初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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ものすごくつよい博士を描写したかった。
私の考えた最強の人です。


第三十九話

敵はそこにいる。

目の前に、そこに、殺すべき相手がいる。

それだけで十分だ。

 

足元に広がる古代文字が、広がる円形の陣が。

まあまあ広い結界の外には肘より先が無くなった少年が立っている。

静かに、無表情でこちらを見ている。

 

目の前の白衣を着ている敵は構えもせずこちらを見ている。

余裕たっぷりだ、実に腹が立つ。

 

だからこそ、突っ込む。

 

「縮地」

 

音速を超え、距離さえも見間違えるが如く疾く走る。

人形の身体能力に技術を上乗せした暴力。

瞬きする間もなく正面に辿り着く。

 

「でも甘い」

 

下からの袈裟斬り、をしようとしたが足で止められた。

 

「カ‥‥ハッ」

 

掌底が腹を貫く。

衝撃が体を走り、そして拳の一撃も上乗せされる。

しかし腹だ、まだやれる。

 

「ズラしたか?」

 

「どうでしょうね?」

 

縮地、の上。

輸血液の投与による身体能力の大幅増強。

それにより私は光を越えようとした。

全てをかけようとした片手平突き。

 

「速ァい」

 

ニタァと、粘っこい笑みが目の前に現れた。

 

その次の瞬間。

拳が顔に叩き込まれる。

鼻から血が垂れたであろう、脳が揺れたであろう、何も言わないまま背中が折れ曲がった。

そして無銘を両手持ちし、全力で振り下ろす。

簡単に白衣は半分に割れるだろう。

 

「あっちか」

 

どこにいると探す。

白衣が割れずに地面が割れた。

割れた中から下の階層が見える、なんてことはない。

 

無銘を握っていない左手を地面に置く。

無銘に纏われている血が増幅され、竜巻のように血が廻る。

そしてそれに、炎が少し隠れていた。

 

戦技【死屍累々】

神秘を高め、そして体内の血質を高める。

そして、リーチを最大限を高め、振り回す。

 

二度の回転の後、縦、横、十字に。

最後に振り返って飛び上がり、全力で振り下ろす。

 

「名付けて【無銘の剣舞】ってところ?」

 

「はあ?」

 

刀身を握り、そこに佇むのは敵。

リーチ、火力、殺傷力、近接武器で行う技においてその全てが最高峰と思われる【無銘の剣舞】。

メイドさん秘技にもない、私だけの技のはずだ。

なぜ、知っている?

 

剣舞のリーチは無銘を遥かに超える。

やろうと思えば威力は減衰するものの、18階層全てを攻撃範囲に捉えられるまでにもなるだろう。

だから、だからこそ、確実に殺す技なのだ。

横に攻撃範囲が広い技なのと同時に攻撃範囲を狭めれば縦にも攻撃範囲が広くなる。

突けばどれだけ離れようと貫き、斬れば直線上にいなくとも切り裂く。

そんな、剣舞だ。

 

「うん。やっぱり殺す気しかない技ねこれ」

 

耳にこびりつくような不快な声が耳に届いた。

故に死んでいないと確定する。

 

「……っ!!」

 

「ああ、当たらないわよ無理無理」

 

二度目の剣舞をお見舞いしようとする。

血を刀に溜め、一段目を繰り出そうとする。

一段目すら当たることは無かったが。

 

目の前が、黒く染まった。

剣舞は、一段目すら放たれることはなく博士に抑え込まれる。

 

「‥‥‥え?」

 

間の抜けた声が頭に響く。

何が起こったかが理解できなかった。

空中に爪痕のように血がこびりつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果はローズの完全敗北で終わる。

その結果は明らかであった。

二人の周りにあった魔法陣が消え、中からはローズを運ぶ博士が出てくる。

ローズの有様は死に近い。

腕はへし折れ、首があらぬ方向に曲がり、眼球が潰れ、胸部からの大量出血。

死んでないとは思えない有様であった。

 

「お疲れ様です」

 

「元気そうで何より。お疲れさまはあなたにも」

 

そんなローズのことは一旦無視。

二人とも、この程度で彼女が死ぬとは思っていないのだろう。

気を失ってこそいるが、数日寝ていれば完治する化け物に心配は不要、ということか。

 

「とりあえず、寝かせましょうか」

 

「後一応治療もね。その間、フィンに挨拶してきたら?ほかの子たちはあそこに世話になってるし」

 

「フィン……?あの【ロキ・ファミリア】の」

 

「うん。一応この近くにあの子たちのキャンプあるのよ。行ってみれば?」

 

「へぇ……神様たちもそこに?」

 

