初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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なんとかして師匠とベル君を剥がしてぇ。


第三十話

朝からベルがそわそわしている。

家事で下手なミスをすることはないだろうがはたから見ると奇人だ。

というか、そんなことをされると私も落ち着かない。

二つ名とは大きな意味を持つのは分かる。

分かるのだが、奇人が過ぎる。

 

「ちょっと、落ち着けない?」

 

ご機嫌な鼻歌と独り言、そしてスキップ。

仕事は速くて正確、鼻歌も微妙にうまい。

でもまあ、私が落ち着かないのである。

起きてすぐこの状況は、いかに私でも動揺する。

ヘスティア様も苦笑いだったし。

 

「だって、だってさ。二つ名だよ!二つ名!」

 

「無難な奴にするって神様が言ってたでしょ。ベルの希望に沿うようなものにはならないと思うけど」

 

ベルの求めるようなものは予想がつく。

暁の聖剣士とか、電光石火の狩人とか、あとは紫炎の冥土さんとか?

残念ながら読み方は思いつかないが、おぞましいことは想像に難くない。

年齢的に仕方ないし、世界観的にそういうのをかっこいいものを求めているのは分かる。

神様的には痛い、私にとっても痛い。

なので悲しいだろうけど我慢だ。

一生ついて回るものだからよいものを、である。

 

「えー。ローズはどんなのになると思う?」

 

不満そうにベルから話を振られる。

 

いんや、振られても困る。

物凄く困る。

ベルに似合う二つ名なんて結構想像つかないのだが。

神様のネーミングセンスで、無難なやつで、分からん。

 

「私に聞かれても。兔さんとかじゃない?」

 

投げやりに返事をしてみる。

事実として全く予想はできない、とはいえ物凄く痛い名前にはならないだろう。

フレイヤ様がいるし、いい感じにかっこいいのにしてくれるのではなかろうか。

 

「えぇ、それはやだなぁ」

 

「見た目的には似合ってるけどね」

 

「それは僕も分かってるけど!むぅ」

 

ベルは中世的な顔立ちだ。

化粧をして服を着せれば男だとわかるのは知り合いくらいだろう。

でなければ股間の神秘を見るまでは真実は分からない。

それでもかまわないという変態は結構いそうだが。

かく言う私もその一人だ。

生えてるのはお得だという意見を支持してさえいる。

 

「二つ名のことばっかり気にして夜のちょっとしたお祝いも忘れないでよ?」

 

「忘れてないよ。どっちも楽しみでさぁ」

 

ベルは鼻歌を歌いながらソファに座る。

興奮が隠しきれていないようだ、とはいっても家事はもう終わってしまっている。

どうすれば彼の意識をそらせるか。

特にそんな手段はない、あったとしても私には分からん。

 

「ならローズはどんなのがいいのさ」

 

「私?」

 

未来永劫としてそんなことはない。

そう言い捨てるのは簡単だがもしもの話なら話は別である。

私に二つ名がつくならどんなものがいいか、かぁ。

幼い頃にそんな想像はしたことはあるし、中二の頃にはアレな妄想もよくしていた。

そんなころの記憶を掘り返して、どんなものがいいか考えてみよう。

 

―――ダメだ。

思いつくものが世間に広まってよいものではなかった。

無難なものにまとまりもしない。

どんなものでも二つ名というものは名前と同じように広まるものだ。

なんだろうと恥ずかしいという結論になる。

 

「どんなのでも嫌ね」

 

「えー、ほんとに?」

 

「ほんとに」

 

つまらない、そんな目で私を見てくる。

そんな目で見ないでくれ、マジで二つ名は嫌だ。

普段から二つ名で呼ばれるなんて寒気がする。

 

「楽しみにしてられるベルがうらやましいわ」

 

二つ名で呼ばれることを想像して、ため息をつく。

 

「だってかっこいいのつけてもらえるし」

 

「そのかっこいいのが私にとっちゃ嫌なのよねぇ」

 

