初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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捩じ込みたかっただけですごめんなさい。


第三十六話

息はもう聞こえず、倒れ伏すのは白い兎。

血は炎、飛び散った少年の血は燃え盛っている。

魔法の自動使用、血が燃えている限りは少年は生きている。

ちぎれた右腕で、特大剣のそばにあったはずの右腕は既に、ない。

しかし、切り口は燃え盛っている。

 

「死んだ?」

 

少女は無邪気に、少年を見る。

死んでいるはずはないが、心臓は確かに止まっている。

少女の持つ、ノコギリ鉈。

何故だかそれは不定形のものですら切り裂く。

振りかぶった先は、少年の首である。

 

意味がわからない、今の状況を形容する言葉としてはこれが一番正しい。

何も分からないうちに二度も襲われ、こうして死にかけているのだ。

誰なのだろう、この少女は。

何故なのだろう、襲われるのは。

何なのだろう、この少女の思考は。

 

分からない、何も分からない。

何度も何度も、思案を重ねて、不覚をとり、こうやって転ばされて、死にかけている。

思えば、それは無意味なことだ。

敵だ、敵。

生きなければと、そうやって考える。

 

━━━何を躊躇っていたんだ。

 

「なっ!?」

 

爆発が起きる。

少女は驚いたようだ、してやったりと笑みを浮かべた。

バックステップをした少女、少年は炎を、自身を変成させた。

無くした右腕を、炎で包む。

炎は形を成し、腕を形をとった。

そして、飛び散った血にもその影響は色濃く出る。

 

血は、少年に集まっていく。

しかし、炎だけはそうはいかなかった。

炎と血は同じものだった、はずだ。

しかし分離した。

壁の頂点まで上る、円形に炎の壁が形成される。

厚く、そして固く。

決して越えることの出来ない壁が、形成された。

 

「いきてた」

 

少女はにっこりと、笑みを浮かべる。

遊び相手を見つけたような、そんな笑顔だ。

少年は遠くにあったはずの特大剣を手に取り、立ち上がる。

剣に縋るように、されどしっかり地面を踏み締めて。

逆手に剣を取り、順手に変え、左腕でしっかりと握り込み、顔を上げる。

その瞳には、しかと少女を焼きつけていた。

 

「‥‥‥貴方が何者かなんてもう知りません」

 

少年は右腕を、人差し指を少女に向ける。

 

「貴方は、僕の敵だ」

 

腕を下ろして、今までしたこともないような戦闘態勢をとった。

左腕のみで抱えている特大剣は引きづられ、実体のない右腕はゆらゆらと揺らめいている。

 

「それでいい」

 

笑みをたたえたまま、少女は話す。

 

「オネエサマヲカエシテ?」

 

笑み、微笑は病的なまでの笑みに変わった。

散弾銃、そしてノコギリ鉈が、伸びた。

 

「‥‥‥敵は、倒すッ」

 

周りは炎の壁、誰も介入できないただ二人の戦い。

火蓋は切って落とされる。

 

右腕は、伸びる。

左腕の特大剣は、言わずもがな特大の一撃だ。

それに加えて、炎の爆発力も備えている。

 

少年の力は炎のみのはずだ。

 

「へぇ」

 

「オォォォォ!!」

 

爆発。

ただそれだけであるが、少年に影響を及ぼさずない、広範囲のそれは厄介極まりない。

特大剣を避けたとして、その後にくる爆発は避けられない。

その上、右腕での追撃だ。

腕としての運用をやめ、ただ炎の塊として打ち出される。

そしてそれにも爆発のおまけ付き。

大雑把だが、隙はない。

攻撃していない時にも、隙はない。

少年から攻めることは多いが、途中でやめられる。

どんな攻撃の途中だろうが、止められないであろうものであろうが、獣のように察知しやめる。

 

━━━当たらない。

 

