高咲侑はどうする?
たたかう
逃げる
→善子
でんでんでん
「はい!じゃあ改めて許嫁同士のご対面〜♪」
「わードンドンパフパフ!」
「「……」」
「真姫、彼の印象はどう?」
「…サイテー」
「んー…かっこいいって言ってるわ♡」
「言ってないわよ!!」
「もー。真姫ったら、隼人くんだってわざとじゃないって言ってるでしょ?胸を揉まれたくらいで怒らないの」
「いーえ、悪いのはうちの息子よ。いきなり女の子の胸を揉んじゃうなんて、お母さんそんな結城○トみたいな子に育てた覚えありません!」
「…すみません」
元はと言えば貴様らのせいだと言いたいところではあるが、それを言ってもしょうがないので俺は素直に頭を下げる。
「ほら真姫、隼人くんちゃんと謝ってるわよ?」
「…ふんっ。ワタシもう寝るから」
興奮気味だった西木野さんは今にも噴火しそうだったが、俺の陳謝が通じたのか少しムスッとしながらも落ち着きを取り戻してくれたようだ。
しかし、美姫さんの静止を無視してそのままスタスタとリビングから出て行ってしまった。
隣で母親がニヤニヤしているのはさておき、どうしたものやら…このままでは明日からの学校生活は再び生き地獄と化すのは目に見えている。
女の子って団結力すごいし、西木野さんが「あいつはいきなり胸を揉むような変態よ」と言ってみろ。瞬く間に「変態」の通り名が全校に知れ渡るだろう。
ジャガイモが腐るくらい足が速いはずだ。
「ごめんなさいね、ウチの子ちょっと癖があるの。昔はもっと素直な子だったんだけど、小さい頃男の子によくちょっかいかけられてそこから周囲に壁を作るようになってしまったの…」
「そうなんですか…」
だから西木野さん今朝も1人で…
脳内で今朝初めて西木野さんを見た時の映像が流れ出す。
周りの女子が近くの席同士で交流をする中、1人だけ「近づかないで」と言わんばかりのオーラを発していた彼女。
今思えばその姿はひどく寂しげに見えてくる。
「それにあのツリ目。あれのおかげでただ見つめただけで睨んでると思われがちなのよね…」
「美姫ちゃんも昔はよく子供に逃げられてたものね〜」
たしかにあのキリッとしたツリ目で見られると、初対面では近付き難いかもしれない。せっかく綺麗な顔をしているのに、笑みの一つもこぼさないから余計に怖がられてしまうのだろう。
「可哀想よね…夫がちょっかいかけてきた男の子達のお家に電話をしてからそうなってしまったの…真姫はあんなにいい子なのに」
ん?…理由それじゃね?
「隼人、あなた将来のお嫁さんが困ってたら助けてあげるのよ?1年生はあなた達のクラスしかないんだから。無理やり席を前後に変えた私の努力を無駄にしないでね?」
やはり貴様の息がかかっていたか。
…もちろん彼女は許嫁以前に恩人だから助けてあげたいのはやまやまだが。
今日の時点で既に人間関係的にはゲームオーバーな気がしなくもない。
まさか出会って1日目の夜で関係が修復不可能になるだなんて思わなかったのでセーブはしてない。
ぶっつけ本番の人生に終止符を打ちたくないなら今一度、誠心誠意謝っておくべきだろう。
「あら、そろそろ帰らないと。ことりを家にほったらかしたままだわ」
「俺、西木野さんにもう一度謝ってくるよ」
いそいそと帰り支度を始める母さんにそう伝える。
美姫さんはニコニコと笑みを浮かべながらこっちを見ていた。
「そんなに気にしなくてもいいのよ?」
「いえ、西木野さんには個人的な恩もありますから。しっかりと謝っておきたくて
」
「フフ、分かったわ。真姫ちゃんの部屋は2階の奥よ」
「なら、私は先に帰ってるわね。あ、もし上手くいったらそのまま帰ってこなくていいわよ?」
「もー!ひばりちゃんったら気が早いわよ〜じゃあお赤飯炊かなきゃ♪」
「」
突っ込んだら負けなので、俺は込み上げる衝動をギリギリで飲み込みつつ、リビングを出て西木野さんの部屋へと向かう。
階段を上がって廊下に連なる幾つものドアの中から"Maki"と書いてあるプレートがかけられたドアの前に立ち、軽めにノックした。
「西木野さん、いる?」
「…なに」
ドア越し独特の曇りがかった、それでいてぶっきらぼうな返事がかえってきた。
「さっきは本当にごめん。でも、わざとじゃないんだ」
「…」
「許嫁のことだけど、あんまり真に受けないでいいと思う。俺は西木野さんと友達として仲良くしたいと思ってるから」
「…」
「もし許してくれるなら、明日からも…」
扉越しに俺の心中を素直に打ち明ける。返事はないが、時折微かに聞こえていた呼吸の音が少しだけ揺れた気がした。
「…それだけ。じゃあ行くよ」
ガチャッ
「待って」
歩き出した一歩は掴まれた腕に連動して動きを止める。
振り返った時、そのモデル顔負けの綺麗な顔が妙に目に焼き付いた。何かを期待しているようなそんな顔だった。
「ねぇ…あなた小さい頃の事って覚えてる?」
「へ?」
「何か…何か大事な約束。してない?」
何を言われるかと思えば、ガキの頃の約束?
戸惑いつつも脳内の引き出しを片っぱしから開けていく。
最初の記憶…もちろん家族だ。父さん、母さん、ことり姉。いつも俺の側にはことり姉がついていてくれた気がする。しばらくすると、穂乃果ちゃん、海未さんが現れて他にも仲の良い友達が次々に現れて記憶も曖昧な状態からはっきりしたものになる。
…は私のこと…好き?
えへへ、嬉しい。
…も好きだよ。
じゃあ忘れないように…
…束だよ?
いつか…2人が大人になったら…
あ、れ?なんだ…今の。
何か大事なこと…忘れて…。
「ねえってば!!」
「わっ!」
フラッシュバックしていた記憶が西木野さんの声で一気に引き戻される。
「で、何か心当たりはあるの?」
グッと詰め寄られて先程思い起こされた記憶のことを話そうかとも思ったが、今話そうとするとあまりに曖昧すぎてうまく言葉にできそうになかった。
「えーと。特に無い…と思う」
「そ、そう…い、いつまでそこいるのよ、早く帰んなさいよ!」
いきなり機嫌がまた悪くなった西木野さんに蹴られて、俺の身体は力無く床に倒れ込む。
「イテテ。選択肢ミスったかなぁ」
これで明日からの学校生活の運命は決まったわけだが…にしてもさっきのビジョンは一体なんだったんだろうか。
頭を軽く振ってこびりついた違和感を振り解く。
しかしその感覚は妙に不思議な予感を告げている気がした。
高咲侑はヨハネの本名を呼んだ!
善子「ヨハネッ!」
高咲侑は怪しい骨董品を渡した!
善子「ふ、ふーん。いい心がけじゃない。特別にあなたもリトルデーモンにしてあげるっ」
津島善子が仲間になりたそうにこちらを見ている…
津島善子が仲間になった!