とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 サブタイトルの回収が遅いです。


二章 84話『接触』

 芙二は今、自室にいる。入院中に作成した武器を取りに来ていた。カイン・アッドレアと話し合いで済めばそれに越したことはない。

 だが、どこかで決裂したら確実に殺し合いが始まるとわかっていたから入院中にも拘らず作成した。

 

芙二「あった。これでとりあえず……試すか」

 

 作成したものをとりあえず、空間が綻んでいる箇所に投げ入れる。投げ入れたものがなくなることはない。

 一応、小さめの倉庫のようなスペースを空間内に作ることに成功していた。これならば、どこでも干渉して取り出すことができる。

 

 だが、それだけだと困るかもしれないから近々、アイテムボックスのようなものか宝物庫なるものを作成したほうがいい気がする、と考えていた。

 

芙二「次は工廠だな」

 

 そう、つぶやくと今いる自室から工廠へ転移した。

 

 

 工廠の入り口では八崎、紫月、夕張、明石が話していた。どうやら紫月が明石のやっていることについて興味を持ったらしく聞いているようだった。八崎は紫月を案内しているようだ。

 

 そして夕張は会話の中で奥から工具箱を持ってきてくれ、と明石に頼まれたので奥へ向かう。

 

『あった……。次は――』

 

 薄暗い工廠の奥でなにやらぶつくさ言いながらこそこそしている人物が夕張と目が合う。突然のことに驚いた夕張が叫ぼうとするとき、その人物が夕張の口を手で塞ぐ。

 

夕張「むぐ!? むぐう!!」

芙二「おっと、叫ぶんじゃあないよ。夕張。俺だよ、芙二提督だよ」

 

夕張「むぐぐ……」

芙二「とりあえず、手ぇ放すよ。工具箱は向こうにあるから。ほら、行った行った」

 

 夕張の口を塞いでいた手をパッと放す。直後は苦しそうにしていたが、やがて収まったらしい。

 芙二がどうしてここにいるのかは後で聞こうと思い、指さされた方へ行った。

 

芙二「さて、これでまぁ戦えはするんだけどねぇ……夕張の記憶を除いたときに視た存在。あれがカイン・アッドレアだったらジャイアントキリングと行こうかねぇ」

 

 『それか龍殺し? ふはっ……龍人が龍殺しをするたぁ……なんだかおかしくて笑っちまうな』と呟きながらまた転移する。次は冷葉の元だ。

 

 冷葉は多分、食堂にいる気がする。間宮さんと伊良湖さんと献立でも作っているんじゃないだろうか。

 いいなぁ、と思う反面、そっちは冷葉に任せてもいい気がする。

 

芙二「俺は俺で……ね。裏作業の方が似合っているしな」

 

 そう、食堂の扉の前でつぶやいた。中に冷葉たちがいることを確認しようとするとき、腰の辺りを小突かれる。

 

芙二(ん? 誰だ?)

 

 と思って振り返るとそこには赤城やサラトガや龍驤がいた。きょとんとしていると赤城たちは会釈してきたので釣られて返した。

 

赤城「あの、提督? 中に入らないのですか?」

芙二「え、いやこれから入ろうとしてただけだが?」

 

龍驤「司令官、負傷して入院するって聞いたからびっくりしたよ! でもこうしてるところを見ると回復したようで何より! 復帰、おめでとうな」

 

芙二「ありがとう、龍驤。赤城たちはどうして食堂に?」

 

赤城「私たちは話しながら、間宮さんたちに挨拶をと思いまして。そしたら食堂の扉の前に難しい表情をしてなにかつぶやく提督がいたので……」

 

芙二(うそ、俺表情に出てた!? ……めっちゃ恥ずかしいな)

 と思っていた。

 

芙二「挨拶だったら先にしてくるといいさ。俺は冷葉に用があるだけだからな」

赤城「そうなのですか? ついでに呼んできましょうか?」

 

芙二「あ、助かる。ありがとう、赤城」

 

 面と向かって礼を言われたのが照れたのか、赤城の頬が少し赤くなる。芙二に対してなにか言おうとするも龍驤からの視線でハッとしたのか龍驤の手を引っ張りながら食堂へ入っていった。

 

 急に入ってきた真っ赤な顔の赤城と無理やり連れられてきた龍驤に間宮と伊良湖は何事かと驚く。

 冷葉は開いた扉の先にいた芙二とアイコンタクトをして、頷いた。それだけですべてを理解したわけではないけど、自分に用があることくらいはわかった。急に入ってきた赤城たちを宥め、間宮と伊良湖に自己紹介をするのだった。

 

 

 ======

 

 芙二は扉を閉める。開けっ放しは嫌だと感じたからだ。残されたサラトガと芙二。

 サラトガは芙二と話したいことが山ほどあった。だがそれはまた今度にしようと思った。

 

 なぜなら、芙二の表情がまた曇っていたからだ。それは奪還作戦が終わったあとのことで考えているのか、わからなかった。でもただならぬ思いを感じ取ったので、それを聞くことにした。

 

芙二「……」

 

