とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 また少し戻って、今回はサブタイトルの回収です。


二章 88話『天獄龍(カミサマ)となった少女』

 芙二とカイン・アッドレアは空中や地上で死闘を繰り広げていた。

 互いに向く刃は欠けることを、止まることを、知らず傷ついて、ボロボロになっていく。

 

 それだけではなく二人が死闘を繰り広げることにより、島の所々が破壊されていく。

 森は焼かれ、川は穢れ濁り、地は荒れていく。カイン・アッドレアは傷を負うほどに強くなっていく。まるで限界がないように、ひたすら攻撃を繰り出してくる。

 

芙二(このままだと、本格的に島を壊されてしまう! 場所を移さなければ――――)

 

 などと、考えていたのがいけなかった。カイン・アッドレアはその隙を見逃さない。

 レイピアから青銅色に輝くロングソードに切り替えてこれまで以上の速度で接近する。

 

 ガキン、と互いの得物がぶつかり押し合いが始まる。

 芙二は『うわ、やらかした』と思った。

 

 カイン・アッドレアの押す力が増していたからだ。しかもレイピアと違って剣身のしっかりしたロングソードに力の重みがしっかり乗る。

 歯を食いしばって、なんとか踏ん張る芙二に対してカイン・アッドレアは口を開く。

 

カイン「貴様、今余計な事を考えたな? そのまま潰れて死ぬか? いや潰れて死ね」

 

芙二「このまま押されて、終わると思ったか? テメェにも()()()()()()()を忘れていた!」

 

 それ以上の力で押し返されたカイン・アッドレアは一瞬目を見開いて、驚きながら後退する。

 ロングソードを構えながら、芙二を睨みつける。

 

カイン「貴様……狂獄龍忌呪(あれ)だけではないのか? それ以外にも何か持っているな」

 

芙二「さぁね。吾はよくわからんね。さて、戦闘の続きと行こうかねぇ?」

 

 問いに対して、とぼける。そして鎌先をカイン・アッドレアに向けて、続きを促す。

 

カイン「……! この島(ここ)に侵入者か……この反応、知らぬがこの島と共に破滅させてくれようか……!」

 

 怒りの表情を浮かべながら歯ぎしりをする。芙二はそれを来いて『冷葉達が到着したのか。それはいいけど、あいつらを守りながらとか無理だ』と思った。

 

芙二「隙ありっ!」

 

カイン「しまっ……」

 

 干渉するのは今しかない、と思ったので一瞬で距離を詰めてカイン・アッドレアの肉体に触れる。

 驚いたカイン・アッドレアは引きはがそうとするも、それよりも先に芙二の力が発動する。

 

 カイン・アッドレアの身体が光り始め、芙二を包んだ。

 

 ======

 

芙二「干渉できた、のか? 出来たのなら、ここはカイン・アッドレアの記憶のなかという事になるが……神さまレベルになると覗くだけじゃなくて、入れるようになるのか」

 

 気がついたら、立っていた。格好はさっきまでと変わらず鎧を着たまま、身体が透けている。

 今いる空間は灰色一色で覆われておりどこにもカイン・アッドレアは見当たらない。

 

芙二「どこだ? とりあえず進んでみよう」

 

 いくら進めど、どこも灰色一色の空間のため、能力を使おうとしたが、使えない。

 対象者の裡へ入っている間は使えないようだ。 

 

芙二「ここは本当にカイン・アッドレアの裡なのか?」

 

 と、疑問が出てきて消えないのでつい、呟いてしまった。すると、何処からか少女のすすり泣く声が聞こえる。どこだろうか、と耳を澄ませると左隣りから聞こえてきた。

 

芙二「そこに、いるのか?」

 

 疑問形で問いながら、進むとその先には光の檻の中で泣いているカイン・アッドレアがいた。

 

『ひっく……ひっく……やだよぉ~早くおうちへ返してよ~~アイリ~……アイリ~……うえぇぇん』

 

