冷葉から突然の連絡が入った時、芙二は海堂と対面で話し合いをしていた。
内容は先日の保護の件の感謝と南西諸島海域にて起こっている異変について。
だが芙二は冷葉の口から衝撃的な事実を告げられ、ショックのあまり項垂れる。
そのとき、身体の力も抜けたのか端末が音を立てて転がった。
端末を海堂が拾い上げて変わり冷葉に状況を聞いた。
海堂「もしもし冷葉くん。私だ。芙二くんが急に項垂れたのだが何か知らないかね?」
声を聞いた冷葉は驚いたがすぐに冷静さを取り戻して芙二にも話した内容を話す。
海堂は冷葉の述べた事実は事実なだけに至急対応すべきだと思った。
急いで織間へ連絡するよう秘書をしていた大鳳へ連絡した。
大鳳は海堂の至急対応してくれという言葉に慌てつつ連絡をしに外へ行った。
終始無言の芙二が気になった冷葉は大声で呼びかけるも返事はしなかった。
ただ項垂れるままで、動きもない。
流石に周りにいた艦娘も海堂も心配になってきた。
自分の所の艦娘を誘拐された、という事実。
誰もがそんなことを言われたらショックを受ける。
だがこのままではいけないと思い海堂は思い、
芙二の肩を叩いて気は確かか、どうかを聞こうとした時だった。
ズシッ ミシッ ミシミシッ
肩を叩こうとした時、身体が数秒ほど、床に押し付けられた感覚がした。
きょろきょろと周りを見渡すもそれは自分にだけ起こった現象ではない様だった。
織間の元へ行った大鳳以外の艦娘は一瞬起こった出来事に顔を合わせていた。
何が起こったのか分からない海堂だったが、芙二に声を掛けようとしたのを思い出し確認した時の方向を向くと芙二と目が合った。その瞳は海堂だけをジッと見つめていた。
目が合った途端、海堂は悲鳴を上げしりもちをついた。
あまりのことに顔を見合わせていた艦娘達も海堂の元へ慌てて近寄って行った。
艦娘達が海堂に大丈夫かと聞いているが芙二は無視して、海堂に一言告げた。
芙二「元帥閣下、驚かせてしまい申し訳ありません。うちの補佐である冷葉からあまりにも衝撃的な事を言われたので、気がおかしくなりそうです。ですので仲間が誘拐されたという事が本当なのか、確認しに行きたくなりました。……なので、私はこれにて失礼致します。夕張、行こう」
深く一礼するとこちらを見たまま驚いていた夕張の手を引いて部屋から退散した。
夕張は何か言いたそうにしていたが、結局なにも言わせない連れられて行った。
瞬時に、二人は泊地へ戻り、そのまま冷葉の待つ執務室へ向かった。
夕張はさっきまで大本営にいたかと思えば、今は泊地にいる事実を信じられない様で自身の頬をつねったりしていた。
そしてノックもせず、執務室に入るや否や冷葉に声を掛ける。
大淀はばたばたと慌てている様だった。
緊急事態だからとはいえ無言で執務室に入った芙二を見て夕張は非常識だなと思った。
しかしさっきとは打って変わっている芙二の怒気を感じ取り、身体が震えた。
芙二「冷葉ァ!! 被害状況はどうなっている。哨戒させた面々は精鋭か、それとも違うのか。それを先に教えてくれ」
冷葉「被害状況はさっき伝えた通りだが、悪化している可能性がある。メンバーは精鋭を出撃させた。そして現状、誘拐されたのは叢雲だけだ」
叢雲が誘拐された。その事実を確認した芙二の頭の中には明確な殺意が芽生えた。
だが、理性が消える寸前で抑えつける。今にも暴れ出しそうな、己という獣を無理矢理押さえつける。
理性にも獣と同じ嗜好が芽生え始める。立場も弁えず、怒りのままに鏖殺したい。
それすらも、押さえつける。はち切れそうなほど、怒りは憎しみを喰らい増え続ける。
だが今は最速で支援しに行ける自分が行くべきだと、判断した。
冷葉「被害状況だが、サラトガ、時雨は大破。神通、榛名は中破。龍驤は小破未満だ」
