それではどうぞ。
白峯 龍騎には理沙という一つ年下のの妹がいる。父の再婚相手の子供ゆえ、血の繋がりは無いが、仲は良い方だろう。勉強を教えたり、一緒にゲームをやったり、一緒の布団で寝たりと……まあ、そんな感じだ。
なに? いい歳した兄妹が同じ布団で寝るのはおかしいだと? 確かにそうかも知れないが、それを本人たちに言うと、
『妹に一緒に寝よ?、って頼まれて断る兄がいるか?』
『兄妹なんだし、別にいいでしょ?』
こんな二人に両親も若干心配しているが、血の繋がりは無いし、別に大丈夫か、と静観しているのが現状だ。
とまあ、こんな仲のいい二人なのだが……今日は理沙がかなり荒れていた。
「なんで
「仕方ないだろう? 成績を落としたお前が悪い」
「だからって、龍兄だけNewWorld Onlineするのズルくないッ!?」
『NewWorld Online』。通称『NWO』。ほんの少し前に発売されたVRMMOゲームだ。その人気は凄まじく、予約しても買えるか分からないほどだった。
ゲーマーである理沙が絶対に面白いと言うので共にこのゲームのプレイしようと兄妹仲良く買ったのだが、ゲーム三昧で成績を落とした理沙に母親が噴火。結果、理沙は成績が戻るまでゲームを御預けになったのだ。
勿論、龍騎もそれなりに趣味人なのだが、彼は所謂『器用貧乏』というやつで趣味も勉強もそつなくこなす為、成績は中の上である。
「ああぁもうッ! わーたーしーもしーたーいーッ!」
「我が儘言っても結果は変わんないぞ。しっかりと勉強しなさい」
「……龍兄は今から何するの?」
「無論、NWOだ。せっかく買ったのにプレイしないのは損だろ?」
「酷いッ! 可愛い妹が必死に我慢しているというのにッ!」
「自業自得という言葉を知っているか、マイシスター。俺はお前の邪魔にならないように自室でしてくるから、すぐに追い付けるように勉強がんばれー」
「うわぁぁぁんッ! 龍兄の裏切り者ぉぉぉッ!」
理沙の泣き言を聞きながら部屋を去り、自室に入った龍騎は早速ハードを起動させ、ゲームを始めていく。
「初期設定完了、と……それじゃあ、早速ダイブ開始ッ!」
ハードを装着し、電脳世界へダイブする。
意識が引っ張られるような感覚を楽しみながら、修まったところで目を開けてみるとそこは既にゲームの世界だった。と言っても町ではなくてキャラメイクの場所だけど。
「それじゃあ、早速ネームを考えるか」
理沙が後から始めるのを考えると分かりやすい名前がいいと判断した龍騎は自身の名前を弄って『タッツン』というキャラ名にした。
次に初期装備だが、剣に大盾、杖に弓、斧とか。意外に種類がある。
「さて、どうしたものか……」
それなりに運動神経は良い方だが、剣とかは使ったことがない。大盾は癖が強そうに見え、慣れるのに時間が掛かるだろう。
「これって、銃か?」
偶然にも視界に入ったそれは男のロマンとも言える武器『銃』だった。
リロードの際、銃弾によってMP消費が変化するが、高い攻撃力を誇る武器。両手銃、片手銃の二種類があって、どちらも弓系に分類される。
その説明に『あれ? これってファンタジー系のゲームだよね?』と疑問符を浮かべながらもそれを選択する。
次にステ振りだが、先程の説明文を思いだし、龍騎はMPを少し多めにして振ることにした。
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NAME:タッツン
Lv.1
HP:35
MP:30《+10》
STR:5
VIT:10
AGI:20
DEX:25《+5》
INT:10
装備
頭:空欄
体:空欄
右手:初心者の両手銃《DEX+5、MP+10》
左手:装備不可
足:空欄
靴:空欄
装飾品:無し
スキル:無し
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ステ振りが終わると、次はキャラの髪色と瞳の色を変更するかどうか問われる。リアル割れを防ぐ目的で、念のために髪色を銀髪にし、瞳も赤く設定する。これで漸くすべての設定が終了した。
「それじゃあ───ゲームスタートッ!」
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小鳥の囀りや人々の話し声が聞こえる。目を開けてみると、龍騎改めて、タッツンは活気溢れる街の中心にある噴水の前に立っていた。
「おお……流石、今流行りのゲーム。賑わってるなぁ」
何処を見回しても人、人、人。服装もファンタジーの世界らしい物ばかり。
いよいよ始まる新世界での冒険にドキドキ10%、ワクワク90%なタッツンは早速モンスターを狩りに向かう。
(それにしても───)
ふと視線を横にずらしてみれば、すれ違う人々が此方を……いや。正確にはタッツンが肩にかけている銃を見ていた。
(良く見れば、銃を装備している人が居ないけど……まさか、不遇装備扱いだったりする?)
