地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第78話

「あれシャインちゃん、今日は珍しくグラウンドにいるんだね。まさかトレーニング?」

 

「違う違う。もう私は引退したんだよ? まったく引退ってここまで手続きが面倒だとは思わなかったなぁ」

 

「シャインちゃんなら引退を慰留されるだろうからね」

 

「引退を勧めたカナメちゃんがそれ言う? 本当はトレセンも辞めようかと思ったんだけど、将来のことを考えて残ることにしたの」

 

「いいんじゃないかな。私もそっちの方が嬉しいし。でもなんで結局グラウンドにいるの?」

 

「まぁ端的に言えばやりたいこと探しかな。将来のことって言ってもやりたいことも分からないしね。そうだ、カナメちゃんの練習メニュー考えてあげようか? 私ってそういうの得意なんだよ」

 

「それは嬉しい申し出だけど今は間に合ってるかな。それじゃあシャインちゃん、宝塚記念のミーティングがあるから私はそろそろ行くね!」

 

「はいはい、また明日ね。…はぁ、私のやりたいことやれることって何なんだろう?」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「百万石賞見たでしょ? あんたから見て私の走りはどうだった?」

 

「グリンか、いきなりだな。まぁ、悪くなかったんじゃないか? あのチビに先着できるとは正直思っていなかった。展開が向いたとはいえ、誇れる結果だろ」

 

「悪くないか‥」

 

「そりゃそうだ。お前も、まぁ私もだが、衰えていることに間違いはないからな。どうしても全盛期の走りを見ると素直に褒められないだろ」

 

「実際、あんたってそこまで力が落ちているの? 私にはそうは見えないけれど」

 

「骨折に骨膜剥離、それが今の私の脚の現実だ。それに加えてここまで現役で走ってきたんだ、伸び代があるとも思えない。なぁグリン、あのチビを焚き付けたのはお前だろ?」

 

「あー、ばれた?」

 

「それくらい分かるに決まってる。だからこそ言っておくがお前の望んでる姿で走れるとは限らないぞ?」

 

「あぁそれはいいのよ別に。私はあんたと走って勝てればそれでいいの」

 

「怪我人相手に容赦ないな」

 

「何を今さら。もうお互いがベストコンディションで走れる機会なんて待ってたら永遠に決着がつかないじゃない」

 

「お前、私の方が上だと認めてなかったか?」

 

「そうだけど、今はあんたの方から落ちてきてくれたでしょ」

 

「なるほど。やっぱりお前はいいな、他の連中とは違う」

 

「何よ気持ち悪い。とりあえず白山大賞典には間に合わせなさいよ?」

 

「あぁ。少なくとも走れるようにはしておくさ」

 

「そ、ならいいんだけど」

 

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「イスパーン賞は惜しかったですね。それでそちらの生活はなれましたかエル?」

 

「バッチリデス。グラスの安田記念も見ましたよ。少し仕掛けが早かったデスね」

 

「調子が良すぎました。でも次の宝塚記念では不覚はとりません。相手が天皇賞を勝ったスぺちゃんでも」

 

「おぉその意気デスよグラス。でも一人忘れていませんカ?」

 

「…? ステイゴールドさんですか、もしくはフクキタルさんとか」

 

「いやいや、違いますヨ。カナメちゃんデス」

 

「あぁあの金沢の。エルはやけに彼女を気に掛けますね」

 

「私はカナメちゃんを強者だと思っていますからネ。それに阪神大賞典は見事でしタ」

 

「あれは展開が嵌っただけでしょう。天皇賞でスぺちゃんに勝てたとは思えません」

 

「展開が嵌っただけでスぺちゃんに完勝できるウマ娘がURAに何人いますかグラス?」

 

「それは…」

 

「まぁ、私はグラスを応援していますヨ。なんやかんや言ってますケド、結局はスぺちゃんとグラスの力が抜けているのは間違いありませン。カナメちゃんは私が贔屓しているだけデス」

 

「まぁ、少しは気に掛けることにします」

 

「素直じゃないデスね」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「良いかスペ、このレースの相手はグラスワンダー1人だ。それだけお前とあいつの実力は抜けている」

 

「はい。確かにグラスちゃんは強敵です。でも、もう一人いると思うんです。この前の阪神大賞典で負けたあの…、えとなんて名前でしたっけ」

 

「お前、5回以上あいつと走っているんだから名前くらい覚えておけよ。金沢のカネメだろ? 今の地方ウマ娘で芝を走らせればあいつがNO.1だ」

 

「そんな名前でしたっけ…。とにかくその娘にも警戒しないといけないですよね」

 

「まぁ、警戒するに越したことはないが…」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「来週はいよいよ宝塚記念だ。と言っても作戦に変わりはない。先行してレースを見ていけ」

 

「はい。もちろん理解しています」

 

「分かっていると思えばこのレースの主役は2人、スペシャルウィークとグラスワンダーだ。おそらくスペシャルウィークは先行、グラスワンダーがそれをマークする。お前の位置取りはその2人の後ろだ」

 

「後ろ? 前じゃないんですか」

 

「あぁ。今回のレースは勝ちにいくレースだ。阪神大賞典と同じようにスペシャルウィークとグラスワンダーがもがきあったところで一撃をくらわす」

 

「動きがなかった場合はどうしますか」

 

「その場合は自分で動け。リミットは3コーナー、ここでスローならいくしかない」

 

「できればその展開は止めて欲しいですね。普通にスルーされて終わりな気がするので」

 

「俺としても勘弁だがな。精々そうならないように祈っておくとするか」

 

「こういう時だけ祈られても困ると思いますよ。それにどうせ祈るなら私に対して祈っていてくださいよ。お賽銭でもくれればなおさら良いですね」

 

「お前に賽銭をくれてやってどんな見返りがあるんだ」

 

「何言っているんですか、散々夢を見せてあげたじゃないですか」

 

「確かにそうだな。まぁ、俺の指導のお陰でもあるからお互い様ではあるが」

 

「それはそうですね。流石にそれは否定しません」

 

「えらく素直じゃないか」

 

「最近は割と素直でしょう私。まぁ、大人になったってことですよ」

 

「子供の成長は早いもんだなまったく。老い先短いおじさんには眩しい話だよ」

 

「なら、枯れゆくトレーナーさんに水をあげるためにもG1獲りに行きましょうか」

 

「そのセリフ、本当によく聞くな。今度こそはぜひそうして欲しいもんだがな」

 

「普通、この場面で冷やかします??」

 

 

 

 

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