初めて仕えた神様は 作:メイドさん大好き
少し昔のお話である。
大太刀を携えた幼女はどこで生まれたのだろうか。
どこにもそんな文献も資料も残っていない。
彼女は数多くある被造物の一人だ。
【人形】と呼ばれるうちの一人であり、【博士】に生み出された人間によく似た【
【人形】とは擬似的な不老不死のための過程で生み出され、【賢者の石】を生み出すための生贄にも使われた。
【賢者の石】とは、不老不死のための最短の手段であるが、時間を無限にかけるのであれば先に【不老の秘法】を見つける方が確実だ。
神々が降りてきたこの千年間で変わったが【英雄の時代】以前ならば【不老の秘法】を見つけるのは比較的にいえば易かった。
三千年、それが【博士】が生きた年数である。
今も尚生きているかどうかなどは分からないが、少なくとも三千年は生きているだろう。
【博士】が【人形】を捨てたのは何年前だったか。
二年半前であり、最後の人形が生まれたのはもう十年は前である。
【不老の秘法】を手に入れた【博士】にとってはもう不要な存在であった。
しかし、彼女に母性が生まれ始めたのは幸か不幸か。
【博士】は完璧な人形を求めた。
成長し自我を持つ
作れども、作れども、完成するのは成長をしない不老の人形。
不老不死となった【博士】には時間など無限にあったのだ。
だから、傍らに【人形】らを置いて完璧なものを作ろうとした。
死ねない、とは苦痛なものである。
いつまで経っても完成しない研究、不老不死の肉体ではどこに行っても気味悪がられる。
故に彼女は【
ただ、利用するためだけだ。
終われば皆殺しにすればいいと考えていた。
‥‥‥ついには完成しなかった。
最後まで傍らにいた【人形】は記憶を封じられて捨てられた。
痣は最後まで抵抗した証である。
【博士】がどこに行ったかなど分からない。
分かるのは【博士】は仕事に集中してはいるが、良い母親であったことだ。
【人形】たちと仲良く暮らしていた風景は封じられた記憶の中で見えている。
そんな様子を見ているだけでも和んでくるくらいだ。
まあ、定期的に人攫って人形の材料にしたり、実験台にしたりとマッドなところはあったみたいでそこはドン引きであったが。
何故【博士】が私達を捨てたのか。
最後に見た光景で【博士】は泣いていた。
戦って【博士】が勝利をして眠らせ、記憶を封じたのだろう。
私がその光景を見られる理由も分からない。
恐らく【博士】が何か小細工でもしたのだろう。
世界に干渉する研究も行っていたみたいだし。
面倒を見切れなくなったから?
それとも自分が枷になるとでも思ったのだろうか。
「‥‥‥記憶はいじられてないんだよな」
完全に人形視点の記憶、なにかいじられている感じはしない。
壊れた機械のようにバグっている箇所もなかった。
【博士】は余程優秀だったようである。
見るに私達は【博士】の最後の作品。
恐らく【博士】は人形達を実の娘を見る目で見ていたことだろう。
「私は親愛を欲していた。人形は博士に依存していた。‥‥‥どう考えても呼ばれたな」
人形の為に【博士】によって魂が引き寄せられた。
そう考えるのが正しいと思われる。
記憶が無くなった人形が暴走するのは想像に難くない。
ヘスティア様、という存在によって半年はもったがそれ以降は怪しかった。
時間がかかったのか、狙ったのか分からないが魂を呼び寄せてこの身体を補わせたというのが正しいところだろうか。
‥‥‥どこで何をしているのだろう、ぶん殴りたい。
こんな不器用な感じの優しさなんていらないから普通に世話してやれや。
私にとっちゃ結構幸せだけど人形ちゃんが報われんわ。
普通に預けに来てから旅にでもなんでも出たらいいのに。
あれか【元
HAHAHA、死ねよ。
あ、死ねないか。
まあ、あの糞溜めよりは遥かにマシではあるが。
「‥‥‥ん、そろそろか」
ポチポチと手元にあるリモコンを操作する。
すると、テレビの画面が変わってオラリオの街並みが一人称で映し出された。
人形ちゃんの目から見える景色を共有しているのだ。
私はソファに背を預けてゆったりとする。
酔いやすいかもしれないが、意識だけの私には関係のないことだ。
ベル君と手を繋いで歩く。
傍から見たら兄と妹的な感じで見えるのだろうか。
さっきから屋台で買い物をするとおまけを貰える。
いつものことだけれど。
「しるさんいないねー」
「そんなに時間は経ってないって言ってたけど‥‥‥、どこなんだろうね」
ベル君と一緒にシルさんを探している。
理由は【豊饒の女主人】の同僚に頼まれたからだ。
シルさんが【
「もぐもぐ、なんだいだね」
「そうだね。もぐもぐ」
クレープを頬張りながら歩いている。
