学校入学から6日が経った。今日は入学してから初めての休みだ。
やっと6日か、1日の密度がダンチだな。感覚的にはもう3週間過ぎてるよ。
この一週間は緊張の連続だった特に最初の方、1クラスの数が多いって訳じゃないんだがここ5年の俺の人間関係が狭すぎたんだよなぁ。父さんに母さんにコルレオにコルレオの両親にその使用人、の6人のみ。その中で5年過ごした。そのせいで前世の頃とは感じ方も大きく変わってしまった。前世の俺だったら学校であんなに緊張しなかっただろう。と俺は歩きながら考えた。
今俺はサカーゼと約束をした場所に向かっている。今日は彼にパン屋を紹介して貰うのだ。
あ、見えてきた。サカーゼは…………居ない。少し早め出たしな、そりゃ居ないか。俺よりいつも早くに着くコルレオに慣れすぎたな……。よし! 待つか!
目的地に到着した俺はその場に突っ立って待ち続けることにした。
大体4分後遠くに走るサカーゼの姿が見えてきた。
「お~いさかーぜ!」
「おはよ~うたるくくん!」
「おはよう!」
「じゃあ、いこう」
「そうだね!」
パン屋楽しみだな~
サカーゼに着いていくこと16分、彼は90m程先の建物を指差し言う。
「あれあれ! あのみせ!」
「あ、あれか~!」
木造で一階建てで窓がデカイ…………俺の思い描く理想のパン屋って感じだ。
しばらく歩いているとパン特有の香りが漂ってくる。
あぁ、そうだこんな香りだった。パン屋って感じだ……なんだか凄い懐かしいな。この世界に生まれ変わったのが5年前で前世で最後にパン屋に行ったのが死ぬ6年……いや、7年は前だったはずだから短くても11年ぶりなのか…………時間の流れって早いな……なんか年取った気分……いや待て? 死んでから5年も経ってるんだぞ? 俺精神的にはもうおっさんなんじゃ……
「ねぇ、たるくくん」
「……! なに!?」
考え込み過ぎて反応が遅れた! さっきのは一旦忘れて置かないと。
「このぱんのにおい……どう?」
「いいにおいだよ!」
「でしょ! ぼくもこのにおいがだいっすきなんだ!」
俺の同意に嬉しそうに返したサカーゼは店から流れてくるパンの香りをからだ一杯に吸い込み緩んだ頬を更に緩ませながら店に入っていった。そして、俺も彼に続いて店に入る。
パン屋の内装はパンが置いてある部屋から製造部屋が見れる珍しい造りになっており、置いてあるパンの数と種類は前世のパン屋に比べると少ない。
世界構成からまだ300年と少ししか経っていないのに前世のパン屋の面影があるって凄い。他のことに関しても300年の発展の仕方では無いよな……最初に来たラースの人達の教育能力が高かったのか?
「ふっふっふ、すごいでしょ」
サカーゼは誇らしげに言う。
「うん! すごいね! おいしそうだよ!」
この匂いに包まれてると涎が垂れそうだ……なんか凄くお腹が空いてきた。どれを選ぼうか? …………食べてみたいのが沢山あるな…………
「さかーぜってもうきめてるの?」
「うん、きめてるよ」
「そっか!」
悩みすぎてサカーゼを待たせるのも悪いか。最初に目についたあの黒いパンとクッキー+コロッケみたいな形のあれにしよう。他のはまた今度だ。
まずは黒いパンを取ろうとそのパンが置いてある方へ向かう。黒いパンにも種類があるようでいくつかのカゴに分けられている。
名前は……黒麦パン? 黒麦って何? って何だこの匂い! 凄い癖だな…………美味しいのこれ? う~ん、まあ食べてみないとわかないよなぁ~。一回、食べてみるか。
んで次はクッキー+コロッケみたいなの…………長いな名前は……何て書いてあんのこれ? 麦菓子は読めるけど最初の一文字が読めない。まあいいやこれからはクロッケと呼ぶ!
ん~どれどれ~匂いは…………普通だな! 美味しそうだ! 買おう! …………一枚が小さいな。4枚ぐらい買っとくか。
「きめたよ!」
「よし、じゃあおかねをはらいにいこう」
「そうだね!」
そうして、金を払い店を出た俺達はサカーゼの家に向かった。
パン食べるだけだから家に上がらせてもらうのがなんか申し訳ない感じだな。野菜売ってる所と聞いているし邪魔じゃないのだろうか? まあ前の日に決めたことだから今更言ってもサカーゼの手を煩わせることになるだけだから言わないけど。
そんなことを考えている道中サカーゼは
「おいしそうなにおい……たべ……たい」
とか漏らしながらパンの入った袋に手を伸ばしたり引っ込めたりと、自分の欲望と戦っていた。
待ちに待った新作ゲームを買って家に持って帰る道中の俺みたいだな。気持ちは分かるよ。頑張れサカーゼ!
