高咲侑はどうする?
たたかう
逃げる
→ハグ
でんでんでん
「生徒会長さん怖かったね」
「ええ、直接お話ししたのは私も初めてでしたが、なんだか近寄り難い方でしたね」
「ことりも怖くて震えちゃったよ〜」
「えぇ…3人とも記憶喪失?どう考えてもことり姉達の方が怖…くないです。全然優しかったです」
無言の圧力で本音が言えない帰り道。
俺達4人の会話は廃校と放課後に起きた生徒会長との一件で持ちきりだった。
「にしても穂乃果、自分の通ってる学校がこんなに何もない学校だと思わなかったよ」
「部活動も盛んな割には、結果は出ていませんでしたし…」
「歴史があって、くらいしかことりも考えつかないよ〜」
あの後、特にやることもなかったので俺のための学校内案内も兼ねた音ノ木アピールポイント探しを行ったのだが、結果得たのは音ノ木がパッとしないことと、男子トイレが職員室横にしかないという絶望感だけだった。
「まぁ、だからこそ廃校にするしかなかったんじゃないかな。母さん、ここのところ自室で頭抱えてばっかりだったし」
「ひっきりなしに電話で色々話してたもんね…」
最近まで、表情が曇りがちだった母さんが今日の朝何事もなかったようにケロッとしていたのは、言ってしまえばい諦めたことで肩の荷が降りたからなんだろう。
「でも、なんだかまだ諦めちゃいけない気がするんだ」
穂乃果ちゃんが鞄をブンブン振り回しながら夕日に向かってそう呟いた。
「解決策を見つけようとするのはいいですが、他人に迷惑をかけてはいけませんよ?」
「分かってるよーもー海未ちゃんったらお母さんみたいなこと言ってー!」
「穂乃果のせいでどれだけ私達が被害を被ってきたと思ってるんですか!」
「言っとかないと後々大変なことになるからね〜」
「あはは…」
そんなやり取りをしていたらいつのまにか別れ道に辿り着いてしまい、とりあえずこの件はまた明日考えることにして穂乃果ちゃんと海未さんと別れたのだった。
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「「ごちそうさまはーくん」」
「お粗末様でした。というか、こと姉はともかく母さんまではーくん言うな」
「あらいいじゃない〜ことりは呼んでいいのに、お母さんだけ呼んじゃいけないなんて寂しいわ」
「姉さんにも言ったけど、意地でもやめないって言うから渋々許してるだけだ」
「えへへ、だってはーくんはいつまでもはーくんだもの」
久しぶりの一家での食事。
母さんは忙しいのでいつもはことり姉と交代で作るようにしているのだが、今夜は昼の一件もあり俺が二夜連続で夕食を作ることになった。
だがそこに母が帰ってきて、まるで子供のようにあれ食べたいこれ食べたいと駄々をこねてきたので全部作ってやった。
食えるもんなら食ってみろと言わんばかりの量を2人はいとも簡単にたいらげ、現在満足そうな表情を浮かべている。
曰く息子(弟)の作ったものは別腹らしい。
意味不明である。
「はいはい。そのはーくんが洗い物するから、食器下げてね」
「ううん、お母さんとことりでやるから、隼人は自分の部屋で自家発電でもしてなさい」
「おいおい、お前今すげぇこと言ってるぞ?というか本当に俺の母親か?」
どうせ何か企んでるんだろう。もう騙されんぞ。
「もー、察しが悪い男の子は嫌われるわよ。ほら!さっさと行く!」
「はぁ?ってちょ押すなよ!」
母さんに背中を押されるままに二階へと押しやられた俺は、仕方なく自室に入って
読みかけの漫画を読んだり、明日の授業の予習をシラバスを参考に進めたりして時間を潰した。
時計を見ると、30分近く経っている。
いったい何の話してるんだ?
母さんはああ言ったが、流石にここまで時間がかかる話となると好奇心で気になってしまう。
階下に聞こえないようにそっとドアを開け、忍足で階段へと向かう。
「お母さんのわからずや!!!!」
「っ!」
ことり姉の悲痛な声に思わずびっくりして尻餅をついてしまった。
とほぼ同時にことり姉が椅子を倒して階段を駆け上がってきて、目があってしまう。
「あ、あのことり姉」
「…っ!」
ことり姉は何も言わずに自室に入って鍵をかけてしまった。
泣いてた…よな?今。
居ても立っても居られなくなり、ことり姉の部屋のドアをノックする。
「姉さん。母さんと喧嘩したの?…泣いてるの見たらほっとけないよ」
………
「隼人」
階下から母さんが俺を呼んだ。
「母さん、何言ったのさ。姉さんがあんなに取り乱すなんて」
「あなたにも話さなきゃいけないの。降りてきてちょうだい」
さっきとは打って変わり、神妙な面持ちで母さんは口にした。
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「で、何?話って」
母さんの真正面の席について、俺は問いただす。
ことり姉のあの反応からして余程悪いニュースなようだ。
まさか…離婚?
