ゆるキャン☆~十人十色~   作:完全怠惰宣言

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ネコとイヌの物語

「なぁ~なぁ~、今日はどこ連れてってくれるん?」

 

助手席で身体を揺らしながら訪ねてくるのは大恩ある女性のお孫さんの一人。

オレ、“音木(おとぎ) 白哉(びゃくや)”は趣味であるキャンプへとそんな彼女を連れだって来ている。

地元の長野から転勤し近所のご挨拶で再開して以来、彼女はバイトの無い休日はオレにベッタリとくっついて離れない。

アウトドアが好きなこの子は、自分の趣味も相まって休日が重なると決まってキャンプについて来るようになった。

 

「今日は“星振るキャンプ場”ってとこ“あおい”がご希望の温泉も近くにあるよ」

「わーい、温泉や温泉」

「その代わり、夕飯はよろしくな」

「任せといて、むっちゃ美味しいご飯作ったるからな」

 

そんな呑気な会話を続けながら、車は長野県へと入っていった。

 

「戸狩温泉 星降るキャンプ場」

長野にある冬はスキー場となる意外と穴場なキャンプ場。

管理棟から車で10分程度の場所に温泉もあり、施設自体充実している。

なにより有り難いのはキャンピングカーの乗り入れが許されているところだ。

 

「うわぁー、めっちゃ気持ちえぇ~」

 

連日晴れ続きだったからか下草が適度に乾いているようであおいは助手席からおりるとごろんと寝転がってしまった。

テント泊も好きだが、色々と事情があるので最近はもっぱら自前のキャンピングカーを利用している。

そのため、設営その物は楽になった。

 

「はいはい、荷物おろすの手伝ってよ」

「あともうちょいごろごろさせてぇや」

 

こいつ寝かけてるな、と思い、確認のため覗き込んだ。

 

「やから、しろにぃも一緒にごろごろしよや」

 

そう言うと、あおいは上着を思いっきりつかみオレを転がした。

 

「あ~の~な~ぁ、イスと机とタープにコンロの設営」

「しろにぃ」

「あぁん」

「良いとこ連れてきてくれて、ありがと」

 

この子の笑顔には絶対人をダメにする効果がある気がしてならない。

 

なんやかんやで設営が終わると互いに思い思いのことをし始める。

オレは買い貯めたマンガを読んで、ついでにお茶を準備する。

あおいは出された宿題を終わらせている。

今日出掛ける前にあらかた終わらせていたようで、車の中でも少し寝ていたが、その寝顔が可愛かったことは言うと調子に乗るから絶対に言わない。

 

「さて、晩御飯は任せてや」

 

宿題を終え、お茶で一息ついたあおいは約束通り夕飯の準備に取りかかった。

 

「言うても殆ど準備出来てんねんけどな」

 

そう言うとあおいは机の上に積んできた一口コンロを置くと大きめのスキレットの上にした茹でしてきた野菜とソーセージを乗せ、シェラカップにチーズを乗せるとチーズの頭が出るくらいまで牛乳を注ぐ。

そして、そのシェラカップをスキレットの空いたスペースに乗せて火にかける。

すると、シェラカップの中のチーズがほどよく溶けてした茹でされた野菜達にも火が通り。

 

「今日の晩御飯“チーズフォンデュ”の完成や」

 

互いに竹串で野菜やパン、ソーセージをチーズに絡めながら最近あったことを喋りながら夕飯を楽しんだ。

ちなみに、スープは粉末を使用。

 

「あれ、具材終わっちゃったね」

 

あおいが食材をいれてきたタッパーは一つを除き空になっていた。

 

「ほなら、〆は“これ”や」

 

そう言うあおいの両手には

 

「(テッテレー)茹でといたパスタ(水○わさ○風)」

「いや、「○山○ぶ代」じゃないんかーい」

「まぁまぁ気にせんと、このパスタをチーズにINや」

 

なんと言うことでしょう、先ほど迄チーズフォンデュを楽しんでいたシェラカップには見事に美味しそうなチーズスパゲティが。

 

「旨!!」

「我ながら旨!!」

 

二人で食後の後片づけ、温泉にも入り再びサイトに戻る。

 

「ほら、あおい“うえ”」

「“うえ”?」

 

そう言って夜空を指差すオレの指につられて上を向くあおい。

彼女の目には。

 

「うぁー、これなんなん!綺麗」

 

何にも遮られない満点の星空が写っていた。

星空を眺める彼女の後ろに回り込み、そっとチェーンを首にまわす。

 

「しろにぃ、これ」

「約束どおり」

 

あおいの首に回したチェーンにはリングがついていた。

 

「約束どおり、「“婚前指輪”です」って言って買ってきた」

「それが“婚約指輪”になるかはあおい次第だからな」

 

呆然とこちらを見るあおいに照れ臭くなり空を見上げる。

すると、誰かに抱きつかれる感触とその勢いで倒された衝撃が身体を突き抜けた。

 

「ありがと、“白哉”さん」

 

本当にこの子はズルい。

 

翌週、金曜日。

 

「なんか、今週のイヌ子機嫌良すぎないか」

 

野クルの集まりで家庭科室にいるなでしこと千明は週の始めから機嫌が良すぎてフワフワしているあおいに少し引いていた。

 

「ほんとだよね、あおいちゃんずーっと笑顔だよ」

 

そう言うと二人は示し会わせたかのようにそーっとあおいの顔色を伺う。

 

「うへ、えへへへへ」

 

それは笑顔を通り越した別の何かに変わっていた。

 

「こら、野クル共。とっくに下校時間過ぎてるぞ」

「ゲッ、“ネコ”先が今日の見回りかよ」

 

ノック無しに年若い先生に扉を開けられ慌てる千明。

 

「ネコ先生もうちょっと待ってて」

 

なでしこは机に広げていたキャンプ雑誌を慌てて鞄に仕舞い始める。

 

「サークル活動も良いけど、来週は期末試験だからな」

「ギャー、思い出させんじゃねぇ」

 

千明の悲鳴をものともせず腕時計を見ながら呑気にカウントを始めるネコと呼ばれている教師。

 

「それじゃ、ネコ先」

「またね、ネコ先生」

 

千明となでしこが慌ててドアから出ていくとマイペースにゆっくりと歩いてくるあおい。

 

「それじゃ、音木(ネコ)先生さよなら」

「あぁ、試験頑張れよ犬山」

 

音木 白哉と犬山 あおいの本当の関係は未だ家族以外には内緒である。




音木 白哉(おとぎ びゃくや)
本栖高校に赴任してきた新任の男性教師。
典型的な普通の顔立ちだが、決して悪いわけでわない。
マンガにありがちな後ろで髪が縛れるくらいには長い。
学生時代に犬山祖母に何らかの借りをつくって以来頭が上がらない。
自前のキャンピングカーは自動車整備工の友達等に手伝ってもらい作り上げたモノ。
あおいとは約束ごとがあり、今回のキャンプの年までに彼氏を作らず年の始めと月の始めに告白され続けられたら婚前契約として指輪を送ることになっていた。
犬山家はwelcomeモードで実家もあおいを応援しているため、外堀も内堀も完全に埋められている。
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