地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第73話

 3/21 バ場は重 舞台は阪神3,000m

 

 ここまでは思った通りに運べている。

 位置取りはスペシャルウィークの後ろ、メジロブライトの前。当初の予定通りの悪くない位置。それに渋ったバ場もかなりスローな展開も私には向いている。

 

 気づけばレースは残り800m。ちらりと後ろを見ればメジロブライトが外に出している。そろそろ仕掛けてくるはず。

 踏み遅れだけは避けないといけない。

 

 そうして視線を前に戻した私が見たのは外にだして位置を上げるスペシャルウィークだった。

 

『スペシャルウィークが先に動いた。楽に先頭に立つ。そこを目掛けてメジロブライトもスパート。相手はこれしかいないといった感じか』

 

 って、そっちが先に動くんかい。

 

 これは予想外。確かにこのスローペースなら、脚の貯金は十分。普段なら私でも仕掛けるタイミングではある。ただそれは私にとってそれがベストだからだ。

 今走っているメンバーならスペシャルウィークの瞬発力が一番なのは間違いない。下手に動かなくてもメジロブライトの仕掛けを見て反応した方が勝率は高いはず。

 

 まぁ、あれこれ考えても仕方ないか。

 

 結局、私のやることは変わらない。メジロブライトの後ろに切り替えて差し切るだけ。まずは最初の踏み出しにしっかりとついていく。さぁ、いつ来る?

 

『さぁブライトが2番手に上がってきた。あのブライアンとトップガンのような一騎打ちになるのか。いや、後ろからもう一人上がってきた』

 

 さぁ、来た!!!

 体で感じる冷たい衝撃、間違いないメジロブライトだ。

 

 ここからがこのレースのターニングポイント、まずはメジロブライトに置いていかれないように全力で踏み込むのみ。

 

 

 あれ? 意外とスピードの乗りが悪くないな。これならきれいに追走できそう。

 案の定、メジロブライトの真後ろはすぐに取れた。

 

 なるほど、たしかにメジロブライトの加速はそこまでのものじゃない。トレーナーさんが私と似ていると言ったのも分かる。本当にキレるウマ娘なら置いていかれたはず。

 ただ、この重い芝でグングンとスピードを上げていけるエンジンは流石だ。もっともそれは。前で応戦しているスペシャルウィークも一緒ではあるんだけど。

 

 けれど、これくらいのスピードなら私でも十分に対応できる。

 

 それでも今はメジロブライトのスピードをもらわないと前には届かない。外に切り替えるのはまだ我慢だ。

 

 本格的に踏み込むのは直線に入ってから。そこまでは脚を溜める!

 

『雨をついて大歓声の中、直線を迎えます阪神大賞典。内スペシャルウィーク、外からメジロブライト、外からブライトが襲い掛かる。その後ろからはカナメが前の2人を追いかける』

 

 前ではスペシャルウィークとメジロブライトが併せている。そして、それを見ている私なわけだけど、脚に余裕はある。

 

 というか、これって前を差し切れるんじゃない?

 

『先頭はスペシャルウィーク1バ身のリード、スペシャルウィークが逃げ切るのか。外からブライトも懸命に前を追いかける。しかし抜かせないかスペシャルウィーク。残り200mでの攻防が続いています』

 

 よし、ここだ。ここで最後の力を振り絞る。

 

 競り合っている二人に比べて私の方が脚が残っている。これなら最後の坂で捕まえられる。

 

『スペシャルウィークが粘っている。ブライトは厳しいか。しかし、外からカナメが飛んできた! 並んで、交わした! 一着はなんとカナメ。これは驚きの展開です』

 

 あれ、なんか楽に勝っちゃったんだけど?

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「すごいなカナメ、まさか勝ち切るとは俺も想像していなかった」

 

「は、はぁ」

 

「どうした、うれしくないのか?」

 

「いや、なんだか思った以上に簡単に勝てちゃったので。正直、実感が湧かなくて」

 

「なるほどな。だが紛れもなく勝ったのはお前だ。しかもダービーウマ娘と天皇賞ウマ娘を相手に完勝だ」

 

「変なことを聞きますが、どうして私が勝てたと思いますか?」

 

「お前が強かったから…って言うだけだと不親切だな。この前お前に言ったストライクゾーンの話を覚えているか?」

 

「えと、道中がスローもしくはミドルペースかつ上りがかかるレースでバ場が渋ればなお良いって」

 

「あぁ、それにドンピシャだったのが今日だ。もちろんメジロブライトを風除けに使えたとか、スペシャルウィークが先に動いて消耗戦になったとかの展開利もあったがな」

 

「自分で言うのもなんですけど、私って強かったんですね。展開利とバ場の恩恵があればあれくらいの走りができるなんて」

 

「あぁ、それに関しては紛れもないお前の力だ。今回のレース、スペシャルウィークとメジロブライトの2人は残り1Fで急激にスピードが落ちていたがお前はスピードを維持できていた。それがお前の強みだな」

 

「なるほど、これならG1でも勝負になりますよね!」

 

「あぁ、この結果なら万々歳だ。それで次走だが宝塚記念で大丈夫か?」

 

「大丈夫かって、元からその予定だったじゃないですか」

 

「いや、あまりに快勝だったせいで天皇賞に出走するのも悪くないように思えてな」

 

「トレーナーさんも浮かれちゃってますね。ここは初志貫徹でいきましょう。次に中央で走るのは宝塚記念です」

 

「あぁ、そうだな。お前の言うとおりだ、珍しくお前の意見が正しい」

 

「珍しいってことはないでしょうに」

 

 

 





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