為らず者の旅路   作:誠家

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昔々、戦乱の世。

ある所に。

月の輪村という集落がございました。

その村の者達は、稲作などをしながら生活し、どのような仕事のものであっても仲が良く、領主であっても、それは変わらなかったそうな…




第1幕 幸福と崩壊

月ノ輪城。

 

それは、月ノ輪村を代々治める月島家の城。

この村は代々、《お人好しの村》として有名であったーー。

 

 

「上様、おはようございます。」

 

ペコりと。

艶やかな着物を着た女性が、一人の男性に頭を下げる。その女性に男性は、少し欠伸をすると、優しい笑みを浮かべた。

 

「ん、おはよう。今日も相変わらず綺麗だね、梅。」

「ありがたきお言葉、光栄でございます。お食事の準備が整っております故、お着替えをなされてお越しくださいませ。」

「はーい、ありがとうね。」

 

男性が笑顔で手を振り、そう返すと女性はもう一度頭を下げて、部屋を後にした。

男性は伸びをしてから、ため息をついた。

 

「…さて、起きようか。」

 

 

男性の名は、月島宗玄(そうげん)

月島家第4代当主であり、月ノ輪村の領主である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宗玄は単身艶やかな廊下を歩き、一際目立つ襖を開ける。

そしてその瞬間、中にいた子供達が嬉しそうな声を上げる。

 

「あ、うえさま!」

「ハッハッハ。虎影は相変わらず元気がいいのぉ。」

「こら、虎影!上様、申し訳ございません…!」

「よいよい。元気が良いのは良い事じゃ。」

 

子供の1人が宗玄に抱きつき、女中がそれを慌てて叱咤する。

だが、宗玄はそれを笑いながら制すると、虎影の頭を撫でて「ほれ、怒られる前に座りなさい」と宥めると、虎影は笑顔で戻っていく。

宗玄はそれに微笑みながら玉座に座ると、彼の前に座る部下達を一瞥してから、笑いかけた。

 

「さ、皆の者。召し上がれ。」

 

「「「「上様、いただきます。」」」」

 

宗玄の言葉と共に、部下達は一斉に頭を宗玄に下げる。それに、宗玄も笑顔で頷いた。

 

 

これが、月ノ輪城での《普通》。

宗玄は特に、部下との格差を嫌う。

「皆がいるから、私の地位は意味がある」とは、彼の言葉。

故に彼の中では部下は下ではなく、共に歩む《仲間》。そこには年齢や性別などは関係なく、彼は分け隔てなく接する。

だからこそ、食事も決まった時に、平等な献立を彼らは共に摂る。

それは正しく、《異様》であった。

 

 

「虎影、寧々。今日はどんな事をするのかな?」

 

宗玄が茶碗を置いて、子供たちに問うた。

それに、虎影が嬉嬉として話し始める。

 

「はい!今日はお山の中でけんじゅつのおけいこです!んーと、あとはぁ…」

「こら、虎影。口に物を入れたまま喋らない!上様、私からお話させていただきます。」

「おお、寧々。よろしく頼むぞ。」

 

寧々と言われた少女は「はい」と頷くと姿勢を正して話し始めた。

 

「本日は裏山にお住みになっている源鹿(げんかく)様より剣術の稽古をしてもらう予定となっております。その後は城内で座学を行います。」

「ん、そうか。励みなさい。」

「ハッ。」

「がんばります!」

 

宗玄の言葉に寧々と虎影は返事をする。

それに宗玄も優しい笑みで返した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「宗玄様、入ります。」

「ん、どうぞー。」

 

宗玄の私室に、側近である《道命》が襖を開けて入室する。

 

「宗玄様、隣領の領主から文が届いております。拝見なさいますか?」

「ん、貰うよ。ありがとう。」

「はい。どうぞ。」

 

宗玄は道命から巻物を貰い、目を通し始める。

 

「ねえ、道命君。」

「はっ。如何なさいましたか。」

「いやぁさ。寧々ちゃんと虎影君、もう何歳だったかなって。」

「寧々は先日14に。虎影ももうすぐ9となります。」

「そっかぁ。…いやね、なんか唐突にあの子達と会った時を思い出しちゃって。」

 

そう。虎影と寧々は、宗玄の息子という訳では無い。2人はかつて、宗玄が拾ってきた《孤児》である。

 

「懐かしいなぁ。寧々ちゃんが赤ん坊の虎影君を抱いててね。『これは見捨てられない』と思ったものだよ。」

「2人を連れて帰った瞬間、皆から反対されましたが…」

「まぁね。けど、君はそうじゃないだろ?」

「ええ。…私も、同じですから。」

「だねぇ。」

 

