初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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ごめんなさい(土下座)


第十一話

メイドさんとは何ぞや。

鬼となり敵の首を狩るのも役目、主の約定を果たすのもまた務め。

メイドさんとは冥土惨とも書くことができる。

完全な当て字ではあるけれど、あながち間違っているものでもない。

ヘスティア様はベル君と共に寝落ちしてしまった。

帰る時にベル君が目を覚まし、歩いて帰れると言い張ったので降ろしてあげたのだ。

ヘスティア様は帰ってきたベル君に飛びかかりをして、そのまま寝てしまった。

ベル君に助けを乞う目をされたがベッドに投げて気絶させておいた。

疲れてるんだから寝ればいいのだ。

机の上には一升瓶が空であった。

飲んだことは丸わかりでそれも一升瓶を丸ごととは、とヘスティア様を見る。

顔が赤い。

そんなお顔も良いものなのだが。

 

「‥‥‥二週間はお酒は禁止だな」

 

静かな決意を込めて呟く。

お酒は嫌いだ、それを呑まれる者も嫌いだ。

節制してただきたい、好きなのはいいけど一気に一升瓶はいただけない。

ザルならいいけどヘスティア様は至って並程度の耐性しかないのだから。

 

それはそれとして、そろそろ魔法が解ける頃だろうか。

想像以上にダンジョンにいた時間は短かったらしい。

一時間、帰ってきても余裕はあった。

 

‥‥‥一人。

ヘスティア様とベル君は眠ってしまって私は一人起きている。

一人は嫌だ、一人にはなりたくない。

 

『メイドだと?メイドさんなんだよこれは』

 

『んぅ〜、やっぱりメイドさんはいいなぁ』

 

「煩い」

 

やっぱり一人になると頭の中が騒がしくなる。

やることがある時はいいが、退屈な時に限ってこれだ。

頭の中を渦巻くように不快な男の声が駆け回っている。

何かの記憶のように何かが交錯しているのだ。

笑い声と悩ましそうな声が頭の中にある。

別の自分がいるような感じだ。

吐き気がする。

 

ベッドの方を見ると、ベル君とヘスティア様の二人が健やかに寝ている。

その寝顔はさながら天使、いや女神だろうか。

ヘスティア様はモノホンの女神だけど。

頬が綻んで、二ヘラァとだらしない笑顔になっていることは簡単に分かる。

一人の時にしかできないことだ、しっかり観察するとしよう。

いつもの仕返しである。

頭の中を渦巻く何かは感じられなくなった。

 

「ふみゅう」

 

「かみしゃまぁ〜」

 

か わ い い ! !

いやいや、これ以上に可愛いものがこの世に存在するのだろうか。

いやしない、する訳がない。

フレイヤ様の魅了に引っかかりかけたのが恥だと思うくらいには可愛い。

なにかに保存したいが、この場に画材はない。

‥‥‥仕方ないので目に焼きつけるとしようか。

 

「ローズくぅん、どこにもいかないでおくれ〜」

 

「ローズぅ、僕はみんなを守りたいんだよぅ」

 

え、泣いていいですか。

寝言で私のこと言ってるんですが!

最高なんですが!

愛されてるんだなぁ、いやはや幸せ者ですわこれは。

アポロンなんていう神様とは違いますねヘスティア様はやっぱり。

いつもヘスティア様は私たちのことを思ってくれて、ベル君は私たちのことを守りたいと願ってくれてて。

だからこそのスキルなんですねぇ。

スキル名見た時には泣きかけたもの。

メイドさんそのものへの憧れと私たちへの思い。

英雄になってくれよ、ベル君。

そんなことを思ったくらいだからベル君は凄い。

 

ヘスティア様も私もベル君を支え、ベル君に支えられているのだ。

 