「ふーん、そっか」

 

すまんなベル君。

私があと何十年か若かったら君と同じことを思っていただろう。

しかしながら、天寿を全うした魂が中にいて体のかじ取りをしているのだ。

中学二年生のノリに付いて行く?当然無理である。

 

もう一人は大熱狂してそうだが。

 

「ヒマねぇ」

 

「ヒマだねぇ」

 

家事は終了、夕飯の仕込みは外食のため必要ない。

ヘスティア様の帰りを待つだけ、暇。

もんのすごく暇なのである。

出かけようにもヘスティア様の出迎えはしたいし。

天井のシミを数えるのは飽きてきた。

 

「二人とも!」

 

「ヘスティア様。おかえりなさい」

 

「うんただいま!で、ベル君!」

 

「はい!」

 

「君の二つ名はね―――」

 

ヘスティア様の口から出てくる言葉。

これからベル君が呼ばれるようになる名前が飛び出してくる。

私も緊張する中、目を光らせたベル君の期待の受けて吐き出す―――!

 

未完の少年(リトル・ルーキー)だッ!!」

 

「おー、いいじゃないですか」

 

事実、まだまだ発展途上だし男の子であること主張できるしでいいではないか。

うむ、いいことづくめである。

まあ、ベルの要望にはあわないだろうが本人の反応はいかに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未完の少年(リトル・ルーキー)?それがベル様の二つ名なのですか?」

 

ヘスティア様に二つ名を教えてもらったすぐ後。

豊饒の女主人を訪れ、そこでリリと合流した。

そこでのベル君の二つ名を聞いたリリの反応である。

 

「―――そうなんだよ。どう思う?リリ」

 

「まあ、なんというか。普通ですね」

 

「だよね!神様は普通でいいって言ってるんだけどさぁ」

 

物凄く不服そうである。

かっこいいものを求めていたベル君にとっては不満なのも分かる。

でもね?普通なことは素晴らしいことだ。

ちなみに私は痛いものは嫌である。

 

「普通でいいのよ」

 

「そうだよ、それがいいんだよ」

 

私もヘスティア様もその意見である。

確か【ファイアトルネード】だったか【バーニングソードファイター】だったっけ。

そんなもんもらうくらいなら私はその名前にした神を殺りにいく。

絶対に、どんなことがあっても殺ってくれる。

 

「私は好きですよ?【未完の少年(リトル・ルーキー)】」

 

「ランクアップおめでとうございます。クラネルさん」

 

「今夜はベルさんの祝賀会ですよ、沢山お飲みになってくださいね」

 

ミアさんはシルさんとリューさんを私たちにつけるつもりらしい。

たっぷりお金を落として貰う気なのだろう。

それに、私たちに目をかけてくれているのだ。

 

予測通り、二人はベル君の隣に座った。

シルさんが予測通りのことも言ったし。

今日は勘が冴えている。

 

あと、周りの視線が集まってきた。

シルさんやリューが席に来たこともあるが、リューそんのランクアップおめでとうございます、という言葉だろうか。

最速ランクアップのベル君が注目されるのは仕方ない。

いやぁ、面倒なことにならないといいが。

 

「む、それはなんだかなぁ」

 

ヘスティア様、親目線から言わせるとそれは微妙に映る。

二人は信用しているし、ヘスティア様も同じくなのだが事実ベル君は鼻の下伸ばしてるし。

何やってんだこの少年。

 

「普段のお礼もありますし今日は食べますか」

 

「確かにそうだね。よし、食べるぞぅっ!リリ君の分も任せたまえ!」

 

「え?リリは最初からそのつもりでしたけど」

 

「なんだとぅ!?」

 

リリルカは相変わらず図太いなぁ、私の方も最初からそのつもりではあったけど。

まあうん、その精神が気に入ったのもあるけれどね。

そうでなきゃベル君のお目付け役は務まらんしねぇ。

 

「クラネルさんたちは中層に挑むおつもりなのですか?」

 

