お前ら人間じゃねぇ!   作:四季織

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日刊ランキング1位!? こんなことあるぅ!?(汚い高音

皆様のおかげです、本当にうれしいです!

自分の書いたものが評価され、多くの人から感想をいただけることがこんなにうれしいとは……

面白いと思った書いたものが面白いと思ってもらえる、素晴らしいことですね


第六話

 最悪だ、最悪の想定が当たってしまった。

 試験で見たあの3人だけじゃない。

 クラスメイト全員バケモンじみた個性をもってやがる。

 負けず劣らずの結果出せたなぁ、なんておもってたらポンポンと同じような結果が飛び出してくるのだからたまらない。

 何度バリアを張ったんだろうか。

 俺の求めていた視線は敵わないという絶望と称賛、しかしそれでも諦めないと負けん気のこもった視線であって、守ってくれてありがとうという気楽なそれではなかったはずなんだが。

 いい子だねーよしよしとでも言いたげな、今までさんざん友や教師、その他大勢から向けられていたその視線に甘んじていたのはそれが楽であるという事実もあるがそれ以上に。

 そんな容姿と性格でありながら個性が万能で圧倒的であるという事実にギャップを持たせるためのはずだ。

 幼く見える少女がでかい剣を持つだけでロマンがある。そのうえで強かったらさらに際立つだろう。

 そんな反応が欲しかっただけのはずなのにどいつもこいつも……。

 いや、何人かそうでもないのがいるけどもう確定だろう。ボールを吹っ飛ばすという行為に対して生かし方がなかっただけでもう確実に全員人間やめてる。

 

「気合が足りないんだ、蒼軌、ちょっと殴ってくれ!」

 

「はい」

 

「ありが――お前、それあっぶ……!」

 

 二回目の測定を前にそういわれたので、遠慮なく切島を聖剣の腹でぶっ叩いてやったがもう硬さが尋常じゃなかったもんね。

 強化しきったさっきほどではないとはいえそれなりの力でぶっ叩いたはずなのにびくともしない。というか硬化してた? 不意打ちだったししてなかったはずなんだけど、反応が人間やめてるのか?

 硬いというか固定されてるかのようにびくともしない。

 こちらが弾き飛ばされたので気合が入ったのかは知らん。

 何びっくりしてんだ、容姿そのままに可愛らしくビンタでもしてもらえると思ったか謎物質め。

 

「うぇええええん……」

 

 結局二投目も結果が伸びることのなかった三奈ちゃんはすっかり俺に頭をうずめている。

 彼女の個性もおおよそボール投げに役立つものではないが、その真価を発揮する場を用意されたのならばどうなるかわからない。まさか聖剣溶かされちゃうとか? 勘弁してくれ。

 包容力のある胸でなくてすまんな、固いだろう。切島ほどではないだろうが。

 というか角刺さってる角刺さってるまじで痛い。少なくとも俺の肋骨よりその角は堅かった。

 

「だからお前は免除するといったろう」

 

「納得いきませんわ! 何もせず結果を得るなんてヒーローとしてあり得ないことですもの!」

 

「先生! やらせてあげてください! 私頑張りますから! みんなを……守って見せます!」

 

「蒼軌さん……!」

 

「八百万さん!」

 

 チラッ。

 

「感動シーンっぽい言い回しをしてもだめだ。次、立ち幅跳び。準備」

 

 哀れ八百万。

 私の必死の説得もむなしく彼女は二投目もボールに触れることすらなかった。

 彼女も彼女でとくにおかしい。

 どうすんだあのでかい砲塔。質量保存の法則どこ行った。

 

 もう決定したのだ、全員おかしいのだと。

 あの青山が体中からレーザー出して、それどころかアニメや漫画のレーザー兵器よろしく自由自在に操った時点で察したと言ってもいい。

 もはや俺にできたのは先生への好感度稼ぎとツッコミだけだったのだ。

 テンションがおかしくなっているのがわかる。

 なにが八百万さん! だよ。あほかよ俺は賑やかしキャラじゃないぞ。

 おいこら聖剣仕事しろ。精神を平静にするんだ。今が問題ない精神状態だとでも?

