仙台新幹線車両センター
「遂に此奴も解体か。」
JR東日本の新幹線車両全ての全般検査を担う仙台新幹線車両センター。検査だけでなく廃車解体も担っているのだが、今回解体しているのはただの新幹線車両ではなかった。
「シンカリオンE2やまびこ、ですね。」
「ああ。一度も闘わなかったシンカリオン。それは名誉か不名誉かは分からないがな。」
「シンカリオンE2やまびこ」
それは行方不明となってしまった初号機で集めたデータを基に新造された試作機の二号機である。各種データ取りが終わった本機は当初解体させる予定だったのだが、
在りし日の総合本部
「それで、大宮に配置した三機の調子はどうなのかね?」
「それが、適合する運転士がいないとのことでE5は稼働すら出来ておらず、またE6とE7も本来の性能を発揮出来ていないとのことです。」
「何と言うことだ。」
当時の総合本部の司令長は部下からの報告を受けて肩を落とした。無理もない。期待の新型機が揃いも揃って不調なのだ。嘆かない方がどうかしている。
「それで防衛網は大丈夫なのか。」
「現時点では何とかなっていますが、今後も大丈夫であるとは言えません・・・。」
重い空気が司令長室を包み込む。その時だった。司令長の脳裏に一機の旧型機が思い浮かんだ。
「いや、あるではないか。本調子で稼働できる戦力が!」
「い、一体どこにあるのですか?! まだN700AはやっとJR東海から型式使用の許可が降りて現在日車で新造中ですし、E3は汎用化改造中で出せる状況にはありません!!」
「だから、いるではないか。」
司令長は息を整えて言った。
「E2が仙台にいるではないか!!」
司令長の決断によって仙台で解体待ちをしていたE2は急遽仙台で改修工事を施工することになった。試験用に搭載していた機器を全て取り外し、同時に武装はE5、E6と互換性のあるパーツでE2用にカスタマイズした物を搭載。近接用武装は元より細身且つ切れ味を増したカイサツソードY、遠距離武装として複雑な機構全てを排除したフミキリガンYを搭載した。防御面では装甲は殆どなく、その分E5を上回る快足性を実現していた。実際に搭乗した運転士に言わせれば、
「当たらなければどうということはない。」
だそうだ。問題しかない気しかしないが。そんなこんなで現役に返り咲いた当機であったが、実際は活躍の陽の目を見ることはなかった。
「どこまで行っても此奴は旧式機。新型機には到底性能では及ばなかった。」
実際シンカリオン達が闘った相手を見れば分かるが、新型機ですら苦戦を強いられていたのだ。そんな戦場に性能で劣るE2を投入するというのは明らかな自殺行為であり、それ程戦力が逼迫している証拠となってしまう。
「まあ、此奴は誰でも同じ性能が出せたんだがなあ。」
E2が新型機に勝っていた唯一の点は訓練さえすればどんな運転士でも操縦可能だったことだ。それこそ新幹線の免許さえあれば十分に操縦可能だった。
「此奴のお陰だよな。」
彼らの視線の先には一両だけ色の違う中間車の姿があった。白と赤で塗られた異色を放つ車が。
「廃車するのは惜しいとか言ってうちの技術屋が魔改造したアイツか。」
当時イーストアイの中間車が廃車になる予定だった。しかし、そこに仙台にいた超進化研究所の技術者が目を付けた。あれに適合率の問題を補う機構を搭載してしまえば・・・元々イーストアイの中間車両はE2と連結可能な設計だし・・・
「しかし、此奴が無かったら此奴も新型と同じだったんだよな。」
「そうですね。」
こうして紆余曲折を経ながら復活したE2は仙台分室に常駐とされ、緊急時に備えた。しかし、出動したのは二回だけだった。
「一回目は北海道の闘いだったか。」
「E6とE7の運転士を救出せよと本部から指令が出たんだったな。」
「まあ、新青森まで進出したんだが、悪天候で進めないまま待機してたらE5とH5が敵の撃破に成功したから何もしてないのと同じだがな。」
「二回目は最終決戦でしたか。あの時は上野まで進出しましたね。本部の職員や運転士を仙台へ避難させるための予備としてでしたが。」
ゴゴゴゴゴゴゴ、
いよいよ解体用の重機が動き出し、解体が始まった。
「しかし、壊すときはあっけないものなのだな。」
「ええ。」
時が経つにつれて金属の塊へと還って行く行くシンカリオンE2。実際に闘うことはなかったが、此奴がいなければ他のシンカリオン達は安心して闘うことは出来なかっただろう。そしてE2に関わった彼らは作業の邪魔にならないようにその場を去った。そして、E2の運転士だった男はこう言った。
「予備機は闘わずにどっしりと構えているのが仕事さ。」
(完)