地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第9話

 大井での戦績は40戦9勝。9勝とはいっても大レースの勝ち星は無い。

 南関東で戦うには荷が重い。活躍の場を求め、彼女は金沢に移籍することになる。

 

 そして、この移籍が彼女の才能を開花させた。中でも圧巻なのは金沢での6戦目、白山大賞典。そこで彼女はレコードでの圧勝をして見せる。

 

 ただ彼女はそこで満足をしなかった。金沢で加えた6つの白星、大井の時とは違い大レースが含まれていたそれを手土産に、中央に挑戦する。

 

 そして、彼女は中央で更に大きな2つの星を掴んだ。

 マイルの皇帝を破ったマイラーズC、南関東3冠バを打倒した札幌記念。

 

 レースは予想できる、結末は誰にも予想できない。

 そのウマ娘の名は・・・。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 共同通信杯で4着後、金沢に戻った私はいつものようにトレーニングをしていた。

 一応、4着ということで地元でもそれなりにお祝いムードではあったんだけど、レース内容自体が完敗だったので何となく盛り上がりには欠けてしまったいた。

 

 そんな中、トレーナーさんから練習後呼び出された。何でも次走の発表をするとのことなんだけど。

 

「次の目標レースは若葉S、皐月賞トライアルだ」

 

 若葉S、本番の皐月賞と同じ中山2000mで行われるこのレースは、3つあるトライアルレースの1つだ。

 

「皐月賞トライアル・・・。これに勝てば私も皐月賞に出走できる!」

 

 そう、本来は中央で賞金を加算していない私は皐月賞に出走することができない。けど、このトライアルレースで結果を残すことで皐月賞の優先出走権を手に入れることができる。

 

「正確には2着に入ればだけどな。まぁいい、とにかくお前にはこのレースに出てもらう。だが、今のお前じゃあ2着に入るのは厳しいというのが本音だ・・・」

 

 それはそうだろう。中央のクラシックはウマ娘の誰もが憧れるレース。出走できるのはたったの16人。必死になって権利を取りに来るだろう。

 

「はい、それは私も分かってます。でも、今の私だったらですよね。トレーナーさん教えてください、どうすれば勝てますか?」

 

 けど、私だって簡単に負ける訳にはいかない。勝つためには何でもしないと。

 

「お前、この前のレースの後言ったこと覚えているか? あれを試してもらう」

 

「レースを壊すロングスパート・・・」

 

「中山2000mは基本的にSペースになることが多い。それに向こう正面から最後の直線まではほとんど平坦だ。コース形態的にも3角から動いて捲っていくやつの好走率が高い。比較的、今回の戦法には向いているコースだ」

 

 へーなるほど! やっぱり、トレーナーさんは何でも知ってるんだね。ただ、口に出しちゃうと、いつものドヤ顔を見せつけれそうだから言わないけど。

 

「だったら、3角で仕掛けていけばいいんですね!」

 

 なんだ、これなら分かりやすい。ただ、3コーナーからだと体力が持つかな?

 

「まぁ落ち着け。闇雲に捲っても前々走の二の舞になって終わりだ。だからお前にこれをやる」

 

 そう言ってトレーナーさんが取り出したのは・・・

 

「あのー、トレーナーさんこれって」

 

「マスクとストップウォッチだ」

 

「いや見れば分かりますけど。これで、トレーニングするんですか・・・」

 

「珍しく察しがいいじゃないか。本当は山登りでもしてトレーニングしたいところだが、そんな余裕はないからな。マスクは、まぁその代替品みたいなもんだ」

 

「マスクは想像できますけど、ストップウォッチは時間でも測ればいいんですか? 」

 

「正解! お前はレースのペースを掴むのが下手だからな。本当はタイムだけで判断するのは良いことではないんだが、この際仕方ない。いいか前半は何も考えなくていい。問題は坂を登りきってからだ。ここから、ペースが重要になってくる」

 

 最初のところは聞かなかったことにしておこう。それよりも、中山には急坂があるんだよね。基本的に地方は平坦なコースがほとんどだし、前走の府中も坂自体は緩やかなものだったから、そこがどうなるかだ。

 

 でも、それよりも大事なことは

 

「ペースが流れれば捲って、早ければ直線まで我慢すればいいんですね」

 

「そうだ・・・といいたいが、少し違う。スローの場合はそれでいい、問題はHペースの時だ。前走は最後尾に下がってもらったが、お前の場合それだとキレ負けしちまう。特に中山は直線が短いからな」

 

 キレ負け、つまり瞬発力が足りていないということだ。この瞬発力っていうのは基本的に芝を主戦場にしている娘の方が上だ。もちろん、大まかな傾向に過ぎないけれど。ただ、私に瞬発力があるかと言われれば、残念ながら無いんだろうなぁ。自分でもそれくらいは分かる。

 

「だったら、どうすればいいんですか?」

 

「一番単純なのは位置を取ることなんだが、お前にそれは難しい。仕方ないが、3コーナから仕掛けるしかないな。とにかく、直線に入った時に最高速度を出せる形にする必要がある。だから、Hペースの時はそこまで捲り上げる必要はない。あくまでお前が走りやすいようにするだけだ」

 

 まぁ、そうなんだよね。何度か中央で走って分かったけど、高いレベルの娘たちは出足が速い、こないだのエルちゃんもそうだ。地方でも速い娘はもちろんいるけど、はっきり言って力の差があったから道中で位置を上げることができた。だけど中央の速いペースだとそれも難しい。前々走がまさにそうだった。そして、今回もそうなるかもしれない。

 

「でも、それだと最後まで脚が持たないかもしれません」

 

「その時は諦めろ。まぁ、そうならないようにトレーニングはしていく。そのためのマスクだ。今日からどんなときでもずっとマスクを外すなよ」

 

「えぇー、寝る時もですか?」

 

 マスクをつけて寝るって、すごい息苦しそうなんだけど。流石にそれは無いかな?

 

「当たり前だ」

 

 えぇー。余計なこと聞かなきゃよかった。

 こうなったら、トレーナーさんも困らしてあげないと。ちょっと恥ずかしそうに・・・こんな感じかな。

 

「その、・・・お風呂の時とかは?」

 

「・・・そこでは外していい。とりあえず、今日はマスクをつけて海岸ダッシュだ。俺が車を出してやるから、その間にお前はそのストップウォッチで12秒と13秒を測っておけ」

 

 あれ、意外とトレーナーさん困ってた? 普通に流されて終わりかと思ってたのに。

 というか、今から海岸ダッシュかぁ。でも、勝つためには必要だもんね。よしがんばるぞ! ところで、

 

「12秒と13秒ですか?」

 

 この秒数に何か意味があるんだろうか?

 

「あぁ、そうだ。いいか次のレースはこの1秒差がカギを握ることになるぞ」

 

 はい、ここでいつものドヤ顔頂きました!

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