「…そんな可愛い子供達に、面倒事を押し付ける訳にはいかないねぇ。」

「…はい。」

「…ついてこれる?」

「助けてもらったあの時から、私の命は貴方のものです。」

「野郎の命なんていらないよぉ。それなら梅辺りの命が欲しいなぁ。」

「人の家内を取ろうとなさらないでください。」

「やだなぁ、冗談だよ。」

 

そう言って、2人は笑いあった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あー、疲れたあ!」

「こら、虎影!汚いから土の上に寝転がるのはやめなさい!」

 

月ノ輪城の裏山の中。

そこにある小屋の前で2人は木刀を持ち、稽古に励む。

 

「寧々。自分の稽古に集中なさい。」

「でも、大爺様…」

「構わん。剣術は、自身の間隔で掴んで行けば良い。」

「そーだよ、寧々。」

「もう、調子に乗らないの!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お、寧々ちゃんにとら坊。大爺様からの稽古の帰りかい?」

「幹彦さん。畑仕事お疲れ様です。」

「幹彦おじさんこんにちはー!」

「ハハハッ、相変わらずとら坊は元気だねぇ!」

 

「寧々ちゃん、虎影君お疲れ様。これ、ウチのお団子どうぞ。」

「あ、ありがとうございます…」

「志麻おばちゃんの団子すきー!」

「ホッホッホ。ありがとうねぇ、虎影君。」

 

「あ、虎影!お前また大根早抜き対決しようぜ!」

「望むところだよ、甚平!今度は負けねぇぞ!」

「へ、言ってろ!」

 

「奏花ちゃん、こんにちは。お兄ちゃん、相変わらず元気いいわね。」

「こんにちは、寧々ちゃん。…虎影君も、負けてないよ。」

「…そうね。」

 

 

「…なぁ、寧々。」

「ん?どうしたの?」

「俺、村の皆大好きだ。」

「…うん、私も。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜。

寧々と虎影は城の縁側で月を眺める。

 

「2人共、お茶菓子はいるかい?」

「いるー!」

「ハイハイ。虎影は相変わらず元気いっぱいね。」

「すみません、ありがとうございます。茜さん。」

「茜おばさん、ありがとー!」

「良いのよ、それじゃおやすみなさい。」

「はい。おやすみなさい。」

 

女中と寧々は挨拶を交わす。

虎影は貰ったお茶菓子を頬張った。

 

「んまいっ!」

「まったく、食い意地は張ってるわよねぇ。」

 

呆れたような寧々の声。

それに、廊下を歩く足音が重なる。

 

「2人とも、おつかれさん。隣いいかい?」

「う、上様!どうぞ…」

「あー、うえさまー!」

 

宗玄は「寧々、座って」と促すと、自身も虎影の隣に腰を下ろした。

寧々は茶を注ぐと、宗玄に差し出す。

 

「ありがとう、寧々。…それにしても、今日は月がよく見えるね。気温もいい感じに涼しくてお茶も美味しい。」

「そうですね。とても美味しいです。…上様、お茶菓子はいかがですか?」

「ああ、いいよ。私はもう食べたから。それは寧々が食べなさい。…それと、これは私からの贈り物だ。」

「…ありがとうございます。」

「わっ、なにこれ!」

「簪だ。寧々、おいで。つけてあげよう。」

「はい。」

「あー、ずるい!」

「ハッハッハ。後で虎影にもやってあげるよ。」

 

「うえさま!今日もお仕事おつかれさまでした!!」

「お、労ってくれるのかい?虎影は優しいねえ。虎影も、お稽古は大変だったんじゃないかい?」

「えッ…とー…」

「上様、虎影はサボってたので褒めないでくださいね。」

「おや、そうなのか。」

 

寧々に告げ口されたことで、虎影はしゅーんと小さくなり「ごめんなさい…」と謝罪を口にした。

だが、宗玄は怒りもせずに頭を撫でた。

 

「虎影は、剣を握るのは嫌いかい?」

「…きらいなんじゃない。ただ、けんを振る理由が分からないんです。」

「ほう…というと?」

「だって、この村は皆優しくて、皆楽しそうに暮らしてる。なのに、人を傷つけちゃうかもしれないことを習っている理由はないんじゃないかなって、思うんです。俺、優しい皆を傷付けたくない。」

 

クシャッ

 

「虎影は優しい子だね。…確かに、この村は皆いい人ばかりだ。そんな人々の長になれて私はとても嬉しい。」

「上様…」

「…けどね、世には、それこそ他の村の者と戦わなければならないことがある。そんな時に備えて、私達は牙を研がなければならない。」

「皆仲良くすることはできないの?」

 