 聞かれた芙二はサラトガを見たまま無言だった。周囲の空気が極度に冷たくなったので何か聞いてはいけないことだったのか、と思うほど。

 

サラ「あ、あの提督……」

 

 青い顔をしながら、恐る恐る口を詫びようとしたとき芙二が被せるように言った。

 

芙二「サラ。例の同郷人が現れたんだ。しかも南西諸島海域の深部に……」

 

サラ「同郷、人? それは提督の故郷……しかも南西諸島海域の深部!? まだ制海権もとっていないところなのに……! すぐに救出に向かいましょう! 今なら――」

 

 自分が目撃した子と芙二が探していた娘の情報が合わさって確信する。それでもすぐに表情を変わり、口調も焦っている風に変わる。 

 

芙二「だめだ。おそらくだが付近の深海棲艦は消滅している、と考えるのが早い。それに例の同郷人の相手が出来るのはここだと俺だけだからだ。だから、俺がこれから行く」

 

サラ「これから!? 今日退院して、復帰したばかりなのに?! そんな無理です。無茶です! 完全ではないのでしょう?!」

 

芙二「言い訳するとケガなんて入院して半日で完治してるんだわ。それを騙して、騙して来たからね。まぁ冷葉食事いらないよーって伝えるだけなんだけどね」

 

サラ「ダメです。私は絶対に通しません。行かせません。今までのは提督自身で解決できるレベルと聞きましたが、今回のは命に関わります。あれを見た私が言うのですから!!」

 

芙二「……要請が出ている。近隣島民を保護せよ、と。すぐにでも行かないとならない、だから――」

 

 と言いかけたとき、扉が開く。二人は驚いて視線をやる。そこには冷葉がおり、芙二に近づいてきて肩をたたく。

 

冷葉「芙二、飯の話は分かった。俺もサラちゃんと同じ意見だ。お前が人外としても……確か言ったよな? 勝てる確率が低いんだろう? なら命大事にでいいんじゃ……」

 

芙二「それだと世界が滅ぶ。人間というかこの世の生物が絶滅するまで一年、ないぞ。きっと」

 

冷葉「……それを作り出したやつを問い詰めたいな」

 

芙二「残念ながら、この世界の人間だ。しかも最近とっ捕まった連中だな。自分たちが面白半分で弄び、挙句の果てにそいつに滅ぼされるんだぜ。滑稽だろう?」

 

冷葉「いやまったく笑えないが」

 

芙二「まぁその辺は俺が何とかするから大丈夫。で、だ。島民の避難を任せたい。俺が向こうに行って確認取ったらすぐに応援要請を出すから、一応空いている艦娘を連れてきてほしい」

 

冷葉「艦種は?」

 

芙二「任せる。そいじゃ、俺は行くわ」

 

 冷葉に任せると芙二はサラトガを無視して、空へ移動した。

 移動先の空は茜色の夕陽がとても綺麗に映った。

 

 能力を用いて、機械の翼を生やして南西諸島海域へ向かったのだった。

 

 

 

 ======

 

 一方、南西諸島海域では……

 

シェリル「……葉月さん、どうしましょう」

葉月「そうだね。この事態は想定外だよな」

 

 そう会話をするシェリルたちは島の南側へ避難していた。二人の近くには島民はおらず、また葉月は負傷していた。

 

葉月「……あぁ俺ことは気にしないで。芙二くんからもらった、薬の在庫はまだあるから。それにシェリルさんこそ大丈夫? この世界の時間の影響してない? 辛かったら、聞くことはできるからさ」

 

シェリル「……葉月さん、聞いて。一応、凌也くんに連絡を試みたんだけど……ダメだったの。電波が届いてないのか、それとも」

 

 妨害する電波でも出ているのか、ねと葉月はいう。

 しかし葉月はありがとう、といった。言われたシェリルは頷くこともせず、顔を伏せた。

 

葉月「とりあえず、島民の皆さんのことは――……」

 

シェリル「大丈夫だと思いますよ。念のために、出られないようにしてますけど。しかし私がここから離れてしまったら解除されてしまうのが少し……」

 

葉月「それでも向こうにとってはありがたいと思うよ。一時的とはいえ、ね」

 

 はぁ、と気づかれないように小さなため息を漏らす。

 

 ここまで来た経緯を葉月は思い返していた。

 カイン・アッドレアが言ったことを直接伝えず、真実は後で伝えることにした二人だが戻ってきた二人を見た島民らは驚いていた。

 

 皆さん、とシェリルが話しかけようとした時だった。

 

『島の外からきたお前らが祀り神(マツリガミ)サマを怒らせたのだ!』と老人の声がした。

 マツリガミとはなんだろうか、と頭を捻る二人だが言葉が続く。

 

『この島から出ていけ! さもないと……!!』と誰かが言った。

 

シェリル「み、皆さん……落ち着いて」

 

島民「黙れ!! お前らが、この地の安息を祈る神を貶しさえしなければッ!!」

 

 別の老人が怒りをあらわにした、その言葉を皮切りに島民の感情は膨れ上がる。

 また別の誰かが何かを言ったときにはみんな、農具や包丁といったものを構えて、早く出ていけという意思を宿した目をしていた。

 

