2022年7月18日 誤字を修正しました。
芙二「俺は……」
と言いかけたところでカイン・アッドレアが待ったをかけてきた。
カイン「まてよ、貴様……人間みたいだな。はっ! わかったぞ、もしや半人半獣だな! 人間族と人狼族の混血とは……クックック、面白いことを考えるものだ」
再度、笑う、カイン・アッドレア。腹を抱えて、笑う姿はどこにでもいる少女だった。
芙二「おい、勝手に想像膨らませて笑い転げてるんじゃないよ。俺、いや
カイン「なに? 龍人族! いま、龍人族と言ったか! この時代の、この世界にも、我のような存在がいるとはな! 貴様は、人間に弄ばれたクチか? それとも無理矢理、わけのわからない薬を飲まされたクチか?」
芙二の正体を知って、カイン・アッドレアは目を見開いて驚く。
そして芙二と自分を重ねて、この世界の人間されてきたことを聞く。
その言葉には殺意や恨みなどはなく、ただの問いかけだった。
芙二「どれでもない。そうだな、
カイン「願い? それはどのような? 人間を、滅ぼせと?」
芙二「その逆だ。この世界に深海棲艦というのがいる。そいつらを滅ぼせ、と。むしろ、人間は庇護下におけ、とな。だが……」
カイン「深海棲艦……あぁこの海で動く機械のようなものだろう? あれらは美味かった。イイ味がするんだ。だが、どうして人間を庇護下に? あいつらは卑しいだろう。集団で嘘を吐き、だまし、自分らが作り上げた兵器に絶滅まで追い込まれてようやく……いや治らんな」
芙二「話を聞け。続きだ。人間は卑しいかもしれんが、それはみな持っている。それのどこかが壊れてるのが歴史に名を遺す人だ……っとそうじゃない。吾は深海棲艦も守らねば、ならない。だから、深海棲艦を喰らうお前はあの世界に速攻返すわ」
カイン「人間を守り、深海棲艦も守る。矛盾しているな。こいつらはずぅっと戦争しているような間柄だぞ。いち、龍人族のお前だけでどうにかなるとは思えんがな」
芙二「それは百も承知だ。だから俺が行うのは原因と脅威を消すこと。原因が消えれば、深海棲艦は諦めるかもしれないだろう? それに人間だって脅威がなくなれば自分たちの歴史を進めるだろう」
カイン「いーや、人間はそういうフリをするのがうまい。友好的にいったかと思えば、必ず裏切るのだから。滅ぼすしかない」
芙二「そうなったら、修正するしかないよなぁ、とつくづく思うがね。その手段はおいおい、としてだ。とりあえず拘束して目途が立つまで
カイン「駄目だ。そうなったら、我が目標を達成できない。龍人族の子よ、名を答えよ」
芙二「
カイン「今更聞くが、貴様は我を止めるのか? 力の差を理解しているのか?」
芙二「無論、知っている。それに、貴様との勝算はある。ゼロではない限り、勝てる。確実に」
そういわれた、カイン・アッドレアは”ほぅ”といい目を細める。心なしか、カイン・アッドレアの放つオーラが一段と強くなった気がする。
とはいえ、まともに戦えば、被害は甚大であろう。肉体を損傷するものはもちろん、この島諸共、海の藻屑となるだろう。相手が、相手なだけ下手に手加減は通じないし、できない。
なるべく、話し合いで終わらせたかった。が、しかしそれは叶わない、と悟った。
カイン「話し合いはこれで、終わりだ。貴様と我に決定的な違いが生じたからだ。人間を、深海なんとかを、護る貴様と。人間を、深海なんとかを、絶滅させる我。ここまで、だ。早くこの世界から、立ち去れ。それとも、
芙二「止めないと、あの世界に貴様を連れて帰らないだろう? それにこの世界はいずれ、崩壊を迎える。先のない世界だ」
なに?と眉を顰める、カイン・アッドレア。
何のことだ、と芙二に聞く。
だが、芙二はこれからあの世界に帰る貴様には、関係のないことだ、と一蹴する。
芙二「星の終わりは、いずれ来る。貴様が滅ぼさなくとも。貴様が動かなくとも、な。ただ
話し合いが終わりなら、それまでで。
なんとかしてこの厄災じみた神様を行動不能にしないとな。
カイン「ならば、死ねい、フジよ。そのまま、この島の人間とともに塵と化せ。そのあとにゆっくりと壊し、滅ぼそう。死に逝く直前まで、恐怖に怯えていくがいい」
そういったら、カイン・アッドレアの周囲を漂う空気に変化が生まれる。一段と強くなっていったオーラは目に見える形となった。炎のように輝き揺らめく。
炎のように輝き揺らめくものからはバチ、バチと火花が生じる。バチン、とひときわ大きな音が鳴り、周囲を白く包む。芙二も葉月もシェリルも目を閉じる。あまりのまぶしさに開けてられない。
『フシュゥルルル――……』
自分の頭上から、吐息のような音が聞こえる。三人は上を見上げると、そこには巨大な龍が空へ飛んでいた。
芙二「あれが……龍化したカイン・アッドレアか!
