とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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R4 06/14 1話が長かったので分けました。


 すべては、ここから始まった。
 無辜の民であった少年は巻き込まれる。

 世の中で急激に増えた神隠し、もとい異世界転生。

 曰く、チートになるだかならないだとか――
 曰く、ハーレムになれるだかなれないだとか――
 曰く、世界に終末を呼ぶ存在と化すのだとか――


第零章 プロローグ 物語の始まりは唐突に
零章 1話『運命様は残酷なようだ 前編』


 

 某研究所にて。

 

 ここは日本の何処かにある研究所。

 

 今日、ここで行われる儀式によって無辜の民である青年の運命が決まった。

 

 =======

 

 所内でも最も嫌われている部屋と言われている部屋がある。

 通称:隠居部屋。

 

 広さは六畳ほどであり、布団と小さな机しか置いてない簡素な内装となっていた。

 その部屋に少女が一人、重苦しい顔をしながら考え込む仕草をしていた。

 

 少女(私はなにをやらされているのだろうか。前はみんなと穏やかな生活をしていたのにいつまで? いつまでこんな事をしなくてはならないの? 私たちが数少ない召喚術を扱う魔術師の家系だから?いきなり軟禁されて無理やり召喚術を強要される日々。しかも私の行う召喚術は殆どうまくいかない。そのせいか家族が一人一人手の届かない所へ離れていく)

 

 希望のない日々は少女の目から光を奪い、暗く沈みこませる。

 

 少女(最初は両親、次にお兄様……私の失敗を咎めずに最期は笑っていました。私は今日失敗したらどうなるの? あぁ今日は失敗しませんように。いきなり召喚される人には申し訳ないけども……私がこれからやることを許して下さい)

 

 この地獄のような日がいつ終わるか、それだけを考え始めていた。突然、扉が強く叩かれた音が聞こえる。「今日もか」いつもとは違う事と言えば、少女の顔には覚悟という文字が滲んでいることくらいだ。

 

少女「時間ね」

 

 そう呟くと自身の死を悟ったかのような、諦観したまま扉の方へ足を揃える。開きたくもないドアノブに手を掛け、外へ出るとそこには研究員がこちらを見てこういった。

 

研究員1「今日こそは成功させてもらうぞ。最悪、貴様の命も召喚リソースへ変えてもらう」

 

少女「そんな……そんな事はタブーですよ!普通は触媒がないと機能しないんです!」

 

研究員1「うるさい、早くしろ!家族の元へ行きたいのか!!生かしてもらってるだけありがたいと思え!

 

少女「そんな……」

 

 召喚時のタブーもお構いなしにしろという研究員の態度はまさに傲岸無礼といったものであった。少女は思い詰めた表情をするが研究員には全く関係なしと思ったどころか事が上手くいかなそうだと思い、舌打ちまでもしながら少女の腕を強引に引っ張っていった。

 

研究員1「ほら、いくぞ」

 

 嫌がる少女の腕を強くひき、目的地へ移動する。

 

少女(これは本当にマズい。仮に成功したとしても互いに失うものが多すぎる)

 

 

 =====

 

 

 研究員と少女はかなり広い空間へ来ていた。到着と同時に研究員は少女に「いつもの日課を行え」と強制をする。しかしいつまで経ってもやる素振りを見せない少女に腹を立てたのか、鬼の表情をして怒鳴り散らす。

 

 

研究員1「ほらさっさとやるんだ!!」

 

 少女は『今日も厄日か』と思いながら代々継がれてきた魔術を行使する。すると少女の目の前に魔法陣が起動し召喚という儀式を行うためのサークルが現れた。

 

少女「よかった……」

 

 これまでとは違い、今回は成功した。自らの命までも出さずに済んで本当に良かったと安堵した。さっきまで傲岸無礼な態度を取っていた研究員も分かりやすく手のひらを返す。表情を変え、同席している他の職員に何か話し込んでいるようであった。

 

 

研究員1「おぉ! 遂に成功か。これで我々は奴らを皆殺しに出来るのかッ!」

 

 (奴らとは誰のことを指すのだろうか。成功はしたはずだから後は任せて異常な土地から離れたい)と少女は考えていた。

 

 そもそものはなし、未熟な肉体や精神で行う召喚術というモノにはそれなりにリスクがある。

 今回だけでも通常では考えられないほどに体力、気力ともに消耗していた。故に『次』はない。

 

 行った魔術が一%のミスで失敗と終わってしまったら、研究員は落胆の後激怒し『次』を促すだろう。

 

少女(このまま召喚されてはやく私を解放させてッ)

 

 しかしそんな少女と研究員の思いとは裏腹に現実は非情である。

 

