とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 前半は前回の芙二とカイン・アッドレア側のシーンの続きです。
 後半は――――。


二章 86話『龍神と龍人』

 芙二が巨大な鎌を振り上げ【グリム・リーパー】と言い、空を飛ぶカイン・アッドレアへ振り上げる。

 貯めていた怨結晶と魂晶を混ぜたものを用いて、狂獄龍忌呪を三十パーセント解放した。過去に深海棲艦に放った一撃よりも重い一撃を、与えるが――。

 

『……効かぬわ』

 

 鎌が当たったが、弾かれる。ガキン、と金属を殴りつけたかのような音が空中に響く。芙二は舌打ちをして、鎌から鈎爪へ切り替える。

 

 そして直接、鈎爪でカイン・アッドレアの肉体を抉ってやろうと思って行動しようとするが、【天獄の審剣(ジャッジ・クロウ)】が放たれる。

 

 降ってくる光り輝く無数の剣を見て、鈎爪で払おうと考える。

 

芙二「呪いを解放してもダメか! おっと、その攻撃は見切った!」

 

 能力を用いて、肉体にバフを掛けているが、それでもきついものがある。雨のように無差別に降り注ぐ剣は芙二の身体だけではなく、島の土地を抉っていく。

 

芙二「……ぐぅ! 数が……多い!!」

 

 カイン・アッドレアどころではなくなっていた。鈎爪だと、捌ききれないので両手に盾をつけようと変えようと思った。

 

 そのときだ。カイン・アッドレアの身体が光り始めた。それはまるでチャージが完了したかのように見えた。直感で大技が来ると、確信した芙二はすぐに盾へ切り替えて衝撃に備えようとした。

 

『この星に、生きる生物よ。我の逆鱗に触れし、愚かな生物よ。貴様らの命を代価に、罪を贖う機会を与えよう。天に祈りを捧げ、我を祀れ。……【白き終末(ホワイト・ノヴァ)】』

 

 長い詠唱が終わったのか、カイン・アッドレアの両手の間には自身の半分の大きさ輝く球状のものが見えた。それを地面に置くように、優しく放したのだ。

 

 人間から見ても、遠くから見てもそれが危険だと判断するほどだった。島にいる生物は、未知の恐怖から逃げようと、していた。輝く球状のもの(それ)を観測した者も異常事態だと、知らせようと動いた。

 しかし狂信者は別だ。ゆっくりと落ちてくるものを、神の慈悲だと言って動かなかった。

 なかには、魅了から解除されて島の避難所へ必死に走って逃げていく者もいた。

 

 盾を構えたまま、ゆっくりと落ちてくる輝く球状のものを見つめながら呟いた。

 

芙二「ち、このままだと、南西諸島海域はおろか。今、いる、深部の群島だって地図から消えるだけじゃすまないぞ……!!」

 

 それが着弾しようものなら、確実に島は壊れる。そんなことは一目瞭然だ。

 なんとかして、島を粉砕しない方法を考える。死人は時間制限付きではあるが、蘇生が出来る。

 

 記憶処理はした方がいいだろう、だが破壊された住居やその他は修復できない。

 ここは切り札を、切るしかないと思った時だった。

 

『よその心配をしてて、いいのか? このままだと、貴様、死ぬぞ? 何も守れず、死ぬ。実に人間のようで滑稽だ。本当に貴様は愚鈍の一言に尽きる。啖呵を切ったが、最期はこれだ。哀れ極まりない』

 

 空を翔ける、龍神化したカイン・アッドレアは芙二へ向けて憐みの視線を向けた。

 続けて、滅ぼされる直前まで幸せな時間を過ごせばいいものを、といった。

 

 カイン・アッドレアの視界が白く染まる。すぐに耳を塞ぎたくなるほどの轟音が鳴り響き、何ものも壊し、吹き飛ばす暴風が生じた。何も残っていないだろう、と煙が晴れるまで思っていた。

 

 龍神となったとき、初めて憎しみを込めて放った一撃であった。そのときは、その島の施設ごと崩壊し多くの人間を殺せて満足していた。

 

 南西諸島海域をふらりとしているうちに、この島へ着いた。そしてこの島に祀られている神を喰い殺したとき、自分の成長を感じた。この力なら、人間を絶滅まで追い込めると確信したのだ。

