初めて仕えた神様は 作:メイドさん大好き
大太刀を薙ぐとモンスターが一刀両断される。
超重量の特大剣を振り下ろすとモンスターを叩き潰す。
二刀流というのもよくよく考えてみればオツなものであった。
刀、というものは総じて脆いものではあるが【無銘】の強度はそんな刀の常識を遥かに塗り替えたものとなっている。
手入れは必要だが、ほぼほぼ【
その代わりにヴェルフには持てず、オッタルさんにも重いと言わせるくらいには重い。
ヴェルフの打った【竜の特大剣】よりは遥かに重いものだ。
そんな【無銘】を片手で軽く扱っていた訳だが、となると【竜の特大剣】を重いと言ったのは演技かと思われるだろうか。
実際に重いとは感じていたので問題はない。
「‥‥‥」
余裕が過ぎる、と大太刀を背中の鞘に収める。
特大剣は鞘がないので肩に担いだ。
「べる、つかう?」
「いやぁ、まだいいかな」
特大剣をベル君に差し出すと、普通に拒否された。
ことある度に使うかと聞いているのだが、まだ扱えないからと断られ続けている。
片手で簡単に振るってモンスターを屠り続けているわけだが、非常に楽しい。
大太刀の時は『斬る』技量が必要だったが、特大剣にはそれの必要がないからであると思う。
一撃を当てて叩き潰すことに全霊を注ぎ込む。
それがたまらなく楽しい。
「ひゅー‥‥‥♪」
下手な口笛でご機嫌なことを表現する。
その様を見てベル君とリリはぁ‥‥‥、何故かドン引きしている。
「‥‥‥うわ、こわ」
「うっわぁ」
「え、なんで?」
たかだかメイド服以外が返り血で血塗れなだけではないか。
そんなメイドさんが鼻歌を歌っているなんて可愛い、いや確かに可愛いがドン引く人はドン引くだろうか。
それがヘスティア様によると『普通』らしかった。
『普通』とは奇妙なものらしい。
「‥‥‥まあ、今更ローズ様に普通は求めていませんし」
「ひどくない?」
「ローズ様ですもん」
初日のこと根に持ってるのだろう。
安全なねぐらを提供したのだから感謝されてしかるべしだとは思うのだが。
「仲良くなったんだね」
「なってません」
「そくとうはかなしいんだけど」
もうパーティを組んで一週間になる。
リリが適応し始めていて安心してきた。
ベル君には心を許し始めて、私に対してはムッとしていることが多い。
でも、ご飯を食べている時は気を許してくれる。
つんでれ、というやつなのだろう、超可愛い。
「なかよくなりたいなー」
幼女同士、と付け加えて抱きつこうとするが避けられる。
「嫌です」
真顔であった。
本気で嫌がっているように思えて、心が痛む。
「やめて」
「あ、ローズ様の弱点はっけーん」
「えんぎかね、りりるかくん」
「そうですけど?」
「むむむ、ずるい」
ふふふ、と容姿に似合わない不敵な笑みで笑うリリルカさん。
ずるい、と頬をプクーと膨らませてリリのことを睨む。
「‥‥‥仲良いじゃん」
そんなベル君の言葉が耳に入った。
「でしょ?」
「仲良くなんてありませんてばっ!」
「僕から見たら仲良しだよ?」
リリはその言葉に口を尖らせて、私は同意する。
パーティは仲間、仲良くやらなくちゃ長続きはしないしリリのような人材は貴重だし。
何よりもメイドさん道に引き込むのだから、仲良くなっていないと少し難しい。
ミュナと連携して頑張ってはいるので近いうちにそうなることだろう。
「じゃあまたでかけよう」
「ミュナさんと一緒に?」
「うん。べるもいっしょにくる?」
「うーん、僕はいいかなぁ」
女の子だけの方がいいでしょ、とベル君は付け加える。
そんなこともないのだが、理解できなくもない。
姿形は女であるミュナと私と完全な女性のリリルカ。
まあ、その中に混じるのは勇気いるわなぁ、という感じである。
「きがむいたらいっしょにね」
「まあ今度にね 」
「ベル様、一緒に来てくださいよ」
「‥‥‥今度にねー」
「こないやつだ」
助けを求めるようにリリが話し、それを目を遠くさせて答えるベル君。
行けたら行く、そんな感じの返答であった。
何でなのかは想像ができない。
可愛い女の子に囲まれるのに拒否するのは勿体ない。
ということで。
リリとのデートプランを考えるためにさっさと探索を切り上げた。
ファミリアとしての資金は今のところは潤沢で、ヘスティア様の粉骨砕身の精神でベル君のダガーのお金は少しずつ返済されている。
何百年でも働くらしいので問題はないだろう。