 よしよし、落ち着いてきた。

 クラスメイトが強い。

 それはもう認めよう、認めざるを得ない事実だ。それが気に食わないほど、俺も子供ではない。

 だから見極めるのだ。

 この力をどう生かしどう工夫すれば彼ら彼女らに圧倒的な差をつけ、最強に成れるのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.立ち幅跳び

 

 測定不能(時間中いくらでも飛び続けるため)

 蒼軌聖、青山優雅、麗日お茶子、口田甲司、常闇踏陰、轟焦凍、爆豪勝己、八百万百。

 

「聖ちゃんーーー! 私もつれてって! 私に翼をください!」

 

「申し訳ない」

 

 

「フフ☆ 美しい翼だね、でも僕のほうがもっと美しいよ! どうだいこの輝く翼☆」

 

「地面削れてる! あぶねぇよ!」

 

 

「自分まで浮かせられるんだね、すごいなぁ」

 

「えへへ、昔は気持ち悪くなることも多かったんやけどね」

 

 

「鳥に運ばれてる! 爪刺さらない?」

 

だいじょうぶ!

 

 

「堕天使の翼を」

【了解シタ】

 

「黒い翼! かっこいい! けど名前はあれだね」

 

 

「氷の翼! いや羽はやせるやつ多すぎかよ!」

 

「割と調整が難しいんだがな」

 

 

「あの形相で延々と爆発しながら飛んでるの少し面白いよな」

 

「ア‶ア‶!?」

 

 

「ジェットパックですわ!」

 

「さっきも思ったけど何でも作れるのかあいつ」

 

 

 測定距離外(グラウンドを飛び出すため)

 飯田天哉、上鳴電気、砂藤力道、緑谷出久。

 

「省略」

 

「「「「そんな!」」」」

 

 

3.50m走

 

 測定不能。

 飯田天哉、上鳴電気、緑谷出久。

 

「あの3人速すぎだろ……」

 

「速さといえばボ――俺だ。俺が一番速かったといえるんじゃないか」

 

「いやいや俺が最速でしょ! 雷よ!?」

 

「蒼軌さん、その……またバリア張らせてごめん」

 

 

 1秒未満。

 蒼軌聖、青山優雅、砂藤力道、常闇踏陰、轟焦凍、八百万百。

 

「かまいませんよ。ええ、ほかの方を死にかけさせるわけにはいきませんからね」

 

「美しくないね☆」

 

「筋肉コールするのやめろ!」

 

「少し遅かったな」

【日ノ光サエナケレバ】

 

「まだまだだな」

 

「リニアモーターですわ!」

 

 

4.持久走(20mシャトルラン)

 

 測定未終了(シャトルランの音源は247回。280を超えた時点で終了)

 蒼軌聖、麗日お茶子、尾白猿夫、切島鋭児郎、砂藤力道、常闇踏陰、轟焦凍、爆豪勝己、緑谷出久、八百万百。

 

「飛んでるやつと跳んでるやつばっかりじゃねぇか! 走れよ!」

 

「ワイヤー張るのはありなの!? 序盤なんか設置してるなって思ったけども!」

 

「切島はよく頑張った! お前すげぇよ……!」

 

「ガハッ――ゴホッ――おえぇええ……――」

 

「切島君落ち着いて! これ! 酸素! あとついでに効果あるかわからないですけどやるだけ私の個性で治してみますから! ほら膝枕!」

 

「っく、彼とスピード対決などしなければ……!」

 

「俺だって! 先生すんませんちょっと充電しにいってきます!」

 

 

5.握力

 

 機器破壊。

 上鳴電気、砂藤力道、常闇踏陰、葉隠透、緑谷出久。

 

