初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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短めであります。


第十八話

どうしたの?と声をかけられた。

こちらのセリフですよと返す。

この状況は不可解に過ぎるのだ。

まずとして、白髪の馬鹿な冒険者のダガーを盗んだ。

完璧なタイミングであったはずだ、あのメイド服を着た意味不明な幼女が離れたところを狙ったのに。

しかし、彼女にはバレていたようですぐに捕まった。

盗品を売っぱらおうとしたら買い取れないとあしらわれて店を出た後に路地裏を歩いていた時だった。

首根っこを掴まれて、知り合いの店だという服飾店に連れてこられた。

そしてメイド服を着せられ、謎の機械で何かされ、果てには都市最強と共に店を出ていった。

そんな理解不能な存在と親友だと語るミュナとかいう女性はこのヒューマンでも小人族(パルゥム)でもエルフでも、どのような種族のものも扱っている服飾店の店主らしい。

もう営業時間は終了しているみたいで二階にある自宅に連れてこられている。

リビングらしい部屋に通されると本人は台所に入っていって、現在だ。

目の前には料理が出されていて、傍にはお茶が置かれている。

 

「食べないの?」

 

「‥‥‥食べます」

 

「そう、良かった」

 

そう言うとミュナは椅子に座る。

出されたものは普通のクリームシチューとパンだ。

当人はコメ、とやらが欲しいと言っていたがよく分からない。

 

「少ないかもだけど食べてね」

 

「はい」

 

警戒心は、少なからずある。

完全に無くすのは阿呆だろう。

ベル・クラネルは愚か者の域に達するくらいのお人好し、ローズマリーもなにか琴線に触れなければ何もしてこないと思う。

二人ともわかりやすかった、裏表はなかった。

そんなローズマリーの親友だと言っても信用できるわけではない。

はっきり言って商売人の時点で信頼はできないのだ。

 

「‥‥‥あ、美味しい」

 

「ほんと?良かったぁ。ならさ、他にもメイド服あるんだけど」

 

「嫌です」

 

「あ、うん」

 

前言を撤回する。

目の前の女も裏表はない。

彼ら彼女らの言う【メイドさん】という理解不能の存在に執心なだけだ。

怖いくらいに目を輝かせながらメイド服の話を振ってきた。

しかもなんの脈略もなくいきなりだ。

それで察せる。

 

「それで、いつまでリリをここに置くのですか?」

 

「いつまでって、分かんないけど」

 

「‥‥‥悪いことは言いません。すぐに追い出した方がいいですよ」

 

「ふーん、やだ」

 

目の前の狂人は絶対に自分を恨まない。

それどころか、ローズマリーに【ソーマ・ファミリア】は滅ぼされるだろう。

‥‥‥いや、それはリリにとってものすごく良いのではなかろうか。

傍観してた方が良いのではなかろうか。

 

「じゃあお世話になります」

 

「お世話します。ま、ベル君とローズのサポーターはやってね」

 

「それはもちろん。家賃は、いりますか?」

 

「いらない。その代わり着せ替え人形になってくれたらいいよ」

 

「‥‥‥」

 

ものすごく複雑な表情をしているのが自分の顔ながらよく分かる。

背に腹はかえられないと重く頷いた。

 

「やったっ!ってもう食べ終わったの」

 

「美味しかったので」

 

「素直ねぇ。じゃあ部屋案内するから」

 

「お皿は‥‥‥?」

 

「そういうのは私がやるから。手伝うなら明日からね」

 

ミュナはそう言ってリリの頭を撫でる。

猫耳はなく、元の小人族(パルゥム)の姿だ、耳を触られて悶えることはないがどこか気持ちいいと感じた。

 

通された部屋は少しホコリは被っているが、今までの宿部屋とは全く違う部屋だ。

ベッドの品質から、部屋の壁まで、すべてが今までに見た世界にない。

 

「ここで寝てね。お客用の部屋なんだけど、いなくてねぇ」

 

じゃねー、とミュナは部屋の魔石灯をつけて出ていく。

部屋を照らす魔石灯の明かりはそんなに明るくはないが、柔らかい光は目に優しく感じる。

 

「はぁぁっっ」

 