向けられる視線に疑問符を浮かべながらも店でMP、HPポーションを買い揃え、森へ向かうタッツン。
暫くして、タッツンは漸く視線の理由を理解した。
「なるほど。これは不遇装備だな」
この銃、どうやら射った時の反動でブレが生じるらしく、先程からモンスターに向けて射撃するが、その反動で思う様に当たらない。しかもリロードに入ると何も出来なくなってしまい、敵に近づく隙を与えてしまう。
モンスターから逃げ、草木に身を潜めるタッツン。一旦町に帰り、装備を買えるべきかと頭を悩ませるが、現在の所持金は1354G。他の武器を買う余裕なんて無く、諦めて銃を使い続けることにした。
それから銃で射ち続けること一時間。タッツンの頭の中に音声が流れた。
『スキル【狙撃補正 Ⅰ 】を取得しました』
「ん?」
一旦射撃を辞め、獲得したばかりのスキルを確認してみる。
『スキル【狙撃補正 Ⅰ 】
狙撃する際のズレを減らす。
取得条件
一定時間内に両手銃、片手銃のどちらかで銃弾を100発消費する』
「ズレを減らす?」
試しに20メートルほど離れた場所で呑気に草を食べているリンゴウサギを射ってみると、先程なら外れていたものが見事に命中……とまではいかないが、ズレが確かに小さくなっていた。
「と言うことは───」
タッツンは銃を射ち続ける。すると時間が経つに連れて、彼の狙い通りに強化版スキルが手に入っていく。
『スキル【狙撃補正 Ⅱ 】を取得しました』
『スキル【狙撃補正 Ⅲ 】を取得しました』
『スキル【狙撃補正 Ⅳ 】を取得しました』
『スキル【狙撃補正Ⅳ】が【狙撃手】に進化しました』
『スキル【鷹の目】を取得しました』
『スキル【狙撃手】
狙撃の際に生じるズレを無くし、対象を見ることで着弾予測を確認することが出来る
取得条件
【狙撃補正Ⅳ】を取得した状態で一定時間内に両手銃、片手銃のどちらかで銃弾を200発消費する』
『スキル【鷹の目】
MPを消費し、対象を拡大して見る。透視も可能。
取得条件
一定時間内に両手銃で一定距離離れたモンスターを50体撃破する』
「お、嬉しい誤算来たッ! 早速使ってみるか───【鷹の目】ッ!」
銃を構え、スキルを発動してみれば、遠くのモンスターや木の実、プレイヤーがはっきりと視認でき、同時に着弾予測点と思われる蛍光レッドの×印も確認できた。試しにとタッツンが引き金を引けば、弾丸は×印の中心に吸い込まれるように飛んでいき、見事ターゲットに命中する。頭を狙えば、皆等しく
「中々良い武器を選んだな。理沙にも教えよぉ」
一通り遊んだタッツンはログアウトボタンを押し、ゲームを終了するのだった。
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