「やると思った」

 

「上鳴と葉隠。お前たちは変にいじろうとして壊した感じだな。測りなおせ」

 

「「はい……」」

 

 

 1000kg超え。

 蒼軌聖、尾白猿夫、障子目蔵、轟焦凍、八百万百。

 

「蒼軌お前! その見た目で! いやボール打った感じ的にわからんでもないけど!」

 

「握力……尾力の間違いじゃ?」

 

「氷で押し出したり万力使ったりはありなのか……いやもう今さらか」

 

 

6.反復横跳び

 

 測定不能(数えられなかったため)

 飯田天哉、上鳴電気、葉隠透、緑谷出久。

 

「今度こそ俺だ!」

 

「いいや俺だね!」

 

「葉隠……」

 

「ちゃんとやりました! 見えなかったですか?」

 

「ええ……ありなのかそれ」

 

「服まで消したからな、確かに言ったもん勝ち……いや、どうなんだ」

 

「蒼軌さん……本当に……本当に……」

 

「いやかまいませんって」

 

 

7.上体起こし

 

 測定不能。

 上鳴電気、緑谷出久。

 

「しゃあ! 俺が最速!!」

 

「緑谷の爆風に耐えるために蒼軌が完全防備だったのめっちゃ笑ったんだけど」

 

「固定するために剣突き刺したの緑谷に刺すかと思ったもんな」

 

「あ、あおき……さん……」

 

 

 100回超え(50を超えれば一級のアスリートレベル)

 蒼軌聖、尾白猿夫、砂藤力道、常闇踏陰、葉隠透、爆豪勝己。

 

「微妙に蒼軌もやばいよな」

 

「わかる。緑谷と砂藤と爆豪の押さえ役に駆り出されるだけのことはあるよな」

 

「すさまじい爆風と筋肉と爆発に耐えるのすごい」

 

 

8.長座体前屈

 

 備考、特になし。

 体の一部を延長する、個性で押し出すなどで記録を伸ばしたとしても柔らかさを見るこの種目においてそれはあまり意味をなさないため。

 

「私体柔らかいんだ! 見て! ほら! 立ったまま足を首の後ろに回せるんだよ!? ほらぁ!」

 

「素晴らしいですね! さすが三奈ちゃんですよ! 本当にすごい! 体の柔らかさは怪我の防止や思いもよらない攻撃につなげたり本当に様々な利点があって本当に大切なことですからね!」

 

「蒼軌もさっき結構グネグネとぉーー!? あぶねぇ! やめろ! 嘘嘘! すげぇな芦戸は! うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無理だこれ。

 

 いや、わかってたとしても彼らの圧倒的なさまを見せつけられるのはつらかった。

 圧倒的でないまでもかなり強化された結果を出していた面子ばかりだった。

 地力が高めであるために、圧倒の程度がそれほどでもなくなってしまうのだ。抜きんでた結果に名前を連ねなかったとしてもやばかったのは耳郎響香や心操人使だろうか。

 耳郎響香の音という力は俺の壁でも今のところそこまで軽減できないし物理的な影響を素で行っている。心操人使は洗脳があるくせに明らかに身体能力が高すぎる。

 

 俺が他に抜きんでてやったことといえばなんだ?

 

 一部の力こそ力といわんばかりのあほどもによる周囲への被害拡大防止と救命とメンタルケアだ。

 それはヒーローとして正しい姿だろう。これでこそヒーロー。

 

 だが俺がやりたかったのはこんな事じゃない。

 

 余計な事させた筆頭、力こそ力代表緑谷出久。お前いい加減にしろよしまいにゃ刺すぞまじで。

 俺がやりたかったのは絶対的な力、能力、実力をもって他を圧倒し称えられることだ。

 雄英じゃないヒーロー科のある高校ならもっと容易かっただろうが、そうではない。

 素晴らしい才能たちが集まるここで圧倒するからこそ俺の名声は高く広く広まるはずだったのだ。

 しかしいざ入学してみればこのありさま。

 

「蒼軌、そっちはまとまったか」

 

「はい、多分これで問題ないと思います」

 

 先生に今までの結果の集計の手伝いを頼まれている。数字として出ていない項目が多すぎて機械でぱっと出なかったらしい。

 

 この俺が雑用係か?