芙二「…………された時の状況は」
冷葉「哨戒兼調査をさせていた。途中から無線が取れなくなって、お前に電話したけど……出なくて。演習してる奴らを集めていた時に、哨戒したサラ達が緊急の無線が来て……」
芙二「そうか。龍驤達はどうしてる。まだ戻って来てないようだが? まさか!」
悪い予想がよぎる。轟沈してしまったのか、と言うことだ。
さっきから芙二の方を向かず、無線機を持ったまま言った。
冷葉「こちらへ向かって、撤退してるはずだが――――『芙二!! 大変だ!!』」
アビスが直接脳内に問いかけてくる。
表情は見えないが、雰囲気からは緊迫した状況だというのが伝わってくる。
芙二『アビスか! 急にどうし――まさか、つけられた!?』
アビス『そのまさかさ! 立ち往生しちゃってる龍驤達の後方に、多数の深海棲艦発見!』
嫌な予感は当たる。撤退してるサラ達にバレない範囲でつけてきていた。
しかもアビスの情報だとその数も数らしい。これはいよいよ……自分の出番かと。
アビス『このままだとすぐそこまで入って来ちゃう!! 我らの武装で撃退する?! 何体かは迎撃出来るよ! でもそれ以降は――』
近海まで入られるとここだけじゃなくて、沿岸部までにも被害が出る。
それは避けなければならない。
芙二「迎撃の必要はない。……――吾が出る」
近海に入る前に自身が殲滅させるべきだと思った。
冷葉「芙二!? 何を……? 今行ったって、叢雲はッ! 連れ戻せないんだぞ!!」
芙二「ちげぇぞ、冷葉。今はそれどころじゃねぇ!! 敵に尾行されてるンだぜ? そのままあいつらが近海に入ったら、奴らが襲い掛かるンだぜ!! でも絶対にそれだけじゃない! 何百人も殺す羽目になる!! 」
冷葉「! 俺はどうし――「冷葉ぁ! 今すぐ、警報機を作動させろ! 深海棲艦が迫ってるから、その辺もそうだけど、一番は空襲警報だ!! その到達が一番早いかもしれん!!」分かった、いますぐ――」
鳴らせ、と指示を送る。芙二がどうのこうの、ではない。
仕事をしろと、伝える。
芙二「あとアビス!! 妖精さん達に伝えてくれ。あいつをドッグに直接放り込むからバケツの準備もしておいてくれって! あと、警備班は厳重警戒態勢をとって!」
アビス『了解です! 芙二はどうしますか? 装備は「
芙二の気迫にアビスは追いやられて、その場を離れる。
そして大淀にも声を掛ける。すまないね、大淀さん。
あんたにとって、ここが前線だろうに。ごちゃごちゃさせて。
芙二「大淀さん! 吾はこのあとすぐに現場へ急行する。待機させたメンバーはそのまま待機させておいて」
大淀「りょ、了解です!!」
慌てたまま大淀は部屋を抜けて、出て行った。
残っている夕張に向けて、言った。
芙二「さっきはすまない。今は事情が事情だから許してほしい。俺はこれから――あいつらの元へ急行するが、おまえさんは待機しておいてほしい」
夕張「私もついて行っていいわよね?」
芙二「ダメだ、役割が違う」
夕張「それは分かってるつもりだけど……」
芙二「ダメだ。俺はこれから全滅させに行く。もう一度言うが夕張は――『芙二! 深海棲艦の数が分かりました!!』 アビスッ! どれぐらいだ! 言ってみろ!!」
アビス『サラ達を尾行している深海棲艦の数は三百! それとは別の艦隊が迫って来てる、数は二百! 姫級や鬼はいないですが、それでも大規模な部隊がこちらへ侵攻してきてます!!』
芙二「よぉし、分かった。アビス、今回はお姫さんに土下座するわ! それくらい手加減が出来そうにない!! 魂の回収は無理!」
アビス『今回は事が事ですし仕方ないですよ。弾の補充はしときました。後は任せます』