宗玄の言葉に、虎影は聞き返した。

それには、宗玄も悲しそうに微笑んだ。

 

「…本当は、私もそうしたいんだけどね。」

「……」

「?」

 

その言葉の真意は、虎影には分からない。

だが、いつも優しい城主の、何処か決意を固めたような声に、少しだけ身震いがした。

 

美しい月を、一筋の雲が、覆い隠した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1週間後。

 

その日も、寧々と虎影は裏山での稽古の日だった。いつもより少し早く送り出されたくらいで、あとは特になんて事ない、いつもの1日だった。

…いや、なるはずだった。

 

「あー、今日も爺ちゃんのとこでお稽古かぁ…また《きんにくつう》になっちゃうよ。」

 

そんなことをボヤきながら、虎影は山道を歩いていた。

…すると。

 

トンッ

 

「…ぇ…?」

 

後ろからの首元への衝撃の直後、彼の意識は刈り取られた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……」

 

シュッ

 

「…寧々、行くのか?」

「…ええ。大爺様、虎影をよろしくお願いします。」

「…虎影は、連れていかんでいいのか?」

「…この子は、優しすぎます。それに…」

 

「この子は私の大切な、弟ですから。」

 

「…死ぬでないぞ。」

「…いってきます。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後、虎影はすぐに目を覚ました。

そこは源鹿の小屋の中であった。

寝起きの虎影は源鹿から「しばらくはここにいろ」と言われ、少し疑問に思いながらもそれを承諾した。

 

1日目。

虎影は先日の復習をした。

その後はゆっくりしてから、飯を食べて寝た。

源鹿の剣術指導は緩く、基本は教えてくれるがそこからは本当に自分の鍛錬次第だ。

 

2日目。

源鹿から少しの指導が入り、それを念頭に置いて鍛錬をした。

その後、飯を食べて寝た。

だが、水を汲みに行くときに「あまり遠くへは行くな」と言われた。

何故だろう。

 

…3日目。

今日も復習の鍛錬をしてから寝た。

そろそろ村の皆が気になる。

 

…4日目。

村に帰ってもいいかと聞いたが、「まだダメだ」と言われた。

早く城主様や寧々や女中さん達に会いたくなった。

 

 

……5日目。

特に何もなかった。

 

……6日目。

特に何もなかった。

 

……7日目。

……8日目。

………………………………………

………………………

…………

 

 

「ハッ…ハッ…ハッ…。」

 

13日目。

 

虎影は小屋を出た。

早く、早く村の皆に会いたい。

その一心で足を動かした。

 

道中、自分が勝手に帰ってくればどういう反応をされるか考えた。

怒られる?喜ばれるかも。

それは、どちらでも良かった。

ただ、皆に会いたかったのだ。

 

…だが。

 

ガッ!

 

「うお…!?」

 

道中、転がっていた何かに虎影は躓いた。

それは、柔らかかった。

 

「つぅ…なんだよ…」

 

虎影は膝を抑えながら、転がっていた物をみて、そして、

 

戦慄した。

 

「…………………………………………志麻おばさん。」

 

それは、団子屋を営む女性の姿。

虎影は、歩み寄ろうとした。

だが、気付く。

 

倒れる彼女の上に集る、ハエ。

漂う腐敗臭。

 

「ぁ……」

 

虎影は後ずさり…

 

ガッ

 

背中が、もう一度何かに当たる。

慌てて振り向くと、そこにも倒れ込む、人の姿。

その人物にも、見覚えがあった。

 

「…幹彦おじさん…」

 

…そして、彼も死んでいた。

 

幹彦の背中に刻まれた、刀傷。

それに、虎影は凄まじい不安感を覚えた。

 

「…ッ…!」

 

2人を置いて、彼は走り出した。

山から村までの距離が、果てしなく遠く感じる。

いつもは寧々と通る一本道。

なんて事ない距離のはずだ。

だが、遠い。凄まじく。

 

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ…!!」

 

途中、草鞋がちぎれる。

だが、そんなものは関係なかった。

脱ぎ捨てて彼はそのまま走る。

足が切れようと、どれだけ痛かろうと関係なかった。

ただひたすら、目的地へと急いだ。

 

そして近付く、目的地。

 

ーーそれと同時に強くなる、鼻をつく臭い。

 

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ…!」

 

虎影は、森を抜けた。

そこは、誰もが笑う、彼の大好きな村。

 

 

 

 

 

 

 

 

…そのはずだった。

 

 

 

 

 

 

彼が見たのは、緑と笑顔が広がる村ではなく…

 

 

 

灰と異臭の漂う、焼け野原だった。

 

 

 

「……………………………」

 

 

