ゆるキャン☆~十人十色~   作:完全怠惰宣言

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少年少女の物語

「あのさぁ、いい加減にしなよアキねぇちゃん」

「イヤハヤ、面目ねえっす」

 

期末テストを翌日に控えた日曜日。

大垣千明は目の前の少年に有り難くないお小言を貰っていた。

切欠は単純に千明の勉強不足、特に英語が壊滅的でいつも頼る相棒はどこかに避難してしまっているし、キャンプ仲間達も何故か捕まらない。

とうとう、千明は最後の手段をとるべくスマホをとり、少年に電話したのであった。

 

「毎回言うけどさ、去年まで小学生(・・・)だった奴に英語を習おうとするなよ」

「でもさ、亮平はハーフだからさ英語出来るじゃん」

「学業の英語と日常会話の英語は違うって何回言わせんだ」

 

ベネゼクト亮平(りょうへい)

イギリス系アメリカ人を父に持つイケメン。

身長も既に170cmあり、町を歩けば高校先に間違えられ、バレンタインには近隣の中学生からもチョコが送られてくる。

そんな彼には誰にも言わない秘密があった。

 

「はぁ(惚れた弱味、てこういうことなのかな)」

 

亮平は目の前で机に項垂れてる大垣千明を一人の女性として好きだった。

 

切欠は亮平の外見で虐められていた頃の話だ。

子供は結構残酷なもので、当時は絵具を溶かした水をかけられたり、かみに墨汁をかけられたり、心無いことをいわれたり、亮平にとって日々が地獄でしかなかった。

そんな日々は唐突に終わりを告げた。

偶々、虐めの現場を目撃した千明が亮平の手を掴んで職員室に逃げ込んだのだった。

この事が切欠となり、亮平の境遇は改善された。

しかし、トラウマが刻まれた亮平を心配してか千明はその後も、小学校を卒業するまで亮平の様子を見に来てくれたのだった。

 

「少し休憩、キッチン借りるよ」

「よっしゃ、どうぞどうぞ」

 

[鍋をコンロに置くと持参したほうじ茶の葉を鍋に入れる]

 

「にしても、我ながら単純だよな」

 

亮平と千明の年の差は3年。

この先、同じ学校に行こうとすれば大学までは一緒に通えない計算である。

 

[お茶の香りがたってきた頃合いに牛乳を気持ち多めに鍋に注ぎ入れる]

 

自分をあの地獄から救いだしてくれた千明が見せたあの笑顔。

それが恋だと気づいたのは、千明の小学校卒業式当日だったのは亮平的にも傑作だった。

 

[牛乳が温まったら火を止め、砂糖又はシロップを入れて溶かしきる]

 

その日以降、なにかと理由をつけて大垣家、というか千明の傍にいるようになっていった。

 

[砂糖又はシロップが溶けきったのを確認したら、茶漉しで茶葉を漉しながらマグカップ等に注ぎ入れる]

 

「オレの英語の成績だけ飛び抜けて良いのアキねぇが原因なんだけどな」

 

ハーフだから英語が得意と思われ相談を受けた時は思わず舞い上がって勉強を見て上げると言ったが、生まれてこのかた日本から出たこと無い亮平は例に漏れず英語が苦手だった。

ただ、千明に良いところを見せたいためだけに英語は勉強した結果、大学入学レベルまで身に付けていた。

これには当時家庭教師をしていた大学生も開いた口が塞がらなかった。

 

淹れ終えたほうじ茶ラテをお盆に乗せ千明の待つ部屋へと運ぶと机に突っ伏し眠りこける千明がいた。

少しイラッとさせられた亮平だったが、同時に悲しさも覚えた。

 

「アキねぇ、オレも一応“男”なんだよ」

 

普段は括っている髪をそのままにして、眼鏡も外している千明の寝顔を間近で見つめる亮平。

お盆を机に置くと寝入っている千明の頬にキスを落とした。

 

「寝ているアキねぇが悪い、おばさんがビスケットがあるって言ってたな」

 

そう言うと再び亮平は部屋を出ていった。

耳まで真っ赤にした狸寝入りの千明に気付かずに。

 

「大垣よどうした、今回軒並み赤点ギリギリだぞ」

「面目ねえっす」

 

期末試験が終わり、テストが返された頃、千明は生徒指導室にいた。

 

「お前が得意な英語に至っては、後1点で補習じゃないか」

「本当にすいません」

 

今まで要領よく点をとったいた千明は今回の期末テストで大幅に順位を下げていた。

 

「というか、お前目の下の隈が酷いぞ。本当に大丈夫か」

「ご心配お掛けしてすいません、でも個人的なことなので大丈夫です」

 

そう言うと乾いた笑いを上げながら千明は指導室を後にした。

 

 

「(落ち着け、落ち着けアタシ。相手は亮平だぞ)」

 

あれ以来まともに亮平と顔を会わせられていない千明。

自己評価を低く見積もる癖のある千明は亮平が自分を“そういった”対象に見ていたことにうれしくもあり、驚きもあり、弟分の成長が悲しくもあり、感情がごちゃ混ぜになってしまい、寝付きが悪くなっていた。

トボトボと歩きながら部室棟に向かう途中、体育館の方から黄色い声援が聞こえていることに気が付いた。

野次馬根性に火がついた千明は、体育館を思わず覗く。

 

「あいつ本当に中一かよ」

「てか、最近の中学生ってすごいっすね」

 

中では近隣の中学校のバスケ部と高校のバスケ部を招いた総当たり戦が行われており、現在は見知った中学と自分の高校の対決が行われていた。

そして、この中で一際黄色い声援を浴びていたのは。

 

「亮平くん頑張って」

 

亮平だった。

その光景に千明は人知れずイラッとモヤッとしたのだが、バスケをする亮平の姿を見て思わず顔を赤らめてしまった。

千明と亮平、二人の恋愛戦争はまだ始まったばかりである。

 

(精神的に年上)少年と(身体的に年上)少女の物語




ベネゼクト亮平
大垣千明に恋する中学一年生。
二人で出歩くと高確率で恋人に間違えられるのが密かな楽しみ。
中学生にして身長170越え、アイドル顔負けのイケメン、頭も平均以上、運動任せろという漫画のヒーローが具現化したような存在。
しかし、身長と顔以外は全て千明に誉められたいという欲望が燃料であり、千明が全ての基準になっている。
最近ではアウトドアにも手を出している。
虫が苦手なので苦労しているらしい。
甘いものが好きで、スイーツを食べている時は年相応の反応をする。
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