メイドさん殺法秘伝書という本がある。

まだベル君には見せたことも教えたこともないものだ。

作者は不詳、そんなに厚くはない。

メイドさん殺法に種類は豊富にある。

しかし、其の壱や其の弐なんて種別は存在しない。

私が勝手に決めているだけである。

奥義は存在するが、私でも会得はできてはいない。

メイドさんの心得から始まり、奉仕術や戦闘術、暗殺術に続いていく。

幻術は後半、剣術などの武術は前半にある。

殆どを占めているのは戦闘術でも暗殺術でもなく、奉仕術だ。

本来のメイドさんの役目とはそれなのだから当然のことである。

それらから派生したのがその他のことである。

だから、メイドさん殺法という名前なのだ。

血刃や神殺しは精神のうち、序文の中に文字としては存在している。

 

神を殺すことも厭わず、主が為に血も骨も全てを捧げよ。

途中で曲げることなど有り得ることなく、主のために全てを為せ。

 

要約するとこんな感じだ。

本来ならばメイドさんに休息は必要ない。

寝ず、休まず、主のために尽力するのがメイドさんの務めである。

それに眠気がないのもある。

精神的な疲れも肉体的な疲れもヘスティア様とベル君の寝顔を見て吹っ飛んだからだと思われる。

元々精神的な疲れは無いに等しかったのは内緒話だ。

 

「なにしよっかなー」

 

品質は中くらいのソファに腰を沈めて考える。

家事は一通り、バイトに出かける前に全て終わらせているから、正直することがない。

ともすればどうするか、ゆっくりと背も沈めて考える。

 

「あっ‥‥‥べるの」

 

メイド服を仕立てなければ。

生地は、私の分の残りがある。

作りかたは、何故か心得ている。

採寸は、見たら分かる。

道具も当然のように別室に用意されている。

既にメイド服を定期的に服屋さんに卸している私に隙はない。

 

ベル君はいずれメイドさんになる。

ならば、今から作らねばなった時に困るというものだ。

 

「おとこのこもうける」

 

そんなことは常識だ。

男の娘もまた、需要がある。

オカマやオネェにも需要があるようにちんちんがある女の子もいていいのである。

その中でも初々しく、恥じらいもあれば更に高ポイント。

ベル君のメイドさんポイントは日に日に上がり続けているのだ。

いずれランクアップの時にメイドさんの称号を与えられる日も近いだろう。

その時はステイタスがバグるけど仕方ないよね。

メイドさんだもの。

 

私のステイタスが普段はマトモであるのは私がそうしているからだ。

神様に見られたらバレるかもだが、普通ならばバレない。

事実としてエイナさんにはバレなかった。

流石にLvがメイドさんになってたのはヤバかったのだ。

それとやってみたらできたのが悪い。

おそらくは【奉仕の精神(メイドさんメンタル)】によるものだと思う。

ステイタスの書き換え、それも現在の能力をそのステイタスに沿ったものにできる。

そこから(数値上だけ)成長もさせることが出来るなんて禁忌を犯していないか心配になるくらいだ。

いずれはステイタスを解放しなければならないと思うとヘスティア様の胃が心配である。

 

ベル君のメイドさん魂を助けるようなメイド服。

ベル君の好みを思い出して生地を選び、デザインを考える。

ベル君に似合うのはやはり王道の黒か。

なんでも似合うだろうけど、やっぱり黒にしよう。

となると、クラシックスタイルかミニスカかそれともフリフリか。

リボンは‥‥‥、付けようそうしよう。

ミニスカとロングスカートはどちらも用意して、フリフリはロングスカートにする。

ミニスカは、装飾少なめの動きやすい感じにした方がいいか。

となると問題は下着になるだろうか。

ベル君のち○○んの大きさは知らないからどうしよう。

そもそも○んち○に収まる大きさなのかも疑わしいところだけど、男の娘らしい慎ましやかなち○ち○だったらいいなぁ。

 

「どろわにしよう」

 

とするとミニスカの可能性は完全に消える。

だってドロワーズが見えてしまうから。

ミニスカより長くてロングスカートより短い。

 

とりあえずドロワーズは買わなければならないだろう。

流石に下着は作れない。

お肌に優しいものにしたいし、服と下着では結構違うものである。

 

