初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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メイドさんの修行は一日にして成らず。


第九話

今の僕で何を守れるのだろう。

ミノタウロスに出会って錯乱して逃げ回り、袋小路に閉じ込められた。

なんとか脱出しようとした、そのときに助けられた。

()()()()()()()()()と言うべきだろうか。

家族のために何者をも打倒する。

いつしかそれを誓ったはずだった。

 

モンスターが見えた、斬った。

影が見えた、斬った。

 

まだ温い。

ミノタウロスの攻撃に比べれば、ローズの一撃に比べれば。

今、ここに僕が生きているのは彼女のおかげだ。

毎日僕を鍛えてくれたから、教えてくれたから。

何よりも家族という存在が僕を支えた。

でなければ僕はミノタウロスの前でウジウジ泣いていただろう。

ヘスティア様に子供っぽく謝っていただろう。

強くならなきゃいけない。

何よりも、何からも家族を守るために。

 

冒険者の心得、エイナさんから教わったものではなくローズから口を酸っぱくして言われたこと。

その中の一つにダンジョンの階層を下る条件がある。

階層の地理を頭だけでなく感覚でも覚えることだ。

身体で覚えるまで決して降りてはいけないとはローズの言葉である。

僕は三階層までならば自信はあった。

しかし、呆気なく袋小路に追い詰められたのだ。

つもり、のなんとも不確定なことか。

しかしその心得を今は無視している。

頭は冷静ではない。

戦いを欲している心が頭を茹で上がらせ、冷静な判断を出来なくさせているのだろう。

それに抗うことをしない僕は愚か者だ。

今の階層は六階層。

【ウォーシャドウ】が出たことからも明らかだ。

今の状況、頭が判断を下していない気がしてならない。

僕は直情的な人間だとローズが言っていた。

苛立ち、後悔し、自分を情けなく思う。

 

「‥‥‥温い」

 

汗ひとつかいていない。

アドレナリンでも大量に分泌されているのだろうか。

モンスターの動きが手に取るように分かる。

初めて戦うはずなのに、珍しいこともあるものだ。

‥‥‥なら、いつも僕がローズにやられてることもできるかな。

 

ウォーシャドウが一匹、他には何も見えない。

まだ六階層だし、当たり前っちゃ当たり前だ。

影のようなモンスター、初心者殺しとも言われている。

苦戦なんてしていないから実感などないわけだけど。

かのモンスターの武器は爪だ。

ナイフのような鋭利な爪が初心者を切り裂くらしい。

これまで出会ったモンスターの中ではミノタウロスの次に速く、鋭い。

しかしまあ、攻めてきてくれるなら楽だ。

 

「フンッ!」

 

「━━━!?」

 

ウォーシャドウの爪を手ぶらであった左手で弾く。

思い切り力を込めた弾き(パリィ)である。

いつも、どんなに隙をついてもこれでローズに流されてノックアウトさせられるのだ。

なるほど、決まれば気分がいい。

いつもの気持ち悪いくらいの笑顔が納得できた。

 

そして、体勢を崩したウォーシャドウの首を落とせば戦闘は終了。

なんとも呆気ないものであった。

そして、魔石を踏み砕く。

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティア様は私を見送った。

行かせたくなかったようだけど、ベル君のためだと言い聞かせていたみたい。

主神(おや)の気持ちは分からないがヘスティア様の気持ちは分かっているつもりだ。

しかし、急ぐ気にはなれない。

 

空には月がまん丸と輝いている。

少しも欠けていない、満月だ。

あの月はなんで浮かんでいるのだろうか。

そこに在るからだ。

在ることに理由は必要ないし、詳しい原理を説明されても分からない。

ただそこに在るということを理解していればそれでいいだろう。

私が存在している理由なんて分からないが、生きている理由はヘスティア様を守るためだ。

ただそれだけのために生きるだけだ。

 

「‥‥‥」

 

少し目を瞑る。

その行為にはなんの意味もない。

少し考えを巡らせるだけだ。

 