 

 それまでは、静かに暮らしていようと思った矢先だ。この世界で人狼族(ワーウルフ)を見かけた。

 まさか、それが引き金になるとは、思わなかったなとカイン・アッドレアは思った。

 

 ふと、視線を戻すと黒煙混じりの土煙が晴れはじめていた。

 パチパチと木々を焼き焦がす音が聞こえる。

 

 それらを耳にして『……呆気ないものだ』と呟いた。

 

 死体を確認すべく、一度地上へ降りて最後に確認をしようと思い降り立つ。

 龍神化を解除し、元の白いローブを羽織った少女の姿へ戻った。

 

 爆発は土地を抉り取るように、穴が空いており、下まで深いのか全く見渡せない。

 

カイン「……下へ行けと、我を誘っているのか」

 

 翼を広げて、下まで降りる。

 降りる舞に、陽光は届かなくなるのを感じた。

 自身の身体を輝かせ、周囲を照らしながら底へ向かった。

 

 ====

 

 底へ到達したとき、カイン・アッドレアは異様なものを見た。それは自身の身長の二倍ほどある卵だ。

 藍色の殻は内側から照らされているのか、闇の中で燦々と輝く。 

 

 藍色の卵の考察を考えるまでもなく、分かり切っていることを叫ぶ。

 

カイン「まさか、これは……フジか!」

 

 ビシ、と一筋の皹が入るのが分かった。それを見てカイン・アッドレアはすぐさまに破壊しようと試みる。

 

 

 距離は本当に目と鼻の先。

 一瞬で近づき孵化する前に、奥の壁まで貫通させる勢いで突くだけ。

 

 だが――――

 

カイン「ガッ!?」

 

 急に空気が重くなり、自身に降りかかる。

 このなにものでも近づくことは許さない、という圧は自身だけではなく、他の瓦礫にも作用しているように感じた。

 

カイン「それに、しても……息が、でき」

 

 と、そこまで言ったとき。卵は音もなく割れる。藍色の光を放つ殻は輝きを失いながら落ちる。

 

 中に居たのは丸く、閉じた体勢を取った芙二だ。しかし、容姿に変化が起きていた。

 

カイン「な、なんだ。その姿は!! まるで、おとぎ話の……そのものの……」

 

 と、驚くのは無理ない。そう、芙二の姿は御伽噺に語り継がれてきた悪役の姿に酷似していた。

 

 余裕綽々だったカイン・アッドレアですら驚く。まさか龍人族と聞いていたが、あの世界に伝わる呪いを()()()()()()とは、思わなかった。

 

芙二(…………)

 

 そんなこととは余所に芙二は目をゆっくりと開き、身体を伸ばす。伸ばされた手足に、胴に、蒼く禍々しいモヤが纏わりつく。そしてそれは形を変えていき、蒼く禍々しいアーマーとなった。

 

 背には、機械の翼ではなく、蝙蝠の翼が生えた。

 そして刺々しい尾が生え、最後は頭に一角獣のような角が生えた兜が着いた。

 

 キメラ装備のようなぐちゃぐちゃなものではなく、統一感があるデザインだった。

 今の芙二は竜騎士と呼ばれても違和感のない姿をしていた。

 

芙二「これは(オレ)なりに改造したものだ。おとぎ話のソレと比べてもらって大変恐縮だが、全くの別物だということを、教えてやろう。魔龍顕現……祟り神は今宵、この地に降臨する。……【祟禍再臨(すいかさいりん)】」

 

 魔龍顕現のあたりで芙二の真後ろの空間が裂け、穴が出現する。

 穴からは怨嗟が溢れ、奇声や不快音が聞こえた。途中から何を言っているか、聞き取れなかったが背後の空間から赤い光が二つ見えた。

 

 

カイン「ッ!!」

 

 赤い光の正体を知ったカイン・アッドレア、地上へ最速で向かう。

 ガラガラと崩れていく、地下空間で芙二は背後を向いた。それは権限させるはずだった魔龍こと、この島の人々からかつて祀られていた、殺された神の残された思念/怨念へ干渉する。

 

芙二「貴様の思い、怨み貰っていくぞ」

 

 背後で魔龍は形成されつつあった。カイン・アッドレアが地上へ逃げなければ、魔龍となった神の願いを叶えようと思っていた。

 