ペンと羊皮紙を取り出す。

メイドさんは絵も描けるのだ。

デザインを軽く描くくらいならば問題は無い。

ベル君をどう着飾ればいいのか、オシャレに不得手ではあるが頑張るとしよう。

 

『いつまで連絡来るんだよ。鬱陶しい』

 

『こちとらメイドさん描いてて忙しいんだ』

 

『あー、家族欲しいなぁー!』

 

「‥‥‥うるさい」

 

それを邪魔してくる頭の声は一人の時に聞こえてくるものである。

思えば最近は一人でいることはなかった。

ヘスティア様と二人きりだった時もダンジョン探索の時や帰り道くらいだった。

雑念を振り払ってベル君のためだけの服を仕立てたいのに集中ができなくなる。

全く身に覚えのない、そんな記憶を聞いているようであった。

 

「‥‥‥ああ!もうっ!」

 

ずぅっと、頭の中で同じ男の声が反復している。

笑っている声もあれば苦しそうな声もあって、少しずつSAN値が削られていく音も聞こえてくる。

私の中に何かがいるならば、明らかに故意にやっている。

この症状が起き始めたのは一年半だ。

夢だっただろうか、男の一生が走馬灯のように流れていく、そんな夢を見た夜の後であった。

それから、日常がめくるめく変わっていったのだ。

知識、技、そして手元にあったメイドさん殺法秘伝書。

それまでは戦闘しかできなかった私が家事を完璧に行えるようになった。

そしてメイドさん殺法を扱うことができた。

その時に私の中に何かが入ってきた、そう思うのが正しいだろう。

思えばこんな思考もできていなかったように思える。

 

「‥‥‥てんせい、いやひょうい?」

 

知識にあるこの言葉。

転生、そして憑依、この状態が適当であると感じる。

 

「ローズ?」

 

扉が開いてベル君の声が聞こえた。

 

「もうあさ?」

 

「多分。何してるの?」

 

「やぼよー」

 

「野暮用?」

 

「うん」

 

「そっか。ご飯できてるよ」

 

「ぬっ」

 

時間かけすぎた。

ベル君が起きている、ヘスティア様は起きていないかな。

急いで時計を確認すると、もう八時だ。

そりゃベル君はもう起きている時間帯だろう。

 

「今日って神様はバイト休み?」

 

「ちがうよ。おべんとうつくった?」

 

「まだ。そろそろヤバい?」

 

「やば、いね。おべんとうつくるからかみさまおこして」

 

「了解っ!」

 

メイドさんは主の生活を全てにおいて把握しなければならない。

故にヘスティア様の生活習慣などは完璧に把握しているのだ。

それは当たり前のことであり、メイドさんとしてはやるべきことの一つだ。

簡単にお弁当は作ってしまおうと台所に入る。

サンドウィッチでもいいだろうか、ヘスティア様なら喜んでくれるだろう。

 

『も、もうそんな時間なのかい!?』

 

『そうですよ!急いでください神様!』

 

『分かった!』

 

『ご飯はテーブルの上に!お弁当もローズが作ってくれてますから!』

 

『ありがとうッ!!』

 

さっくりとサンドウィッチを作り終える。

パンで具材を挟むだけ、それも昨日のバイトで貰って帰ってきたものを使っただけだ。

そしてお弁当箱に入れて包めば完了。

 

「おべんとうです!」

 

「よし、ありがとう!じゃあ行ってくる!」

 

「「行ってらっしゃいませ!」」

 

ヘスティアはコートを羽織って私からお弁当を受け取るとそのまま走り去っていった。

始業時間にはギリギリ、いや多分遅刻だろう。

こっぴどく叱られるだろうけど、そこは起きられなかったヘスティア様の過失だ。

甘んじて受けてもらおう。

 

「ふぅ。僕達もご飯食べようか」

 

「うん。きょうはだんじょんやすみね」

 

「りょーかい」

 

