初めて仕えた神様は   作:メイドさん大好き

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あんまり変わらない風景。
日常っていいですよね。


第六話

ミノタウロスとは中層、十五階層くらいから生まれるモンスターである。

本来ならば上層に上がってくることなどありえないモンスターだ。

十三階層から出現するヘルハウンドやアルミラージならともかくとして、ミノタウロスが上層に出てくることは異常事態(イレギュラー)中の異常事態(イレギュラー)であろう。

それもベル君が探索していた二階層か三階層辺りまで来てしまっていた。

ヘスティア様が言うには嘘は言っていないらしい。

ベル君は嘘が下手なのですぐに分かるが。

【ロキ・ファミリア】が逃がした個体であり、ベル君は【剣姫】に助けてもらった、とのことだ。

【剣姫】というと、金髪のじゃが丸くん好きなあの子だろう。

ヘスティア様の手伝いをしている時に何度か会っている。

なんとも不思議な縁である。

 

そんなミノタウロスに見つかってベル君がしたことは、逃げの一手。

正しいというか最善手である。

ベル君、すばしっこいからそこに重点的に鍛えてきたし。

敏捷と器用、この二つをベル君は鍛えまくってた。

そのおかげで私より皿洗いが早くなり、掃除は私より一歩手前くらい。

そのせいでバイト先だと皿洗いしかやっていないのだけど、それはまあどうでもいい。

鍛錬に付き合ってたおかげで私も魔力がかなり上がっている。

その他はぁ、お察しだ。

 

「よくがんばったね」

 

「うん、よく頑張った。帰ってきてくれてありがとう」

 

「‥‥‥はい」

 

ぬ、ベル君が少し不満そうな顔をしている。

ミノタウロスを倒せなかったからか。

レベル1だから当たり前ではある、私が割と異常なだけだし。

中層に行って叱られた日が懐かしい。

 

「べる」

 

「なに?」

 

ベル君は顔を傾げる。

いつものことだ、料理の手伝いを頼む。

いつもはベル君から言ってくれるのだが、今日は私からだ。

 

「分かった。手伝うよ」

 

「ありがとうね」

 

「こっちこそ」

 

気を紛らわせて家事をやらせる作戦。

メイドさんとして家族のケアは大切なので頑張った。

ヘスティア様のサムズアップは嬉しいものである。

 

あ、ベル君の作ったご飯美味しい。

ベル君にメイド服着せて、メイドさんにしてやろうかな。

よくよく見なくてもベル君は中性的な見た目だし、似合うだろう。

ものすごく将来有望‥‥‥!!

バイトでは皿洗いしかしてないのが不思議なくらいである。

 

「きょうはべるくんがつくりました」

 

「確かにローズ君のとはちょっと違うねぇ。おいひい」

 

「照れますね」

 

「じゅんとうなひょうか」

 

「そうそう」

 

元々ベル君は畑仕事で足腰は鍛えられていて、家事もやっていたのだろう。

祖父と分担してやっていた、とかなんとか言っていた気がする。

私を割と早くに受け入れてくれたのはそんな祖父からの英才教育。

元々メイドさん好きな少年だったし。

 

「むぐむぐ」

 

「もっきゅもっきゅ」

 

「‥‥‥おお」

 

二人とも可愛い。

いや、可愛いなんて言ったらベル君が怒るだろうか。

でも可愛いから仕方ない。

ものすごく可愛いから仕方ない。

 

「西京焼き美味しい」

 

「むぅ、くやしい」

 

ヘスティア様が他の誰かを褒めている、なんだか嫉妬してしまう。

幸せそうな顔をしているベル君とヘスティア様、無論私も幸せそうな顔をしていると思う。

知ってはいるが食べたことのない料理に心躍っている。

山育ちのベル君も、魚を食べる機会があまりないヘスティア様も、美味しいと喜んでいる。

その様子は嬉しいけど、なんだかムッとなった。

 

「あしたはあゆです」

 

「鮎?」

 

「うん」

 

「いけづくり、しおやき、かわでとれたっけ」

 

「分かんない。新鮮じゃないなら活け造りはしんどくない?」

 

「‥‥‥てんぷらとしおやきにする」

 

