初めて仕えた神様は 作:メイドさん大好き
ヘスティアが眉をひそめて目の前の人物を睨みつけている。
白衣の女、つまりは【博士】だ。
その肩に担がれているのはローズである。
どこかうなされているような顔をしている。
「ローズ君に何をしたんだい?」
「特に何も」
「―――もういいよ。とりあえず寝かせておくれ」
「はーい」
表情を変えずに答えた博士に対してため息をつきベッドに運ぶように指示する。
博士はその指示を簡単に受け入れてローズをベッドに運ぶ。
「で?何をしたんだい?」
座らせて、ヘスティアがそう聞く。
接触はしない、そう言っていたはずの博士を依然として睨んでいる。
ツインテールもゆらゆらと生き物のように揺らめいている。
「会った」
「で?」
「攻撃されそうになったから眠らせた」
「いろいろと聞きたいことはあるけど、まず一つ。君は馬鹿なのかい?」
あきれた様子で吐き捨てる。
博士も表情は崩さないがしょんぼりしているように見えた。
「いやぁ、ベルへのプレゼント考えてたみたいでさ。だからいいのあげようかなって思って」
「ランクアップ記念の?」
「うん」
「自分で選ばせてあげなよ。変なところで過保護だなキミ」
親として、気持ちは分かるとヘスティアは語った。
「だってこのままじゃ
「それでもだよ。それは君からのプレゼントにしたらいいじゃないか」
いつまでも庇護対象として博士はローズとベルを見ていることは簡単にわかる。
フィジカル面は心配ないと割り切っているらしいがメンタル面は子供だと思っているらしい。
「ベル君はともかく、ローズ君は大丈夫だよ。無理は止めないとだけどさ」
「そう?」
「うん、ローズ君はもう大丈夫だよ。たまに一人で解決しようとするところは問題だけど、プレゼントのことは誰かに相談してただろ?」
「してたけどさ」
「なら問題ないだろ。もう二年は一緒にいるんだ、君よりあの子のことは知ってると思うけど?」
実際、博士は今のローズのことをあまり知らない。
彼女が知っているのはまだ感情がなかった頃、異世界より魂を呼ぶ魔法を行使したのはヘスティアに預けた後のことだ。
それに、実際に一緒にいた時間も一年もない。
「確かにそうね」
「なら安心して任せておくれ」
「‥‥‥まあ、分かったわ。私は私のやるべきことをする、これでいい?」
仕方なかったとはいえ、捨てたことには変わりない。
だからその埋め合わせがしたかった。
親として、娘が気になり助けたいと思う。
それは二人の間の共通認識だ。
「それでいいけど、またダンジョンに潜るのかい?」
「ええ。調べなきゃいけないことが山積みだからね」
「どれくらいとかは決まってたりは」
「いんや、決まってない。でも長期間にはなるでしょうね。一ヶ月くらいかしら」
「そうか、それは安心だね」
「それは良かった。私はもう行くわね」
そう言って、博士は立ち上がる。
ポケットからプレゼントらしい小包を置いていく。
「ちょっと、それは?」
「プレゼント。お詫びだから貰って」
じゃ、と言い残してさっさと博士は消えていく。
返答などはいらないと言わんばかりに押しつけて帰っていった。
「‥‥‥ありがたくもらっておこうか」
中身は開けず、そっとタンスにしまう。
そーっと、タンスにしまっておく。
「んぅー、神様ぁ」
「ローズ君?」
ローズが起きたようだ。
博士が帰った直後に起きる、そんな細工をしていても不思議ではないのが博士である。
ローズのことが心配だと、ヘスティアは傍に駆け寄る。
寝ていたみたいだ。
記憶はさっぱりない、帰り道でなにかあったのだろう。
となるとチンピラに襲われた程度ではないようだ。
なにやら悪寒がして、振り返ったら、そこまでの記憶である。
「だれか、いたんですか?」
ヘスティア様にそう聞く。
何か、なんとなく、懐かしい匂いがした気がした。
それと同時に寒気や嫌な感じも。
「なんで、そう思うんだい?」
一瞬、ヘスティア様が目を丸くさせる。
