地方は中央の2軍じゃない!   作:小魔神

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第94話

『さぁ、ここでカナメが早くも仕掛ける。イデフォーサイトはどうする? いや、ここはカナメを送り出して2番手を選択だ。先頭カナメに代わってバ群が縦に広がっていく』

 

 舞台は東京2,500のG2アルゼンチン共和国杯。

 愛すべき我らの代表は、とんでもない仕掛けを打っている。

 

「あの位置からじゃ、いくらあいつでも厳しいだろ、どう思うシロヤマ?」

 

「いや、今のカナメなら持つかもしれないよ?」

 

 なんせ、白山大賞典では私の追撃を凌ぎきったからね。私のためにも金沢のためにも、ここで捕まらないでくれよカナメ。

 

「そうであってくれれば嬉しいがな。とはいえ、府中の直線は金沢の比にならねぇ。次のJCに向けての走りではあるんだろうが、相変わらず常識では考えられん走りをするな」

 

「常識で考えれば、あんなウマ娘が金沢にいること自体がおかしいんだ。私もサウスもコテンパンにされてしまったからね。まぁ、全盛期の私なら勝っていたはずだがね」

 

「ハッ、負け惜しみはダサイぞ皇帝様」

 

「何を言っているんだい、私が最強だと言ったのは君だろう? それにグリンもか。君たちのためにも虚勢を張っているというのに」

 

「抜かせ」

 

 確かにこれは虚勢だ。でも、来年の白山大賞典ではリベンジさせてもらうよカナメ。それに全盛期の私なら勝っていたはずというのもあながち間違いではないだろうしね。

 

 まったく楽しみが増える一方だな。

 

「サウス、走るっていうのは楽しいな」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『早くも先頭のカナメは3‐4コーナーの中間へ。軽快に飛ばすカナメのリードは3バ身。先行集団も前との差を詰めてくる。そして後方ではフソウエウローペ、シンコウシングラーも脚を溜めている』

 

「カナメちゃん、流石に飛ばし過ぎたかしら?」

 

「いや、グリンさん、今のカナメちゃんならこれでもゴールまで保ちます、垂れません。問題は…」

 

 前走の白山大賞典も、それに今までのレースでもそうだったけど、一度スパート態勢に入ったカナメちゃんは垂れない。トップスピードの維持能力は、おそらく現役ウマ娘ではトップレベル。

 でも懸念することはある。

 

「後ろからの仕掛けが飛んでこないか、ね」

 

「はい。カナメちゃんは芝の軽いバ場だとスピードは見劣る。こればっかりはどうしようもありませんからね」

 

「それでも前走の白山大賞典の走りを見せられれば勝ち切ると思ってしまうわね。完全に蚊帳の外だった私でも痺れたもの、あの走りは」

 

 そう。そうなんだ。

 中央のファンには分からないかもしれないけど、金沢の関係者なら分かる。カナメちゃんのあの走りは脳を焼く。夢を魅せる。

 

「勝ちますよ。カナメちゃんは。だった金沢でカナメちゃんに勝ち切った唯二の二人がそう思っているんですから」

 

「確かにそうね。そういう意味でも私とシャインちゃんは似ているのかもね」

 

「ですね、それにカナメちゃんに勝って証明してもらわないといけないですから。私とグリンさんの力を』

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『さぁ、府中の直線500m。先頭カナメはまだ楽な感じ。しかし後ろの先行集団は苦しい。代わって上がってくるのは中段からソウシソウアイ、マーベラスタイマー。後方からはシンコウシングラーも満を持して突っ込んできたぞ』

 

 いや、いやいや全然楽じゃないから! どこからスパートしてると思ってんの。

 あぁもう、直線が長い!! 

 

 でもしょうがない、自分で選んだ作戦だし。

 それに私が苦しいってことは他の娘も苦しいってこと!

 

 あとは根性しかない。

 

『先頭カナメ、坂の登りで後続を突き放す。リードは4バ身』

 

 もうこの坂、中山に比べれば大したこと無いけど、脚に来るのは間違いない。それでも、坂の登りは私は苦手じゃない。むしろ他の娘に比べても得意だ。

 だからここで勝負を決めたいとこだけど。

 

『懸命に追いかけるマーベラスタイマーとソウシソウアイ。シンコウシングラーはその後ろ。フソウエウローペは伸びません』

 

 そりゃ、付いてくるよね。

 けど、ここで苦戦しているようじゃJCなんて勝てるわけないんでね。

 申し訳ないけど、勝たせてもらうよ。

 

『しかし、先頭カナメとの差はまったく縮まりません。着差以上の差を見せつけてカナメが先頭でゴールイン。地方の雄が世界一の称号を掴むため、まずは前哨戦を勝利しました。夢は3週間後のここ府中で実現されるのでしょうか』

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「勝てませんね、これじゃ」

 

「だな。今日のレースにスペシャルウィークがいれば差されていた」

 

 トレーナーさんも同じ見立て。

 まぁそうだよね、今日の私はかなりギリギリだった。仮にスペシャルウィークが出走していれば、その脚には抗えなかった。

 

「ペースはもう少し後傾にしないといけなかったですね。今日は少しフラットにしすぎました。白山大賞典の時は金沢だったので、上手く踏めたんですけど」

 

「あぁ、出来れば最終コーナーでは後ろとの差を詰めさせたくはないな。今日はそこで先行集団が詰めてきたせいで、その後ろの中段の連中が労せず位置を上げられたからな。とはいえ、それを振り切っていることは自信を持っていい」

 

「ですね。G2勝ったわけですし、私も喜びたいんですけど、JCの影がちらついて」

 

 G2勝つって凄いことなんだけど、どうも反省点ばかり浮かんで素直に嬉しいって感情が湧かないんだよなぁ。

 

「なるほどな。なら今日はライブして終わりだ。明日もオフ。明後日に今日の振り返りと次走のミーティングだ」

 

「え、いいんですか?」

 

「あぁ。ま、リラックスも大事だからな。遊びいってこい」

 

「は、はい」

 

 ん? そう言えば前もこんなことあったような気が…。

 あの時は確か…、うんあれは忘れたんだった。

 今回は大丈夫だよね。

 

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