芙二「分かった! だが今回は多分使わねぇ!! 魂も呪いも使って理性も全て吹き飛ばす!! 誰も近づくんじゃあねぇぞ!! って事で夕張! 文句は後で聞いてやっから! な!?」
夕張「え、ちょ、っちょっと!!??」
芙二は夕張を置いて、現場へ向かう。
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音もなく、突然現れた芙二に神通がいち早く驚く。
神通「提督!? どうして、ここに?!」
芙二「驚くのは無理ねぇ。冷葉に大体聞いた。叢雲は後で、だ。お前達が生きていてよかった。だが――「叢雲ちゃんのことは諦めるんですか!!!」 ンな、わけねぇーだろがよォ! 話は後で聞くからな。すぐにドッグへ移動させるから、失神とかすんじゃないぞ」
時雨「……ぃと……「時雨、頷くだけでいい……お前たちの前に現れたのは、清霜だな」……ぅ」
こくんと一回頷いた。それを見て、大体察した。
今回は奴らに仕組まれたことだ。根拠は夕雲の言葉だ。
ちっ……クソ面倒な事に巻き込みやがって……。
後は叢雲の言葉が本人に実現するたぁな。それでも最悪だけどな。
芙二(! 全員移動させるときに……お出ましか。最悪のタイミングだな。ちょいと、待ってもらうかねェ)
突然の出現に龍驤達は再び、青い顔をする。それもそうだ。振り切ったかと思っていたのに、まさか尾行されていたんだから。
相手はこちらに気がついているようで真っ直ぐに向かってきた。
移動させるタイミングを失った芙二は舌打ちをする。
砲弾が飛んでくる前に結界を貼って、その中から動かないようにと、強く言う。
芙二「あとこれ飲んどけ。どうせ、後でバケツを被ることになるけど気休めだ」
元々飲ませるつもりだった、ミニ
満身創痍な龍驤達の足元にコロコロと転がる瓶。
神通や龍驤が拾い、重症な時雨とサラトガに飲ませる。
傷は癒え、顔色は良くなっていくのを見ていたらお礼を言わずにはいられなくなり、龍驤が声を掛けようとした時だった。
目の前が白く染まった。思わず、顔を覆うも何もない。
もしかして、と思って何もないところへ神通がノックすると、
コツン コツン と音が鳴る。
それで理解した。この状況下で芙二が守ってくれていることを。
龍驤は絶望に等しい状況の中、降り立った
でも規模が規模のため、ぐしゃぐしゃの顔で叫ぶが聞こえてきたのはこちらへ迫りくる爆炎と轟音だけだ。
すでに始まっていたのだ。
芙二「人生で一度、こういう事してみたかったんだンだよなぁ……お前さん達に悪気はないかも知れないけど、狩らせてもらうわ」
ヲ級「……清霜ノ、邪魔ハサセナイ!!」
そういうと愉快な殲滅戦が始まった。
自殺志願者の馬鹿に割く時間はない、とヲ級は判断し各部隊へ号令を上げた。
号令を受けた部隊長は各々指示を出し、芙二の頭上には数百の艦載機が空を埋め尽くし、個を屠るべく動き出した。
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結界内にいる龍驤達はというと。
傷も癒え、顔色を回復したサラトガと時雨は呼吸も安定してきた。
流石に服までは元に戻らないようだが。
そんな中でも『やっぱり、なぁ』と時雨の声が聞こえた。
砲撃の音と共に聞こえ、いくつのも水柱が上がった。
それがすべてこちらに向かってきていた。
誰かがごくり、と唾を飲む音が聞こえた。圧巻の出来事だったからだ。
『■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!』
爆弾の雨が降り、爆撃されて、目の前が赤く染まる。
ときおり、爆発音に混じって何かを叫ぶ声が聞こえた。
声と言うよりかは鳴き声。獣が威嚇のためにあげる、ソレ。
ただの空耳だと思った。