それもヘスティア様のためだ。
「で、どこ巡るかだね」
「わたしはよくわかんないんだけど」
ミュナ一人で決めてもらった方がいいと思う、と話す。
「こういうのは二人で決めるものでしょー?取り敢えずリリちゃんの好きそうなものピックアップしたよ」
「おー、ゆーのー」
「ふっふーん」
ミュナから差し出され、机に置かれた紙にはリリちゃんの好きそうなもの、という題が書かれている。
しかしながら。
「む」
圧倒的に少ない。
女の子っぽいもの、とデカデカと書かれているだけであった。
「あんたばかぁ?」
「仕方ないじゃない、あの年頃の子の機微なんて分かんないよ。‥‥‥私も子供いなかったし」
ミュナは少し気分が落ち込んだようだ。
それは知っているが、私もリリが好きそうなものなんてかわかるはずがない。
あって食べ物か色々と妨害アイテム製作に使えるアイテムだとかしか思いつかない。
いくらミュナであろうとこの二つには思い至っているだろう。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「「わかるかー!」」
常識も何も世の中のことをほとんど知らない私と元デザイナーらしい、元男のミュナでは芳しい答えは出ない。
「アンナを呼ぼうか」
「あんなって、いもうとさん!」
「あの子乙女だし、丁度いいかなって。‥‥‥あ、なんか予想できた」
【アンナ・クレーズ】という娘はミュナの妹である。
話でしか聞いたことはないが、ものすごくいい子らしい。
乙女のような性格で、可愛くて、可愛い、そんな子だと言っていた。
感想は姉バカだなぁ、くらいである。
「よそうは?」
「甘い物とか服とか白馬の王子様とか」
「あー、ありそう」
「色んな食事処に連れてく?」
「いいとこある?大体がハズレってよく聞くけど」
お酒が小便の味するって、とミュナが付け足す。
私もよくは知らないが場末過ぎるとそんな感じなのだろう。
私のお酒は美味しいけれど。
「だいじょうぶよ。じゃじゃーん、じょうほうしー!」
ミュナの所に来る時に買っておいたものだ。
メイドさんたるもの、備えは万全にするものである。
「高くてなかなか買えないやつ」
「だから、けっこうしんぴょうせいあり」
「どんなのあるの?」
「それはねー、まだよんでない」
「うん、そうだと思った」
迷宮速報と書かれた情報誌を私は取り出す。
どこかの【ファミリア】が作ったもので、主に神様連中が買っている。
値段もバカ高く、一般人には手出しできないが情報にデマは一切ない。
他の雑誌と比べて情報の質が桁違いに高いのだ。
「とりあえず今月のオススメ店から」
「もくじ?」
「そこすら読んでないの?」
「うん」
「‥‥‥まあいいわ。食べて料理のスキルアップしな」
「はーい」
お店のものを食べてさらに料理の腕を磨く。
そうすればヘスティア様も喜んでくれるだろうかと妄想を膨らませて、へへへとニヤける。
それにたいして、ミュナはため息をついた。
「帰ってきて。ほら、お店選ぼ」
「あ、うん。あまりよく分からないよ?」
「それでも!」
声を荒らげたミュナは情報誌を開いて私に見せてくる。
絵と共に魅力的な文が書かれていて、なんとも興味が煽られる代物だ。
これはプロの仕事だと関心した。
「うーん」
「どこがいいんだろうねぇ」
酒場は書かれていない。
書かれているのは喫茶店や甘味処、それに変わり玉のお店だ。
目を引いたのは薬膳料理や和食、麺料理も見てとれた。
「ぜんぶいく?」
「うーん、女三人で行くの?」
「もちろん。たべられるでしょ」
私とミュナはいくらでも食べられるしリリは食べられるものなら食べるだろう。
あの子は結構食べられるとは思う。
「食べ歩きになるってことか」
「きめといてもらえるとうれしい」
「任せて」
デートプランは決まった。
となれば実戦だが、まあ不安しかない。
女に縁のなかった、女に嫌な思い出しかない二人が女を連れて歩く。
まあ、面倒なことになるだろう。
最近ダクソ2にハマってましてね‥‥‥、ここにも影響は出ていると思います。
ツヴァイ二刀流はいいぞぉ。
ということで飛び出した新設定。
【無銘】は超重量であるぞという。
ちなみにローズについて補足をば。
夢ってなんでもできますよね?
ローズって前世の男の理想像ですよね?
ホロウナイトってゲームに夢見のゾートってボスがいますよね?
つまりはそういうことです。