トッププレイヤーの一人、フレデリカとフレンド登録してから現実で2日。
タッツンはあるパーティーと組んで、牛や猪などのアニマル系モンスターが多数出現する東の大平原に来ていた。
「のどか二ャねぇ」
「のどかだねぇ」
「お前ら、のんびりしすぎだろ。モシャモシャ」
地面の上に畳シートを引き、頬を優しく撫でるそよ風を感じながら茶を飲むタッツンとフレデリカ。その横でタッツンが持ってきた薄皮饅頭を頬張るのは大斧を肩に担いだガタイの良い男性プレイヤー『ドラグ』だった。
「そう言いながらドラグも十分のんびりしてるじゃない」
「これは戦の前の腹ごしらえって奴だ。タッツンのお陰でSTR上昇しまくりだぜ」
「後でしっかり代金請求する二ャ」
「おいおい。食材採取の手伝いをしてるんだからチャラにしてくれよ」
「報酬はもう払っている二ャ。それに団子はみんなで食べる為に作ったもの二ャ。ペインもドレッドも釣りから帰ってきて二ャいのに、お前が全部食べきるつもりか二ャ?」
「一つ二つ多く食ったっていいじゃねえか」
そう言いながらも饅頭を頬張るドラグ。何度言っても聞かない彼に諦めたタッツンはこの場には居ないパーティーメンバーの為にいくつか取っておいて良かったとため息をつく。
そんな中、ピロリン♪とメッセージ受信を告げるアナウンスが流れた。
「そろそろ来るみたいだ二ャ」
「ほら、ドラグ。準備準備」
「分かってるよ」
シートや茶碗、饅頭を仕舞い、各々の武器を構える三人。少しして、彼らは視線の先に土煙を確認した。タッツンはスキル【鷹の目】でその土煙を詳しく見る。
見えたのは赤毛の牛型モンスター『レッドブル』の大群とそれらの先頭を走る二人の男性プレイヤー。
一人は白銀の鎧を纏う金髪の男性プレイヤー。彼の名は『ペイン』。このNWOで最強と呼ばれているトッププレイヤーである。
もう一人は深緑のマントをたなびかせるレンジャーのような服装の黒髪プレイヤー。ペイン程ではないにしろ、彼も『神速』の二つ名を持つ立派なトッププレイヤーであった。
様子を伺う中、ドレッドが前方に使い捨てアイテムの投げナイフを投げ、約五メートル先の地面に突き立てる。それは攻撃の合図。
「ッてえええええッ!」
「【グランドランス】ッ!」
「【多重水弾】ッ!」
ペイン達が大地を蹴って飛び上がり、次の瞬間には無数の弾丸や水弾、地面から飛び出した岩がレッドブル達に次々と命中。三十体近くいた群れは瞬く間にドロップアイテムの山となった。
「───てなわけで、クエストお疲れニャアッ! 乾杯ッ!」
「「「「乾杯ッ!」」」」
場所は変わって、街の中心近くにある虎の看板が目印の建物。
あの後、アイテムをすべて回収したタッツンは報酬としてペインたちに料理を振る舞おうと、自分がゲーム内で経営する『虎の料亭』に案内していた。
ペインたちをカウンターに座らせ、自身はキッチンに立ち、注文されたドリンクを差し出す。
「それじゃあ、報酬としてドラグ以外は全品半額。デザートは無料ニャ」
「ちょっと待てッ!? なんで俺だけ報酬なしなんだよッ!」
「そりゃあ、俺たちの分まで饅頭を食べたからだろ」
「まあ、タッツンが作る料理はどれも旨いからね。ついつい食べてしまう気持ちも分からなくはないよ」
「それよりも早く注文しましょうよ。あ、牛肉のジェノベーゼパスタとトマトのまるごとマリネをお願い」
「俺は牛タンのネギ塩を頼む」
「じゃあ、俺はヒレステーキで頼む」
「はいニャア。ほれ、ドラグも報酬無しにされたくなかったらさっさと注文するニャ」
「よしッ! そうこなくっちゃなぁッ!」
ドラグはメニューから牛カツ串を頼み、タッツンは自分の技術を駆使して料理を作っていく。スキル【必殺調理師】によって時間は短縮されているため、さほど時間はかからない。瞬く間にペインたちの前に美味しそうな料理が並び、彼らは喜んで出された料理を頬張った。
「しっかし、スキルの補正があるとはいえ、本当にタッツンの料理はウマイな」
「だねぇ。毎日食べても飽きないよ」
「それはおすすめしないニャ。特にフレデリカ」
「ん? なんで?」
「ほら。VRMMOの料理って、味は感じるけど満腹感は感じられニャいでしょ? そのせいで現実に戻ったとき、その満腹感を満たそうと食べ過ぎて、またVRMMOで食べて現実で食べ過ぎての負の連鎖が始まって、徐々にブクブクと───」
「やめてぇぇぇッ!? それ以上言わないでぇぇぇぇッ!!?」
「確かにフレデリカにはオススメ出来ないな」
「だな」
「あ、それと明日は用事で店を貸し切りにするから来ても料理を振る舞うことは出来ないニャ」
「知り合いでも来るのかい?」
「ニャア。リアル妹の親友が始めるからそのサポートを頼まれたニャ」
「新人がまた一人増えるのか。それで? その子は可愛いのか?」
「ニャハハハ……ドラグ。その子はトラのもう一人の妹みたいなものニャ。手を出すなら容赦なくその眉間をぶち抜くぞ?」
「マジトーンで銃をこっちに向けるなッ!」
冗談ニャ、とタッツンはドラグの眉間に押し付けた銃を仕舞う。そんなとき、ふとフレデリカがジト目で睨み付けていることに気づく。
「どうかしたかニャ、フレデリカ?」
「べっつに~? それよりもおかわり頂戴」
「いや。だからゲームで食べ過ぎるのは「いいからおかわりッ!」は、はいニャ……」
「ほほ~ん」
「…………なによ?」
「べっつに~? なあ?」
「とりあえず、その態度、スッゴく腹立つからキルしていい?」
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「いよいよ明日だなぁ」
「そう……んッ……だね……」
「しっかし、楓ちゃんはどんなステータスにするんだろうねぇ」
「楓の…あぁッ……こと、だし……多分、天然が……んふぅ……」
「あぁ。確かに極振りとかしそうだよなぁ。
ところで妹よ。そんなに気持ちいいのか?」
「だって…龍兄……ん…気持ちいい、もん……あぁッ」
「そうかそうか……だからって、肩揉みで喘ぎ声は止めない? この前、お父さんが般若の顔で入ってきたの忘れたか?」
「何も悪いことしてないし、良いんだもん」
「さいですか……」