ぽふっという音とともに布団に体が埋まる。

 

「柔らかい」

 

固いせんべいみたいな布団が普通だったリリにそれは新鮮であった。

枕に顔を埋め、今日の疲れを思い出す。

そして、自然と眠りに誘われていった。

ローズマリーとミュナによって丹念に洗われた体もあってか不快感は全くない。

むしろものすごく心地よいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、寝た寝た」

 

扉の隙間からリリルカの様子を見ていた人が一人。

メイドさん好きの変態こと、ミュナ・クレーズである。

クレーズとは言っているが、家族とは血は繋がっていない。

私は【博士】のことはしっかり知っている【人形】のうちの一体だ。

 

「ふー、どうやって沼に落とすか」

 

そんな彼女が考えることはリリルカをどうやってメイドさんという沼に落とすか、である。

前世からの親友であるローズと考えることは同じだ。

ここに来るのが数十年ほど早かったという誤差はあったが。

 

「さぁて、寝ますかね」

 

明日の起きる時間を確認すると、消灯して回る。

それから、眠る。

久方ぶりによい睡眠がとれたと自負できるくらいには眠れた。

ゆっくりと、顔を埋めた。

 

「ふわぁ」

 

いつも通りに夢は覚えていない。

しかしながら、窓から差し込む日光によって健やかな目覚めだ。

布団から這い出でると今の時間を確認する。

 

「‥‥‥まだ余裕あるね」

 

まずはリリルカが眠っているか確認に行くとしよう。

と邪なことのないそんな思惑でリリルカの寝ている部屋の扉をちょびっと開ける。

魔石灯で軽く照らされた室内では、リリルカの眠っている姿が確認できた。

 

「んー、ならご飯作るか」

 

朝ご飯なのだから、軽めに作るのが吉。

そう思ってエプロンを巻いて台所に入る。

備蓄を確認して、作るものを決めて、サッサと取り掛かる。

私だって【人形】シリーズのうちの一体、それも戦闘用ではない内の一体だ。

家事くらいできて当然である。

 

「ん?リリちゃん、起きたの?」

 

「‥‥‥はぃ」

 

「じゃ、顔洗ってきて。お風呂の脱衣所に洗面台あるから」

 

「はーい‥‥‥」

 

眠そうに返事をするリリルカ。

少しシワの出来たメイド服でそれを言うのはものすごく可愛い。

少し気にはなるが可愛いで全ては消える。

 

「はい。ご飯」

 

「ありがとうございます」

 

目玉焼きとパン、あとサラダ。

普通の朝食、むしろ少ないくらいの朝食だろうか。

家事用として生み出されたのだから、美味しいのは当たり前だ。

少しでもリリルカが嬉しい顔をしてくれたのはこちらもうれしい。

 

「おいしいです」

 

「ありがと。おかわりいる?まあサラダだけだけどね」

 

「‥‥‥ください」

 

食べられるものは食べる、そういった精神なのだろう。

それは食べてもらう側としても嬉しいことだ。

 

「はい」

 

追加のサラダを出す。

それ以上は少し出せなかった。

まあ、面倒だからである。

 

「さて、ローズ達がバベルに行くまでは余裕あるけど、なにかする?」

 

「特に、やることは」

 

「そう。ならぁ、早速コスプレ大会としよう!」

 

「は、はぁい」

 

複雑な笑顔をしている。

まあ、そんなことは構うものか。

リリルカには思う存分、私の欲求の発散場になってもらうとしよう。

 

小人族(パルゥム)用のヤツあるんだよね。よし、それから」

 

ウッキウキで階下のフロアに向かう。

ガッツリお店だが、まだ営業時間ではないので大丈夫だ。

リリルカの色々な姿を妄想し、オシャレを満喫させようと妄想をさらに広げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミュナ・クレーズ。クレーズという姓は聞いたことがあるでしょう。
彼女も人形シリーズのうちの一体で、ローズとは親友。
人形シリーズは結構いるのです。
彼女と親友の【フレイヤ・ファミリア】団員もいるとかいないとか。
いるとしたら四兄弟の一番苦労している人らしい‥‥‥?
あ、ミュナ自体はそんなに戦闘力は無いです。
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