それは頭は丸く、山羊のような角が二本生えている。
白く輝く龍鱗に身を包ませ、白い天使のような翼が四枚、開き、バサバサと音を立てて飛んでいる。
夕張のを覗き見たときはシャガ〇マガ〇の遷悠種くらいかと思ったら風○廃墟のボスくらいにでかい!
二十数メートルじゃない、これ翼を入れたら四十メートル超えてるだろ、絶対。
『……この姿なら、ひと息で崩壊させてやる。我は怒っているワケではない。が、滅ぼすと決めた以上、やるまでよ』
島全体に、言葉を響かせる。カイン・アッドレアが咆えれば雲が切れる。切れた雲から光が漏れ、神々しさを生み出し、種族問わず、すべてを魅了する。
魅了された生物は、神に祈りを捧げるように屈んで動けなくなる。信仰の度合いが深い生物は狂信者となり、
狂信者は、区別なく、壊し排斥する。
『□□□□□□□□□――――ッ!!!!』
口を大きく開けて、咆哮をした。その咆哮だけで威圧させる。魅了されていない島中の生物は我さきと逃げ出し、海は波を立て、芙二たちの元には暴風が吹き荒れた。
芙二「とりあえず――――」
シェリルたちに、そう言いかえたところで急に悲鳴と爆発する音が聞こえる。後ろを振り返ると、そこには魅了された狂信者がそうでない者を排斥せし、と動いていた。逃げ惑うもの、目を血走らせて、農具を振り回すもの。
芙二「正常な状態の島民を避難させよう。葉月さんは狂ってる島民を斬って。致命傷を与えても死なないようにしておくから。シェリルさんはこの島にあるはずの避難所まで残りを連れて行ってくれる?」
葉月「え、斬ってって言われても……」
芙二「このまま、全滅させたいならそれでいい。でも全員が全員、その島で生まれてるわけじゃないだろ。後のことも考えておく。万が一に備えて」
芙二「シェリルさん、任せた。とりあえず、トバすように伝えるから。錯乱してて、どうしようもなかったら気絶させて」
それじゃあ、またあとで、落ち合おう!と芙二は言って空へ向かう。
瞬く間に換装して、キメラ装備に切り替えて、機械の翼を生やし、巨大な鎌の柄を両手で持つ。
体に不釣り合いに見えるぐらい、大きな鎌を持ちながらカイン・アッドレアに接近する。
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『来るか……そのまま墜落させてくれる。【
爪を芙二へ向け、振り下ろす。
振り下ろした先から光り輝く無数の剣が出現し、降り注ぐ。
芙二(チィッ! 逃げ場が、ねぇな。が、しかしそれだけで
急停止し、巨大な鎌で薙ぎ払う。がその直後に、龍の尾が当たり、下へ落される。岩を砕く轟音が響き、土煙が上がる。鎌から取り替えて、両手に禍毒の盾をつける。
芙二「上にいるのが、気に食わねぇな! トカゲは地を這うモンだろーが!! 貴様こそ、失墜させてやる!!」
『……ふん。弱い生き物こそ、よく咆える。勝算はあるのだろう? このままだと、無様にも死ぬことになるが構わないよな。弱者は権利を主張することもできずに、死ぬのだから』
と、二人の会話が終わる。カイン・アッドレアは芙二めがけてではなく、この島を崩壊させるために【
その隙に、冷葉へ連絡を試みるが、通じない。そうか、今はちょうど夕飯どき。空が昼のように明るいのは、異常な光景だったか。南極圏の白夜と思えばいいか、と割り切り、アビスへの通信を試みる。
『アビス、吾だ。今、いいか!?』
アビス「ぅわ! きゅ、急にどうしたのですか……」
『緊急事態だ。放送室へそのまま行ってくれ。そして電源をオンに――――』