リューさんから唐突にその疑問が投げられた。

中層に挑む、戦力外のリリルカを含めて考えても余裕である。

踏破は深く考えなくても簡単に可能だ。

しかし私を除くと、まあ難しいだろう。

魔法は強い、しかしその他は標準的なレベル2である。

 

「ベルの実力を見ながらですかねぇ。まだまだ弱いし」

 

「弱っ、まあローズに比べたらまだまだだけど」

 

「ローズさん抜きで中層に向かうのは止めた方がいいでしょうね」

 

「デスヨネー」

 

当たり前である。

ベル君では実力も甚だしい。

メイドさんの中では下も下だ。

 

「ベル様では実力不足とでも?」

 

「当たり前でしょ」

 

「ええ、上層と中層とではモンスターの量も質も全く違います。戦力外のリリルカさんも抱えた状態ですと、難しいでしょう」

 

ベル君一人で中層のモンスターの質量を越えられるか、不可能だ。

リリルカを守りながらだとなお不可能である。

となるとパーティを作らねばということになってくるが、いい人がいるだろうか。

候補に上がるのは【タケミカヅチ・ファミリア】かヴェルフかどちらか。

安定してパーティに加わってくれるのはヴェルフだろうか。

 

「となるとパーティですか」

 

「でも、良さげな子なんているのかい?」

 

「一人はいますかねぇ」

 

無闇にパーティを組んではいけない。

組むなら信頼できる人とだ。

 

「よし、ベル」

 

「何?」

 

「これからは私抜きでダンジョンに行くこと」

 

「えっ?」

 

「しばらくね。私もいると頼っちゃうでしょ」

 

うむ、メイドさんとしてさらに成長してほしいのだ。

死にはしないだろう、ヴェルフとパーティ組むだろうし。

 

「ローズ様?」

 

「ローズ君、いいのかい?」

 

「ええ、ベルには独り立ちしてもらわなければ。たまには師匠から離れるのもいいでしょう」

 

よしこれでいい。

メイドさんとして覚醒したのはいいが、そこからは一人で頑張らねばだ。

その間私は、まあこれまで通りでいいか。

 

未完の少年(リトル・ルーキー)!パーティをお探しかい?」

 

チンピラっぽい男が話しかけてきた。

いんやぁ、面倒事になるなぁ。

 

「ん?」

 

ありゃ?どこかで見たことあるような。

いやでもあれだぞ。

ミアさんにぶっ飛ばされるぞおじさん。

 

「パーティが欲しいんだろ?なら入れてやろうか?」

 

いや、こんな奴見たことないな。

見たことあるとしても路地裏でぶっ飛ばした時だろう。

その程度なら見覚えもないはずだが気にしない。

 

「お断りします」

 

お、ベル君がきっぱり断ってくれた。

やっぱり男の子だなぁ、まあ女装はさせるんだけどね。

 

「ああ?」

 

手を出そうとする男。

それを見てベルはどうするか見てみよう。

 

「パーティメンバーは既に決まっていますので」

 

嘘、ではあるが嘘ではないのだろう。

ベル君の中では既に決まっているらしい。

 

それを聞いて男はどうするのだろう。

そう思って男の方を眺めてみる。

 

「チッ、それなら仕方ねぇな」

 

あらら、私の方を気にしていらっしゃる。

やっぱりぶっ飛ばしたことがあるらしい。

酔いは冷めたのかな?それなら良かった。

 

逃げるように男は席に戻っていった。

席にいた仲間の人にはからかわれているようだ。

それで済んで運が良かったと思った方がいい。

 

「ローズさん、あの方に何かしたのですか?」

 

「忘れました」

 

「そうですか」

 

うむ、知らん。

 

 

 




ローズの二つ名が浮かばねぇ。
案が欲しい。超欲しい。
ローズちゃんとベル君一緒にさせてたらまったくもって山場がないのだよ。
中層編が丸々なくなってまう。
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