初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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第二十五話

「―――マジで?」

 

素っ頓狂な、なんともローズらしくない声が夢の中にて響く。

目の前に座っている、もう一人のローズも深刻な雰囲気をまとっている。

 

「―――らしい」

 

「らしいって、ああ知らなかったわね」

 

「生まれてこの方子供のこと見る機会なかったからな。すまん」

 

ヘスティア様やフレイヤなどに指摘してほしかったと思うところだが、それは難しかっただろう。

特殊すぎるがゆえに指摘できなかったと思われる。

今までの変なしゃべり方はこの二人の無知に起因している。

どちらも子供にかけらも関わってこなかった。

子供らしく、を追求しすぎたらしい。

 

「聞いてきてくれたか?」

 

「あんたらしくしろって言ってたよ」

 

「―――どうしろと」

 

「わかんない」

 

あんたらしく、つまりは個性を出せということだろう。

見た目と境遇は個性の塊ではあるけれど、内面となると頭を悩ませる。

 

「とりあえず、今までのしゃべり方はもういいのよね?」

 

「任せるよ。どっちがいい?」

 

「普通で」

 

ローズは真顔で、即答で答える。

もう一人のローズには計り知れない苦労があったようだ。

 

「さて、本題だが」

 

「【ソーマ・ファミリア】のことね」

 

「そうそう。詳しいことはわからないけど壊滅したらしい」

 

犯人は不明、目撃者もなし。

一夜のうちに主神ソーマ以外のホームにいた全団員が皆殺しになったという。

 

「奇妙な話よね」

 

そういってローズは私の作った書類を机の上に放り投げる。

その言葉に私も賛同した。

 

「これのおかげでリリルカは助かったわけだが、なんか妙なんだよなぁ」

 

こんなことをして得する人間。

色々と黒いことはやってきていたようだが、恨みというのも考えにくい。

 

「ま、いいか」

 

「いいの?」

 

「多分こっちに敵意は向かないからな」

 

少し考えたのちにどうでもいいという結論に至る。

何となくだが犯人は見えてきた。

正しければこちらには何もしてこないはずである。

 

「よくわかんないわねぇ」

 

「気にするな!」

 

「仰々しく切り出したのはあんたでしょ」

 

サムズアップとともにローズに気にするなと言ってみるもにらまれるだけだった。

少し落ち込むかもしれない。

 

「ただの話題だよ」

 

「それにしては深刻そうだったけど?」

 

「―――まあ、自分の無知さに絶望はしてた」

 

「そういうことね」

 

ローズのことを誤解させ続けてしまったことにショックなのである。

【ローズマリー】という一人の人間の親を任されたような感覚で、今までローズに寄り添ってきたのだ。

間違ったことをさせてしまったことを悔いるのは当たり前である。

 

「あなたのおかげで神様に仕えられてる」

 

「え?」

 

「あなたのおかげで家族の温かさを知った。優先順位は当たり前だけど神様やベルの方が上ね。だってあなたは私だもの。でも、誰よりも私はあなたに感謝してるわ」

 

今の私があるのはあなたのおかげだと、ローズは言った。

その言葉を聞いて、私は吹き出す。

 

「慰めのつもりか?似合わねー!」

 

「人が勇気出して言った言葉を笑うな!」

 

「いやいや、お前がそんなこと、ハハハ!」

 

「笑うなってのー!」

 

私は笑いすぎて、ローズは羞恥心で顔が真っ赤になる。

これほどに笑ったのは何年ぶりだろう。

多分、十年以上前だったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、つまりどういうこと?」

 

包み隠さず、昨日の夢の話を語り終えるとベルがひきつった笑顔を見せていた。

信じられないというか、頭大丈夫か的な視線である。

今更だと思うのは間違っているだろうか。

 

「つまり、気分ってことよ」

 

舌足らずな話し方ではなく、普通の話し方でベルの言葉を返す。

 

「き、気分ね」

 

「今更ローズ様の異常性を気にしたら負けですよ。ベル様」

 

「そーだぞ」

 

「あー、うん」

 

