初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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【狼の炎陣】

魔法陣を作り出し、炎の陣を形成させる戦技。
追加で炎を操り動物のように使役することができる。

この戦技は遊び半分に博士が作ったものも一つ、狼王の物語にて登場している。
その物語にて彼女は狼王に魔力を扱い、戦う術を教えたという。


四十話

「あ!【アルゴノゥト】くんだ!」

 

勇者(ブレイバー)】への挨拶も終わり、テントに戻り休もうもしていた時だ。

大切断(アマゾン)】の二つ名をとる第1級冒険者の【ティオナ・ヒリュテ】が駆け寄ってくる。

 

「アル、え?」

 

【アルゴノゥト】と呼ばれたことに驚き、一瞬言葉に詰まった。

何故そんな名前で呼ばれるのか。

幼少の頃より読み倒したあの道化の英雄と並び呼ばれるのか。

 

「そう!【アルゴノゥト】くん!元気だった??」

 

「…あー、はい。元気ですよ」

 

呼び名には慣れないが、とりあえずだ。

名前が広まることは純粋に嬉しくはあるが、複雑である。

 

「よかったー!瀕死って聞いてたからさ、心配してたんだー」

 

「死なない限りは大丈夫ですよ。じゃあ仲間のところに行きたいのですが‥‥」

 

「なら案内するよ!」

 

【アルゴノゥト】は大体の人間が知っている物語だろう。

始まりの英雄、英雄の船、そう呼ばれる彼の喜劇の物語は最も世界に流通している‥‥らしい。

そう祖父から聞いていた。

故に彼女が僕と英雄譚好き(どうるい)かは分からない。

 

「ありがとうございます。お言葉に甘えますね」

 

「うん!ついてきてねー」

 

神々で言うところの、僕はオタクである。

こと英雄譚に関してはガチ勢とも言えるほどだ。

この世界に存在する英雄譚ならあらかた知っていると言っていい。

そして英雄譚は大体地上を覗いていた神々が執筆している。

そのせいで萌えやら何やらも大体理解してしまっているわけだ。

英雄譚に関してならば神々のノリになってしまう可能性も高い、なので引かれたくはない。

まあそういう訳である。

 

「あら?」

 

「ティオネ!」

 

ティオナさんによく似ている女性。

違いは短髪か長髪か、そして胸部装甲の厚いか否か、あとは服装だろう。

双子らしく、見分けはつきにくい。

怒蛇(ヨルムガンド)】なる二つ名を持つ【ティオネ・ヒリュテ】なのだろう。

ティオナさんがいる時は煩悩は消しておいた方が良さげだ。

 

「あんたは…」

 

「ベル・クラネルと申します…。この度は」

 

「そういうのはアイズに言うべきよ。今はそれより!ミノタウロスの時のこと教えてくれる?」

 

「えっと…それはぁ」

 

この二人もいたのか、と頭を抱えそうになる。

 

「普通の炎とは違うわよねあれ。何か命そのものが燃えてるような」

 

「うんうん!ぼわわぁっとさ!死んだかと思ったのに炎と一緒に復活して……」

 

「確かに物語の中にいるみたいな感覚だったわね……」

 

「お二人とも。お願いですからあれの詳細は内密にお願いします。大体は博士に聞けば分かりますからっ」

 

 

困る、どれくらい困るかというとステイタスを公開されるくらい困る。

確実にフィンさんにはだいたい感づかれているだろうが敵に回らない限り、言いはしないだろう。

憶測をむやみに言わない人っぽいし。

博士も詳細を完全に話したりはしないだろう。

まあ、『死の超越』なんて言葉が出ていたし、ティオネさんもどこか勘づいている。

『精神力』が続く限り不死なんてそんな結論には飛躍しないと願いたい限りだろうか。

 

「博士ぇ?あれは無理、近づきたくない」

 

「あの人面白いよー?」

 

「永く生きてる人ですし、いろんなこと知ってますからね。面白い人ですよ?」

 

「それでもよ。3000年も生きてるし恩恵もなしに強さは第一級冒険者並みなんて怖いわよ」

 

「まあ、それは賛同します」

 

ティオネさんは博士のことを不気味に感じ、ティオナさんは逆に好感を持っている。

確かに、博士は『英雄の時代』の生き証人だ。

年は3000なんて優に超えている。

怖く思い、畏怖するなど当たり前だろう。

 

「博士って何者なのかしらね」

 

「きっとあの人だよ。英雄譚にさよく出てくる導き手!どの物語でも姿が一緒なんだよ、これは間違いないよね」

 

「まったく……あれはおとぎ話でしょ?」

 

「いいや、絶対そうだよ!前聞いたときにそうかもねって言ってたからね!」

 

あ、何となくわかっていたがティオナさんってアホの子だな?

