―続き
時間は流れ検査は終わり、今は本営側が用意してくれた部屋に芙二はいた。検査をすると言ったから精密検査ばりのなにかをすると警戒していたが普通に健康診断のようなものであったため表紙抜けしていた。
芙二「さて、と……暇だ。夕食の時間までとりあえずあと二時間くらい、か」
布団と小さい机しか置いてない簡素な部屋の中で呟いた。軍服を脱ぎ、向こうが用意してくれた部屋着をお借りしていた。
芙二「あぁ二時間も早く終わってしまうなんて――あ、いや今しかできないことを考えてみるのはいいんじゃね」
そう言い芙二は寝そべっていた体勢から起き上がり胡坐をかいて“うんうん”と考える。
ここで狂獄龍忌呪を使って何かするには、向いてないし。昨日の朝出したキメラ装備を……いやいや誰か来たら咄嗟に返れない。あ、狼男の様な感じの形態変化をやってみる?
早速、行おうとしたが誰かに見られたり聞かれたりしたら大問題なので予め能力を使用して自身への干渉を不可にする。ついでに机も布団も隅へ移動させる。
芙二「 【
何もない室内の中心でそう言った時、芙二の身体を包むように白い煙が現れる。すぐに煙が晴れるとそこには赤毛の狼男風になった芙二が居た。
これで変化するのは三回目だが、目線の変化や自身の肉体の変化に気がつく。170センチ弱の身長だが
今度明石にでも測定してもらおうか、などと考えている時にセンサーに誰か引っ掛かった。
誰だろうか、と思い扉についてるのぞき窓から確認するとそこには夕張がノックしようとしていたところが見えた。
その様子を見て芙二は『自分に生えてる尻尾に感覚があるか見てもらうか』と思い夕張がノックする前に素早く扉を開け、部屋の中へ引きずり込んだ。
その部屋がある廊下にはひと風、流れるだけであり誰も知る由はなかった。
夕張「!?」
突然部屋の中に引きずり込まれた夕張は動揺を隠せないでいた。芙二がここにいると聞いたのでそこへ行っただけなのに突如、赤いなにかに腕を掴まれ中へ引きずり込まれたのだ。
何が起こったんだと思いながらも周囲を見渡すと赤い。赤いというか毛のようなものに包まれている感覚だなと思っていると頭上に影が差す。次はなんだと上を見るとそこには自身を見下ろす赤毛の狼男がいた。
夕張「え」
あまりのことに声が出せないでいると、赤毛の狼男はこちらへ手を伸ばしてくる。
思わず、頭を守る体勢入ってしまったのだが痛みは来ず頭を撫でられているような感覚が伝わってきたのでおずおずとしてると赤毛の狼男が自身の頭を撫でていた。
夕張「何が起こっているの……?」
??「驚かせてすまないね、夕張」
自身を撫でていた赤毛の狼男が自分の名前を言った。それにより正体が分かった夕張は声を大きくして言った。
夕張「え、提督なの!?」
芙二「あぁそうだ。驚かせてすまないね。こっちの方は初めて見せただろう?」
夕張「えぇ……も~! 急に驚かせないでよ! 人外って聞いたけどそれが本来の姿なの?」
芙二「いやそうじゃない。これは一つの姿に過ぎない」
夕張「へぇ~~そうなんだ……ねぇ他にもあるの?」
芙二「あるけど、今は見せられないね。機会があれば見せてやるよ」
夕張「そうなのね。あ、提督はこの後何か予定ある?」
芙二「本営でやる事はあまりない。あ、その前に二つあるわ」
夕張「なに? 私でも手伝える事?」
芙二「あぁそうだ。夕張、俺の後方に回ってくれ」
夕張「いいけど……わっ! 尻尾が生えてる? ね、ねぇ触ってもいい?」
芙二「あぁ良く触ってくれ。どんな感じだ?」
許可を出したら夕張は目を輝かせて近づき触れた。
夕張「わぁ~~……!! 思ったよりもふさふさしてるというか、暖かい? いや冷たい? なんか両立しないモノ同士が両立してる感じ。でもいい感じ~~これを枕にして寝てしまいたい……」
芙二「ぅわッ……! (触られてる感覚はするから分かるけど……暖かくて冷たいってなんだよ!?)」
夕張「提督さ、これって毛を取ることって出来ないの?」
芙二「いや普通に抜けるんじゃないか? 知らないけど」
夕張「知らないって……今まで誰かに見せたことあったりしたの?」
芙二「サラと東第三鎮守府の連中かな」
夕張「ふ~ん。反応はどうだったの?」
芙二「まぁお前と変わらないよ。それよりもこの状態なんだけどさ」
夕張「? うん」
芙二「生物の魂を糧にしてるんだよね」
夕張「え」