 サークル自体は起動したが何も出なかったのだ。あれほどの眩い光を放っていたため召喚の儀式は成功したものと思われていた。なにも出てこない召喚サークルへ研究員が近づき、焦った表情をしながらぼそりと呟く。

 

研究員1「なぜなにも出ないのだ?」

 

 呟きを聞いた少女の顔が曇り始める。やっと成功した日に限ってこんな事が起きるとは考えたくもなかった。安堵から一変、表情を曇らせわなわなと震えだした少女に研究員は問う。

 

研究員1「なんだ。知っているのか? 早く話せ」

 

 少女は思い当たる原因を話し出した。静かに聞き終えると研究員は真っ赤な顔をして声を張り上げた。

 

研究員1「な、そんなことがあってたまるか!!」

少女「しかしもう魔力も空です。これ以上はもう無理です……」

 

 怖れていた『次』の催促が言い渡される。

 

研究員1「知るか!! えぇい! 貴様の命を使ってでもやれ!! じゃなきゃ今ここで――家族の元へ送り出してやろうかッ!」

 

 あまりにも理不尽な理由を聞かされ、激昂した研究員は腰元に常備してあった拳銃を出してカチリとスライドさせ少女の頭に突き立てる。

 

 少女の顔にはまた『安堵』の表情が浮かび上がった。これでようやく家族の元へ行ける、と思ったという事から来ていた。

 

 だが、トリガーが引かれることはないかった。何故ならこちらへ来る足音が1つ聞こえたからである。向かっていた足音は研究員の後ろで消え、同時に呆れた表情をしながら白衣を着た高身長の男が口を開く。

 

??「あー、研究員君もういいよ。成功したんだろ?」

 

研究員1「しょ、所長! なぜですか、この女は今まで失敗続きです! これ以上機会は与えないと……」

 

 拳銃を引いていた研究員は声を震わせながら言い返した。少女は少し残念そうな顔をして所長と言われた男を睨んだ。しかし所長は睨まれようが無視をしたまま研究員に命令を下す。

 

所長「研究員君、命令だ。月宮 真尋(つきみや まひろ)をやつらの餌にしてこい。人間を喰う例は少なくとも存在する。スカベンジャー気質を持つやつらに感謝する日が来るとは思わなかった」

 

 研究員はまたも反論しようとするが所長が向けるにこやかな顔に怯んでしまう。それでもしかし反論しようと勝手に口が開きかけるが、再度閉じる。所長の言っていることがまるで理解できないからだ。この世界は何十年も前に深海棲艦という化け物に海を侵されている。

 

 国家単位で被害が出ており、艦娘だけでは手が回らない。そんな時に現われた救世主。ただでさえ、少なく貴重な道具を使い潰してきて、最後の一つすら失うというのは――窮地を救うことが出来る機会を失うということ。それは例え所長の命令であっても実行に躊躇うほどだった。

 

研究員1「所長。お言葉ですがそれだけは……!!」

 

 『それだけは出来かねる』と言い切ろうとした時、ニコニコと笑みを浮かべていた所長の表情が一変した。さきほどとは違って無表情のまま圧をかけるようにして言い放った。

 

 場を圧倒する雰囲気に反論を考えていた職員の額、手には汗が滲む。まるで目の前にいる人物がとても恐ろしい怪物のようだと思ってしまうほど。

 

所長「もう一度言う。これは命令だ」

 

 圧に屈した研究員は顔を顰め、月宮の腕を強く掴んだ。

 掴まれて月宮はビクっと大きく一回震え、抵抗しようとした。

 

月宮「いや、やめてぇ!私はまだっ

 

 化け物の餌にはなりたくない。せめて一発で殺して欲しかった。それは叶わない。抵抗したままだった月宮にしびれを切らした研究員は一喝する。

 

研究員1「来い! くるんだ!」

 

 どうあがいても苦痛から始まる死を避けられないと思った月宮は抵抗を諦め、素直になるしかなかった。

 

 研究所外 崖にて。

 

研究員1「ほら、いけッ」

 

 研究所外の断崖絶壁に連れてこられた月宮は余りの高さに息を呑む。しかし研究員は構わずに突き飛ばした。断崖絶壁の下は海だ。運が良ければ助かるかも知れないという希望は砕かれる。

 

 下には怪物がうじゃうじゃといる。生存は絶望的に見えた。

 

月宮「いやああああ

 

 悲鳴を上げながら落下していく月宮はただただ世界を呪った。

 助けてくれない神を運命を強く恨んだ。

 

月宮(く、苦しい……なんで私がこんなこと、決して許さない。私は――)

 