葉月「……シェリルさん。野暮用だけど、いいかい?」

シェリル「もとより、そのつもりでしたので。大丈夫です」

 

 ヒソヒソ、と話しているときに島民の一人が猟銃を撃ち放った。それは脅しではなく、実弾が込められていた。

 

 パァン、と乾いた音が数発聞こえる。二人にあたることはなかった。それを見て悪態をついた島民が一人いた。そしてその島民が、凶弾を放ち、葉月の右肩を貫通した。

 

葉月「ぐぅッ!? シェリルさん、ここは危ないから行こう」

シェリル「葉月さん!? あなたたち……」

 

 いいから、いこう、とシェリルの手を引いて村を出て行った。

 

 思い返してみれば、変なところはない。

 自分たちの信仰している神さまに罰当たりなことをしたのだから。

 

 だからといって、自分たちを追い出すために猟銃まで撃ってくるか?と葉月は考えていた。

 

葉月「 シェリルさん、気休めかもしれないけど……水のむ?

   (さて、芙二くんが来るまで隠れていられるかな)」

 

 

 自分が飲むために買っておいた、新品のペットボトルを差し出す。が、シェリルは手を前に出して大丈夫です、といったので懐にしまった。

 

葉月「あ、シェリルさ――――」

 

 ピシ ピシ ブワァ

 

シェリル「!?」

葉月「!!」

 

 

 急に沸き立つ感じたこともない気配に、二人は驚き、顔を合わせる。

 それと何かが砕ける音も聞こえた。まさか、と思ってシェリルは走り出す。

 

葉月「シェリルさん! どこへ!?」

 

 葉月の問いを、無視し、先ほど追い出された村へ全力疾走していった。

 息が切れるのも、お構いなしに。自分が張った最高の防御力をもつ結界の様子を。

 

シェリル「な、なに? これ」

 

 その結界の一部が壊されている。

 正確に言うとシェリルが展開したドーム状の結界の側面が破壊されていた。

 

『ゥヴヴルルルル……』

 

 村の中から獣の唸り声が聞こえる。

 どこからか、迷い込んだのか、それとも結界を壊して中に入ったのか。

 

『ギィヤァ――――!!』『やめ、ヤメロォォォ!!!!』

 

 誰かの断末魔が聞こえる。

 シェリルとやっと追いついた葉月は村の入り口で立ち尽く。中から聞こえてきたはずの断末魔の絶叫が聞こえなくなっていく。

 

 

葉月「何が……起きているのか」

シェリル「分からない、です。だけど、中には……」

 

 葉月の質問に対してシェリルも同じだったが、一つだけは確信できる。

 なかには獣ではない何かがいる。野生の獣が自分の張った結界を壊すなんてありえない。

 

 もしかしたら、とシェリルは考える。カイン・アッドレアの眷属が出てきたのでは、と。

 

 

『ゥヴヴルルルルァァ――!!』

 

 狼の遠吠えが聞こえた。いや遠吠えというには些か強すぎるような気がした。

 遠吠えは島中に響く。空気を揺らし、風を起こす。草木をざわつかせ、周囲にいる生物に自らの存在を証明する。

 

シェリル「っぅ!?」

葉月「……耳がっ!」

 

 あまりの声量に耳を塞ぐ、二人。

 やがて収まると、のしり、のしり、と大地を踏みしめる音が聞こえる。

 

 それは二人の前に現れた。体のところどころを赤く染め、黒い青色の体毛に覆われ、尻尾が六本生えている。大きさは五メートルほどだが、それ以上の巨体に見える。

 

葉月「……狼? いや尻尾が六本生えている……」

シェリル「凌也くん……なの?」

 

葉月「え? あれが、芙二くん!? うそでしょ!?」

芙二「あーあ、バレちまったか」

 

 巨大な狼が口を開いたら、そんな言葉が聞こえてきた。そして見る見る縮んでいき、百七十センチほどの藍色髪の青年の姿となっていた。

 

葉月「!? あ、じゃあ今さっきのは……」

 

芙二「そうだ。俺だ。シェリルさんの要請、ばっちり届いたぜ。だけど――会話できるンなら会話したい」

 

 そういうと、乱れていた服装を直し、帽子を被りなおす。

 だが、シェリルと葉月の顔色が優れない。それだけで、今まで何があったのか察せれる、というものだ。

 

芙二「なるほどね。それだと俺が直接、向かったほうが――」

 

『その必要はない。人狼族(ワーウルフ)の子よ。名を何という?』

 

 芙二がシェリルに居場所を聞こうとしたとき、それは上に現れた。

 龍の姿ではなく、白いローブを被った天使のような姿で。

 

『ボケっとするではない。我はカイン・アッドレア。もう一度問う。人狼族(ワーウルフ)の子よ、貴様の名を何というのだ』

 

 

 その白い天使のような姿の少女はむすっとした表情でもう一度、芙二にそう問うのだった。

 

 

 

 

 

 

 




 相対するモノ同士が出会った、結果は……
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