なんか吹っ切れているリリルカと話し方以外はいつも通りの私。

リリルカはなんでこんなに何も気にしてないのかわからないが気にしないことにして、ベルが慣れないうちは反応を楽しむとしよう。

 

もう十階層である。

ダンジョンに入ってから三十分もたたずに、だ。

リリルカが優秀で、ベルと私の実力が上層にしては高すぎるからである。

レベル1、という枠の中にもはやふたりともとどまっていない。

ベルの早すぎる成長速度とローズの【人形】としての特異な体質。

これらによって成り立っている。

 

魔石の回収をリリルカに任せ、二人は鍛錬を開始した。

いつもの光景である。

ある意味、疲れ知らずな私とベルは暇な時間はこうやって時間をつぶしている。

 

「よくやりますねぇ」

 

「手持無沙汰だし」

 

「普通は休むところですよ」

 

「疲れてないよ?」

 

「―――そうでしょうね」

 

はぁ、とリリルカは大きくため息をつく。

私もベルも、切り合っている途中に普通にリリルカと会話している。

手は抜いてるが、異常だわな。

てか、なんでベルも会話できているのだろうか。

 

「―――よし、スピードアップ」

 

「おっけー!」

 

「探索に支障のないようにしてくださいよー?」

 

「「分かってる!」」

 

傍目から見ると最早鍛錬にはとても見えないものになるが、リリルカは大して気にせずに魔石の回収を続けている。

ベルは上を目指してるし、私はそれに協力したい。

それに上層程度だとあまり上質な経験はもう積めないと考えていい。

タケミカヅチ様に頼ることも考えてもいいがまだ、それは嫌だ。

となれば、無駄な時間など過ごしていられない。

オッタルの持ってくる奴に勝てるようになるまでベルを鍛え上げなければならないのだ。

【魔法】も引っ張り出せれば最高である。

 

「終わりましたー!」

 

リリルカの一声。

暇つぶしの終わりを意味するそれを聞いて得物をしまう。

 

「ベルって魔法使えないよね」

 

「使えないけど、どうしたの?」

 

「いや、リリに何か本預けてたなって思って」

 

ベルは確かに私とリリがバベル前に到達する前に誰かに会っていた。

その時にもらっていたらしい本をリリルカに預けていたのはみている。

表紙を見て、どこか既視感はあったもののどんな既視感はわからないままだ。

 

「あれ、読んだの」

 

「まだだよ。読んでる暇なくって」

 

「ふぅん、帰ったら読んだ方がいいと思うな」

 

魔導書(グリモア)ではないと断言できる。

なぜかはわからないが、そう思うのだ。

 

「リリは反対です」

 

「なんで?」

 

「胡散臭すぎますよ。何が起こるかわかりません」

 

「持ってきたのは知り合いなんでしょ?」

 

確かに胡散臭い。

しかし、ベルと肉親同然の存在ならばよいのでは、とも思う。

確かに胡散臭いが。

 

「ベル様は騙されやすすぎるんですよ。名前も知らない、贈り物をくれる知り合いなんて怪しすぎます」

 

「確かに。でもま、それは大丈夫よ」

 

リリルカがかなりの正論を吐く。

だいたい、ベルって肉親の名前を知らないことが多いので知らないことはさして問題ではない。

問題なのはなんで死んだことになっているのかである。

 

「なんでそう言い切れるの?」

 

そう、ベルが聞いてきた。

 

「勘。あとさっきちょこっと調べたから。変なところなんてなかったわよ」

 

微量の魔力が含まれているだけのまじでただの本である。

 

「なら、安心ですかね」

 

「問題はないと思うわよ、多分」

 

「多分?」

 

「うん。多分ね」

 

「―――ローズ様。あげてから落とすのやめてもらえます?」

 

「ごめんね」

 

テヘペロ、と反省の色なしの謝罪をしてみて、リリルカの顔を見る。

目に光がなく、口は笑っていた。

―――ものすごく怒っているらしい。

 

 

 

 

 




ローズちゃんの話し方の原因はこうでした。
境遇的にはこうなってもおかしくはないからね、仕方ないね。
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