初めて仕えた神様は 作:メイドさん大好き
『ベル君っ!ローズ君っ!おかえり!』
『ただいま帰りました!神様!』
『かえりました!』
『うんうん、無事だね!』
『『はい!』』
ベルと私が
私の目線でそんな日常がテレビに映し出されていた。
昼の間に少し模様替えをした部屋はますます殺風景なものになっている。
テレビとソファ、あと机と椅子。
それくらいのものしか無くなった。
机はテレビの前とダイニングテーブル的な感じの二つだ。
残念ながら、畳はこの部屋には会わなさ過ぎる。
「‥‥‥ふむ」
私は目の前にオラリオで流通している話題のスイーツをまとめた雑誌を出して見ている。
目の前に尊い光景が広がっていたならば、作業効率は爆上がりだ。
頭の回転が早くなっているのが手に取るようにわかる。
「抹茶、宇治金時。いや、極東のものは」
やはり、オラリオに馴染んだものがいいだろうと結論を出す。
私たちなら材料さえあればなんでも作れる。
食べてしまえばレシピも大体わかる。
そんなトンデモ機能もある、大体は私のせいだが。
「パフェ。ドカ盛りがいいかな」
パフェ、誰でも聞いたことがあるだろう懐かしい響きだ。
ねだったことはなかったが、よその子がねだっているところは見たことはあった。
とてつもなく羨ましかったことは覚えている。
母は私に一切の金も、援助もしてくれなかった。
寧ろ絞ってきたことだけは覚えている。
脳が思い出すのを拒絶しているかのような、奇妙なもの感じだ。
「あ、ケーキもある」
お店のケーキと自分で作るケーキは違う。
まあ、何でもそうだが私にとってケーキは特別だった。
チーズケーキ、チョコケーキ、ショートケーキなどなど。
私が好きなのはやっぱり王道なショートケーキだ。
そこにジュースがあればなお良い。
子供の頃に飲めなかった分、大人になってから爆発したのだろう。
「あー、クッキーとかはバレンタインとかのプレゼントだなぁ。色々あるんだなぁ、知らんかった」
スイーツ専門の雑誌というだけあって様々なスイーツを紹介している。
やっぱり王道なものはページ数も多く、マイナーなものは一ページにまとめられてたり、一ページに複数が詰め込まれてたりするがちゃんと興味を引くものになっていた。
絵も美味しそうで純粋に食欲をそそるし、どこにあるかの説明もわかりやすい。
こんないい雑誌は久しぶりだとゆっくりとページを捲っていく。
「よし」
店をピックアップしていく。
ちゃんと店内で食べられるもの、量、美味しいものは大前提。
ペンと羊皮紙を顕現させると簡単に基準を満たしたお店を書き出していく。
暇だったのだ。
だから、暇な時間でテレビを見ながら色々な情報をまとめていたりしていた。
今はリリルカを楽しませるための店選びである。
壁の向こうの棚にはレシピのファイルやお店にダンジョンに関することなど、役立つことをまとめたファイルが全てを占領している。
綺麗にはまとめてはいるので見やすくはあると思う。
「‥‥‥」
甘い物は好きではあったが私は好き嫌いが激しかった。
好き嫌いが複雑で、わがままであったが正しいだろう。
今は食事の必要すらないので特に問題はないが。
「腹が、減ったな」
気の所為である。
なんとなく、こういうものを書いている時や意識している時は腹が減っているような気になる。
何を食べても何も感じないので気の所為なのだろう。
もはや慣れた感覚に惑わされることなく、手を動かしていく。
「うしっ」
一枚に書き終える。
すぐに二枚目を顕現させて、また書き始めた。
一段落とはいかず、休みを挟むことなく手を動かす。
前から同じことだ。
仕事が完全に終わるまで休憩などは一度もなかった。
デートスポットを調べ上げ、リリルカの好きそうな場所に絞り、私に提案する。
企画書を作り上げるようなものだ。
どちらかと言うと、こちらの方が責任感があった。
「【アモールの広場】に【星の見える高台】ねぇ。夜に行ったらいいんだろうな。うむむ、良さげな場所はないのかねぇ」
よくあるパワースポットとか遊園地とか、有名な場所とか。
そんなものはあまりないのだろうか。
恐らくはないのだろう、魔石工業や迷宮に関することに力を入れすぎた結果ということか。
この雑誌の題名は【彼女と行く!定石のデートスポット】なのだが、そんなに良さげな場所はなかった。
「
何ひとつとして素敵な要素がないと切り捨てる。
ほとんどが食事処、一日中遊べる場所というものが見えない。
服屋は、ミュナが経営しているあそこで十分だろう。
まあ、一応書き加えてはおくことにする。
「‥‥‥んぅ」
分からないなりには頑張っている自信はある。
そんな時だ。
『かみさま、りりるかさんとあしたでかけるんですけど』
『ん?ああ、ミュナ君が言ってたね。アドバイスが欲しいのかな?』
『はい!』
ナイス私。
そんな言葉が口からミサイル並みに飛び出すのを抑え、テレビに目と耳を集中させる。
ヘスティア様の助言なんて聞き逃してはいけないものだ。
だから呼吸すら止める。
『んー、ボクもよく知らないんだけどね?』
ヘスティア様は前置きを置いて話し始める。