だけど、今聞こえてる声はいつも自分達が聞き慣れてるコエ。
『■■■■■■■■■■■■!! ■■■■■■!!』
まただ。その音の中に混じって、聞こえる声。
ソレが聞こえるたびに聞きなれてる音ははげしさを増していく。
『■■■■■■!! ■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』
音が止んだ。声も止んだ。
相変わらず、煙でなにも見えない。
でもどこかからパチパチと何かが燃える音が聞こえる。
そんな音が聞こえるせいで、いやな予想を思い起こすがしかし杞憂で終わった。
『……
轟音鳴り響く眼前にて聞きなれた、声がひとつ。
絶望の中でも拾い上げてくれそうなあの声。
声が聞こえてから、一瞬にして煙は消え去り嫌な想像を掻き立てる音も消え去った。
そして艦娘達の目の前に居たのは。
頭に一本の角を生やし、海上にいるにはふさわしくない燕尾服を着た青黒い毛の狼男がこちらを凝視していた。
無論正体は芙二だった。大量の魂を吸収した際、新たに獲得したスキルを発動したのだ。
芙二「……掌握、完了……っと、みんな? 大丈夫? うっかり死んでない?」
ふぅ、と小さく溜息を吐き、後ろを向いて確認する。
さっきまで空を、海を埋め尽くしていた深海棲艦は影も形もなくなっていた。
榛名「提督なのですか?」
芙二「もちろん。この姿も狼男をモチーフにしてるからね。ま、それでも所々はオリジナルが入ってんだけどさ」
時雨「提督? さっきまでの深海棲艦達は?」
芙二「お、話せるまで回復したか。えっと深海棲艦達? 鏖殺したとも。その証拠に、ほれ」
龍驤「うわ、尻尾が生えてるで……」
芙二「そ。尻尾一尾につき、魂の消費は百。今、五本あるだろ? アレは全部で五百体居たって事だよ」
龍驤「やつらの身体は?」
芙二「身体? そんなモン魂ごと、全部食っちまった……それとコレを生成した」
悪い顔をしながら懐から青い玉と赤い玉を艦娘達に見せた。
それを見て表情が曇らせながら時雨が質問した。
時雨「……どんなふうに?」
芙二「極限まで圧縮させて、怨結晶と混ぜた。深海棲艦って極限まで圧縮すると拳ほどにしかならないらしい。魂晶はこんなにも大きいのにな!!」
時雨「もう提督一人で終わるんじゃない?」
芙二「まさか。隠れ蓑がないからな、すぐに捕まって終わりさ」
時雨、神通「「…………」」
芙二「そんな目で見るなよ。あ、ちょいと失礼」
榛名、サラ、龍驤「「「?」」」
芙二「黄昏の欠片を取り出して……いやそのまま懐に入れてしまおうか」
榛名「懐……? え、どこにポッケみたいなスペースがあるのですか?」
芙二「え? あぁ簡易ポケットを既に作成済みなのよね。これがあれば部屋の中に投げ込めるし。それに任意の場所に出口をつけれるし何かと便利だと思うのよね」
時雨「へ、へぇ……」
芙二「あ、そこ引かない。自分の所の提督が人間、艦娘、深海棲艦すら滅ぼせる人外だとしても……拒絶はしないでほしいかな」
神通「えっと、それで……ここからどうするのでしょうか」
芙二「叢雲を追いたいけどその前にお前らを泊地まで送らないと……あ、それと直に来る応援部隊と合流すっかな」
榛名「あ、でも敵は既にいないんでしょう? 提督もその姿のまま合流するんですか?」
芙二「バレてないのは曙と名取くらいでしょ? 大丈夫、大丈夫。万が一砲撃されようとも、なにされても黙らせることは出来るから……ハハハ」
時雨「提督……目が笑ってないよ。あ、でも軍服とかその辺は捨てたの?」
芙二「いや? あるけど……元に戻ればすぐにでも。あ、魔法少女が変身解けたら普通の女の子になるのと一緒って言ったら分かる?」
時雨「いやあんまりわからない」
