普段はニジガクのヤンデレ小説を書いています。この小説とは程遠いほどヤベェ作品なので耐性ない人は読むのをお控えくださいね☆
許嫁…それは現在の概念では幼少時に本人たちの意志にかかわらず双方の親または親代わりの者が合意で結婚の約束をすること。
また、その約束を結んだ婚約者をさす言葉だ。
昨今では少女漫画やアニメ、ゲームでしか見ることのできない絶滅危惧種の部類に入るモノである。
俺だって実際マジにそんな出来事が起こるだなんて思ってもいないし、そういうのはフィクションだからいいのであって。
リアルでそんなことを親にされようものなら絶縁レベルになりかねないとも思っている。
ここで突然だが告白しよう。
南家の長男こと俺ーー南
もう一度言おう。
許嫁がいる。
ま、まぁ?
まだここまでならあり得なくもない話なわけで、それだけならここまでもったいぶりはしない。
特殊というか、特別というか、特異な部分を挙げるとするのなら…それはもちろん。
「隼人、私と結婚しなさいよ」
「南君、私を選びなさい」
「はーくん、お姉ちゃんと結婚しよ?」
許嫁が…3人もいる事だ☆
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拝啓 何ヶ月か前の俺へ。
春爛漫の季節になり、俺の門出をお祝いするかのように色とりどりの花が咲き乱れております。
この手紙が届く頃、俺は難関と言われる高校に独学で受かり、喜びを胸に新しい仲間と過ごす高校生活を描いている真っ最中だと思います。
おめでとう。
祝福だ。
未来に乾杯。
その言葉を送りたい。
俺は今、夢に描いた学舎の正門を通り桜が舞い散る道を抜けて「1」という真新しいスタートを意味する数字が至るところに見えるクラスに入り、春の香りが鼻をくすぐる自分の席に座りました。
運がいいことに窓際の後方。
1番後ろではなかったけど、窓から暖かい風が吹いてきて心地いい席だ。
さて、ここからが本題だ。
南隼人、お前は決して中学の頃ぼっちじゃなかったはずだ。
むしろクラスの中心とも言える奴だったろ?
もちろん高校生活だってそうなるはずだったんだと思う。
でもな。
でも…
「なんで男子生徒がいるんだろう…」
「あなた知らないの?ウチは今年から共学になったのよ?」
「でもクラスの名簿見ても明らかに彼一人だよね?」
「そりゃ、ハーレム目当てで来るような男子を学校が選り分けた結果でしょ」
「じゃあ彼、もしかしてすっごく頭いい!?」
「いやーでもわざわざ女子の花園に足踏み入れてくるんだからちょっと頭悪いのかも…」
どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁ!!!
見渡す限り、全方位、360度。
全員女子。女子。女子。
そう男子は…この空間に俺ただ1人。
友達?知人?そんなものなどこの世界にはありはしない。
よく漫画とかで見かける「〇〇隠すためにわざわざ遠くの学校に入ったから知り合いいない」とかそんな次元の話ではないのだ。
去年まで女子校だったのだからいないのが至極当然、当たり前田のクラッカーなのだ。
「うわ、なんかいきなり泣き出したよ!?」
「受かったことに感動してるのかな」
「今更すぎでしょ。あなた話しかけなさいよ」
「えー無理だよ。男の子苦手だから女子校入ったのに」
あぁ…穴があったら入りたいとはまさにこういう時使うべきなんだろうか。
俺は机と椅子の間から覗く床から視線を周囲に向ける。
その瞬間、ヒソヒソと喋っていた女の子達も携帯をいじっていたギャルな女の子も、早弁していた女の子でさえ、ピタッと動きを止めてこちらを凝視している。
もういっそのことモグラになりたいくらいだが、俺のまーるく研がれた爪ではこの教室の床すら剥がせそうにない。
そしてこのままでは目からビームで俺の身体に穴が開くのも時間の問題だ。
なんとかこのクラスでの立場を作らなければ…!
思い立ったが吉日、善は急げだ。
俺は、手っ取り早く近くにいたメガネをかけた女の子に声をかけてみる。
俺もメガネをかけている(姉さんにもらった。伊達だけど)のでここはメガネトークと洒落込む作戦だ。君視力いくつ?とかね。
「あ、あの…」
「ひっ!ご、ごめんなさい!」
「へ?いや、俺はただ話がしたくて」
「え、えと…えと…ダ、ダレカタスケテー!!」
「…」
に、逃げられた…
あれ、待ってこれ割と洒落にならなくないか?
「彼一体何言ったのかな?」
「助けてって…セクハラ?」
「サイテー」
「本当〜」
まずい。まずいまずいまずい!!
な、なんとか誤解を解かなければ!!
脳内に警報を発令し脳味噌フル回転で打開策を練っていると、唐突に胸ぐらを掴まれて視界に1人の女の子がドUPで現れる。
「ちょっと!かよちんに何したの!」
「か、かよちん?」
「今キミが話しかけたメガネの子!嫌がるようなこと言ったんでしょ!」
「違うって。俺はただ話しかけただけで」
「そんなわけない!というか大体なんでウチに男子生徒がいるの!」
「いやぁそれは俺が聞きたいっす…」
オレンジ色の髪が健康的な肌によく映えるボーイッシュな女の子に、胸ぐらを掴まれて俺は為す術がなくなる。
「ぼーっとしてたら母親に女子校入れられてました」なんて言った日には、どんな目で見られるのだろうか。
想像もしたくない。
次第に周囲にはギャラリーが集まりはじめ、やったれとか、血祭りだとか物騒なワードが飛び交っている。
女子校怖すぎるだろ!!