魚で挽回してやるとしよう。

そんな思惑で明日の夕食を決める。

魚とご飯とお味噌汁とお漬物、この組み合わせは合いすぎる。

ご飯は何にでも合うと言ってもいい万能食材だ。

甘いものとは親和性は低いけれど、魚やお肉や煮物等夕飯に引っ張りだこな料理とは完璧と言っていい親和性を持っている。

毎日登場しているくらいである。

ご飯に合う料理を日夜考えているくらいだ。

あ、でもたまにはパンに合うものも考えねばならないな。

 

 

「あ、たまにはすきやきもたべたいな」

 

「それはもう少し僕たちに余裕ができてからかな‥‥‥」

 

「うむぅ、やきにくたべたい」

 

「しゃぶしゃぶも食べたいよね」

 

「‥‥‥もっと稼がなきゃ」

 

「無理はしないでね」

 

「はーい」

 

夢を膨らませるように会話をする私とヘスティア様。

それを聞いてベル君が遠い目をして呟いて、ヘスティア様は普通に言い切る。

 

食べたあとはいつも通りに家事をして眠る。

今日は川の字で眠ることになった、ベル君は遠慮していたけど引きずり込んでやった。

後悔はしていないし、暖かいからものすごく快適。

鍛えられた胸はヘスティア様のおっぱいとはまた違う感じである。

二人に挟まれて寝るのはものすごく気持ち良い。

ああ、眠くなってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、起きた?」

 

「」

 

起きると目の前にベル君の顔がある。

頭には二つの手が置かれていることが感じられ、抱かれているのはベル君の腕。

何とかして振り向くとヘスティアの顔はだらしなく綻んでいた。

しかし良かった、ヘスティア様は起きてない。

 

「‥‥‥いまなんじ?」

 

「六時くらい」

 

いつも通りの時間ではないか。

となるとベル君が早くに起きただけなのだろう。

 

「ごはんつくろ」

 

「はーい」

 

まあまあまあ、明日からベル君より早く起きればいいからね。

泣くほどのことではない、泣くことなんて有り得ない。

豆腐メンタルではないからね、私。

まだ慌てる時間じゃない。

 

「今日は何作る?」

 

「うーん、なにがいい?」

 

「そうだなぁ」

 

残り物のご飯と卵焼きやお漬物など。

最近は同じメニューになってしまっている。

だから心機一転別のものにしたいとそんな意図が伝わったようでベル君はうーんと悩んでいるようだ。

私も何が良いかと少し悩む。

パンもいいけれど何か抵抗がある。

ご飯だとおかずがないと寂しい。

 

「うーん、何にしようか」

 

「うむむ」

 

何にしたらいいのか。

ご飯にお魚、冷蔵庫に入っているもので何かないかと確認する。

 

「あ、べる」

 

「何?」

 

「あいずさんはどうだった?」

 

「え」

 

何度か会ったことはある。

知り合い程度の繋がりはある。

だから少し気になっただけである。

 

「あこがれた?こいしちゃった?」

 

「いや、そんな訳ないじゃん」

 

ものすごく目が逸れている。

それでも手は忙しなく動いている、凄いな。

 

「めそらしてんじゃないよ」

 

「僕には家族がいるし。色恋に手を出している場合じゃないというか」

 

「いいわけしない」

 

「いや!僕の憧れはローズなんだけど」

 

「は?」

 

嘘じゃないんだろうなぁ。

でもな、メイドさん好きなのはいいけど私に憧れるんじゃないよ。

ちょっと待って。

なんだかベル君の目がキラキラして見えてくる。

 

「‥‥‥がんばれ」

 

「うん!」

 

諦めよう。

ベル君は私の背中を追うのだろうか、でもアイズさんになにか感情持ってるのも明らかなんだよな。

まあいい。

これでベル君にメイド服を着せてメイドさんにする口実ができたし、メイドさん殺法を教える口実もできた。

 

「お弁当どうする?」

 

これからが大変だぞベル君。

私は一ヶ月でメイドさん殺法を習得したが、君はいつまでに習得できるかな。

 

 

 




ベル君、メイドさん殺法を習得させられるの巻。
ローズちゃんね、最初はノー魔法、ノースキルでした。
一ヶ月でメイドさん殺法を習得して発現させたのです。
何度も死にかけたんだよなぁ。
アイズさんへのベル君の感情、ローズへのベル君の感情。
ベル君のスキルは【憧憬一途(リアリスフレーゼ)】ではありません。
書く機会があるのだろうか。


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