「ええ。キャンプ借りてたはずよ」

 

「分かりました。ローズ頼みます」

 

「おっけー」

 

博士の言葉に一応納得したベル。

指を指した方向、回復した能力を使う。

熱探知、というものである。

火を扱えるならばこれも使えるだろうと仕込まれたものだ。

 

「よし」

 

何処にいるかを理解。

そこに向かって歩き始める。

 

「……キミは」

 

「あなたは、お久しぶりです」

 

金髪の女性、アイズがキャンプから出てくる。

彼女はベルの姿を認め、驚いたような様子だ。

 

「大丈夫だったの?腕も」

 

「ええ。全く何も問題はないですね。完全回復です。その報告に参ったのですが……」

 

「そう……?ならついてきて」

 

中にはヘスティア様やリリたちがいる。

まあ、それは後回しでもいいだろう。

そう思い、アイズの後ろをついていく。

 

「もしかして僕、注目の的です?」

 

そんなことを思ったのは単純である。

自身の功績と周りの視線、それだけだ。

恨みがましい視線も混じっているところも考えると【ロキ・ファミリア】もあまり統率は取れてはいないようである。

まあ、そんなことは門前払いの時からわかっていたことだが。

 

「そうだね。ベルはものすごいことをしたし」

 

「そんなに凄いことしましたかね?」

 

「レベル1で強化種のミノタウロスを倒した」

 

そんなに合点はいっていないベルを見てアイズは首を傾げる。

世間的に言えば強化種のミノタウロスをレベル1で倒すのはとんでもない偉業である。

そのことに合点がいってないことからベルも中々に毒されているようだ。

 

「ここ」

 

「ありがとうございます」

 

案内を終えると仕事があるようでアイズは去っていく。

残されたベルは特に躊躇することもなく幕を開き、中に入る。

 

「おお、錚々たる方々だ」

 

【勇者】と【九魔姫】そして【重傑】の3人。

【ロキ・ファミリア】の最高幹部、オラリオでも有数のレベル6。

 

「この度は助けていただきありがとうございます」

 

「こちらこそ、無事でよかったよ」

 

深々と、頭を下げて感謝をあげる。

 

「やめてくれ。我々は当たり前のことをしただけだ」

 

「それとお主に興味もあったからな」

 

「……感謝を」

 

頭をあげ、3人を視界に収める。

第一印象で言えば…、勝てない。

どんなに不死性でゴリ押しでも消耗戦で負けるだろう。

 

「それで僕に興味とは?」

 

「ミノタウロスとの戦闘、だね」

 

「あー、どうしでなんですかね」

 

「死んだかのように見えた。いや確実に死亡した」

 

「どうしてあそこからミノタウロスを討伐できたのか……。我々は疑問に思っている」

 

「……あー」

 

【九魔姫】と【勇者】の言葉に詰まる。

【勇者】の目を見るとこちらを伺っているような感じだ。

だいたい分かっているがこちらの出方をうかがっている、ということだろう。

 

「簡潔に言うなら生き返っただけですね」

 

「…ん?」

 

「僕は火を操れます。その中に【転生の炎】というものがあるんですよ。聞いたことありません?不死鳥とか」

 

ベルは自身の腕を炎へと変える。

その炎を自由に操る様も見せた。

そして色も変える。

青い炎、回復ができ、ベルの体そのものである【転生の炎】だ。

 

「これ以上は明かせません。まあ復活のタネはわかりましたか?」

 

【火】とはある世界において世界と同一視された。

そして不死となったた人は火に導かれて生きた。

灰と化しても篝火にて甦る。

ベルは【薪】とも言える。

ベルは【篝火】とも言える。

彼は【英雄の方舟】であった。

故に、今も何かを導く存在である。

故にベル・クラネルはあらゆるものを燃やす【炎】である。

 

「……いやぁ、本当に君は規格外だ。【ヘスティア・ファミリア】は敵に回したくないね」

 

「そうだな。【死の超越】など、予想しても当たって欲しくはなかった」

 

「……今回ばかりは笑えんのう」

 

「…ありぃ?」

 

「情報を教えてくれてありがとう。彼らとの約束通り、キャンプを貸し出すよ。僕たちが出発するまでだけど、いいかな?」

 

「ああ、それはもちろん。こちらこそありがとうございました」

 

【ロキ・ファミリア】最高幹部陣の頭を傷めさせたベルは何が異常なのか正直よく分からず、3人のいるテントを去る。

そして、周りの視線に晒されながら、親愛なる主神のテントに歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 




ベルは自分の不死性は異常であることはわかっています。
それ以外の能力値は普通だと思っているんですね。
十分化け物である。
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