芙二「たはー……そうだわ。ここにはまだ漣や初雪がいないもんな……」
榛名「見せれないのですか?」
芙二「え、いいよ。少し離れてな? ほい、解除っと」
榛名の質問により、芙二はブラック・ビーストを解除しいつもの状態へと戻る。
芙二「ほれ。こういう感じな。その後に……っと!」
ブラック・ビーストを発動し今さっきの形態へ戻る。
龍驤「えぇほんとに人間辞めてるやん……?」
芙二「だから俺は元々人間じゃないって。まぁ説明はあと! 今は帰るぞ!」
もう本当に、提督だけでいいんじゃない?と回復した時雨がいう。
神通「提督。私達はどうすればいいのですか?」
芙二「そうだな。神通たちは補給後、装備を持って明石の元へ行け! その後はドッグへ行き疲労を取ることに専念しろ! 甘味が欲しかったら俺の所か妖精さんの所へ来い。少ないが渡してやるから、分かったか? 今有無を聞く場合ではない。これから移動させる!」
一気にまくしたてる芙二に対し『ちょっと』と声が上がった時、自分達の足元が光り出し目を開けられないほど明るくなったかと思えば埠頭へ立っていた。
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執務室 十五時 五十五分
廊下を速足で歩きながら形態解除し元に戻る芙二。
執務室前まで来るとノックせずに扉を開けて入る。
芙二「突然失礼する、冷葉! 艦隊が帰投した。皆に指示を出しておいた。被害は治せるところまで治すつもりだ……それと――ってあんたは……」
紫月「や。先日はどうも。冷葉殿は今、工廠の方へ向かっていてね。八崎殿も今しがた席を外していてね。怪しいことはなにもしてないから安心してね」
芙二「紫月憲兵……殿。あんたのことは疑っちゃいない。俺に用かい? だとしても今は手が離せない事があってだな」
紫月「仲間が一人、南西諸島海域にて誘拐された件だろう? そりゃあ奪還が先だよね……うん。別に芙二殿は間違っちゃいないと思うよ」
芙二「……どこでその情報を?」
紫月「八崎君に少し聞いたんだよ。あ、別に僕は『奴ら』とグルでもなんでもないからね」
芙二「奴ら? 最近侵入しようとしてきた奴らのことか? ……なるほどね。だとしたら、紫月憲兵殿は『奴ら』を捕獲するために上から言われてきたって事? 尻尾は掴んだからな。ついに動き出したって事か」
紫月「そんなとこだね。僕の服に発信機がついてるからそれを辿って応援が来る手筈なのかな? 海軍も護衛という名目で来るんじゃないかな」
芙二「ほぉ……? なるほどな。紫月憲兵殿、俺らと一緒に来るのは止めた方がいい。あんたはそうじゃないと思うけど弾が当たったら怪我するぞ」
紫月「ハハハ……大丈夫、大丈夫。最近までの悪運を知ってるだろう? それに僕も芙二殿と似たような物を持ってるんだ。だから足手纏いにはならないよ」
芙二「ふぅん? 俺は大したものを持ってないと思うけどな? っとそうじゃない。お前さんは連中がどこに潜伏してるか目安はつきそうだよな?」
紫月「まぁね。その辺も芙二殿や冷葉殿、八崎君と交えて作戦会議と行こうよ」
芙二「同意だ、だが少し席を外す。すぐに戻ってくる」
紫月「おや何処か行くのかい? まぁ二人が帰ってきても待ってるからさ」
芙二「分かった。一旦失礼するわ」
紫月を執務室に残し、芙二は自分の部屋に戻る。勿論、執務室内を透かした状態で。
客人が不穏な動きを見せても端末を返して全て筒抜けという状況にしてある。もしも嘘を吐いていようものなら息の根を止める気でいるからだ。
芙二「……クソが」
シャワーで海水や汚れを落とし、綺麗さっぱりさせ清潔な服を着て身支度を整える。
端末を手に取り、執務室の状況を確認すると冷葉と八崎は既に居り軽く話していたようだった。