今なら密林に迷い込んでアマゾネスに捕まった男達の気持ちが痛いくらいに理解できる。
あぁ…終わった。
視界が赤くなって「you di…」あたりまでいきかけた時、
「彼、別に何も言ってなかったわよ」
喧騒の中、やけによく通る声が聞こえた。
それは俺のちょうど真後ろからだった。
真紅の髪の中にアメジストにも負けず劣らずな透き通った瞳が見える。
手にした小説を机に置いて、少女はこれでもかと特徴的なツリ目を細めてそう口にした。
「そんなわけないでしょ!絶対かよちんに何かしたんだよ!」
「私は真後ろで聞いてたし、それにあの子は彼が話しかけようとしただけで、すぐに逃げてったわ」
「…本当?」
ツリ目の女の子の話を聞いて、ボーイッシュな女の子は疑念の目をこちらに向ける。
それに呼応して、もげんばかりに俺は縦に首を振った。
「分かったら離してあげれば?」
「う、うん」
胸ぐら掴みから解放されて、息を整えているとあっという間にギャラリーは解散していた。
俺は乱れた制服の襟を伸ばしながら、一呼吸置いて落ち着きを取り戻す。
「そういうわけだから、さ?まぁでもいきなり話しかけちゃったのはこっちも悪かったし、後であの女の子には謝っておくから」
それで納得してくれたのか、それ以上ボーイッシュな女の子が何か言ってくることはなかった。
ふぅ…なんとか首の皮一枚繋がったみたいだ。
俺はほっと胸を撫で下ろしながら再び、後方へと身体を向ける。
そして、また小説を読みはじめたツリ目の女の子に対して軽く頭を下げた。
「マジに助かった。ありがとな?」
「別に…小説読むのに周りがうるさかったから」
突っぱねるように彼女はアンニュイな表情で返事だけを返してくる。
「だとしても、感謝だよ。危うく1話で終わりかけたんだからさ」
「…1話?」
「あぁいやいや、なんでもないよ」
危うくこの世界の真理に恩人を巻き込みかけて、俺はなんでもないよと手を振る。
「なんかさ、成り行きでこのまま話すんだけど。よかったら話し相手になってくれないかな」
「私、小説読んでるんだけど」
「だったらその小説よりは面白い話してみせるよっと」
全く相手にする気がないようなので、俺は彼女の小説を一旦取り上げて机の上に置いた。
「ちょっと!…あなたここで私が叫んだら今度こそ変質者になるけど?」
「へぇ…トリストラム・シャンディか。いい趣味してるね」
「あなた、分かるの?」
「ローレンス・スターンだろ?もっともこんな小説読んでるのは普通の高校生じゃあないけどね」
この小説は作者が作り出した架空の人物の自伝なのだが、その内容は聞いて驚け産声を上げる以前の受精から始まる話だ。さらに言えば出生云々のあたりまで3巻くらいは費やしている。
じーちゃんばーちゃんが読んだなら先に寿命でお迎えが来てもおかしくない。
作者のローレンスは読者に想像をしてほしいと、あえて白紙のページ、はたまた真っ黒に塗りつぶされたページなんかを挿入したりとなかなかに特異な工夫を凝らしながらこの作品を書いていたが、未完のまま寿命で亡くなったために結果、まさに物語の行く末は読者に委ねられたわけだ。
そんな事情が相まってかこの小説を読む人はあまりに少ない。
まぁ俺読んだんだけど。
「悪かったわね普通の高校生じゃなくて」
「良い意味で言ったんだよ。ツリ目ちゃん」
「ツ、ツリ目!?ちゃ、ん!?」
名前を知らなかったので思わず脳内での呼称を使ってしまった。
流石にこれはまずかったか?
彼女はびっくりして目を泳がせた後、妙に澄ました顔をして眉を潜めている。
しかし怒っているかと思いきや、そうでもないような気がする。
数秒前まで真っ直ぐだった眉はふにゃりと曲がり、真一文字に結んだ口は蛇のようにクネクネ曲がっていた。
なんだか面白い子だ。
「どうしたの?」
「っ、な、なんでもないわよ!もう話は終わりよ!さよなら」
小説を鞄にぶち込むと、まだ終礼が終わっていないのに帰宅を始めるツリ目ちゃん。
「おーい。まだ終礼終わってないよ?」
教室を出て行って、姿が消えたところに俺がそう言うとようやく気づいたのかスタスタともう一度引き返してきて机に戻ってきた。
やっぱり面白い。
「うぅ…」
「あはは…」
顔を赤らめて、机に突っ伏す彼女は力なくうめき声をあげる。
「…名前」
「へ?」
「だ、だから名前教えなさいよ!」
「あぁ俺は南隼人。キミは?」
「…西木野真姫よ」
「そっか、教室では隣人同士よろしくね西木野さん」
「…」
西木野と名乗った彼女は自分から名乗っておいていざ俺に名前を呼ばれると恥ずかしかったのか、そっぽを向いて髪をくるくると指先でいじっていた。
「背中は預けたぞ、西木野隊員」
「…イミワカンナイ」
担任の教師がはいってきたのを確認して俺は視線を西木野さんから教卓に移したのだった。
文の感じとか、あらすじ見たりしてストーリーの続きが気になったりした方は評価と、お気に入り、感想よろしくお願いします♪