数分歩くと
「ここがぼくのいえだよ」
と言ってサカーゼはすぐ先の八百屋っぽい感じに野菜を売ってる店を指差した。店には40過ぎたぐらいの男女と1人の少年がいた。3人とも似たような服装で多分店員だ。
あの店がサカーゼの…………てことはあの人達は彼の父さんと母さんと兄さんってことか。
俺達に彼の兄さんが気づき声を掛けてきた。
「帰ってきたかサカーゼ。あとそっちの君がタルク君だな?」
「ただいまにいちゃん!」
「そうだよ!」
「何時も弟と仲良くしてくれてありがとう」
「僕はシラル水を出すからサカーゼは彼を食卓までつれていっておいて」
「わかった」
そう返答したサカーゼは早足気味に歩いていく。そんなサカーゼに遅れぬよう俺は親にも挨拶しつつ早足で着いていった。
しばらくサカーゼの後ろを歩いていると
「ついたよ」
食卓に着いた。食卓は四角い机が1つ椅子が4つあるだけの部屋で俺達は対面する形で椅子に座った。
「よし! たべようか!」
「そうだね!」
そう言うと凄まじい速度でパンを取り出し齧り付き始めたサカーゼ。顔を幸せに歪めながらパンにがっついていく。一口の勢いは家に帰ってきた家族を出迎える犬のように凄まじい。
恐ろしい程の食いっぷり俺の食欲を刺激するね。美味しそうに食べるなぁ本当に。俺も食べ始めよう。
まずは黒いパンから食べることにした俺は袋からそのパンを取り出し大口を開けて齧りついた。
んんっ!
何これ? ちょっと酸っぱい? あとちょっと固いな。凄い独特………………けど食べていく内にこの酸っぱさがなんか癖になるしこの固さも良い。噛みきれない訳じゃないけど結構固くて、噛みきれると謎の達成感を得られるのと飲み込んだあとにお腹にズシッと来るのが"食べてる! "って感じを得られるのが素晴らしい…………あ
気づくと俺の手にはパン屑1つ残っていなかった。
あぁ、無くなった。一瞬だったな…………次はクロッケか。
「シラル水持ってきたよ」
サカーゼの兄さんが2つのコップを持ってやって来た。
「どうぞ」
彼は机にシラル水入りのコップを置き、また店の方へと戻って行く。
「ありがとう!」
「ありがと」
「どういたしまして」
気を取り直して俺はまだ袋に入れていたクロッケを取り出し食べ始める。
おお! 美味しい! コロッケのように中に何か入ってる訳じゃなく、クッキーの方に近い感じだ。あっさりめの塩味で香ばしさも感じる。食感は固めで一時期流行ったグラノーラとか言うやつみたいな感じ……だと思う。
食べ終わって顔を上げるとこっちを見て笑みを浮かべるサカーゼと目があった。
「おいしそうにたべてくれてぼくもうれしいよ」
「そうなんだ!」
返事をしたあと飲んでなかったシラル水を飲み干す。
その後はしばらく彼と話した。
「それじゃあそろそろかえるよ!」
「わかった。まちあわせのばしょまでおくっていくよ」
「ありがとう!」
サカーゼの親と兄に挨拶をしてから帰路に着く。
「おにいさんとってもいいひとだったね」
「ふふふ、そうでしょ。でもね~さいきんげんきがないんだよ」
「え! そうなの!?」
「うん、なんでかわからないけどね」
てことは君の兄さんって結構テンション高い人なの?
「そっか……てつだえることがあったらいってね。てつだうから」
出来る限りの範囲でではあるけどね。
「ありがとう」
その後は待ち合わせ場所だった所でサカーゼと別れ、家に帰った。
「ただいま!」
扉を開けて中に入ると母さんが出迎えてくれていた。
「お帰りなさい。パン、美味しかった?」
「うん! すっごいおいしかった!」
前世でも食べれなかった物が食べれて楽しかったよ。
「それなら良かったわ」
「おとうさまは?」
「修練場にいるわよ」
「わかった! ありがとうおかあさま!」
「練習頑張って」
「うん!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何時もの練習セットを終え夜になった。
パン美味しかったな。次行くときはどんな種類のパンにしようかなぁ~迷うなぁ~。とパンのことを考え続けているといつの間にか眠りについていた。