「またフラれた、なーーんーーでーーー」
とあるバーにて女性が悪酔いしていた。
「あんた、もういい加減になさいよ。ウチに来るまでに大分飲んだんでしょ」
「うるさーーーい、傷心の乙女が傷を癒してんだからほっときなさいよ。あ、“ドッグズノーズ”おかわり」
そう言うと先程自分で空けたグラスをバーテンにつき出す女性。
「あのね美波、止めはしないからもう少し度数を落としなさい。後、傷心の乙女は酒場を5件も梯子しないわよ」
「あ、そうですか。あたしゃ、乙女でねえってか、ちきしょう」
「いい加減になさい、はい“ディーゼル”よ。此れ以降何か頼みたいなら、まずはお水飲みなさい。それから、何か摘まみなさいな」
「・・・・、お水は後で頼むわよ。後、店長の炒飯食べたい」
「はいはい、店長このお馬鹿に炒飯お願い」
美波と呼ばれた女性は出されたカクテルをチビチビと飲み始めた。
「店長、あたし上がるわよ」
着替え終えた先程のバーテンが、美波を背負って退勤の挨拶に店長室に顔を出していた。
「おやまぁ、美波ちゃんたらぐっすりで」
「この子の飲み代はあたしのバイト代から引いてくれて構わないから」
「はっはっは、惚れた弱みかい“
「うっさいわね、この間のお馬ちゃんのこと奥さんにチクるわよ」
“
終電も行ってしまい、美波を背負いながら歩く紀太。
アルコールの匂いに混ざった香る女性特有の香りに少しだけドキッとしながらも文句一つ言わずに歩いている。
「んぅ、ありゃ紀太。何してるの?」
寒さに気が付いたのか美波が目を覚ました。
「あんた、やっと起きたの。もう少しで家だからこのままじっとしてなさい」
紀太は背負っている美波を少しだけ揺らし、位置を調整すると再び歩き始めた。
「紀太、あたしの何がいけないのよ」
少しだけ酔いが抜けたのかブツブツと言い始める美波。
「まず、お酒の量を減らしなさいよ。そうしないとサークルの時のあんたがいつ迄経っても記憶に残りっぱなしよ」
「うっさい、オカマ」
「オネエよ。でも、あれね」
「うぅん?」
「この先も嫁の貰い手が見付からないようなら」
紀太は歩みを止め、もう一度美波を背負い直す。
「その時はあたしがあんたを貰ってあげるわ」
その一言を最後に静寂が訪れる。
「んもぅ、なんか言いなさいよ」
静寂に耐えかねて顔を後ろに向ける紀太。
そこには。
「ぐが~」
見事に爆睡している美波がいた。
「そう言うとこよ、あんたは」
数年後
「はぁ!?あんたが学校の先生?」
とあるマンションの一室、炬燵の周りに数本のビールの空き缶。
「あによ、実習だと評判よかったんだからねあたし」
目が座り完全にグビ姉化している美波におでんを入れたお椀を渡しながら、紀太は怪訝そうな目で見ている。
「あんた、ビールとか持ち込みそうで嫌よ」
「いくらあたしでもそんなことしないわよ」
「(ハッ!ノンアルコールならもしや」
「おバカ、倫理的にNGよ!!」
あの後紆余曲折を経て同棲している二人。
美波の就職が決まり、おでんパーティーで祝っていた。
「あんた、今度の休み妹ちゃんとキャンプに行くんでしょ」
「そうだけど?」
「絶対に妹ちゃんにも注意されるわよ」
「別に~、気にしませ~ん」
「その時に生徒ちゃんに会っちゃうんじゃないの」
「まさか(ケラケラケラケラ)」
「そうよね(ケラケラケラケラ)」
人はコレを“フラグ”が立ったと言う。
片平 紀太(かたひら きいた)
美波とは腐れ縁を自称する幼馴染み。
バイセクシャルで女の子で恋したのは美波だけ。
現在は、持帰りを前提にした喫茶店の店主をしている。
グビ姉化の一番の被害者でもある。