無論、ベル君のことである。

彼がどこにいるかは分からない。

メイドさん殺法の中に人を見つける技は一つとして存在しないのだ。

ならば、と大太刀を見る。

‥‥‥妙案を思いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラーアントというモンスターがいる。

七階層から生まれるでっかい蟻だ。

ウォーシャドウと同じく厄介なモンスターとして数えられる。

何故かというと、上層の中では上位の装甲とキラーアント特有の性質があるからだ。

キラーアントは瀕死になるととあるフェロモンを出す。

仲間を呼び寄せるそれはキラーアントに囲まれることを意味する。

普通の新人冒険者では死は確実なものとなるその状況。

一体倒した時に妙案というか、無謀な策を思いついた。

正直、これをするくらいならば下に降りた方が効率的だと思うそんな方法。

 

「さすがに多いなぁ」

 

他人事のような感想が口から出た。

苦手そうな人は卒倒しそうな光景である。

無数の赤い瞳と真っ黒な装甲、そして鳴き声。

不快感しかもたらさない、そんなアリ共の大軍。

魔法もなく、武器は新人の打ったロングソードのみ。

 

「‥‥‥よし!」

 

腹を括る。

絶望の二文字など既に頭から消え去っていた。

なんだか気分が高揚して、いい気分だ。

 

「ギャッ!?」

 

メイドさん殺法とは、血刃と神殺しだけではない。

あの二つは元々無いはずのものだとローズが言っていた。

元々メイドさん殺法とは、メイドさんがメイドさんとしてのスキルアップとして確立した戦闘技術と奉仕技術の総称である。

それに魔法に派生した記録などなかった。

そもそも、メイドさん殺法に関する本は見つからなかっただけだが、ローズによるとないはずのものらしい。

無論のこと、僕にはまだそのほとんどは使えない。

 

「五匹目」

 

「グギャ!?」

 

僕は敏捷と器用のステイタスの伸びが異常に高い。

魔力は未だゼロだが、力や耐久もそれなりに伸びている。

それらの追随を許さないくらいには敏捷と器用が高すぎるのだ。

器用が高いからこそ、キラーアントの関節の辺りに剣をねじこめ、ウォーシャドウに弾き(パリィ)ができた。

そして、敏捷が高いとできることはなにか。

 

「メイドさん殺法其の参 残像。なんちゃって」

 

無論、メイドさん特有の歩法を使っているだけだ。

確かメイドさん殺法其の参 メイドさん歩きだったか。

メイドさん歩きとは埃を立てず、料理の盛りつけを崩さず、音も立てずに超高速に移動する神業のことだ。

だから分身しているように見えるらしい、ローズのそんな姿見たことがないから分からないが。

メイドさんならばこれくらいはできないといけないので仕方ないっちゃ仕方ないのだろう。

 

「‥‥‥」

 

周りに魔石とドロップアイテムが落ちているこの惨状も仕方ない。

メイドさんも異常なれば、メイドさんを目指す不肖な僕もまたその道に足を突っ込んでいる。

 

「不肖なる我が身に祝福を」

 

神様とメイドさんの始祖にお祈りを捧げる。

ローズは分からないけど僕にとっては日課だ。

おまじない、これをすることによってなんとなく良い気分になれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メイドさん殺法はまだまだ種類があります。
其の終も元々は神殺しではなかったですしね。
真の其の終があるのです。
ベル君が強すぎるって?
だってファミリア加入後二日くらいでブーストかかってるもん、仕方ないじゃないか。
器用と敏捷はすでに限界突破直前ですし。

ここで書くのは無粋かもですが一つ。
指摘は感想でしていただけるとありがたいです。
評価でやられると返信が出来ないので。
てかね、ローズの話し方に突っ込まれるとは思ってなかった(もう何回か突っ込まれてるけど)
今のローズの話し方には前世が絡んでくるので安易には話せないのです。
過剰とか言われても直せないし、評価でやられると逃げてるみたいな感じで不愉快です。
マジで設定頑張って考えてるんだからそこ突っ込まんといてや。
元々、この幼女は寿命全うしてるんですよ。
元々ジジイなんだよォッッ!!
でも過去は軽い方だと思うよ?

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