その後のありがたいお話は私の手を休みなく動かした。
まず一に、食べ物。
二にオシャレ。
そして食べ物。
【バベル】は冒険者用の施設であり、その他のギルドの施設は のほぼ全ては冒険者用。
まあ、観光用の施設もあるのでそこに行けばいいだろうか。
神々用の施設に行くことも考えた方がいいだろうか。
『ゆっくり、まったりしたらいいんじゃないかなぁ。いつも忙しいんだし』
そんな言葉に目を剥いた。
デートという言葉に囚われすぎていたことが分かったのだ。
「歩きすぎるのは良くないし、まあゆっくりできる場所がいいんだなぁ。‥‥‥あれ?」
お家デートでいいんじゃ、という結論に至った。
ご飯食べてきて、服を買って、何とか拉致る。
そんなプロセスが浮かんで、即それを採用して、羊皮紙にざっと書き上げた。
「よし、こうしよう」
完成した、と達成感に浸る。
ふぃぃ、と軽く息をついて身体を伸ばした。
精神体のため、まったく異常はないが気分である。
「きたよー」
達成感に浸り、休養のために休んでいた時である。
もう眠ったのだろう、私が来ていた。
「あ、すまんな。散らかしてる」
「別にこれくらいなら問題ない。何やってたの?」
「デートプラン練ってた」
そう言って机の上の羊皮紙をまとめて、リングファイルの中に収納する。
「へぇ、見ていい?」
「見せるために練ってたんだよ。ほれ」
私の言葉に返答して、ファイルを私に渡す。
ありがと、と短く言うと私はそのファイルを開いて読み始めた。
ふむふむと頷きながら一枚一枚めくっていき、読み終えるのは少し経ったあと。
そんなに緊張はなかったが、沈黙は重かった。
「結局拉致るんだね」
「それしか浮かばなかったんだよ。オラリオってデートスポット無さすぎない?」
「まあ、分かる。甘いもの、覚えた方がいいよね?」
「今でも作れるだろ」
「もっと色々作りたいの」
粗方は作れるはずだが、と呟くが私の表情を見てまだまだ満足していないことを確認する。
まあ、メイドさんたるものそれでなくては困るのだが。
「明日にでもまとめとくよ」
「ありがと。それでこれだけどさ」
「まとめただけだから、勝手にしてくれていいよ」
「んー、私頭悪いからなー。今までも従った方がいい方に傾いたからなー」
「どういう感じよ、それは」
「べっつにー」
私ながら、色々と欠落しているのでよく分からない。
時折ほんとに理解し難いことをし始めるので一緒にいると楽しくはあるのだが、良くは分からない。
「私ができるのはサポートだけだからな。自制はしろよ?」
「できればねー」
「しなきゃヘスティア様が危ない目に遭うんだぞ。
「えっ、マジで?」
「教えただろうに。マジだよ」
狙われる理由は、当然【博士】関連である。
私たち、ローズマリーという【人形】はほかの人形と違う構造になっている。
だからこそ、失敗して感情の起伏がほとんどなく人としての何かすら欠落している状態になっている訳だが。
そこに私が入ってやっと安定した、まだマシな状態になっているのだ。
だからこそ今の【
モンスターの混じった人間、その原型にはちょうどいいのが【ローズマリー】の身体であるから、と推測した。
真実はよく分からないし、いざという時はステイタス書き換えを戻させるので特に問題もないのだが。
「頑張る!」
「それでいい。それじゃあリリのことだが」
「助けるよ。取り敢えず心を許してもらわなきゃ」
「リリは【ソーマ・ファミリア】なんだろう?ならさ、一回裏切らせればいいんじゃないか?」
「一回?」
一回裏切らせて、そこから助ける。
その上で原因を潰せば心を許してもらえること請け合いである。
それか、今からでも潰しに行く案もあるがリリルカの人間性も見定められてはいない。
極限状態に置いて見極めるのもいいだろう。
「まぁ他にも案はあるけどさ。ミュナはなんて言ってたんだ?リリのこと」
「んー、いい子だって」
「なら優しくしてたら結構いけそうだな」
人を見る目は私にはないが、ミュナにはあることは知っている。
いい子、この言葉に内包される意味も私には分かることだ。
「このままでいいの?」
「それは参考程度にとどめといてくれ」
「保険?」
「保険だな」
「ま、明日頑張るよ」
「ミュナもいるから安心だとは思うが、頑張れよ」
ミュナがいたおかげで這い上がれた、ミュナがいてくれたおかげであの糞の巣窟から逃げてこられた。
もう元の名前は忘れてしまったけれど、どれだけ感謝をしてもしきれない。
「おっけー、頑張るよ」
ミュナがいるから暴走はしない、そう言い聞かせてため息をつく。
男の方の私の懸念は、結構ローズちゃん暴走しがちなのです。
ベル君やヘスティア様がいたから結構抑えてられてただけです。
二人いても結構感情が暴走するのです。
ローズちゃんね、怪人よりも身体が複雑だからね。
今のベル君の強さはまあレベル1だとすでに最強格になってます。
パリィのおかげでレベルをまたいでも勝てる可能性は微妙にあるくらい。
そして、ランクアップまで魔法はありません。
そしてベル君に魔法は終わりまで一つだけの予定です。