 芙二というこの世界の者ではないモノに肉体を弄られるのは癪に触るのだろう。

 しかし殺されても尚の事、この島の繁栄を願うさまは見ていて胸が痛む情景だった。

 

 消える最後に、かつての神の言葉が伝わってきた。

 

『神に変わって罰を下す者よ。決して、怨念に囚われるな。その先は終焉なり』

 

芙二「はいよ。永らくお疲れさんでした。貴様を祀っていた民は蘇生させてやる。約束は果たすからな」

 

 ガラガラと上から瓦礫が降ってくる。穴が完全に埋まる前に、地上へ向かう。

 今度はこちらが攻める番だ。この地に永らく信仰されてきた神の怨念だ。

 

 これまでの、と比ではない力を感じた。これなら、今の状態もすぐに出せる気がする。

 

芙二(名前はどうしようかなぁ……あ、魔龍と成りつつあった神を喰らったのだから、魔竜装ってどうだろう? 今の状態は半分騎士みたいなもんだからなぁ)

 

 

 そう思いながら、地上へ即転移する。陽光は陰り、普段の夜が始まろうとしていた。

 だが、雨が降るのか、空は曇り始めた。地上へ転移してきた芙二に話しかけた。

 

カイン「その気配は……そうか。この島の神を喰らったのか。あんな悍ましいモノをよく口に出来たな」

 

芙二「願いは聞き届ける。吾は貴様を返せねばならない。どうする? まだ続けるか?」

 

カイン「たかが、神を喰らっただけ。それで一時的に龍神と成っているようだが、甘い。これでようやく同じステージに立ったというだけのこと。次は息の根を止める。この世界は滅ぼす」

 

 ローブを脱ぐ瞬間、カイン・アッドレアが光り輝く。

 芙二は先ほどの龍化ではないことを見抜く。どうやらこれが第二形態というやつらしい。

 

 放つオーラが何段階も跳ね上がるのを感じていたが、芙二は先ほどの新しいスキルの呼び名を考えていた。

 

芙二(【魔竜騎装(まりゅうきそう)】っての、いいんじゃね? 魔竜っぽいし、騎士っぽいし)

 

 曇っていた空が強制的に晴れる。カイン・アッドレアが直接天候操作していたわけではいないらしい。

 恐らく、跳ね上がったオーラの影響だろう、適当に結論付ける。

 

『とりあえず、あんなのを放つワケには行かないな』と言いながら衝撃を吸収する結界でも貼っておく。

 まぁこれで破られて死人が出ても72時間いないだったら、蘇生が聞くからどうとでもなる。

 

 再開だ、という声と共に雷が落ちたかのような閃光、轟音と共に暴風が吹き荒れる。

 

 そこには第二形態を終えたカイン・アッドレアが少し浮いて芙二を見下ろしていた。

 黒色の髪は一部白色が混じってきていた。額に一本の角を生やし、白色のドレスアーマーを身に纏っていた。

 大きさは変わっているものの、天使の翼を生やしてレイピアを何処からか取り出して臨戦態勢を取る。

 

芙二「見た目、まんまヴァルキリーじゃんか」

 

 なんて言いつつも芙二も芙二で、先ほどの巨大な鎌に持ち替えて構える。

 

カイン「楽に死ねると思うなよ、フジよ。貴様があの呪いを宿す者ならば、生かしておけない」

 

 そういうと、カイン・アッドレアは芙二へ向かって攻撃を仕掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 カイン・アッドレア【第二形態】:天獄龍となったカイン・アッドレアは第一形態は龍の姿となり、第二形態は人型つまり、最初の時の少女の姿を基として天獄龍としての力を加えた姿となる。


新スキル:【祟禍再臨(すいかさいりん)
  備考:その土地の怨念/思念を用いて土地固有の厄災を召喚する。
     対象者の縁に依って、一時的に現界/召喚される。
     

    :【魔竜騎装(まりゅうきそう)

  備考:キメラ装備→魔竜騎装
    :魔龍と成りつつあったかつて祀られていた神の思念/怨念を喰らった際に進化したスキル。見えた目はFF14の竜騎士に禍々しさを追加した代物。

使用武器:変化なし

 戦いは続く。
 次か、その次でお終い予定。
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