甘くて美味しい、でもヘスティア様のじゃが丸くんには勝てない。
それでもお祭りの時に屋台で食べる味は格別なものである。
ヘスティア様にはかなわないけど。
「闘技場の方に歩いていくんだよね?」
「たぶん、しるさんはそっちにいってる」
「やっぱりメインイベントだから見なきゃだよねぇ」
私たちが向かっているのは【
その中で【ガネーシャ・ファミリア】の団員たちがダンジョンから連れてきたモンスターを
一回も見たことはないけれど。
見たら楽しめると思うけれど、ヘスティア様がいないと楽しめない気がする。
今はベル君のおかげで楽しめているが、やっぱり物足りない。
「あ、やきそば」
「買っちゃう?」
「むむむ」
シルさんを探す、ヘスティア様を探す、屋台で色々食べる。
私たちにはこの三つの目的が今のところある。
闘技場に入るのは二人を見つけてからだ。
「かう!かみさまのぶんも」
「おっ、それいいね。じゃあ三つか」
「そうなる」
私はベル君とヘスティア様を驚かせる程度には食べる。
屋台で買える程度の焼きそばなど簡単に完食できるのだ。
ということで、ベル君にあげたお祭り用のお小遣いで焼きそばを買う。
例のごとく焼きそばを一つおまけしてもらった。
食えるから問題ないので後でヘスティア様にあーんしてもらうことにしよう。
ズルズルと麺を啜って口に入れる。
一般的なソース焼きそばだ、
シーフード系統が美味しいのだから当たり前だろう。
「うん、こんどつくろう」
「これは、新しい。僕にも教えてくれる?」
「おーけー。がんばろう」
「楽しみ」
買い食いは罪の味がプラスされるとよく言うが、いいものだ。
夢の中で私に自慢してやるとしようか、夢だとなにか作れるのだろうか。
ならば作ってやるとしよう。
味があるかどうかは分からないけれど、感謝してくれることを願う。
闘技場までの道、メインストリートは都市外の観光客やカップル、冒険者で溢れている。
片手にじゃが丸くんやクレープ、中には焼きそばやお好み焼きなどゆったりしている様が見えている。
喧嘩をしている様子は中々みえない。
治安は悪い方のはずなのだが珍しいこともあるものだ。
そんな中で私服のシルさんを探す。
私服のシルさんは知っているし、たまに一緒に出かけてもいる。
だから分かるはずなのだが、シルさんは今のところ見えない。
「‥‥‥あ!」
「どうしたの?」
「分かんない?あっち!」
「えっと、いた!」
遠くに見えるツインテール。
特徴的な見た目は人混みの中でも目立っていた。
そうでなくともヘスティア様の位置を見つけるのは容易い。
何故かはメイドさんパワーが解決してくれるからだ。
それ以外に理由などはない。
「ローズ君!ベル君!」
「かみさま!」
「神様!」
数日間いなくなっていた最愛の人がそこにいる。
数日とはいえど寂しかったことには違いない。
だから、ヘスティア様に会った時にこれまでのことが爆発するのは当然のこと。
それはベル君も同じだったようで二人一緒に駆け出した。
「久しぶりだね!」
「さみしかったです!」
「そうですよ!無理なんてしてないですよね!?」
「してないさ!仮眠してたからね!」
無理してたとしか思えなくなってくる。
ヘスティア様の顔、よく見たら隈が少し見えた。
ベル君のためのナイフをヘファイストス様と作っていたのだろう。
見たところ徹夜していたらしい。
「おまつりをまわりましょう!」
まあ、休ませるなんてぬるいことはしない。
ヘスティア様には私たちと一緒にお祭りを一緒に回ってもらう。
それは絶対だ、ヘスティア様の責務である。
「そうだね!って先にもう買ってるじゃないか」
「おそいからわるいんです」
「そうですよー」
「むむむ、ひとつ貰えるかい?」
「どうぞー」
「ありがとうっ」
ヘスティア様は私から焼きそばを受け取るともぐもぐと食べ始める。
無理のないように口に含んで飲み込んでいく。
うむ、何日かでも見てなかったら余計に可愛く見える。
良きことだ。
「美味しいねぇ。お祭り補正かな」
「あとわたしたちほせいです」
「それ自分で言う?」
「事実だから仕方ないね。君たちと一緒ならなんだって平気さ」
美味しー、とリズム良く食べていき、ヘスティア様は直ぐに焼きそばを完食する。
のどにつまらせることはなかったようだ。
ほっと息を撫で下ろす。
「よーし、お祭りを楽しもうか!」
「あ、神様。その前にやらなきゃいけないことがあって」
「えっ」
「しるさんをさがなきゃなんです」
「あの給仕君をかい?」
「「はい」」
「んー、一応理由を聞いていいかな」
当然だが、ヘスティア様は説明を求める。
まあ、どんな説明をしてもヘスティア様は受け入れることだろう。
「しるさんがおさいふをわすれたみたいで」
