初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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リリルカ・アーデ可愛い。


第十七話

夕陽が窓から差し込む。

いつもローズがメイド服を卸しているお店の奥だ。

赤い光に照らされた室内で感動している人間が二人、顔を赤らめて逃げ出そうとしている小人族(パルゥム)が一人。

その中でメイド服を着ているのは二人、もう一人は何かの制服を着ている。

 

「‥‥‥なんで」

 

メイド服を着せられている小人族(パルゥム)が心の底から声を上げる。

 

「なんでこんなことになっているんですかっ!!」

 

「なんでって」

 

「ぬすんだから」

 

「それにしても何か、他にはなかったんですか!?」

 

栗色の髪をした罪人の小人族(パルゥム)、リリルカ・アーデは赤らめた顔でそう言い放つ。

もっと、下卑たことでも想像していたのだろうか。

それとも神の前まで引きずり出されてる謝らされることでも。

 

「なかったね」

 

「━━━!!」

 

言葉にならない声でリリルカさんは叫びをあげた。

それは恥ずかしさによるものだろうか、先程まで青ざめていた顔は完全に赤に染まっている。

何故か自然とにやにやが浮き出てきた。

隣の店員さん、もう一年の付き合いになる【ミュナ】はそんなリリルカさんを見てニヤニヤしている。

趣味が合うもの同士、行動が似通うのは仕方ないことである。

 

「写真撮れませんかね」

 

「かめらもってるの?」

 

「‥‥‥あと一回だけ」

 

ミュナは古びたフィルムカメラを取り出す。

まだ使えるのが不思議なくらいのものであり、彼女の唯一の思い出の品だ。

それは私も知っていたが、何分昔の品で使えるかどうかは分からなかった。

 

「つかうの?」

 

「使わなきゃもったいないし、これは永久保存版ですよ、これは!」

 

「わたしにもしゃしんちょうだいね」

 

「もちろん!さあ、リリちゃん。目線ちょうだいねー!」

 

「嫌ですよっ!」

 

ミュナがカメラを構えるが、リリルカはそれを拒否する。

狭い室内を必死に逃げるので、冒険者ではないミュナでは捉えられないらしい。

 

「無理だね」

 

残念そうにミュナは呟く。

完全に警戒され、赤らめた顔で猫のようにこちらを睨んでいる。

ハッキリ言って超可愛い。

 

「またこんどだね。りりー?ほら、こっちきてー」

 

「嫌です!」

 

「えー?なんでよ」

 

「なんでって‥‥‥、とにかく嫌なんです!」

 

「でもかわいいよ?」

 

陥落寸前、といったところだろうか。

リリルカは褒められ慣れていないのだろう。

猫のように身を隠すその姿は超可愛くて、二人の行動は正しいものだ。

可愛いから愛でる、当然の行動であるから問題はない。

 

「ふしゃーっ」

 

「「かわいい」」

 

言葉が重なる。

猫のようなその鳴き声は尊みを爆発させるには十分なものである。

しかも、今のリリルカの姿は猫人(キャットピープル)の姿でメイド服を着ているのだ。

可愛くない訳がない。

元々素材が良く、ローズの作った獣人用のメイド服にミュナによる場所の提供。

 

「ほら、ハンバーガーあるよー」

 

「‥‥‥!?」

 

「ほらー、おさかなあるよー」

 

「!?」

 

完全に猫への餌付けである。

メイドさんの技能によって瞬時に作られた出来たてのハンバーガーと魚の塩焼き。

それらが目の前で釣り下げられるとその匂いと見た目によっての誘惑は馬鹿にならない。

しかも、魔法によって猫人(キャットピープル)に姿を変えているリリルカはというと。

 

「‥‥‥ジュルリ」

 

そう、はっきりと口に出した。

口からはヨダレが流れ出ており、何とか耐えようとしているようだがとても耐えられるようには思えない。

 

「ほらほらー、ここにあるよー」

 

「来ないと食べちゃうよ」

 

「‥‥‥」

 

完全に猫である。

トコトコと近づいてくるところは完全に猫である。

声を出すことは我慢するが、声に出すならば超可愛いと叫ぶだろう。

 

「モグモグ」

 

リスみたいに頬張っている。

骨を抜いて綺麗に食べてる。

いやぁ、メイドコスプレリリルカ超可愛いわ。

まだメイドさんじゃないし、まだ段階的にはコスプレなのだが、超可愛いことには変わらない。

 

「あっ」

 

「とりわすれないでよっ」

 

「クッ、リリちゃんなかなかのやり手」

 

「‥‥‥ふぅ、着替えていいですか?」

 

「「だめです」」

 

「‥‥‥」

 

