とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 すぐに書けた。あと6万UAありがとうございます。


二章 81話『メイと芙二』

 芙二は病院のベッドの上に寝そべっていた。傷はもう癒えている。

 退院したいのは山々だが、経過観察ということで病院内に拘束されていた。

 

芙二「暇だ。あ、人払いの結界を張って少し作業でもしようかな」

 

 そう思ったら、即行動し始める。

 よく聞くお札のようなものではなく、自分を中心において十メートルほどの正方形の箱を頭の中でイメージさせる。

 

 キン、と鳴ったら結界は張り終わる。魔術的な本格的に人払いの結界を張りたかったら泊地で行っているレベルのをやる必要があるがここでは寄せ付けない用途のほうが都合がよかった。

 

 急な来客に対応するためだ。たまに来る看護師や医者、海軍や憲兵の人間への対応をする必要があった。

 ボロボロを少しずつ治っていく過程を見せるのは面倒だった。おかげであの日から二週間以上かかってしまった。

 

芙二(まぁ途中でシェリルさんたちの調査開始の旨が聞けたのは良かったかな)

 

 自身が入院し始めて、五日経ってその日の検査を終えたとき、面会人がいると言われたのだ。

 誰だろうと、面会室へ足を運ぶとそこにはメイがいた。いつものメイド服ではなくて、カジュアルな服装で来ていた。メイは芙二を見るなり、一礼して口を開いた。

 

メイ「お久しぶりです。フジさま。ここにいるとお聞きして会うついでにシェリルさんたちについてお話に来ました」

 

芙二「立ち話もなんだから座ってよ、メイさん」

 

 芙二は椅子へ誘導する。せっかく来てくれたのに立ったまま、というのは些かと思ったのだ。

 「では、失礼します」と言いながらメイは椅子に座った。

 

芙二「調査はどんな感じになっているの? 例の同郷人……カイン・アッドレアは見つかりました?」

 

メイ「いえ、見つかってはいません。くまなく探してはいるのですが、まったく見当たらないので冠位に到達したとはいえ死んでしまったのではないか、と考えても生まれ始めています」

 

芙二「なるほど。いるよ、きっと。俺はカイン・アッドレア本人を見たことないから信憑性のあること言えないけどね。これを、見てほしい」

 

 あの場所から持ってきた極秘情報として扱われるべきレポートをメイに見せる。最初はわからない様子だったが、題名を理解したのか表情が険しくなる。

 

メイ「【カミへと至った少女について】……このカミとは宗教で語られる神様(カミ)でしょうか? それとも――」

 

芙二「レポートの題名が指しているものは、そうね。俺は神様のほうを指していると思ったけど……メイさんやシェリルさんたちの目線で言えば龍神だと思うよ。ほら、人間って自分たちの常識を超えるモノだと化け物か神と称するでしょう?」

 

メイ「……人工的に作られた龍神(カミ)……それがカイン・アッドレアですか。でも……私にはそれがどうして龍神として覚醒したのか、理由がわからないですね」

 

芙二「それもレポートに記されています。内容は吐き気を催す邪悪以上の邪悪に満ちたものですけど。よく目を通してある程度理解した……と思いたいですけど」

 

 額に青筋が浮かび、今にも破きそうなレポートを懐にしまったまま頭を下げる。

 数分間の沈黙の後に、芙二の周囲の雰囲気は一層重くなったのをメイは感じた。

 

芙二「ざっくりいうと約二十年以上に及ぶ、終わりの見えない拷問と人体実験。数種類の麻薬、劇毒物……それと【天死薬】と称される謎の薬物を投薬され続けた結果、としか」

 

メイ「この世界の人間を恨んでいそうですね。そのまま生物を絶滅させに来そうな勢いついてそうですね」

 

芙二「恨むだろうねぇ。どんな感じに引き離したのか分からないけど……自分たちの作り上げた兵器で滅ぶなんて滑稽の極み! ……どうせなら放置でもいい気はするんですけどねぇ。けど……」

 

メイ「けど? あぁフジさまはこの世界の姫と約束をしたのでしたね。悲しいですけど――対話が無理だったら殺して供養、という結果になるでしょう」

 

芙二「対話はできると、思うけど。でも最後はきっと……殺し合いになると思うよ。災厄と化した龍神(もの)をどうにかしないといけないから……殺さない方法を模索していくよ」

 

メイ「……あとでシェリルさまとクロさまにお伝えしておきます。ほかにお伝えすることはありますか?」

 

芙二「見かけたら、場所さえ言ってくれれば俺が向かう。それだけでいい。すぐに逃げて、と伝えてください」

 

メイ「了解しました。これにて、失礼します」

 

 椅子から立ち上がった、メイは芙二に対して一礼すると警備員に連れられるまま面会室を後にした。

 

 残された芙二も看護師に連れられて病室に戻ったのであった。

 

 

 ======

 

 

 南西諸島海域 なもなき孤島

 

 

カイン「……この気配は人ではない。まさか龍人族なのか? この世界にも我と同じ種族がいるというのか……?」

 

 白いローブを羽織る少女は見た目とはそぐわない口調で疑問を口にする。近づいてくる気配の中に龍人族と思われるものを感知して接触を試みるがすぐに顔を曇らせる。

 

カイン「人間も近くにいるな……忌々しいッ!! 我を人間(ヒト)で亡くした元凶がッ!! 呑気に近づこうとは――分からせる必要がありそうだなッ!!!!」

 

 自身に近づく気配の中のひとつに人間が混じっているとカインの表情には怒りが滲む。

 忘れられない、痛みと記憶は再び表へ引きずり出されて吠える。

 

 殺せ、殺せ、と。怒れ、怒り狂うのだ、と。

 元凶を根ごと滅ぼせと。

 

 この世界を恨み呪うものと化したカイン・アッドレアは怒りのあまり自我を失う。

 尋常ならざる、怒気は熱を放出し大地を焦がす。

 

 ローブを突き破るように一本角が生え、服を破りながら翼が生える。 

 するりと伸びた尾が生え終わるとカイン・アッドレアは眼をギラつかせてこちらに近づく人間の気配に向かって殺意の撒きながら飛び立った。

 

『殺してやるぞ、汚らわしい血のモノよ!』

 

 カイン・アッドレアの目には敵しか映っていない。

 自分が世話になった島民であっても彼女は確実に殺してしまうだろう。

 

 それほど欠いているのだから。

 今の彼女には自我などはなく、近づきつつある生物(テキ)を殺すことに特化している。

 

 




 カイン・アッドレアは怒る。自分を弄んだ、この世界の人間という生物に。

 カイン・アッドレアは叫ぶ。憎き世界を、壊すために。
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