 

 嘘だろう?

 

 【聖剣】の能力一から語りなおそうか?

 

 知能向上効果もあるから情報精査にもばっちり対応してるんだぜ?

 

 万能だろ?

 

「じゃあ、とりあえずこれが今回の順位だ」

 

1.緑谷出久  11.爆豪勝己

2.上鳴電気  12.麗日お茶子

3.飯田天哉  13.障子目蔵

4.常闇踏陰  14.青山優雅

5.蒼軌聖   15.口田甲司

6.砂藤力道  16.耳郎響香

7.轟焦凍   17.蛙吹梅雨 

8.八百万百  18.心操人使

9.葉隠透   19.切島鋭児郎   

10.尾白猿夫  20.芦戸三奈

 

「順位だが、ほぼ誤差みたいなやつも多いしあくまでこの枠組みの中での結果だ。実力とは違うことを忘れるな」

 

 それは俺の背中に張り付いて離れない彼女のことを見て言ってるのか?

 優しいじゃないか。先生も想定と違った口か?

 除籍ちらつかせて底をはかるつもりがどいつもこいつも見上げさせられてばかりだったしね。

 

「今回は便利なやつがいたからよかったが今後もそうとは限らない。力の限り暴れて、見てはしゃいでいればいいなんて思ってないだろうな? 問題点、課題に改善点。思いついたものを明日までにまとめてこい」

 

 便利なやつっていうな! 最強の万能個性持ちを便利扱いするんじゃねぇ!

 えー! と抗議の声が上がるが正直先生に同感だ。

 力の限り振り回せばいいってもんじゃない。だからこそ強い奴もいるが、普段からそうであっていいわけではない。

 あくまで当たり前に、普段から被害を出さずに物事を終息させるのがヒーローだ。

 今後も便利屋扱いされてもたまらない。

 彼らが加減を覚えている間に、俺はこの雄英の設備を使って自己強化に努めなきゃならない。

 強化するための努力をしてこなかったわけではないが、今日一日でそのすべてが足りなかったのだと思い知らされた。少しでも早く、万能でありながらすべてがメインでその力を持つ彼らより強くなるように。

 やいのやいのといろいろ言いたいことがあるらしいクラスメイトにしかし、合理的な彼が譲歩のような何かをするはずもなく。

 

「じゃ、今日はもう終わりだ。各自教室に戻って帰れ。明日から本格的な授業開始になる。机の上にプリントがあるから詳細にしっかり目を通しておけ」

 

 そう、冷たく言い放った。

 デェ……クゥ……!!! とかいう声が聞こえた気がするが俺の知ったこっちゃねぇ。

 引きずられていく暴風発生装置のことなど、俺のサポートするところではない。

 

 

 彼らを筆頭に、ぽつりぽつりとクラスメイト達が教室へと戻っていく。

 初日にして課題を出されたのだ、さっさと帰ってやること終わらせて明日に備えるのだろう。

 だが俺は違う。

 そんな悠長なことしてる時間はない。

 

「ああ、あと蒼軌。こっちにこい」

 

「なんですか? 何でもしますよ」

 

 ちょうどよかった。先生に呼ばれたのでこれ幸いとばかりにそちらに足を向ける。

 雑用でも何でもいい、それをネタに施設の使用許可と、あわよくばご教授ねがうとしよう。

 

「これを片付ける。できるか」

 

「つまり私に運べと」

 

 先生が指示したのはどこぞのオッパイが作り上げたどでかい砲塔。

 残ってたのか……、いや、ギャグアニメでもあるまい残るに決まってるんだが。

 おいオッパイ。どこ行ったオッパイ。

 いねぇ! 帰ったのかあのど天然オッパイ!

