『さぁ第4コーナー回って直線に向かうところでスペシャルウィークとカナメの競り合いは続いている』
この地方の娘しぶとい。まだついてくるなんて。
でも、私の方が脚は上なはず。ここまできたらグラスちゃんの仕掛けを待つなんてできない。
まずはこの競り合いを勝ちきる!
勝負はコーナー終わりの直線入口。ここで私の全力を出す。そうすれば瞬発力の差で私が前に出られるはず。
『しかしここでスペシャルウィークが出たか。必死に追いすがるカナメ、そしてグラスワンダーは前を射程圏に捉えたか』
予想通り前に出た!
後はこの勢いのままゴールするだけ。グラスちゃんと併せても根性で勝ちきる!
でも、その考えは甘かった。
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なかなか前に出られない。
流石はスペシャルウィーク、私の方が仕掛けたタイミングはよかったのに完全に合わされた。
でも、私だって意地がある。ここで退くわけにはいかない!
『しかしここでスペシャルウィークが出たか。必死に追いすがるカナメ、グラスワンダーが前を射程圏に捉えたか』
いかないんだけどなぁ。
残念だけどこれは脚力の差。私もバテたわけじゃない、脚比べなら明らかに向こうに分がある。
いいよ、分かった。
この勝負は私の負け。でもスペシャルウィークも相当脚は使ったはず。それならジャパンカップと同じ戦法でいく。
『先頭はスペシャルウィーク。その後ろに切り替えたカナメ。そして外からはグラスワンダーが満を持して飛んできた!』
スペシャルウィークを風避けに使ってのちょい差し。スペシャルウィークがどこまでグラスワンダーに抵抗してくれるかは分からないけど私が勝つにはそれしかない。
頑張ってよねスペシャルウィーク。
だけどそれが甘い考えだったのは、そのすぐ後に分かることになる。
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ようやく私の番が来ましたね。
何度も言っていますが、このレースで警戒するのはスペちゃんだけ。そしてスペちゃんはかなり脚を使っている。一方の私はこの終盤でもまだ脚を残している。
そして今、その溜めてた脚を解放します。
『先頭はスペシャルウィーク。その後ろに切り替えたカナメ。そして外からはグラスワンダーが満を持して飛んできた!』
さぁスペちゃん。その背中が近づいてきましたよ。どこまで粘れますか?
『グラスワンダー、ここで先頭に並びかける。2人のマッチレースになるのか。いや、並ばない並ばないグラスワンダーが突き放す』
残念でしたねスペちゃん。
最大の敗因は私をないがしろにしたこと、それにつきます。
では勝たせていただきます。
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あらら、前の3人には届きそうにありませんね。
本調子なら勝つ自信はあったんですよ?
まぁ、どれも言い訳にしか聞こえないと思いますけど。
まったく、いつになったら力が戻ってくるんですかね…。
あの娘たちが羨ましくてしょうがありません。
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『グラスワンダー、ここで先頭に並びかける。2人のマッチレースになるのか。いや、並ばない並ばないグラスワンダーが突き放す』
グラスちゃんが来る! でも根性比べなら私も負けない…そう思っていたけど。これは脚が違いすぎる。
ようやく分かった。グラスちゃんはこのレース私だけを目標にしていた。完全に作戦負けだ。
でも、それはグラスちゃんが自分の力に自信を持っていたからできたこと。そしてそれは私には足りない部分。
このレースは私の負け。凱旋門賞への挑戦もやめる。でも、私の足りないものは分かった。
ならそこを身に付ければいい。
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グラスワンダー強っ!
まさかスペシャルウィークがあっという間に交わされるなんて。
私の作戦ミスはあるけど、それでも力の差は圧倒的だ。少なくともこのコンディションのレースだとね。
でも、まだレースは終わっていない。まだスペシャルウィークに先着できる可能性は残っている。それにグラスワンダーにアクシデントが起きる可能性もある。
最後まで全力で走りきる。
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『先頭グラスワンダー、今ゴールイン。2着は離されたもののスペシャルウィークが確保。そしてその後ろでカナメとステイゴールドの3着争いです』
4着…だな。
あっちの私は3着だったはずだけど。
けれど原因は分かっている。
「やぁ、中々強いね。結局抜かせなかったよ」
「えと、あなたは?」
「あぁ。私はステイゴールド。君と同じ黄金のウマ娘さカナメ」
カナメ、金沢から挑戦しにきたウマ娘。去年のジャパンカップでも一緒に走ったことがある。薄々思ってはいたけど、少なくともあっちにはこんなやつはいなかった。
つまりはこの世界特有の存在。なるほど、まだ私の旅には分からないことだらけだ。
「黄金って…、あぁそういうこと」
「なんとなくカナメとは長い付き合いになりそうだね。まぁそれじゃあ次もどこかのレースで会おう。私はいつでも待っているから」
これだから旅っていうのは面白い。