芙二「多分一本につき、何十人かそこらの魂で構成されてると思うからさ暖かいとか冷たいとか感じるんじゃないかって――どうした? 顔を青くして」
夕張「いや私結構不味いことしたんじゃ……」
芙二「あー、まぁ大丈夫。もう死んでるからなんにも影響ないよ」
夕張「そ、そう。良かった。それでもう1つの用は?」
芙二「それは寝る前に済ませる事だから大丈夫」
夕張「そう。なら、これから散歩しない?」
芙二「いいな、それ。適当に歩こうか」
夕張は芙二に部屋着から着替えたら外へ来てね、といい部屋を出た。芙二は部屋着から軍服へ素早く着替える。そして軍帽を被り、最低限の物を持って鍵を掛け夕張と共に本営内を散歩するのだった。
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夕飯を済ませた芙二は昼間いた部屋に戻っていた。軍服や軍帽を脱ぎ再び部屋着へ着替え、先ほど夕張に言っていたもうひとつのことをやろうとしていた。
時刻は二十一時。就寝時間などは特に決められてはいないが、明日も朝からやる事話すことがあると確信していたためかこれから行う事を早めに切り上げようと思っていた。
芙二「その前に冷葉へ一本入れておくか」
相棒かつ提督代理をやっている冷葉へ明日の帰宅時間を伝えておくべきだと判断したのでやる前に端末を探し始める。
自身の軍服のポケットの中から端末を取り出すと冷葉へ連絡をし始める。掛けながら芙二は冷葉に泊地の様子を聞こうとしていた。
一日しか経っていないが、なにかあってはすぐに状況把握ができないからだ。もちろん、何もないに越したことはない。
冷葉「お、芙二か? どうした? なにかあったか?」
芙二「おー。冷葉。こんばんは。明日の帰宅時間が大体分かったからさ。寝る前に連絡を、とね。何か変わったことはないか?」
冷葉「あぁこんばんは。変わったことはないな。お前が帰投次第、二、三日後にオリョール海域へ行こうと思ってる」
芙二「了解。明日、夕張と共に帰宅する。時間は十七頃だな。何もなければそれくらいになる」
冷葉「分かった。編成はまた後で考えような。それじゃ、また明日」
芙二「おう。おやすみ」
冷葉「おやすみ」
ガチャという音とも共にプープーという音が聞こえた。芙二はふぅと小さな溜息を吐き、端末を布団の上へ投げる。
芙二「……何もなければ、ね。さて、ちょっとした練習を
室内の鍵を閉め、明かりを消して窓からそっと出る。
今夜の空模様は――……残念、曇り空だ。雨が降らないといいな、雨が降って風が出てくると波に呑まれそうになるから、ね。
本営はまだ職員がいるのか建物の窓は明るかった。それに食堂の方はこんな時間だというのに明かりがついており中にいる人の声が聞こえてくるような気がする。
芙二「ここは、いいところだな」
そうありきたりなことを呟き、軍服からキメラ装備へ瞬く間に換装し海上へ飛び立った。
―海上 時刻 二十二時
芙二「…………」
海上へ降り立った芙二は無言のまま周囲を詮索する。ここは本営から一番近い浜辺から沖へ一キロ当たりのところに当たるのだがどうも妙な感じがする。
芙二「…………」
探れば探る程、深海棲艦の残骸に目が行く。頭の右半分がないル級。下顎のないイ級。頭の上半分がないヲ級。ほかにも四肢がどちらか欠けてるか、または両方ない場合の死骸もあった。
芙二「…………」
目の前の死骸に向かって合掌し、手を伸ばす。魂が残存しているかの確認をする。霧散していると思っていたが嬉しい事に魂はあるようだった。
芙二「…………君たちの記憶を覗かせておくれ。それとこの憎悪も貰っておく」
篭手を通して死骸から抜き取って怨念結晶と魂晶へ変える。怨念結晶はそのまま黄昏の欠片へ吸い込ませ、魂晶は懐へ入れた。
魂を抜かれた死体は崩壊が始まっていたので手早く干渉し、記憶を抜き取った。
芙二「………!」
そこで記憶を見たときに違和感を感じた。まとわりつくおかしさを拭えなかった。
近くに対峙していたら竦んでしまうほどの憎悪を込め、感情のまま暴れる深海棲艦がいる事が分かった。
その深海棲艦は姫や鬼とは違った雰囲気を纏い、味方へ八つ当たりしている様だった。
自分達の知らない恐怖に怯えた同蔟に対し、さらに冷酷であり続けているようだった。
どこかおかしな深海棲艦から逃げて追いかけて殺す。たとえ抵抗しても惨たらしく殺していた。
この行いは当てつけのようにも見えたがしかし殺し方というか、暴れかたに何か感じるものがあった。