 

「運ぶ……運べるのか。いや、壊してもいいしどっちでもいい」

 

 運べますとも万能だからね!

 まぁ俺以外にも担ぎ上げて持っていけそうなやついっぱいいるけどなぁ!

 

「あ、じゃあ私がやります先生」

 

「え?」

 

 聖剣を引き抜きやってやるさと気合を入れた俺の動きを止めたのは、三奈ちゃんだった。

 背中にへばりついたままだったの忘れていた。

 いつまでへばりついてるつもりだったんだ。初対面だぞ? 距離感どこ行った。

 

「聖ちゃんは今日頑張ったからこれくらい私がやるよ」

 

「私は全然平気ですが……」

 

「いいからいいから」

 

 いうと彼女はそっとそれに手を触れる。

 そう時間もかけず作り上げられたそれは、それでも巨大な弾を打ち出すに十分な強度をもった頑強な鉄塊のはずだ。

 彼女が何をするつもりなのか、嫌な予感がしつつもそれを見守る。

 

「えい!」

 

 バシャ、と。

 まるでパソコンのペイントツールで黒一色のそれに消しゴムをかけたかの如く。

 彼女が手を滑らせたところが消し飛んだように消滅する。

 その断面はとてもじゃないが溶かされたとは言えない滑らかな断面をしていて。彼女が手を振るうたび、もともとそういう形のオブジェだったのではないかと思えた。

 唖然とする俺に気が付くことなく、あっという間に砲塔を消し飛ばした彼女はふうとため息を一つ。

 

「終わりました」

 

「……ああ、助かった。気をつけて帰れよ」

 

 先生、気持ちはわかる。

 

「はーい! 聖ちゃん、一緒に帰ろう? ついでに課題手伝って! 課題だらけだよぉ!」

 

「ははは……そうですね。手伝いますよ。雄英の近くに、いい喫茶店があるらしいんです。そこで……そこで、お茶でもしながらゆっくりと、うん。ゆっくりとくつろぎながら、課題に取り組むとしましょう」

 

「やったぁ! とと、先生に聞かれちゃったかな」

 

「大丈夫ですよ、先生も今日くらいは……大目に、見てくれることでしょう」

 

「んー、やっぱり聖ちゃん疲れてる? そりゃそっか、引っ付いてばっかりだったし今度は私が運んだげる!」

 

 俺はどこかで期待していたのかもしれない。

 彼女は俺の知っている彼女なのだと。

 原作の、あの微妙に使いづらい酸とかいうよく考えると意味不明な個性で、ただ元気いっぱいな少女なのだと。

 雰囲気でわかる。

 あれは俺の剣すら消せる力だ。

 別に一点ものではないが、それでも物理的な損傷とは無縁だと思っていた俺の剣を。

 テストの間中嘆いていた彼女もまた、普通ではないクラスメイトの一人だったのだ。

 

 彼女に抱っこされるように持ち上げられながら、俺は教室へと連れられて行く。

 そうだな、今日はもういいや。

 帰ろう。

 新しくできた友達と、おいしいケーキでもつまんでリフレッシュしよう。

 そして明日から頑張るのだ。

 この現実との戦いを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、相澤君」

 

「……こんなところで何してるんですか」

 

「見てたのさ、未来のヒーローたちを」

 

「未来のヒーローたち、ですか」

 

 校庭から自らが受け持った生徒たちの姿が消えた頃。まとめられたデータを手に教員室に戻ろうと足を進めていた相澤に、似合わない黄色のスーツに身を包んだ大男が声をかけた。

 自らの生徒たちとは明らかに違う年季の入った肉体を持ったその男は、誰もがその名前を知っている最高のヒーローことオールマイトだった。

 目の前に現れたならばそれだけで一生分の運を使い果たしたと歓喜される彼の姿に、これから毎日顔を合わせるのだと知っていた相澤が表情を変えることはなかった。

 