電波が途切れた、ように思えたときだ。核爆弾でも落としたような轟音が工廠中に響く。
ただ事ではない、と察したアビスは指示の通りに行動する。
話を聞きながら何事かと寄ってきた、周りの妖精も使って。
急いで冷葉に伝えて、と。ついでに艦娘にも。その中で、明石が、夕張が寄ってくる。
今の音はなに!?と。隠すことは愚かなことと思った、アビスはありのままを伝える。明石、夕張の顔色が変わる。だが、すぐに駆け出した。アビスはあえて聞かない。聞くまでもない。
芙二の指示通りに、放送室へ行き、マイクの電源をつける。ブツっと音がなり、泊地の建物内だったら聞こえる状態になる。
『あーっぶな!! 本格的に島が崩壊するところだったじゃねーかよ!! 狂獄龍忌呪、三十パーセント解放。貴様を地へ落としてくれる。【グリム・リーパー】ッ!!』
突然、不在の芙二の声が聞こえる。事実を知る一部の除いて、驚く。いつもの穏やかな口調とは違い、荒々しく、言葉遣いも悪い。
また通信が途切れる。突然切れた、放送にみな、顔を合わせて言葉を失っていた。しかしすぐに聞こえるようになる。
『呪いを解放してもダメか! おっと、その攻撃は見切った!』
ガキン、ガキンと耳を塞ぎたくなるような金属の擦れる音が泊地内に響く。
それを聞いて、全員確信する。事情を知らないものも、さすがに察する。
自分たちの提督がどこかで戦っていることを。でも内容からして戦っているのは深海棲艦の類ではないだろう。事実を知るものは、歯がゆい気持ちになる。すぐにでも行動したいのに、できないからだ。
『この星に、生きる生物よ。我の逆鱗に触れし、愚かな生物よ。貴様らの命を代価に、罪を贖う機会を与えよう。天に祈りを捧げ、我を祀れ。……【
聞いたことのない、冷たい声に一同、耳を塞ぐ。が、声は耳ではなく頭に直接響く。
発狂してしまいそうだ。だが、口が押えられたように開かない。
食堂も、寮内も、どこも静まり返る。みな、聞こえてくる、放送をじっと聞いていたからだ。
そんなとき、芙二の声が入る。まるで、場所を伝えているかのように聞こえた。
『ち、このままだと、南西諸島海域はおろか。今、いる、深部の群島だって地図から消えるだけじゃすまないぞ……!!』
『よその心配をしてて、いいのか? このままだと、貴様、死ぬぞ? 何も守れず、死ぬ。実に人間のようで滑稽だ。本当に貴様は――――』
また、音声が乱れる。砂嵐のような状態になって、聞こえない。
だが、すぐに聞こえるようになる。聞こえてきた声の主は驚いているようだった。
『な、なんだ。その姿は!! まるで、おとぎ話の……そのものの……』
『これは、
そういった、直後、音声が音割れするほどの声量が聞こえてきた。そうして放送は切れた。
皆が顔を合わせて、話し出すなか、また放送のマイクが入った音が聞こえた。
声の主は補佐の冷葉だった。今の放送事故のような内容についてか、落ち着かせるための放送か。
が、まったく違う内容だった。
『今から、呼ぶものは至急工廠へ向かってくれ。そのほかの者は待機するなり、自由にしててくれ。ついてくるのは構わないが、何を見ても口外はするな。口外しようものなら、轟沈よりもつらい現実が永久的に訪れるだろうさ』
と、締めたあとに本題に入るのだった。
次々と呼ばれていく。
その中で、一人、胸に手を当てて心配そうな表情をするものがいた。
その艦娘は呼ばれは、しなかったがついていくことに決めたのだった。
自分のトラウマを克服するために。
センスのない厨二病を、どうぞ。