ゲームの中でコスプレしても問題ないよね?   作:メンツコアラ

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新人とフレンドとペンギン

 木々や草原に囲まれた、ファンタジー感溢れる街。NWOを始めるプレイヤーの全てが最初に訪れるこの街には、中心に大きな噴水がある。

 

 そんな場所に大盾を持った一人の初心者プレイヤーがログインし、姿を現した。

 

 少女の名は『メイプル』。リアルネームは『本条 楓』。

 リアルでは理沙の親友であり、龍騎のもう一人の妹的存在である。

 普段、彼女はVRMMOといったようなゲームはあまりしないのだが、理沙の薦めもあって、お試し感覚で始めてみたのだ。しかし、彼女は初心者。本来なら理沙から色々と学ぶつもりだったのだが、当の彼女はゲームのしすぎで落とした成績を戻すために日々奮闘している。

 故に、今回は既にプレイしている龍騎……タッツンに教えてもらうのだが、正直なところ、メイプルにとってはその方が嬉しかったりする。何せ、理沙には負けるが、彼女もお兄ちゃんっこなのだから。

 

「さてと。待ち合わせの『虎の料亭』は……」

 

 辺りを確認してみるが、それらしいお店はない。仕方ないので、近くの道行く人に訪ねる事を選んだメイプルは、今さっき目の前を通った魔法使い風の金髪少女に声をかけた。

 

「あ、あの、すいません」

 

「まったく……タッツンの奴、今頃かわいい子といちゃこらしてるんだろうなぁ。別に? 私はどうでもいいけど。今から突撃してやろうかしら───」

 

「あ、あのッ!」

 

「──ん? ……あぁ、私? どうしたの?」

 

「え、えっと……虎の料亭っていうお店を探していて」

 

「……なんですって?」

 

 メイプルの言葉に、少女が片眉をあげる。

 

「……ねぇ。なんで虎の料亭に行きたいの?」

 

「じ、実は私、初心者で……それで龍n──タッツンさんに色々教えてもらおうと思って……」

 

「なるほどねぇ……いいよ。案内してあげる」

 

「ありがとうございますッ! あ、自己紹介が遅れました。私、メイプルって言います」

 

「私はフレデリカ。よろしくねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 ……ゲーム内時間で数十分後。

 

「つ、着いたぁぁぁ……」

 

「ご、ごめんなさい。態々、私の歩くスピードに合わせてくれて」

 

「あ、いや。謝って貰う必要とかないから気にしないで。しっかし、まさかのAGI 0とは……」

 

「ごめんなさい……」

 

「だから気にしなくていいって。でも、これからはステータスについて余り話さない方がいいよ。そのせいで面倒事に巻き込まれたりするから」

 

「はいッ! 気を付けますッ!」

 

「元気があっていいねぇ」

 

 フレデリカがドアノブを掴み、いつものように扉を開けるのだが、

 

「いらっしゃ──って、フレデリカじゃないか。今日は貸し切りって言ってたろ?」

 

「──誰?」

 

 店の中で料理を並べる人物に疑問符を浮かべるフレデリカ。

 まあ、無理も無いだろう。そこにいたのは、何時もの虎ではなく、ペンギンだったのだから。

 

「いや。誰って─……ああ。そう言えば、何時もは虎だもんな」

 

「……まさか、タッツン? なんでペンギン?」

 

「そりゃ「うわあッ! ペンギンさんだッ!」……これが理由」

 

 フレデリカの後ろから覗き、ペンギンのキグルミを着たタッツンを見て、大喜びでフレデリカを押し退けて抱きつくメイプル。VIT極振りでSTRが低いはずなのに、この強さは一体どこから出てくるのだろうか……もっとも、彼女のステータスを知らないタッツン達に原因が分かるわけないのだが……

 

「えへへ~♪ ペンタン♪ ペンタン♪ モッフモフ~♪」

 

「よしよし。どうやら本人で間違いなさそうだな」

 

