地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第68話

 …なるほど、連中の狙いは読めた。

 ただ、それで私に先着できると思うのは大間違いだ。

 

『いよいよレースは直線へ。先頭ライネスアグレサーとガールダイナの併走が続いている。後方勢の仕掛けはどうだ? シロヤマルドルフ、サザンアップセットが大外から襲いかかるが間に合うのか? そしてバ場の内から真ん中に出してカナメが追い込んできた!』

 

 間に合うさ。  

 元々、シロヤマルドルフと仕掛けが被った時点で大外を回すことは考えていた。

 それに所詮は私に不利を与えるための温い仕掛け。どうせなら全盛期の時に戦いたかったものだ。

 

 だが結局私の敵はただ一人、そろそろ先頭争いもケリがつく頃だろう。

 

「決着をつけるぞライネス」

 

 南部杯の屈辱はここで晴らさせてもらう。

 

 ◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 前に出ろ、足を動かせ。

 そうすれば自ずと競り落とせる。

 

「っし!!」

 

 おとと思わず声が出ちゃった。にしてもしつこかったわねガール。

 とにかくこれで前座は蹴散らした。

 

 結局最後に倒さないといけないのはあいつなのよね。

 サザンアップセット、今の日本で最強の存在。

 

 それでも前走は土をつけている。

 それにそういう化物を倒してこそ英雄だしね。

 

「さぁかかってこい、サザンアップセット!」

 

 ◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

 大井の直線は400m。

 進路は開けてる。後はゴールに向かって走るだけ。 

 

『ライネスアグレサーが先頭。ガールダイナは苦しくなった。大外からはサザンアップセットがグングン伸びてきている。つれてシロヤマルドルフ、内側からはカナメもスパートをかける。先頭のライネスアグレサーを巡る戦いになっている』

 

 行ける、行ける!!!

 いつもこう思っているけど今日の私は違う。それほどまでに脚に余裕がある。

 

 腕を振れ、脚を動かせ。JCでもエルちゃんに迫った私の末脚はこのメンバーでも引けは取らないはず。

 それにあの時とは違って足も溜まっている。

 

 先頭のライネスアグレサーまでは大体5バ身。この距離なら差し切れる。

 ここからは出し惜しみなしの全力スパートだ。

 今の私ならすぐに先頭との差は縮められるはず。後は後ろからの追撃を凌ぎ切るだけ。

 

「G1をとるのは私だ!」

 

 さぁ、勝ちに行くんだ。大丈夫、ここまでお膳立てされたんだ、勝てないわけはない!

 

『ライネスアグレサー踏ん張る。残り200mに迫るところでリードをキープ。このまま逃げ切ることができるのか。後方税からは大外サザンアップセットの伸びもいい。次いでシロヤマルドルフ。ガールダイナも踏んばっている。内のカナメは伸びきらないか、うしろからはデュアルパイオニアも良い脚で突っ込んできた。しかし先頭はライネスアグレサー、サザンアップセット2人の争いか』

 

 おかしい、おかしい、おかしい。

 脚に余裕はあるのに、前との差が縮まってこない。

 

 いや、まだだ。必ず前は垂れてくる。私のギアもかかってくる。

 最後の200m、全力で走りきるんだ。

 

 ◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

「届かない…か」

 

 考えていたことが、現実になっちまったな。

 伸びていないわけじゃない、脚はしっかりと使っている。ただ単純なスピード不足。

 冬場の乾燥したダート、そしてシニア一線級が相手。今のカナメ、いやそもそもあいつの適正に合っていない舞台だった。

 

 いや、最初からこの舞台がカナメに合っていないことは分かっていたんだ。ただ俺の盲信がそれをかき消してしまった。

 一雨降ってくれれば可能性はある、シロヤマのアシストがあればなんとかなる。そんな都合の良いことばかり考えていた。

 そういう意味では俺の責任は大きい。

 

『ライネスアグレサー懸命に粘るが、サザンアップセットが一歩ごとに差を詰めてくる。ライネスアグレサー、サザンアップセット、ライネスアグレサー、サザンアップセット、ここでサザンアップセットが前に出た。離れた3番手はシロヤマルドルフか。先頭は今サザンアップセットがゴールイン。絶対王者、この距離では負けられません』

 

 6着か。このレース、一番展開利があったのはカナメだった。

 それでこの結果ということは、やはり俺の考えは間違っていなかった。

 トレーナー失格だ。いつから俺は夢を見せる立場から、魅せられる存在になっていたんだ?

 

 自分が情けなくてたまらない。

 

 ◇  ◾️  ◇  ◾️  ◇

 

「サザン、私の負けね。英雄討伐おめでとう」

 

「ライネス、南部杯の借りは返させてもらったぞ」

 

「そうね、2,000m最強は間違いなくそっちよ。私にはやっぱり長いもの」

 

「確かにお前の適正はマイルだろうな。この調子だと次の川崎記念も私が勝つことになるぞ?」

 

「いや私は川崎記念に出走はしない。元々はサザンに勝って最強を証明しようと思っていたんだけどね」

 

「休養にでも充てるのか?」

 

「サザン、私はね自分の力を全力で出し切れる舞台で最強を示してくるよ。2月の府中でね」

 

「…中央G1か。その道は厳しいぞライネス」

 

「精々、サザンの株を落とさないように頑張ってくるよ。そっちも川崎記念で負けないでよね」

 

「当然だ。それにそっちが中央に行くなら、私はドバイでも目指すさ」

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