彼は、ゆっくりと焼け野原に降りる。

それと同時に感じる、生暖かい地面。

黒くなる足。

だが、それも気にせず、彼は歩く。

 

そこには、美しい田んぼも、各々の家も、木々さえもなかった。

 

あるのは、黒い何かと灰だけ。

 

そして…

 

「…………………………」

 

彼は、そこに辿り着く。

それは、彼も住んでいた、巨大な城。

月ノ輪城は、しかし…

 

その荘厳な姿は、変わり果てていた。

むき出しの骨組み。崩れた屋根、門。焼け焦げる壁。

 

「…………………………………」

 

彼は、中に入る。

相変わらず広がる、死の匂いと灰。

 

彼は、給仕場所へとたどり着く。

そこには、かつての面影はない。

あるのは、焼け焦げたかまどや鍋たち。

そして…

 

「…これ…」

 

虎影は、焼け残った着物を見つけた。

白く、何処か清楚なそれは…

 

「…茜おばさん…」

 

 

 

 

虎影は、外に出る。

向かうは、村の入り口。

そこは特に酷く、焼け残った建物にも切り傷が残っていた。

そして、不規則に並ぶ、焼け焦げた丸太達。

 

「………………」

 

その中、灰の中にキラリと輝く何か。

虎影はそれを、一心不乱に掘りだす。

…そして、それを見つけた…

 

「………………」

 

それは、簪だった。

彼の長い髪にも、同じものがつけられている。

…それは、寧々のものだった。

そして、その横に落ちる、もう1つの長物。

 

「……」

 

虎影はそれを、恐る恐る持ち上げ…そして…

 

 

「…………ァ…………」

 

 

それを見て、絶望した。

それは、自身の尊敬する、愛する…

 

城主の愛刀だった。

 

そして、否応なく分かってしまう。

それの落ちていた、焼け野原である意味を。

 

「…ァ………アァ……ァ……」

 

彼は、感じてしまう。

なぜ、この灰が温かく、そして…

 

この灰の、主な()()を。

 

「ァ…ァア…」

 

それにより…

 

 

 

「ァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

虎影は、壊れるように喚いた。

溢れ出す無数の雫に視界が歪む。

 

何故、自分がしばらく源鹿の小屋に居させられたのか、あの時の宗玄の言葉の真意。

その全てを彼は察した。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

涙はかれない。

喉も潰れない。

そして、後悔も絶えない。

もっと、自身が強ければ、もっと、頼られる程に強ければ。

そんな思いが頭によぎった。

 

彼の無限の叫びは、灰色の空に響き渡った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お、なんだ。生き残りがいるじゃねえか。」

 

彼の耳に届く、見知らぬ男の声。

彼は視線をあげて、その男を見た。

男は鎧をつけて、随分と高そうな刀を腰に下げている。そして、その体にこびりつく無数の血痕。

 

「なんだよ。ガキか。…ん?いや待て!あの刀はここの城主のもんじゃねえか!?」

「ヒイャッハ!それなら高値で売れるじゃねえか!?儲けもんだぜ!」

 

金切り声を響かせながら、男は虎影に近づく。男は手を伸ばし…

 

 

 

そして、次の瞬間には、その手は地に落ちる。

 

 

「ヒギャアアアアアアアアアアア!?」

 

男はのたうち回り、そして…

 

「ァァァアアア!」

「ギイヤァッ!?」

 

虎影の持つ刀に、胸を貫かれた。

そして、男は動かなくなる。

 

「こ、こいつ…!」

 

もう1人の男は刀を構える。

…だが、虎影は、そんなことは構わない。

 

 

 

 

『…コイツらが、殺した。』

 

『…俺らの村を、潰した。』

 

 

 

 

 

「………………殺す。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

雨が降る。

 

匂いを。

灰を。

…そして血を。

 

全てを洗い流すように、降り続く。

 

 

「…………」

 

 

だが、虎影の中の蟠りと後悔だけは消えない。

…そして、それはやがて。

 

 

《復讐心》へと、姿を変えた。

 

 

 

「………………」

 

やがて、源鹿が虎影の背後に現れた。

傘をさしたまま彼は虎影に近づく。

 

「……爺ちゃん。」

 

声をかけられ、源鹿は足を止めた。

虎影は両手の簪と刀を、握り締めた。

 

 

 

「俺に、《戦い方》を教えてくれ。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

これからお聞かせ給うのは、とある少年の物語でございます。

悪人を憎み、国を憎み、この世を憎んだ、たった1人の復讐劇。

 

 

彼が、どのような結末を迎えるのか。

 

ーーそれは、まだ誰にも分かりませぬ。

 




日常とは、変わりゆくものである。
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