つまり、終わらない。

少女はすばしっこい。

普通は避けられないであろう爆発さえも初撃以外は全て避けきっている。

こちらの性質を初撃で見破っているかのようだ。

誰かと戦っている、いや訓練している時のことを思い出す。

 

━━━ああ、そういうことか。

 

理解出来た。

目の前の、少女が探し求めている人物が。

ならば、ならば。

余計に渡すわけにはいかない。

 

炎を滾らせる。

火を、全身に立ち昇らせる。

少女には、ローズには、点の攻撃は効かない。

どう頑張っても防がれ、避けられ、手痛い反撃を喰らう。

ならば、単純な話だ。

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まず、地面が変化した。

炎が吹き出し、地面の石から炎の柱が立ち上った。

無論、ここからは逃げ出せない。

どう頑張っても炎の壁を抜ける前に体が燃え尽きる。

少しずつ、円形のフィールドが狭まっていく。

勝てる、そう確信した。

 

「オネエサマのそばにいるならこの程度は、この程度はなきゃ。ヒヒッ、最低条件はクリアー。ハハハハハ、ハハハハハハハハハハハ!!!」

 

狂った笑みが、円形の闘技場を支配している。

そしてノコギリ鉈が、伸びた。

そしてそして、飛んできた。

 

「グゥッ!!」

 

腹が、抉られた。

銃声と共に腹に激痛が走る。

速すぎた。

速すぎて見えなかった上に反撃しようにも目の前にはもういなかった。

直感的に、前に跳んだ。

 

背中が斬りつけられた。

それだけだ。

致命傷ではなく、動ける。

身体を炎へと変じ、何とか逃亡を図ろうとした。

 

「かひゅっ、ふぅ。はぁ、はぁ。クソッタレ」

 

アドレナリンが切れたのだろうか。

それとも精神疲弊(マインドダウン)の症状だろうか。

焼け焦げた右腕だったものを抑え、立とうとする。

できず、再び倒れ込んだ。

 

「クッソ、壁は」

 

もうほとんどない意識の中で炎はまだ形を保っているように見えた。

 

「良かっ、た」

 

そう思ったのが最後。

ただ、意識が暗転していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル!!クッソ、遅かった!?」

 

意識を失った少年に駆け寄る女性がいる。

白衣を着た長身の女性、少年の育ての親の一人【博士】だ。

 

「ベルなら治せるわよね。そうよね。‥‥‥で、あれは」

 

少年の形成した炎の壁。

少しずつ、その範囲は狭まっていっているのが見えた。

あの中に敵がいるのは確実だろうと博士は結論づける。

 

「あれェ?オ姉様ノ匂いがもうヒトつ。誰ェ?」

 

腕がない。

服はほとんど焼け落ち、足もほとんど焼けている。

 

「ローズ、じゃないわね」

 

「ローズ?オ姉様!オ姉様ノ名前ダ!」

 

「そうね。あなたは、そういうことね」

 

合点がいった、そう博士は言う。

 

「ごめんね。あなた、殺すわ」

 

「殺ス?ハハハ!無理ダヨ!」

 

「フフフ、知らないのね。殺れるわ」

 

言葉を終えると同時に、博士が消える。

少女が倒れ、首が消えた。

 

「‥‥‥舐めたことしてくれるわね。余程、チッ」

 

パチンと指を鳴らし、少女の体が消えた。

何処か、遠い場所に消えていった。

 

精神力回復薬(マジック・ポーション)を博士は少年の口に流し込む。

そして、抱きかかえると十八階層に降りていった。

精神力が回復した以上、命の危険はもうないだろう。

 

 

 

 

 




ローズによく似た少女との戦闘でした。
ベル君めっちゃ強くなってますし、継戦能力もバッチリですね。
精神力さえあればだいたい死なないのです。
黒装束の少女、銃器と血なまぐさい武器持ち。
性癖に突き刺さって最高ですよね!!
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