確かに父さんは外交官だからほとんど家にはいないけど、欠かさず手紙を送ってくれるし、こまめに電話もくれる。
あの親父浮気でもしたんだろうか?
いや…でも2人が会うと毎度毎度、俺たち姉弟が恥ずかしくなるくらいのラブラブっぷりだし。
それはないと思うのだが…
「単刀直入に言うわ」
「おう」
「真剣に聞いてね」
「おう」
「心の準備はいい?」
「お、おう」
「やっぱり先にお茶「早く言えよ」
ったく。焦らされたら余計緊張するじゃんか。
「あのね、隼人。あなたに伝えるのが遅くなって本当に申し訳なく思ってる」
ゴクリ…
早く言ってくれ!!
「あなたには…
許嫁がいるの」
「だからね、許嫁がいるのよ〜あー緊張した♪」
「ああ。許嫁ね?あっそう」
「あら?案外落ち着いてるわねビックリしないの?」
「別に…許嫁くらいどうってことないだろ?ったく勿体ぶりやがって…ところでさ………
コーヒーに入れるのって塩だっけ?砂糖だっけ?」
「動揺しすぎよ隼人」
「…意外といけるぞ塩」
「やめなさい」
と、まぁボケとツッコミが天変地異によってひっくり返ったところでようやっと落ち着きを取り戻した俺は塩コーヒーを片付けて席に再びつく。
「あの、マジ意味わかんないんだけど。なんだよ許嫁って、そんなんいつ決めたんだ」
「そうね〜アレは私達が学生の頃だったから…二十数年前からよ」
「いや俺産まれてねぇし。もう一度聞くよ?お前本当に俺の母親か?」
息子に黙って自分が理事長を務める女子校に転入させたり、息子が産まれる前から許嫁を作ったり、挙げ句の果てには息子に自慰行為を勧めるというキチガイぶりに俺はもう胃が痛くなってきた。
「いいじゃない〜許嫁の女の子のお母さんとは中学以来の付き合いでね。とーっても美人だから絶対綺麗な子を産むと思ってたのよ」
「そっちの親はそんな馬鹿げた約束覚えてるわけ?」
「それがね。私が忘れてて最近飲みに行った時話して思い出したのよ」
あぁ…もうツッコむ気力すらない…待てよ?
話を聞いていて引っかかる感じがある。
「いや、その約束さ。あっち側が男産んでたらどうしたんだよ」
「んーBL?」
「…じゃあ逆に俺が女だったら?」
「んー百合!」
ダメだこいつは。
脳細胞が完全にイカれてやがる。
「話にならん。そんないきなり許嫁とか言われても、はいそうですかなんて言えるか」
この宇宙人のことだ。
どうせことり姉には男の許嫁がいるとか言ったに違いない。
あぁ…姉さんどうしよう!俺達のお母さんネジ飛んでるよ!!
「で、今からお家に挨拶に行きましょう」
「話を聞けサイコパス宇宙人野郎ぉぉぉぉぉ」
「あぁ…息子に罵声を浴びせられるだなんて…気持ちいいかも♡」
「隼人声を発しなさい、せめて心の声を文にしなさい。このサイトの概念が崩壊するわ」
「だったらお前も真面目に話をしろ、そして聞け。人間として母親としてなすべきことをなせ」
「…哲学?お母さんわかんない」
殴るな…抑えろ俺。
「とにかく!受け入れるか、受け入れるかはともかくまずは会ってみなさい。もしかしたらとってもタイプであなたもその気になるかもしれないじゃない!、ね?」
選択肢一つしかねーし。
てかもういいや。
キリがない。
「分かった分かった。会ってやるよ。それはともかくな、姉さんには一体何を話したんだよ」
「隼人に許嫁がいるのーって話したら、あの子動揺したみたいで」
「そんな事であんな風にならないだろ。何か他に心当たりは?」
「やっぱりないわね…」
「…はぁ。分かったよ。姉さんには後で話聞いとくから。準備してくるよ」
こればっかりは母さんも分かってないようだし、当人に聞くしかない。
今はそっとしておいて帰りに姉さんの好きなチーズケーキを買ってかえるとするか。
にしても…姉さんがなんで俺に許嫁がいるって話を聞くと動揺して泣くんだ?
…は!まさか!
姉さんはその許嫁の子と知らない内に仲良くなっていて、その子のことが…!