誰かいたのはわかった、一体誰なのかは聞かない。
「なんとなく、です」
「そっか、キミを運んできてくれたんだよ」
「そうなんですか?」
いい人なのだろうか、それとも悪い人なのだろうか。
私にとっては悪い人だと思う。
なんとなく、この悪寒がそう言っている。
「悪い人ではないんだけどね、癖が強くてさ」
「癖、ですか?」
「うん。ボクと同じではあるんだけどね」
「??」
よく分からない。
思わず、首を傾げてしまった。
「よく分かんないよね」
乾いた笑いと困ったような顔。
なにか私に隠しているのは私に分かっていたが、さっきまでいた人のことがそうなのだろうか。
「何かあったんですか?」
「ボクの胃がちょっと痛いくらいかな」
「む」
さっきまでいた人物のせい、で間違いない。
ヘスティア様の胃を痛めさせるとは、許せぬ。
確かに胃のあたりを抑えていたこともあった気がする。
「強いて言えばだからね、大丈夫だよ?」
「むむむ、そうなんですか?でも、むむぅ」
正体不明のその人のことは気になる。
気にはなるが、ヘスティア様が話さないのであればきっと私に良くないことなのだろう。
であれば、私はヘスティア様を信じる。
メイドさんたるもの、主を信じないでどうするのか。
「わかりました。信じます」
「ありがとう。それでローズ君」
「なんでしょう」
「今日のご飯は何かな?」
グゥ、というお腹の音。
私のお腹とヘスティア様のお腹から聞こえたその音はお昼ご飯を食べていないことに起因する。
そもそも、昼からずっと私が寝ていたことが原因らしい。
「肉じゃがです」
まあ、もう準備はしているのだが。
しかしながらまだ時間はかかる。
昼ごはんを抜いているからか、なにかものすごくお腹が鳴っている。
「取り敢えず、何か食べたいな」
ヘスティア様も同じらしい。
何故だか安心できた。
「適当に小腹埋めるもの作りますね」
「ありがとう」
サクッと作ってしまおう。
時間的には、おやつの時間帯だ。
軽食には丁度いい時間帯である。
それに主をいつまでも空腹でいさせる訳にはいかない。
「ということで、タルトです」
「おー。いい匂い」
少し大きめに作ってみた、じゃが丸くん風タルト。
じゃがいも、ジャーマンポテト的な感じの味付けにしているので甘い感じではないハズだ。
いい感じにできた、私的にはな!
「おいひい」
「成功ですねぇ、おいひい」
もっきゅもっきゅと食べる私とヘスティア様。
私は美少女なので当然だが、ヘスティア様の方が輝いている。
可愛い、可愛いので粉かけようとしたら殺りますのでよろしく。
「ローズ君や」
「なんでしょう神様」
「タンスの中に小包があるんだけどさ」
「ほお、さっき来てた人が置いていったんですか?」
「うん。ベル君へのプレゼントだって置いてった」
ものすごく怪しい。
信じる価値なしとして捨ててしまいたいくらいだ。
しかし、ヘスティア様が受け取るということは、と考えると ベル君にいいものなのかもしれない。
「どう思います」
「怪しいけど、ベル君に何かあるようなものでは無いと思うけど」
「うむむ、見ていいですかね」
やはり、ヘスティア様からは信用されてはいるようだ。
しかし私から見ると会ったこともない、正体不明の人物である。
ヘスティア様は信頼しても、その人物は信頼、信用はできない。
「‥‥‥うーん、いいとは思うよ」
「ありがとうございます。では、見せていただきますね」
「うん、持ってくるね」
ヘスティア様がタンスから小包を持ってくる。
プレゼント風の包装がされている、小さい小包だ。
ポーションも入らないくらいには小さい。
中にあるのは、指輪のような小さいものだろうか。
「ん?これは」
「これって」
慎重に開けた。
綺麗に戻せるように丁寧に開けて中を確認する。
「指輪ですね」
どうしてだろうか。
ベル君側は描写しないことにします。
ローズちゃん周りのみを書いていく予定にしますのでよろしくお願いします。
まあ、例外はちょっとあるけど。