初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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第二十六話

【ゴブリンでも分かる魔法入門】、そう表紙に書かれた本がテーブルに鎮座している。

その下に下敷きになっているのは【兔でも分かる魔力の使い方】という本。

どちらも【魔導書】ではないらしく、それを読んでいたであろうベルは机に突っ伏して寝ている。

本は何とも奇怪な姿で放り出され、本好きに見せたらぶん殴られるだろう。

 

ベルは休みの日であった。

本でも読む、そう聞いてさっきまで出かけていたのだがこの様である。

 

「―――」

 

何やってんだこいつ、そう思ってしまった。

表紙から見てそんなに難しくはないだろうしちらっと見たらわかりやすく絵も混じえられているではないか。

いかにベルが絵本大好きとはいえ、これは引く。

 

「完全に絵本だなこれ」

 

読んでみた感想である。

小難しい言葉など一切として出てこない、よくまとめられている内容だった。

作者は実に良い仕事をしている。

 

「とう」

 

絵本、ではあるが厚みはある本。

振り下ろした先にあるのは、ベルの後頭部。

 

「あだぁ!?」

 

加減はしたけれど、当たり前に痛かったらしい。

頭を押さえて動揺した様子で頭を上げる。

 

「起きた?」

 

「へ?あ、うん。いつの間に寝てたのかな」

 

「知らない。多分これ読んでたんじゃない?」

 

「ああ、読んでたら急に眠くなって」

 

「大丈夫?疲れてるなら寝なさいな」

 

何かやっている最中に寝てしまう。

結構経験してきたことだから、ベルの気持ちも少しわかる。

記憶がないのは常の事だ。

 

「大丈夫、なはずなんだけど」

 

「大丈夫なら本読んでる途中に寝ないでしょ。それともそんなに読書苦手?」

 

「寝ちゃうくらいには苦手じゃないはず―――」

 

「説得力ないわね」

 

寝てる時点でその言葉に説得力は付加されない。

魔導書(グリモア)ではないため、寝落ちしたりはしないはずだ。

 

「ま、とりあえず更新はしてもらって」

 

「分かった」

 

魔法入門、という本を持ったまま私はソファに座る。

先ほどより、懐かしいような感じをこの本から感じた。

なんでか引き付けられるような、そんな気配がするのだ。

 

「興味あるの?」

 

「んぅ、何となくね。借りていい?」

 

「いいよ。じゃあ僕はこっちを」

 

「寝ないでよ?」

 

「寝ないよ」

 

からかうように言うとベルがムッとして言い返した。

フフ、と微笑を洩らすと本に注目する。

音はなく、やがてただページをめくる音のみが空間を支配するようになった。

 

何かに意識を奪われたような感覚に襲われる。

ありていに言えば眠たくなってきた、とでもいえるのだろうか。

言い訳ではないけれど何かに引っ張られているような感じだ。

―――対抗心、いや意地が生まれてきた。

こんな眠気には負けたくない、そんな思いである。

 

眠気との熾烈な戦いの中、本の内容にどうにか頭をこらせていた。

瞼が下りる、しかしこじ開ける。

頭が下がる、上に向きすぎるくらいがちょうどいい。

そんな決死の戦いのさなか、対面から音が聞こえた。

 

「―――ッ!?」

 

目が完全に覚めるくらいには驚く音。

目の前でベルが眠りに落ち、机に頭をぶつけた音であった。

何やってんだこいつ案件二回目である。

 

「―――」

 

 

何やってんだこいつ案件二回目ではあるが、原因は分かった。

この本が何やら悪さをしているらしい。

読んだ者を強制的に眠りにいざなう本、呪詛(カース)の類だろうか。

経過観察次第だろうか、心配である。

起こそうかと迷ったけれど、やめておく。

ゆすっても起きなさそうし、記憶喪失になってもらっても困る。

 

「寝かせとこ」

 

休ませるのが一番、そう思ってベッドに運ぶ。

座ったまま寝るって色々と悪影響がありそうだし。

 

「ま、いいか」

 

なぜかあの本に安心感を持ってしまっている。

誰が書いたかわからないのに妙なことだと思う。

思うのだが、考えないようにして夕飯を作ることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

しばしの時間が経過したとき。

ベルの寝息、寝言を聞いていやされている時分。

我らがヘスティア様の元気のいい声が地下室に響いた。

うむ、よき声である。

 

「おかえりなさい」

 

「ローズ君!ただいま!」

 