「とか思ってるんでしょうね〜隼人のことだから。全く本当に鈍感ね私の息子は…」
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「ふむ…これは…すごいとしか言いようがない」
母さんに導かれるままに訪れた先は、俺の許嫁が住んでいるという家。
家…という言葉で言い表していいのだろうかこの光景は。
大谷○平や、チェ・○ンマンが何人でもスイスイ入っていけそうな高い門。
その門からやたら距離がある豪邸。
ガレージに止まっている高級車の数々。
「母さん、俺はこれからどんな御令嬢に会うんだ?」
「お家は代々お医者さんをやっていて、この地域に住んでる人なら誰でも知ってる西木野病院の跡取りよ」
ま、まじか。
あの超でかい病院の跡取りときたか。
なんだか妙に緊張してきたな…一体全体どんな高飛車な女が出てくることやら…
ん?待てよ?なんかどっかで聞いた響き…
「いらっしゃいひばりちゃん!」
「こんばんは〜美姫ちゃん!」
考え込んでいたら、気づかないうちにそそくさと母さんはインターホンを押して
挨拶を始めてしまっていた。
「もしかしなくても君が隼人くん?」
「あ、はい。南隼人です。母がいつもお世話になっています」
「あらあら、礼儀正しいのね〜。でもそんなに気を遣わなくてもいいのよ?もうすぐあなたの義母さんになるんだから♪」
「は、はぁ」
「私は西木野美姫よ。よろしくね。あなたのお母さんとは中学生の時から一つ下の後輩で仲良くしてもらっているの」
美姫さん、か。
なんというか、若い。
本当に母さんと一歳しか違わないのか?
「隼人?失礼なこと考えてないでしょうね?」
「考えてないって」
「ふふ、玄関で立ち話もなんだし、早く上がって。今日は主人もいないしひばりちゃん飲みましょ?」
「あら、いいの?じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。今日は飲みパーティーね☆」
本題はどうした。
「あ、肝心の娘なんだけどまだ帰ってきてないの。病院の方に顔出しているからもうすぐ帰ってくるはずよ」
「そうなんですね。じゃあ待たせてもらいます」
「ええ。ごめんなさいね」
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「どうしてこうなった」
招き入れてもらってたった30分。
俺の眼前に広がるのは、顔をトマトのように赤くしたダメ人間もとい母さんと、同じく酔ってすやすやと寝息をたてる美姫さんの姿だった。
「母さんこんなにアルコールに弱かったか?というか美姫さんには悪いが、あなたも弱すぎるでしょう!」
全く起きる気配のない2人を前にどうしたものかと頭を抱える。
これ、娘さんが帰ってきてもどう説明したらいいんだよ。
「はぁ…とにかくこの嵐の後みたいなテーブルを片付けなきゃ…」
勝手に人の家を色々歩き回るのは気が引けたが今回ばかりはしょうがない。
ダメ人間の尻拭いはいつだって俺か、○泉洋がしなければならないと相場が決まっている。
「雑巾と…バケツがあればいいんだけど…」
ふと頭によぎるのは、娘さんがこのタイミングで帰ってくるという最悪のイベントだ。
だって今の俺、どうあがいても泥棒だしな。
「っと…あれバケツかな」
棚の上に見つけたバケツに手を伸ばす。すると、うっかり棚に寄りかかる態勢になってしまい棚の上から積まれたものが一気に落ちてきてしまった。
「おわっ!?ってなんだよこれ…ボディソープかなんかか?最悪だ…」
身体中がボディソープでベトベトになってしまい、状況がさらに悪化してしまう。
一旦、母さん達のところに戻るか…もしかしたら起きてるかもしれないし。
そんなことを考えつつ、玄関の前を通った瞬間。
「ただい…ま…」
家に入ってきた人物と目があった。
・
・・
・・・
・・・・
「きゃぁぁぁぁぁぁ泥棒ぉぉぉぉ!!!!!」
「そうなるよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
やっぱりというか、絶対そうだと思っていたのだが。
許嫁というのは、あの西木野さんだった。
ここは、一刻も早く俺だと気づいてもらわなければならない。
「いや、俺!!南隼人!!」
「え、南隼人???………だとしても何やってんのよ!!!!」
「もう俺も分かんないよ!!!ていうか、許嫁って西木野さんだったんだね!!!」
「……ますますイミワカンナイ!!!!!」
「もうごめん!全てにごめん!本当ごめん!」
「いやっ!謝りながらこっち来ないでよ!」
「ち、違うって!滑っちゃうんだよ!」
「「えいっ」」
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
「手に柔らかい感触が…じゃなくて!!今のは後ろから母さん達が押してきて、だから今こうして胸を揉んでしまっているのは不可抗力なんだ!」
「ならとっとと手を退けなさいよ!!!!」
「あらあら…もう仲良くしてるわよあの子達」
「そうね、結納はいつ頃に…」
「「勝手に決めるな!!!!」」
「「あら息ぴったり」」
高咲侑はハグを要求した!
果南「え?ハグ?敵なのに?まぁいいや、じゃあ…ハグしよっ」
高咲侑は松浦果南に抱きついた!
果南「はい!背骨粉砕♪」
高咲侑は目の前が真っ暗になった…