 直後、海面に叩きつけられたショックにより月宮は気絶する。そして口からはゴポゴポと空気が抜かれていき、次第に沈んでいく。

 

 そんな状況の月宮にナニカが迫っていた。スカベンジャーか或いは。

 

 ======

 

 場所は変わって北第八鎮守府 執務室内。

 

 やつれた顔をした艦娘がせっせと事務作業に追われていた。

 自身の上司である男に対して、お茶を入れて差し出そうとしていた。

 

??「提督、お茶が入りました」

 

 北第八鎮守府の提督の名を谷部。

 階級は中将である。そんな男は下卑た表情をしながら言った。

 

谷部「あぁ、ありがとう。今夜()頼めるかな?」

??「今夜()ですか?」

 

 艦娘は「今夜も」という意味を理解し、青い顔をしながら震えた。

 その言葉の意味を知りながら「それら」を強要しようとしていた。

 

谷部「あぁそうだ。私の命令に背くのかね?」

 

 お茶を啜りながら、ニヤつきながら言う。

 艦娘は心底嫌な顔をするも自分に言い聞かせて従おうとしていた。

 

??「いえ、そのようなことは……」

谷部「君が断るなら別の子を……な?」

 

 『別の子』。その言葉で目の前の艦娘の心を揺さぶる。

 

 その『別の子』とやらが『今夜も』という行為の代わりを肩代わりすれば、自分はやらなくていい。しかしそれでは被害が広まってしまう。この男のことだから平気で口にするんだろう。

 

 別の子が傷ついたとしても自身を見て『こいつが指名したんだ』と。

 

 自分は言葉の責任を負わずに他者に擦り付ける外道だ。

 だから断ることは出来ずに、自分が犠牲になる道を選択した。

 

??「! いえ、私がやります」

谷部「やらせてください…だろ? 加賀」

 

 この男は加賀が断れない性格だと知って、自分で選択させた。

 あくまで加賀自身で選択させる。

 

 後々問題になったとしても自分が詰められることになっても軽くする為だった。

 加賀は谷部に殺意を向け、睨みつけながら。

 

加賀「っ! や、やらせてください……」

 

 そう加賀の言葉を聞いた谷部は下卑た表情をしながら『兵器は使われることこそが幸せ』なのだろう?と言った。その言葉は加賀に一線を超させるための罠だった。 

 

加賀「あなた……! 言わせておけば!」

谷部「なんだね、その目は。まぁいい、これを見たらその気も失せるだろう」パチン

 

 自身に掴みかかろうとする加賀を見て告げたやった。

 パチンと親指を鳴らすと扉が開いて変わり果てた姿の相方が投げ出された。

 

 そこに現われたのは仲間である赤城。彼女の顔は濡れ異臭を放っていた。

 

加賀「赤城さん!!」

 

 ぐったりとしたまま動かない相方に近づく加賀。

 そんな加賀を尻目にして谷部はいやらしい笑みを浮かべていた。

 

谷部「赤城もお前と同じようにしてやった…()()()()だったぞ」

 

 その言葉一つで加賀の怒りは限界を超えた。怒りゆえに声を荒げ掴みかかろうとした。谷部の息の根を止めようと思い、自身の限界すら突破していた。

 

 その時だった。

 

??「危ないなぁ!」

 

 変にニヤついた声がどこからか聞こえた時には遅かった。加賀は何をされたのか分からず、無様に転んでしまった。

 

 (ドガッ!)

 

 固い音が部屋内に響く。

 

 あまりの痛みより頭に上った血は冷めていく。

 

??「提督殿、外で皆待ってます。もう入室許可をいただけませんか?」

 

 扉の方から声が聞こえた。『皆待ってる』とはどういうことかと加賀は痛みに呻きながら考える。最悪な展開が迫っていることにまだ気がついていなかった。

 

谷部「あぁ、いいだろう。入ってきてもいいぞ」

 

 入室許可を出され、扉は勢いよく開く。ゾロゾロと男たちが入ってきた。男の中には軍人もいたが、それ以外は全くの部外者だった。動かない赤城と座り込んでる加賀を見て思い思いの感想を口にする。

 

??「ありがとうございます。これだけ生きがよければ俺らも楽しめそうだな。それによく締まりそうだ」

 

 その言葉を聞いて、加賀は今夜だけではなくこれからも地獄を味わうのだと絶望する。

 必死に抵抗したとしても無駄だろう。

 

 むしろ抵抗するだけ男たちは盛り上がるのだと悟った。

 

加賀「ひッこ、来ないで……

 

 動かない赤城の元へ寄り添い、加賀はただただ震えているしか出来なかった。




処女作です。続くか分からないけれどお願いします。


 
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