執務室に向かう際、先ほど紫月憲兵が自分と同じ物を持っているという発言について考えていた。
芙二(何を持っているというのか? あの口ぶりからすると……八崎さんと似たような能力か……敵だったら確実に潰さないと、な)
などと考えているうちに執務室前に到着した。先ほどの反省を踏まえ、ノックして入る。
芙二が中に入り、三人の会話へ混じる。現在話してることは敵が潜伏してるであろう場所についてだった。そのことで紫月が芙二らに提案していた。
紫月「目星はついているよ。確実にそこにいるだろう」
冷葉「場所は?」
紫月「オリョール海域に海軍の保有する孤島があるんだけど、その中に気になる言葉があってね。南西諸島科学技術研究所……は表の顔ね。少しだけ詳しく調べたら分かったんだけど裏の顔は製薬施設だとか」
芙二「……ひねりもないくらいに真っ黒だな。絶対にそこにいる」
冷葉「なぁ芙二、いつ行くんだ? 早めに行かないと叢雲ちゃんが危ないんじゃ」
芙二「もっともだ、冷葉。危ないとか言う次元じゃない。あんな奴らの手に掛かってみろ? 俺でも命の保証が出来ない」
八崎「そうですよね。やっぱり電撃作戦を行う方針でいいですよね」
芙二「構わない。敵の本拠地はなにがいるか分からん。前回みたいなクズも多数いるかも知れないし、魔改造された
冷葉「そうだな……その島の周囲に深海棲艦が沢山いるだろうな」
芙二「そこはみんなの力を頼るしかない……もっとも」
紫月「もっとも? 芙二殿どうかしたんですか?」
芙二「いやなんでもない。紫月殿、人数は何名ほど来る予定だ?」
紫月「そこまでは分かりません。ですが、まぁ百は来るんじゃないですかね」
芙二「あい分かった。とりあえず、一旦休憩にしよう。冷葉、お前は休憩しろ。とにかく気を休めろ。普通に振舞おうとしてるのは分かるが、お前のミスでこうなったのではない。自分を責めすぎるな。いいな?」
冷葉「……おぅ。分かった。それじゃ、少し失礼する」
少し顔色の悪い冷葉は芙二の言葉を通り休憩するために執務室を後にした。残された八崎にも指示をする。
芙二「紫月殿も客人用の部屋で良かったらそこで休憩してくれ。八崎さん、案内してあげて。あとは一任してもいい?」
八崎「了解です。芙二殿はどうするのですか?」
芙二「俺? 俺は状況整理しつつ、摘まめる甘味と夕食作り。今日作ろうとした献立を変更してすぐに食えるおにぎりとか味噌汁とかそのへんを作り上げる。出来たらみんなを呼ぶ予定」
八崎「芙二殿も根を詰め過ぎないようにしてくださいね。では紫月殿行きましょう」
紫月「えぇ。よろしくお願いしますね」
芙二のこれからを聞いた八崎はオーバーワークを気にかけながら会釈し、紫月を連れて執務室を後にした。
最後に残った芙二はこれからのプランを考えつつノートに書きだした。
書きだしてる内容はどれが一番平和に終わるのかではなく……どれが救済に近いかを。
芙二「……邪魔をする奴は、人間、深海棲艦、艦娘問わず消してやるよ。勿論
心底面倒な表情を浮かべながらそう呟くと一旦書きだすのを止めて、執務室を後にした。
―続く
新スキル 解禁
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備考:
見た目は額に一つ角の生えた人狼+燕尾服。
赤い毛並みは青く黒い毛並みへと変わった。
魂晶と怨念結晶の二つを計五百以上取ると尻尾が生える。
一尾につき、二種の計は百。
この形態の攻撃方法は相手の精神を、惑わし、蝕む。
やがて発狂させ、魂を直接抉り取る。
また一尾消費で、広範囲に精神汚染を発動する。
基本は己の爪や拳で敵を殺すが、
腐っても芙二なのでその気になったら他と複合スキルとして扱う。