「どうだった、新しい生徒たちは。私はまだ教師としてはひよっこでね、君に何か学べればと思ったんだが」

 

「見てたんでしょう。なら、俺が言いたいことわかりますよね」

 

「見てたさ。見てたからこそ……彼ら私が受け持つ生徒でもあるんだろう? 何かこう、ね?」

 

 巨躯の男が可愛らしく察してとでも言いたげに首をかしげる姿にわずかに眉を顰め、しかし相澤はそれも仕方がないと思いなおす。

 教師としてひよっこ。

 素晴らしいヒーローである彼は、だからと言って教える立場としても一流とはいいがたい。

 それは今日までの交流で知っていることだ。

 感覚的な感性が強すぎる彼は、教えるべきことを言葉として、目に見え他者に共有できる形として示すことをすこぶる苦手としている。

 そんな彼が今までの生徒たちの様子を観察していたのなら、たしかに相澤に助けを求めてくるのも道理だろう。

 

「正直俺もどうしていいかすぐには思いつきませんね。可能性のないものなら切り捨てればいい、あるのならばそれを開花させるために助けてやればいい。だがあいつらはそうじゃない。可能性と心とが乖離しすぎています。お互いの力を見て、自分もそうだからなのか単純にすごいとしか思っていない。その力が持つ意味も、もたらす物も、あいつらは全然理解できていない。本当にただヒーローを目指しているだけのガキなんですよ。単純に今までのように教えるわけにはいかない。心と共に成長するはずの力が、すでにそこいらのヒーロー数十人分を超越している。心と力のバランスが悪すぎる。少しでも導き方を間違えれば……きっと恐ろしいことになる」

 

「お、おお……なるほど、そう、だね」

 

 理解できていないのだろうが、相澤にそんなことは関係なかった。

 それは自分自身に言い聞かせるものだったのだから。

 危うい。

 誰が言ったのだったか。

 緑谷だけではない、全員がそうなのだ。

 一人一人としっかりと向き合い、確実にヒーローとならせるためにこれほどの規模の学校でありながら1クラス20人しかいない生徒。しかしその20人全員が可能性の塊なのだ。すぐに答えを出せないのは当たり前といえる。

 寝ぐせだらけの髪を掻きむしる。

 とりあえず万が一に備えて目薬の予備だけは無くさないでおこうと薬局に行く予定を頭の中で追加する。

 

「何かないかい? 一つだけでもいい、君や彼らの邪魔だけはしたくないんだ」

 

 偉大なヒーローであるあなたが何をそんな情けない。

 そうは口に出さず、相澤はそれならばとタブレットに一人の生徒を表示しオールマイトへと突きつける。

 

「彼女は?」

 

「蒼軌聖。こいつを頼ればいいでしょう。馬鹿げた力の持ち主ばかりのあいつらの中で、比較的自らの力と周りの力への理解があります。同級生による言葉は教師とはまた違ったものを持っています。それにあいつらの中で最も状況対応能力が高い。個性も、性格も。雑用でも頼みながら交流を深めておくのがおすすめですよ」

 

「蒼軌聖……ああ、彼女か。入試試験の映像は見たよ。わかった、相澤君のすすめだ。そうしよう」

 

 うんうんとうなずくオールマイトに、軽く会釈して相澤は再び足を進める。

 ひとまずはそれがいいだろう。

 とりあえずは彼女に潤滑油として働いてもらう、その中で一日でも早く見つけるのだ。

 

 彼らの導き方を。




着々と主人公の扱いが偏っていく



皆様の感想、本当に楽しく読ませもらっています

最近は感想の頻度が多くてずっとパソコンとにらめっこしています、すっごく楽しい

仕事に行きたくない……このままずっと毎日書いていたい……

明日からは少しペースが落ちます

これからも応援よろしくお願いします!
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