いつもと変わらないヘスティア様の姿を見て、一旦安堵する。

毎日のことだ、お変わりなく帰ってきてくれるだけで安心する。

そういうものだ。

 

「着替えは置いてありますよ」

 

シャワー室を指さして言う。

いつもは一緒に帰ってきたベルに言うことで、夕飯づくりを代わっていることだろう。

 

「ありがとうね」

 

「ごゆっくり~」

 

ヘスティア様をシャワー室に見送ると台所に戻ろうとする。

すると、だ。

 

「また寝ちゃったかぁ」

 

ベルの声が聞こえた。

ため息と悔しさをにじませるような声だ。

 

 

「ベル?」

 

「ローズ。寝ちゃってた?」

 

「寝てたね」

 

見事にフラグを立てて、そのまま回収していった。

そんな感じに、見事に私の眠気を吹っ飛ばしてくれた。

後は、ベルの寝顔が良かったくらいだろうか。

 

「夢か何か見た?」

 

「えぇ?覚えてない」

 

「そう、ならいいけど」

 

何か夢を見ているならば教えてほしいものだが忘れているなら仕方ない。

確実に何か夢は見ているだろう。

それによって何か影響はないか、と気が気でならない。

―――まあ悪いものではないだろうが。

 

「作るの手伝うよ」

 

「ん、お願い」

 

ベルがベッドから出て、台所に向かっていく。

その時にちゃんと布団を直してた、30点。

少し崩れてたから減点である。

 

「今日のご飯はなに?」

 

「ハンバーグ」

 

「おっ、いいね」

 

ハンバーグである。

みんな大好き、最強なハンバーグである。

簡単だし、美味しいし、子供に大人気な最強の料理である。

ちなみに私は揚げたての唐揚げが好き。

カレーもいいよね。

 

「何が好き?」

 

「んぅ、なんでも?」

 

「今はそれでいいけど具体的に言った方がいいよ。困るから」

 

「あ、ごめん」

 

ヘスティア様にも言われたことはあるけれど、割と困った。

ネットの知識も捨てがたいと知ったのがその時だったなあ。

遅すぎだども。

 

「優柔不断なのは直した方がいいね。団長だし」

 

「ローズは団長じゃないの?」

 

「柄じゃないもん」

 

「僕だって柄じゃないよ!」

 

「決定事項だからね。仕方ないね」

 

ベルの意見など関係なく、もうすでにベルが団長だと申請してある。

前にも言ったはずだが冗談に受け取られたのだろうか。

 

「更新はしてもらいなよ。やな予感するから」

 

「む、おっけー」

 

ムス、としているベル可愛い。

ホント、中世的な顔立ちで女装させたら光りそうだ。

―――どうやってメイド服を着せてくれようか。

 

「お、ベル君。読書はどうだった?」

 

雑念を浮かべながら、作業をしていると後ろからヘスティア様の声が聞こえてきた。

暖簾からぴょこっと、覗き込んでいて超かわいい。

 

 

「神様、少し更新おねがいしてもいいですか?」

 

「ん、オッケーだよ。ベル君のだよね?」

 

「ええ。慣れない読書で居眠りしてましたから」

 

「あ、言わないでよ!」

 

「ほほう?」

 

「神様!?」

 

「ま、何となくわかってたよ」

 

そう言ってヘスティア様は笑う。

けなす意味合いはなかっただろうけど、羞恥でいっぱい、そんな感じの愉快な表情をベルは浮かべていた。

 

「さ、早く」

 

そんなベルの背中を叩く。

 

「そうだよ。ちゃっちゃと更新しちゃおうぜ」

 

「そしてさっさとハンバーグ食べたいぜ」

 

「お、よしベル君。早く来るんだッッ」

 

「楽しみなのはわかりますけど、引っ張らないでぇ!」

 

いや、うれしい。

ご機嫌な鼻歌とともにベル君を引っ張っているヘスティア様で私もニコニコ笑顔モードだ。

さらにおいしくなること間違いなしである。

 

ちなみにベルに魔法は、発言したようだ。

 

「ローズ!!これ!これ見て!!」

 

ファミリアに入るとき以上に興奮していないだろうか。

テンションが爆上がりなベルに少し引きつつ、差し出された羊皮紙を受け取る。

 

「魔法発現おめで、は?」

 

魔法の欄より、数字に目がいってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハッピーエンドにする。そんな目標のもとに頑張ります。アルテミス様も救えるように、頑張りましょ。
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