ベル君とは初めての二人きりの朝食。

そこで話したのは今日の予定のことだ。

現在、ベル君には武器がない状態である。

ナイフはミノタウロスと戦って紛失、ロングソードは私がダメにしてしまった。

だから急いで準備しなければならないのだが、折角なので特注(オーダーメイド)で作ってもらうことを提案する。

依頼するのは無論、ヴェルフだ。

ベル君は喜んでくれたが、一つ懸念点を申し出てくれた。

金のことであるが、問題はない。

ミノタウロスの魔石のおかげで結構潤っているし、ここでの出費が今のところほとんどがベル君関連なのでここ数年の貯金でなんとかなるのだ。

生活費は結構余裕で賄えている。

 

ヴェルフの工房は何とも質素な小屋である。

【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶師一人につき、一つずつ工房が与えられる。

【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師専用のエリアもあるくらいだ。

鍛冶系最大手の凄さが感じられる。

ヴェルフはその中でも末端、レベル1で【鍛冶】の発展アビリティを覚えていない新人(ルーキー)である。

レベル1の中でも鍛冶の腕は良く、将来有望と思われるのだがまだランクアップしていないのは彼自身に問題が有る。

 

【魔剣】と聞いて思い浮かぶものはなんかすごいやつ、ということくらいだ。

世間一般的には魔法を使えない人でも魔法を放つことのできる道具、という認識らしい。

耐久度がなくなると跡形もなく砕け散るという特性もある。

使用者の精神力(マインド)を消費して放てばいいだろう、と思ったんだがそんな魔剣はまだ存在しないらしい。

まあ、どちらにしても縁遠い存在だと思っていた。

そんな縁遠い魔剣だが、その中でも一番凄いのは【クロッゾの魔剣】というもの。

森を焼き、海を干上がらせるんだったか、よく覚えていないのだが物凄い魔剣らしい。

彼の姓はクロッゾ、そこで少し察した。

彼は自分の血を憎んでいる、とまではいかないが厄介に思っているのだろう。

皆、自分の腕ではなく血によって生み出された魔剣を欲している。

そのことに拗ねているのだろう。

だから見返したいと槌を振るっている。

だから、自分の腕を買った私に色々と作ってくれるのだ。

使ってたら跡形もなく壊れるなんてコスパがなってない。

まだ欲しがる段階ではないし、頼ってなどいられないのだ。

腐りたくないし。

 

そんな拗らせた青年のヴェルフは普段はいい兄貴分である。

魔剣のことになると顔色を変えるので拗らせ鍛冶師の名前は彼のためにあると思う。

 

「‥‥‥酷いこと言い過ぎじゃない?」

 

「じじつだもん」

 

ヴェルフについての説明を聞いていたベル君は苦笑して苦言を呈してきた。

彼に関することならばこれが事実なのだから仕方ない。

でないと私に包丁やら作ってくれないだろう。

大太刀の整備はお願いしている。

他の武器を試してみようとはしたが、やっぱり私には無銘が一番だった。

 

「たのもー!」

 

扉はノックせずに大声を張り上げる。

ヴェルフは集中してる時が多いのでノック程度では反応を返してくれない時が多いからだ。

中からは槌の振るう音は聞こえない。

少し待つとギィィ、と扉が開く。

 

「ローズか。そっちのは‥‥新入りか?」

 

「うん。せいびとべるのぶきつくって」

 

大太刀を鞘ごと抜いてヴェルフに渡す。

 

「ん、取り敢えず入ってくれ」

 

「はーい」

 

「は、はい!」

 

ふわぁ、と欠伸をしながら大太刀を受け取って中に入ることを促してくれる。

素直に受け取って中に入り、ベル君は緊張しながら中に入る。

てか、さっきまで寝ていたらしい。

髪もボサボサだし、なんか臭いし。

 

「とりあえずさ」

 

「なんだ?」

 

「しゃわーでもあびてきてよ」

 

「あ?あー、」

 

「なんにち?」

 