「貴方は龍兄さんで間違いないよね?」

 

「そうだぞ。だが、ここではタッツンと呼べ。リアルバレは避けたいからな」

 

「分かりましたッ! なら、私はメイプルでお願いします」

 

「おう。それじゃあ、早速歓迎会だ。好きなだけ食べろ」

 

「やったぁ♪」

 

「フレデリカ。お前も食べていいぞ」

 

「うん。それは遠慮なくいただくけど……キャラ、変わってない? まるで某ブラック企業で働くペンギンみたいな……」

 

「キャラ作りだ」

 

「あ、そう……」

 

 その後、フレデリカも含めてタッツンの料理を口に運びつつ、プレイングコンセプトとステータスを説明するメイプル。

 

「なるほど。痛いのが嫌だからVIT極振りと。流石メイプルだな」

 

「えへへ~♪」

 

「タッツン、そんな事を私のまえで話しても大丈夫なの?」

 

「大丈夫だろ? お前はそういう事をしない奴だしな。しかし、極振りか…」

 

「ダメなの…?」

 

「いや、そういう訳じゃないんだが……」

 

 涙目になるメイプルに言葉を探すタッツン。だが、彼女は妹的存在故に、下手な事を言ってしまえば泣かせてしまいそう…という心配からただ唸るだけになってしまっている。仕方なくフレデリカが説明することとなった。

 

「ぶっちゃけて言うとデメリットしかない。それがどういった結果を起こすかはその人の運次第だし」

 

「そんな~…」

 

「まあ、とりあえずはそれでプレイしてみたら? アカウントの作り直しなんてよくある事だし」

 

「フレデリカさん…ありがとうございますッ! わたし、頑張りますッ!」

 

「メイプルちゃんってゲーム自体初心者よね? なら西の森が最初のレベル上げに丁度いいかな?」

 

「はいッ! 早速行ってきま「ちょっと待て」へ? どうしたのタツn─タッツンさん?」

 

「タツ兄でいい。PN(プレイヤーネーム)とそこまで変わらないしな。西の森に行く前にフレンド登録をやろう」

 

「じゃあ、私もいいかな?」

 

「大丈夫ですッ!」

 

 こうして無事にタッツンと合流し、初日でトッププレイヤーである二人とフレンド登録したメイプル。このあと、まずは一人でと西の森でモンスター狩りに行動するメイプルが、僅か数日でトップに躍り出て来るなど、本人を含めた三人は思いもしなかった。

 

 

 

 

●●●●●●●●

 

 

 

 

(くそッ…くそッ…!)

 

 南東エリアの奥。木々が生い茂るエリアを駆ける一人の男がいた。男はNWOにおいてトレインPKとして、それなりに危険視されていた。今日も手頃な獲物を見定め、何時ものようにトレインPKを狙ったのだが、

 

(なんなんだよ、あの技ッ?! ()()()()()()()()()()なんて──)

 

 突如、男の膝に軽い痛みが走り、盛大に転ける。何事かと見てみれば、男の膝から下が綺麗に無くなっていたのだ。

 

「──迷惑なんらよね~。弱いからってセコい真似をする奴。まあ、ジョーカーちゃんの敵じゃあなかったけどね」

 

 次の瞬間、男の胸に深々と刃が突き刺さる。HPが全損し、朧気になってくる意識の中で男が最後に見たのは大きな鎌と小さな女の子だった。

 

 

 




タッツンの本日の装備
『テ◯◯ウペンギン《HP+99, VIT+99, STR+20, MP+43》
 【ガッツ】
 【全状態異状耐性・中】』
イズに頼んで作って貰ったコスプレ衣装の一つ。名前とは違い、見た目はアデリーペンギン。モデルとなった某企業のペンギンに似せるため、ある程度の状態異状耐性を持ち、一度だけどんな攻撃でもHP1で耐える【ガッツ】が付与されている。
制作費 100,000,000G



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