無限ループと言われればそれまでだ。

このメイドさんへの執着心が化け物クラスの二人は目の前の素質の塊を逃がすわけがない。

ベルの【パリングダガー】を盗んだリリルカをニコニコしながら連れてきたのはとある服飾店。

そこに居たのは【ミュナ・クレーズ】であり、ローズの生涯の友と呼べる存在だ。

同じメイドさん好きであるがローズはメイドさんになることとミュナはメイドさんを侍らせたい、そんな感じに欲求が違う。

しかしながらメイドさん好きであることには変わりないので仲は良い方である。

 

そんな時だ。

ガチャり、と扉が開く音が聞こえる。

 

「お客さんかな。行ってくるね」

 

「いってらっしゃい」

 

じゃねー、とミュナは部屋を出ていった。

その後に残されたローズはいじけているリリルカに目を向ける。

 

「りりさん」

 

「‥‥‥何ですか?」

 

「なんでぬすみをしているの?」

 

「‥‥‥」

 

なにか地面に文字を書いているように見える。

その文字になにか意味があるのだろうかと少し期待したが、どうにも意味があるようには思えなかった。

それにリリルカさんの顔色が青くなりかけたので追及はしないのが吉だろう。

 

「むむむぅ、ならさそとにいるひとは?」

 

「‥‥‥ッ!?何人ですか!?」

 

「たぶん、さんにんかな」

 

サーッ、とリリルカさんの顔から血の気が引いていく。

大正解、どこかから視線を感じていたがそれはリリルカさんを狙ったものだったらしい。

今は視線も【メイドさん洞察(アイ)】にも外には何もいないように思えるので、カマをかけてみたってやつである。

 

「うそうそ、ねらってるのはふぁみりあのひと?」

 

リリルカさんは何も話さない。

ものすごく苦々しい顔をしている。

いやぁ、これまでの人生は辛かったようだ。

救ってあげなきゃいけないと切に思う。

 

「ローズ、オッタルさんが来てるよ」

 

「まじ?」

 

「マジだよ。通す?」

 

「おねがい」

 

「ほーい」

 

この店にオッタルさんが来ることは珍しくない。

何故だか、私がここにいる時にオッタルさんが来るのだ。

それから家まで送ってもらって、フレイヤ様とヘスティア様でよく飲んでいる。

オッタルさんには帰り際にお酒を渡しているので問題ないはずだ。

 

「ローズ、少し用が‥‥‥って何をしてるんだ」

 

「めいどこすぷれです」

 

「‥‥‥お前は神のようなことを言うな」

 

「で、なんのようです?」

 

猪人(ボアズ)の巨漢、オラリオ最強の呼び声が高い【フレイヤ・ファミリア】団長のオッタルさん。

よくお酒をプレゼントをしているお友達のオッタルさんである。

そんなオッタルさんはリリルカさんの姿を視界に収めると少し額を押さえた。

 

「それは、まあいつものだ」

 

「ああ、いつものですか」

 

いつもの飲み会のことであろう。

しかも今回はベル君がいるため、いつもより荒れることは想像に易い。

 

「あと、な」

 

「どうかしました?」

 

「フレイヤ様は試練をお与えになるつもりらしい」

 

「ほぉ、べるにですか」

 

オッタルさんは頷く。

試練がトコトコとそっちから来てくれる分にはありがたい。

ベル君がメイドさんに至るためにはそんな試練が必要なのだ。

私もそうだったし。

 

「とびきりのやつおねがいします」

 

「ああ、期待には答えよう」

 

オッタルさんが連れてくるのなら、期待できそうだ。

ちゃんとベル君が死にかけてくれそうである。

 

「さて、りりさんは‥‥‥」

 

「私が預かるよ」

 

「いいの?」

 

「まあ、ね。しっかり教えとくから」

 

「ちょ、教えるってなんですか」

 

「「「‥‥‥」」」

 

「オッタル様までなんで黙るんですかァ!?」

 

リリルカ以外の三人が静かに目を瞑った。

ローズやミュナはもちろん、オッタルもメイドさんの恐ろしさは身に染みているからである。

ローズに殺されかけたこともあるからだろう。

冒険者に対して複雑な感情のあるはずのリリルカでもオッタルにツッコミをいれた。

そんな好敵手兼お友達のローズとオッタルは共に【ヘスティア・ファミリア】の本拠へと向かう。

途中でフレイヤ様とも合流して、ベル君が【魅了】されないかどうかの不安話をしながらであった。

 




ベル君にとびきり気合いの入った子を宛てがうことになりました。
ローズちゃんがオッタルさんに勝ちかけたことが分かりました。
現在のステイタスだと勝てませんね、現在のステイタスだと。
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