「‥‥‥三日ぐらい?」

 

「はいってこい」

 

「あ、ああ。分かったよ」

 

三日は嘘だ。

ご飯は食べていただろうけど、それ以外はやってないなこやつ。

職人肌ってのは困るねぇ、それでいい作品ができるならば我慢はするが。

 

「きになる?」

 

「う、うん」

 

緊張しながらも工房に並べられたヴェルフの作品群を見回しているベル君。

目を輝かせて忙しなく目線を移している。

テンション上がるのは何となく理解はできる。

ヴェルフはいい鍛冶師だ。

これから成長すれば更に良い作品を作るだろう。

彼の目指す高みは途方もない。

全く新しい境地に辿り着くことも予想は易い。

彼は生粋の職人だ、だから信用出来る。

 

「がまん」

 

「うん」

 

「きいてる?」

 

「うん」

 

あ、武器に目を奪われている。

確かにベル君は【ヘファイストス・ファミリア】の支店のショーケースをまじまじと見つめていたなぁ。

やっぱり伝説の剣とかに憧れる口なのだろう。

子供というか男の子というか、可愛いものだ。

 

釣られて私も並べられている武器を見る。

雑多に並べられてはいるが、質が落ちるような並べ方はされていない。

長剣に特大剣、それにナイフなど、ヴェルフの作品群が見えやすい位置にある。

使ってみたい、とは思わないけど見事だとは思う。

 

「すまねぇな、待たせた」

 

「まってない」

 

「そうか?ならいいんだがな」

 

タオルを首元に通し、髪は濡れている。

シャワーを浴びたばかり、そんなヴェルフは男前であった。

男らしい顔も見ていて眼福なものである。

 

「取り敢えず無銘だが‥‥‥、そんなに時間はかからないな」

 

「どれくらい?」

 

「この程度なら、すぐ終わる。ほとんど使ってないだろ」

 

ベル君と戦った時だけだ。

それ以外はすべて素手で済ませている。

 

「うん」

 

「だよな。で、そっちの名前は?」

 

「ベル・クラネルです!」

 

「ならベルでいいな」

 

「はい!」

 

ヴェルフは優しい目線をベル君を向けている。

確かにベル君はなにか初々しいし、目をキラキラと輝かせて可愛い。

それから、ベル君とヴェルフは武器の打ち合わせをしていく。

 

「そういえば」

 

「ん、なんだ?」

 

「どうしたの?」

 

「てつやしてたならなにうってたかなって」

 

一週間くらい徹夜していたのだろう。

それならば余程の力作なのだろう、それが気になった。

 

「それはだなぁ、ベルには合わないと思うぞ?」

 

「どんなやつですか!?」

 

「‥‥‥見るだけだぞ?」

 

「はい!!」

 

うん、私も気になっていたから助かったぞベル君。

ヴェルフは純粋な瞳に負けたようで苦笑しながら奥に引っ込む。

すぐに持ってきてくれたのは私の大太刀より大きい特大剣が見えた。

 

「でっか」

 

「大きい!」

 

「だろ?気合入れすぎてなぁ」

 

うん、私より大きいなその特大剣。

ヴェルフの得物にもできないらしい。

刀身ですら私よりかなり大きいし、柄は普通だが特大剣だから長めである。

全部で私の2倍以上、デカすぎると思うんですが。

使えるとすればアマゾネスかドワーフくらい?