それにしてもよく知っているものだ。

確かに英雄譚に『導き手』は必ず出るとも言っていい人物である。

突然現れてはアドバイスや助力をしてくれ、去っていく人だ。

物語ごとに服装は違うが、それ以外の容姿は一致している。

主役として出る話はなく『導き手』の行動は主人公に使命を果たすためのものとなっているがいまいち影は薄い。

確かに『導き手』がいなくては主人公は何もできない。

しかし登場の時間が少なすぎることや登場が序盤なこともあって影が薄い。

そんな『導き手』のことをよく知っているなんてもしやティオナさんもなのだろうか。

 

「よく知ってますね」

 

「だって英雄譚好きだもん!読み込んでるよぉ」

 

「読みすぎよあんたは」

 

「ふふん。【アルゴノゥト】君は?英雄譚好き?」

 

 

「好きですね」

 

 

「ホント!?」

 

「ホントですね」

 

分かりやすくテンションが上がるティオナさん。

てかずいっと顔を近づけすぎだ、近い。

 

「近いです」

 

「何が好き!?」

 

「聞いてないですねこれ」

 

「こうなったら止まらないわよ。諦めなさい」

 

「マジですか…」

 

オタクのノリワカル。

ボクモカタリタイ。

デモナカマがキニナル。

 

しかし…ここで同志を逃がすわけにもいかぬ。

少し考えたのちに、ティオナさんに付き合うことに決める。

無事は確約されているだろうし、友達は欲しい。

 

「【アルゴノゥト】ですかね」

 

正直に、あの道化の喜劇が好きであると語る。

もっとも有名であり、なし崩し的に英雄になった最弱の英雄。

しかし、なんだか親近感が湧くというかなんというか。

物語としては喜劇、滑稽なのだが好きなのである。

 

「じゃあやっぱり【アルゴノゥト】くんだね!」

 

「やっぱりぃ…?」

 

「【アルゴノゥト】が好きで【アルゴノゥト】っぽいから【アルゴノゥト】くん!」

 

「??」

 

やっぱりよくわからない理屈だが、まあ彼女がそれで満足ならばよいだろう。

少し語り合った後、やはり仲間が気になるということで別れる。

後にまた語ろう、今は再会が優先ということである。

 

 

「ふぅ…。さて」

 

テントの前、少し指が震えるが意を決して中に入る。

 

「お、ベル。回復したか」

 

「ベル様!もう出歩いても大丈夫なんです?」

 

ヴェルフとリリの二人が見える。

 

「ベル君」

 

ヘスティア様もいる。

僕も含めて、ここはヘスティア様も合わせた僕たちパーティのテントのようだ。

 

「無事です。今、戻りました」

 

文字通り死力を尽くして死にかけた。

体は燃えカス同然、それでも命を縫い留めたのは博士がいたことに他ならない。

そうでなければ確実にあそこで燃え尽きていた。

 

「まあ、心配はされてなかったみたいですね」

 

「し、してたよ?」

 

「トランプがなければそう思えたんですけどねぇ」

 

ババ抜きをしていたのだろう。

リリの手札が一番少なく、ヘスティア様が一番多い。

楽しんでるなと、少し嫉妬した。

 

「僕も混ぜてください。次からでいいですよ」

 

「じゃあちょっと中断しようか!早く混ざりたいだろうし!」

 

「ヘスティア様…負けそうだからでは?」

 

「そんなことはない!」

 

「負けは確実そうですね」

 

退屈はしない。

ぐぬぬとうなるヘスティア様にいたずらっぽい笑みをこぼすリリ。

そして困ったような顔をするヴェルフ。

本当に、退屈しない場所だ。

 

 

 

 

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