誰かに何かを訴えているかのように見えた。
ル級たちが殺されてからまだ時間が経っていないという事がもう何とも言えない。戦闘必須になるような状況になりつつある現実が目に見えて分かった。
芙二「…………まだ、近くにいるのか」
などとフラグを立てておく。なぁに今の状態だったらきっと大丈夫。カインなる同郷人と遭遇しなければ大丈夫。
初めて使うスキル(と言っていいか分からないもの)を発動する。
スキル名は【
お姫さんは使ってからのお楽しみだと言っていたがどんな感じなのだろうか。
芙二「うぉっと!!」
突然、見えた光景に驚き声を上げる。視えるのだ。何かの数が、深海棲艦の数かあるいは水生生物の数か。自分を中心にして何かを反響させたのか、次第に赤い点が消え続けたり増えたりしている。
今は海上しか見えてないから反応がまちまちなのかも知れないが水中を覗いたら赤一色で覆われそうで目に悪そうだと思い、海上でうつ伏せになる。
が、しかし赤い点は一切見えなかった。いったんスキルを解除し、うつ伏せから胡坐を掻くように座ろうとする。
だが、ガチャガチャと金属の音が擦れてうるさかったので立って思考した。
芙二「? 生物に反応してるのは分かったんだけど、魚とか関係ない? ……やっぱ名前の通り対深海棲艦用だったりするのか?」
【深海神姫の寵愛】…………お姫さんの力を使えるって事か? あの人って能力とかあんのかね? 寵愛ってなんだっけ…………まぁいいか。とりあえずもう一度使ってみるか。
芙二「あ? 減った? どれぐらい先か分からんけど赤い点が一個しかない」
深海棲艦にしか反応しないんだったら、今視える数しかいないって事か。
目に視える数は赤い点が1つ。一体か。
芙二「もう一個試す必要があったわ。深海棲艦が近くにいたらその点はより大きくなるのか、ならないのか、ね」
スキルを発動したまま近づく。赤い点の方向へ近づくと血の臭いとニチャリ、ニチャリといった粘つく音が聞こえ始める。
謎の音はともかく血の臭いは深海棲艦が何かと闘っていたということだろうか。
芙二「………! 見えた。アレが深海棲艦?」
海上をゆっくりと進み、赤い点に最も近い場所へきた。芙二が見たモノは自分の知る深海棲艦とは全く異なる姿をしていた。そう、アレは時雨の時のように――まるで。
芙二「まるで、艦娘みたいだ」
深海棲艦「…………」
そう呟いたと同時に深海棲艦はバッとこちらに首を向けた。月が出ていない海でも芙二の視力なら十分見える。全貌が分かるわけではないが、それでも見えた。
前髪は長く目が隠れているのだが、時折チラッと見える目の色は赤い。そしてだいたい中学生くらいの背丈に赤と白色のスカートを履いていた。足元まではあまり見えないが白色がちらちら見えるので裸足ではないかと。
それらを観察して新種の深海棲艦なのでは?と思った。貞子までとはいかなくても前髪も後ろ髪も長いし。そんなんでよく動けるなと思うくらい。
きっと轟沈してからそんなに時間が経ってないのだろうと判断した芙二はまず話せるかどうかを確認する。
芙二「新しい深海棲艦、か。お前の名前は――っと。危ないな」
深海棲艦「う゛う゛う゛う゛…………」
話が出来るかを確認しようとするとおもむろに飛びついてきた。避けるとそのまま着地してこちらを睨みつけて唸る。まるで獣みたいだ。
芙二「…………獣感がするけど深海棲艦だしなぁ……ここはひとつ【深海神姫の寵愛】を使ってみるか」
深海棲艦「?」
再度使用して、視る。赤い点は変わらずのままだった。それどころか真正面に居るせいか自分と重なって見える。
芙二「変わらず、か。さて、害獣を躾けてみっか。調教師でもなんでもないけど、従わせるようにするのはまだマシか」
深海棲艦「………なにをいって」
芙二「お、話せんじゃん。これからあんたを処刑するけどいいよね?」
深海棲艦「処刑? なら、ここで絶対に殺さないと……かえって邪魔になる!」
芙二「やれるもんなら、どうぞ」
深海棲艦「……人間の所為で、人間の所為で……!!」
芙二「これは面倒だ。あぁ面倒だ。そのままタマ取っちゃうか」
深海棲艦「何言って……!?」
目の前の
深海棲艦「……ッ!!」
目の前の人型から距離を取る。取らないと引きずり込まれそうになるからだ。
深海棲艦「あなたは一体……? 来ないでェ!」
ズズズと黒い靄に沈む人型に向かって冷や汗を流しながら砲を向ける。撃とうとする時、さっきの感覚がまた深海棲艦を襲う。自分の中の何かが無理矢理引きずり出される感覚。