 

「持ってみるか?」

 

「はい!」

 

ヴェルフから特大剣をベル君が手渡される。

ぐぅっ、と少し苦悶の声を出してベル君は足を踏ん張った。

 

「大丈夫か?」

 

「はいっ、なんとか‥‥‥」

 

肩に担ぐようにして何とか持ち上げる。

超重武器に違わない重量と威力を誇っているのだろう。

 

「たしかに、おもそう」

 

「ふぅ、重いよこれ」

 

「俺も振り回せないからなぁ」

 

「だれむけなのこれ」

 

「分からん!」

 

変なところで思い切りのいいヴェルフ。

ここで重戦士は一人として存在しない。

デカい得物は私が使うものの、私はどっちかというとテクニック系ですし。

 

「ローズは使えるか?」

 

「あ、使えそう」

 

「えっ、」

 

使えるかね、てか幼女にそんなの持たせようとするかね君達。

 

「かして」

 

「どうぞ!」

 

ここに来てからずっと目が輝いてるねベル君や。

差し出された特大剣は、震えている。

持っているだけでも辛いのだろう、さっさと受け取ることにする。

 

「うおっ」

 

「どう?」

 

「ぬぅぅ、もてる」

 

意外と持てるもの、いや案外軽くね?

少なくともベル君が苦しそうな声を出すくらいには重くは思えない。

 

「いや、かるくない?」

 

「え、軽くないよ」

 

「重いぞそれ」

 

「は?」

 

二人が嘘をつくような性格ではないことは知っている。

ということは私が怪力なだけなんですかね。

怪力幼女、属性がまた増えたぞ。

でもなんだか気に入ったな、両腕で振るう剣というのもいい。

 

「いくら?」

 

「もらってくれるのか?ならタダでいいぞ」

 

「ならもらう」

 

特に名前は知らない特大剣を手に入れた!

竜の首も落とせそうだなぁ、そうだ。

竜の特大剣でいいや、名前。

 

「そうだ、名前はな‥‥‥」

 

「もうきめた」

 

「えっ、いや名前はな」

 

「ゔぇるふのなづけはやだ」

 

「‥‥‥すまん」

 

「え、えぇっと」

 

ベル君もヴェルフの名付けセンスは知っている。

それでものすごく凹んでいるヴェルフを見ていても慰めようとして言葉が浮かばないでいるようだ。

 

「‥‥‥よぅし、ベル!武器の打ち合わせやるか!」

 

「そ、そうだね!」

 

「かんばえ〜」

 

いいロングソードとナイフを注文して、いい感じの大剣を借りましたとさ。

よかったね、ベル君!

 

「いや終わらないからね」

 

「え?」

 

「なに独り言言ってたのさ。帰るよ?」

 

「はーい」

 

「この剣の名前は騎士の大剣だからね」

 

「おもしろみないねー」

 

「そんなの求めてないからねっ!?」

 

「へっ」

 

「いや何その顔。なんか怖い」

 

「かわいいだるるぉ!?」

 

「何この子怖い」

 

漫才の練習である。

決して帰り道の日常会話ではない。

教会の裏手でやっている漫才の練習である。

なんでかと言われると、いずれ使うことになるからだろうか。

宴会の時に何もしないのはなんだか心苦しいからね。

あ、嘘である。

今はベッドにベル君が横たわってステイタスを更新しているところだ。

さっきの会話は帰り道の会話だ。

ちょっと知識を探ったらベル君を驚かせそうだったので使ってみただけである。

疲れたのでもうしたくない。

 

「‥‥‥」

 

「どうしました?」

 

「いや、君のステイタスが相変わらずおかしくてね」

 

「どんなかんじですか?」

 

「今写すから待っててね、二人とも」

 

神聖文字(ヒエログリフ)読めるので直読みでもいいんだが、一緒に見るというのは兄妹感があっていいものだ。

 

ベル・クラネル

 

Lv 1

 

「力」 B 758

 

「耐久」 D 596

 

「器用」 SSS 1486

 

「敏捷」 SSS 1726

 

「冥土」 A 895

 

魔法

 

スキル

 

家族愛護(メイドさんになる)】早熟する。メイドさんになると消滅。

 




この時点でベル君のステイタスがバグっているのだ。
始めて数日でスキル発現したからね、仕方ないね。
ローズと前世のジジイは違います。
元々人格が違いましたが、今はどうなんだろうなって。
記憶の混濁と頭の中で流れる走馬灯。
知識は共有されている。
混じりあってはいるけれどまだ完全には合わさっていない。
こんな感じ?
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