勝てるだろうか?
何度も何度も自問した。
確かに私は強い、それは間違いない。
それでも今のカナメは遥か高みのウマ娘だ。
今夏のトレーニングで彼女の映像を何度も見返したが、はっきり言ってレベルが違う。まだ、今年の春なら勝機はあった。あのころの彼女でも実力は相当だったが、付け入るスキがあったからだ。でも今の彼女は、その付け入るスキも無いほど力をつけている。
それなのにどうして。
『本日の1番人気の登場です。金沢の皇帝シロヤマルドルフ。かつての金沢最強ウマ娘は今も最強であることを示せるのか。金沢のファンは彼女を最も支持しました、頑張れシロヤマルドルフ』
それなのにどうして私が1番人気なんだい? つくづく金沢のファンはおかしい。思えば私が金沢で色々やろうとした時もそうだったな。
正直に言うと私はかなりあくどいことをやってきた。もし中央でも同じことをすれば、今頃は追放どころで済まなかっただろう。
そしてそれは金沢のファンも感づいていないわけがない。
それでもこのレースの一番人気に支持された。地元の生え抜きのスターを抑えてだ。
その理由が分からないほど私は愚かじゃない。
「勝つ」
相手が強いのは分かっている。勝つなら奇策を用いる必要があるかもしれない。カナメの弱点は出入りの激しいレースへの対応、そこに付け入るスキがあるからだ。
でも、それは1番人気の走りとは言えない。
なら、私がとるべき戦法は一つ。
真っ向勝負でぶち抜く!!
私は金沢の皇帝シロヤマルドルフ。
チャレンジャーはカナメ、あくまで君だ。
◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇
体調は万全。少なくとも本気を出し切る態勢は整えてきた。この私サウスヴィレッジの引退レースには相応しいできだ。
「脚の具合はどう?」
「おかげさまで何とかなりそうだ」
こいつとこんなやり取りをするのも最後だと思えば感慨深いものがある。
「あらそう。お願いだからレース中には怪我はしないでよ?」
「お前が私にそんなことを言うなんて珍しいな」
「そりゃそうよ。私の勝ちにケチがつくじゃない。あんたと走るのはこれが最後なんだから、痛い痛い言うのはレース後に裏で言ってなさい」
まぁそんなことだろうと思ったよ。安心しろ、そんなみっともない真似はしないさ。怪我をするのも本人の実力だからな。それに何より大事なことを忘れているんじゃないか?
「グリン、一応言っておくが私はこのレース本気で勝ちに行く。お前にじゃないぞ?」
「あんたはそれでいいのよ。私が勝手にあんたに勝つことに拘っているだけ。悪いけど私はあんたに勝つことだけを考えて走るわよ」
グリンフォレストって言うのは不思議なウマ娘だ。こいつは私にだけムキになる。その理由は分からなくもないが、今更それを言うのも無粋だろう。私とこいつの関係は当人だけが分かっていればいい。
「好きにすればいいさ。それじゃあ互いに悔いの無いように走るとするか」
「そうね」
正真正銘のこれがラストラン。
◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇
準備は万全。
いつでも勝つ準備はできている。
思ったより人気はなかったのは意外だけど、人気でレースをするわけじゃない問題は無い。
ここを勝って私は飛躍する。
この秋のビッグレースを掴むためにはここじゃ負けられない。大丈夫、私の末脚ならこの舞台でも問題ない。
どうもマチカネワラウカドです。
もしかして違う娘を思い浮かべてなかった?
というより私のターンは終わったと思ったでしょ?
前にも言ったけど私って普通だから印象に残らないの。だからこうして何度も出てくるわけなんだけどね。
じゃあちょっと真面目にレースの展望でも考えてみましょうか。
まずはこのレースで警戒すべき相手からね。これは3人、キョウトシチーさん、ジェットちゃん、シロヤマルドルフ、カナメよ。どうやら、4人だったわね。
とにかくこの4人は私に先着する可能性があるウマ娘よ。この中で特に警戒するのはキョウトシチーさんね。私の脚質的に差し損ねが一番怖い、そういう意味では先行してくるキョウトシチーさんの位置が重要になるわ。順当にいけばキョウトシチーさんを差し切れる位置取りをするのが重要ね。ただ、カナメ、彼女だけは脚の次元が一つ違うかもしれないわ。フェブラリーステークスでは先着したけどあれはノーカウントでいいでしょ。シロヤマルドルフとジェットちゃんは私と変わらない位置でレースをするでしょうし、何とかなるだろうけど、カナメの出方次第では色々イレギュラーなことがあるかもしれないわ。
まぁ、長々と語ったけど要はこういうことよ。考えても分からないことはしょうがない!
とりあえず笑っておけばいいのよ。
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『そしてこのレース最も注目を集めるのはこのウマ娘でしょう。前走宝塚記念は3着。すでにその実力は金沢を超えて中央トップクラス。2番人気は不服でしょう、カナメの登場です』
まさか2番人気になるとはね。私もトレーナーさんもちょっと自惚れていたかも。でも、人気はいらない欲しいのは勝利だけだから。…このセリフって一回は言ってみたい名言だよね。
まぁそれは置いておくにしても、シロヤマさんが強いことはファンも分かっているっていうことだね。でも、正直に言うと今の私はこのレース負ける気が微塵もしないんだよ。それがバ場に入った感触で分かってしまった。
仕上がった。完全に体が脚が心が仕上がっている。
今の私に課せられているのは勝つことじゃない。どうやって勝つかだ。少なくとも今の私はそう思っている。
自分が傲慢なことは分かっている。でも、これは過信じゃない。
今からそれを証明して見せる。
◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇ ◾️ ◇
どうもーサスライノマドです。
あの、一応私も出走するのでよろしくお願いします。
少しでもカナメさんに追いすがれるよう頑張ります!