深海棲艦「ぐぅッ!! あがッ……ァ!!」
全身を襲う痛みに苦しみながらよろめきながら周囲を見渡すと驚くべき事態となっていた。
深海棲艦「なにが起こってるの? ……ぎィ!?」
襲い来る痛みに耐えながら周囲を見渡すと驚くべき事実に顔を顰める。死体が見る見る痩せて乾く。海水に浸っているというのに乾く。ミイラになるかと思えば、ならずに霧に変わり吸い込まれていく。
だが深海棲艦に襲い来る痛みからはすぐ解放される。痛みと有り得ないことを目の当たりにしたせいか意識が朦朧としてその場に項垂れるように座り込んだ。
自身の額からポタポタと汗が滴り落ちる。先ほどまで出ていたアドレナリンも収まり自分でも分かるほど身体が冷えていた。
深海棲艦「に、逃げて伝えないと……」
寒さによる震えか痛みによる震えか分からないが、撤退しようとするとき後ろから圧倒的な存在感が放たれる。
『……よォ、待たせたナ。貴様の人生は今宵、潰えるがいいよな?』
深海棲艦「!!」
その声を聞いたとき足元が、周囲が絶対零度の地と変わったような錯覚に陥った。
圧倒的な存在感の前に後退の意思は削がれ、その場に座り込んでしまう。
芙二「貴様が深海棲艦で遊んでくれたお陰で怨念結晶がこれでもかと取れた。ククク……その礼だ。苦痛なき一撃でこの世から存在もろとも消してやろう」
深海棲艦「あ、ァ……」
目の前の存在がゆっくりと宙へ上がっていく。次の瞬間、人型のなにかはどこから取り出したのか鎌を持っていた。その大きさからして重々しい圧が深海棲艦の身に降りかかる。
そしてそれを目掛けて一振りすれば自分は消えてしまうと分かる。
眼下の深海棲艦を見下ろしながら両手で持っていた鎌を振り上げる。そして空中から呟く。
芙二「……これはまだ技名はないんだよね。もし仮につけるとしたらそうだな。【グリム・リーパー】ってとこ?」
仮決めの技名を呟いた時、鎌の刃が陽の光を錯覚させるように
この強い光は熱量すら持ち、周囲を蒸発させようとする。
深海棲艦「ハァ……ハァ、熱いっ……呼吸が出来ないよう、だ」
下にいる一匹の生物がそう吐く。イカロスは太陽に身を焼かれるといった話があるが芙二は焼かれることはない。理由はその能力依存によるものだが。
頭上から獲物を捕らえ、完全に見下したよう目線を送りながら死刑宣告をする。
芙二「大丈夫だ。貴様はあと十秒後、この世にはいない。これからの一振りで痛みなく、形なく逝けるだろう」
淡々と事実を告げるも生物は駄々を捏ねるように砲を乱射させる。何発も打つが芙二には届かない。その事実に目を瞑り、まだ叫ぶ。
深海棲艦「……いやだ……いやだ!! まだッ……!! 全部作りものだ、きっと全部偽物だ!!」
芙二「ふん、そうか。
無情な態度を取り、鎌を振り下ろす。さっき考えた技名(仮)を叫びながら。
直後、大きな水柱が上がると同時に爆破音が聞こえる。超高温の熱風が周囲を撫でるように吹き消える。
再度、深海神姫の寵愛を以て周囲を確認するも反応は消えていたため、この能力は探知機のような能力かと確信して海上を去る。
超高温の水蒸気が掻き消え、残されたのは何もなかった。
しかし数分経つと深海棲艦の居た所からはポコポコと海中から水泡が出てきた。
そこには酷い火傷を負った深海棲艦が出てきたのだった。
深海棲艦「なんなの、あれは……帰って知らせないと」
なんとか生き延びた深海棲艦は一人深い水底へ消えていった。
―続く
どっかの話で出したモンハンの装備を基にしたキメラ装備にパターンが増えました。
①鈎爪(両腕:装備)②鎌(両腕:装備)③???
スキル:グリム・リーパー(仮)
何処からか取り出した鎌で相手の魂を刈り取る。
怒りの炎は命ある生物を脅かす。
スキル:深海神姫の寵愛
・対深海棲艦において索敵能力を発揮する(常時発動)
・対深海棲艦において『魂』を掌握する (制限あり)
・???
スキル:
赤毛色の狼男。どっかで書いたけどLibrary Of Ruinaのローラン(ego:狼)を基にして考えられたスキル。基本は物理攻撃を得意とする。
また怨念結晶×100、魂晶×50で尻尾が増える。増えた尻尾の数が増えると形態変化する。
・物理攻撃タイプⅠ
・???(形態変化)
・艦娘のような深海棲艦:元となった艦娘に色々な物を混ぜ、また非現実的な拷問を繰り返した結果。元の精神と様々な魂が混ざったおかげで安定しない。