「探して渡さなきゃ困るんですよね」
「なら渡してあげなきゃね。よーし、お祭りを楽しみながら給仕君を探そうか!」
おー!とヘスティア様は腕を天に上げる。
可愛い、超可愛い。
ベル君と私も同じくヘスティア様と同じく腕を上げる。
「で、どこにいるんだろうね」
「闘技場に向かったと思うってリューさんが言ってました」
「とりあえず闘技場に向かうのが正解ってことだね。周囲に目を凝らそう」
シルさんは結構目立つ。
可愛いし、銀髪だし、彼女独特の雰囲気は隠しがたいものだ。
だから近くにいたらわかりそうなものだが、今のところはオッタルさんの気配しかしない。
てか、オッタルさんの熱い視線が気になる。
確かにあの人とは仲はいいが、そこまでされるのだろうか。
恐らくはフレイヤ様の命令だろうけど、正直キモイ。
「いないねぇ」
片手にクレープを持ったヘスティア様がつぶやく。
後ろにオッタルさんの視線を背負った状態で闘技場の近くまでやってきた。
ここまで来たのだが、シルさんは影も形もない。
闘技場の中には、入れなさそうだ。
人がごったがえしている。
そして多分、シルさんはあの中にはいない。
「どこにいるんでしょう」
「ほかのとおりか、おみせにもどったか。たぶん、おみせにはもどってないかな」
「なんで?」
「なんとなく」
シルさんならお店には戻らないだろう。
あの人混みを通って帰れる気もしないし。
だから他の通りにいると思うのだが、どこも広い。
【ガネーシャ・ファミリア】が巡回している中でも犯罪は起こるのだ。
祭りの中だとその頻度は高くなること請け合いだと思う。
言い訳だが、ヘスティア様やベル君を一人にしたくない。
本音を言えば寂しいから一緒にいたい。
「一旦、分かれ」
「いやです」
「あ、ごめんね」
ヘスティア様と一緒にいたい。
ベル君と一緒にいたい。
絶対にそれは揺るがないし、どんなことをしても失いたくない。
「闘技場近くに広場なかった?」
「んー、ひろばはいくつかあるけどどうしたの?」
「そこ探そうよ」
「あー、通りよりは確実?かな」
ベル君はオラリオの全体地図を覚えたのだろうか。
私も忘れかけていたのだが、いいことを言ってくれた。
お財布を忘れた時点でどこにいるかなど分からないが、通りにはいないだろう。
裏路地か彼女の好きな場所か、とするともう探しようがない。
一か八かで闘技場近くの広場を回っていったほうがマシだろうか。
シルさんの行動は予測できないので良くは分からないのだが。
ということでとりあえず広場に向かうことになる。
オッタルさんの視線は一旦外れて、向かう途中。
「あんたらっ、この先には行くなよっ!」
「え?」
「それはどういう‥‥」
「モンスターが出たんだよ!植物みたいな奴だ!」
「はぁ!?」
市民が走ってきた。
その中でも男性が私たちに忠告をしてきた。
この先にはモンスターがいる、植物みたいな奴という話。
【ガネーシャ・ファミリア】が捕まえたモンスターの中でそんなモンスターはいなかったように思える。
そもそも植物型のモンスターなんていたっけ。
キノコ型かレアモンスターでしかいなかった気がする。
「言ったからなっ!」
そう言って市民の男性は走り去っていく。
細かいことを聞きたかったのだが、恐怖に駆られているならば仕方ないか。
「‥‥‥どうする?」
ベル君のやりたいことはわかっている。
行って助けたいのだろう。
ヘスティア様のことを考えると行かない方がいい、勝てるにしてもステイタス書き換えを無くすか魔法を使うかしないと勝てない。
ベル君は確実に勝てないだろう。
「いかないほうがいい」
「でも!」
「かみさまがさいゆうせん。それにたのもしいひとがいる」
オッタルさんの視線はもうない。
気配もまた、既に消えている。
恐らくはもうモンスターを討伐しに行ったのだろう。
「え?」
「おみせにいきましょう。たぶんもうすぐちゅうし」
「報告されるだろうしね」
すぐに【ガネーシャ・ファミリア】に報告されてお祭りは中止か延期されるだろう。
ガネーシャ様ならばそうするはずだ。
ならばシルさんはお店に戻るのでそこで財布を渡せばいい。
それにもう十分楽しめたからいいや。
オッタルさんが頑張りました。
フレイヤ様も避難誘導頑張りました。
ロキ達は対応遅れました。
ヘスティア様達は豊饒の女主人に戻ってシルさんに財布を返しました。
怪物祭は例の如く中止になりました。
闇派閥に対するフレイヤ様のヘイトが凄いことになりそうだなぁ。
ツイッターで趣味垢始めました。
ソシャゲのことについてくらいしか呟きませんがよろしくお願いします。
朱雨@シノアリスという名前でやってまぁーす。
たまに小説のことも言うよ?多分。