ていると1人のウマ娘がこちらに近づいてきた。

 

「カナメさん応援に来てくれたんですね! お姉ちゃんは恥ずかしがって来てくれないんですよ」

 

「今までのお返しですよ。頑張ってくださいね」

 

 そう、私が見に来たのはナリタトップロードさんのデビュー戦だ。彼女は菊花賞前のトレセン学園で出会ったけど、そこからなんやかんや付き合いが続いている。

 元々は彼女のお姉さんとレースで走ったことが縁だったけど、今となってはトップロードさんとの付き合いのほうが深い。というか、例のお姉さんと私はほとんど話したことがないんだけどね。強いてあげるなら菊花賞の後くらいかな? あそこまでいったなら勝てって怒られた記憶がある。

 

 

「はい! カナメさんの応援があればすっごくすっごく頑張れます。では、失礼します。レースもちゃんと見ててくださいね」

 

 ナリタトップロードさんはとても礼儀正しい。デビューこそ私が先だけど、年齢で言えば後輩にあたる私に対してもこの対応だ。ウマ娘と言えば一般的にクセが強い娘が多いので、そういう意味でもナリタトップロードさんは貴重な存在だ。もちろん、彼女はそれに加えて実力もある。現に今日のデビュー戦でも一番人気に支持されている。

 

 私が中央で一番人気になることってここから先あるかなぁ?

 

 

「あぁ、君はカナメさんじゃないか! 僕こそは世紀末覇王テイエムオペラオー、以後お見知りおきを」

 

「覇王?」

 

 う、またキャラが濃いウマ娘が出てきた。エルちゃんといい、オペラオーさん?といいどうして実力のあるウマ娘って言うのはクセが強いのかなぁ? そういう意味だとナリタトップロードさんて本当に例外なのかもしれない。

 

「今日はトップロードさんとアヤベさんのレースがあるからね。ライバルの勇姿を見届けるのも王の義務さ」

 

「なるほどね」

 

 アヤベさん?は誰か分からないけど、要は友達のレースを見に来たってことね。友達思いでいい娘だね、うんうん。

 

「…笑わないのかい? まだ、勝ち上がってもいない僕がこんなことを言っても」

 

「どうして?」

 

「普通、王だなんだと言うのは力を示した者の振る舞いだろう? 現状の僕がそうでないのは明白だ」

 

 あぁ、そういうこと。この娘は変なところで律儀というか、根は真面目なんだろうね。ただ、決定的に間違えているところがあるけど。

 

「ハハ、何言ってるの? オペラオーさんは強いよ」

 

 そう、彼女は強い。例えるならエルちゃんだろうか? 強者の雰囲気というか、そういうものを彼女は帯びている。見る目がない私でも、それくらいは分かる。

 

 ただ、そんな私の反応を想定しなかったのかオペラオーさんは目を丸くしていた。

 

「驚いたね!? 僕を見てそんな反応をするのはドトウくらいなものだよ。まさか最強世代の一員に褒められるとは」

 

 最強世代…か。私たちの世代がそう呼ばれているのは知っている。それを決定付けたのは間違いなく先週のエルチャンだ。ただ、私はその一員に入るのだろうか? 個人的に中央の娘たちと一緒にしてほしくはないんだけどね。まぁ、そこをどうこう言ってもしょうがないか。世代が一緒なのは間違いないし。

 

 それにオペラオーさんの力が分からないというのは俄には信じられない。え、もしかして本当にみんな彼女がビッグマウスなだけの一般ウマ娘だと思っているの? 

 

「だったら周りの見る目がないんだよ。それに力を示して無いだけで持っていることは否定してないでしょ?」 

 

 さっきオペラオーさんは色々言っていたけど、あれは本心じゃない。彼女は自分の力をはっきり分かっているはずだ。

 実際、私の発言を聞いて雰囲気も変わっているし。

 

「ハハハ、カナメさん。君に会えてよかったよ」

 

「私は嬉しくないよ。本当、次から次に強い娘ばかり出てくるんだから」

 

 結局、このあとオペラオーさんと一緒にナリタトップロードさんのレースを見たけど結果はクビ差の2着。ただ、すぐに勝ち上がれる内容だったとは思う。 

 

 それに今日一番印象に残ったレースはナリタトップロードさんには悪いけど、このレースじゃなかった。

 

「オペラオーさん、彼女がアヤベさん?」

 

「あぁ、そうだとも。彼女は僕のライバルの1人、アドマイヤベガ。通称アヤベさんだ」

 

 8レースのエリカ賞、その勝ちウマ娘のアヤベさん。結果的にはクビ差だったけど、かなり脚がキレる。

 まったく、羨ましい限りだよ。瞬発力だけはどうやっても生まれつきの素質がでかすぎて鍛えようが無いんだから。スローからのよーいドンなら私に勝ち目はないね。

 

 ちょっと意地悪な質問してみようかな。

 

「ちなみにオペラオーさんは彼女に勝てる自信はある?」

 

「アヤベさんは強敵さ、それは間違いない。あの瞬発力は僕から見ても素晴らしいものだからね。でも、勝つ自信はあるよ」

 

 おぉ、即答。こりゃ、あてが外れちゃったかな。もう少し迷ったりするところを見たかったんだけど。

  

 そんな考えが見透かされたのかオペラオーさんは笑って私にいう。 

 

「それにカナメさん、あなたも勝つ自信はあるはずだ。違うかい?」 

 

 これは、思わぬカウンターパンチだ。

 勝つ自信か、確かに無いことは無い。自分の得意パターンに持ち込めば何とかできる気はする。気はするだけで、実際のところは分からないけどね。

 

 ただそれでも、オペラオーさんに返す言葉は1つだけだ。

 

「当然!」

 

 後輩の前でカッコ悪い姿は見せられないからね。

 

 

 そんなやり取りをしてオペラオーさんと別れたわけだけど、グリンさん遅いなぁ。集合時間過ぎてるんだけど。

 ちなみに今日はグリンさんと二人で来ていたんだけど、レース場では別行動だ。私がレース場に行きたいと言ったら、トレーナーさんがグリンさんに声を掛けてくれてこうなった。何でも親戚?というか知り合いのウマ娘がいるみたい。

 

 余談だけど、グリンさんと2人で出かけることを知ったシャインちゃんの機嫌は最悪だった。

 

☆☆☆☆☆

 

「カフェちゃーん、久しぶり。あとポッケちゃんも」

 

「グリンさん、お久しぶりです」

 

「おいグリン、まるで俺はついでみたいじゃねぇか」

 

「まぁまぁ、後でパフェでも奢ってあげるから機嫌直してよ」

 

「なら、いいけどよ。にしても、お前は相変わらずダサイ格好してるな」

 

「ポッケちゃんたら、あいつと同じこと言うのね。そんなことないわよね、カフェちゃん?」

 

「…えぇ、そうですね。とても個性的でお似合いですよ」

 

「おい、カフェ。はっきり言わないとこいつが恥をかくことになるんだぞ。タキオンに対してズバズバ言うのにグリンが相手だと気を遣うよなお前」

 

「そう言われても、タキオンさんと違ってグリンさんにはどうも言いにくいんですよ」

 

「ちょっと、二人とも聞こえてるわよ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。