 目の前にいる、カイン・アッドレアは敵対している状態とは違い遥かに幼いように見えた。

 家に帰してほしい、と泣く少女の言葉は芙二の心を刺激した。

 

 もう大丈夫、と手を伸ばそうとしたとき、手が止まる。

 泣く幼きカイン・アッドレアの後ろには、肩まで伸びる薄い水色の髪、切れ長の大きな緑色の目に涙を溜めていた少女が現われ、しゃがむように彼女を抱きしめ、微笑みながら話しかけていた。

 

 

『大丈夫。アイリがカインちゃんを守ってあげるから』

『うえぇぇ~~……アイリ~~』

 

 抱きしめられた、カイン・アッドレアはアイリ、と少女を呼んだまま泣きじゃくっていた。

 

芙二(まだ、この世界に被害者がいるのか……)

 

 

 と、いたたまれない気持ちになった。アイリ、か。

 またシェリルさん達に頼まないといけないな……と思った矢先だ。

 

 カイン・アッドレアとアイリのいる空間がひしゃげる。ぐにゃり、と歪んでいく。

 芙二が手を伸ばしても、すり抜けて、消えていく。

 

 

芙二(分かっている、これは記憶ということ。決して、触れたりなんてことは出来ない!! だがっ!)

 

 掴めないどころか、触ることも出来ない手を引っ込めて前を見る。

 その瞬間、芙二は驚く。アイリと呼ばれた少女が赤い涙を流し、こちらを向いてこう言った。

 

私達を無理矢理連れ去った、この世界に復讐を。私に終わりが来るまで呪い続けてやる

 

 人が、怨みのこもった言葉をいう時と同じ声質でそう吐いた。その言葉を聞いたとき、全身に鳥肌が立った。ここは記憶の中だというのに、まるで直接呪いを掛けられたかのような寒気がした。

 

 

 気がついたら、違う空間に居た。

 ここは先ほどの灰色一色の空間とは違い、全てを焼き尽くす赤、或いは血で汚された色で染まっていた。

 

芙二「何が起こったかは、分かる。資料通りならば拷問の始まり、か。ここからカイン・アッドレアにとっては長い時間が始まった、ということか」

 

 今度は既に出現していた。寝台に拘束されたカイン・アッドレアは唸っていた。向こうの言葉で罵詈雑言を吐いている。近くにはアイリ、と呼んでいた少女は近くにいない。

 

 いつまで経っても黙らないことにイラついた人間は黙らせようと、暴行を加えていく。その度に短い悲鳴と泣く声が漏れる。

 

 耳を塞いでも、音は頭に響く。こちらが廃人となりそうな、地獄の空間だった。

 どれぐらいたったか、分からないがカイン・アッドレアは言葉を、声を発さなくなっていた。

 

 それをつまらないと思った人間は、彼女の肉体に過剰とも言える数の注射器を突き刺して死んだ目の彼女を叩き起こしては、うるさいと、笑いながら暴行を加えていった。正直、芙二は吐きそうだった。

 

 転生前、病んでスナッフムービーやら法的にギリギリアウトな画像を直に見て他人に殺意を向けたり、と発狂しかけたことが生温いと思い知らされた。

 

 

芙二「……ぉえっ」

 

 ついにはえずきだす。幽体に近い状態だと吐くことは出来ないが、それでも辛い現象だ。

 

『殺してやる、()()……この手で……』

 

 人間が消えた部屋の中、寝台に拘束されたカイン・アッドレアは涙を流しながら消え入りそうな声で殺意をもらしていた。

 

 そこまで、されたらこうなるのは理解が出来る。自分だってきっと人間を呪って世界を壊すだろう。

 だが、これを見たからと言って『はい、そうですか。いいんじゃないですか』とはならない。

 

「でもこの時点では、龍神と成ってはいない。まだ人間のままだな。どの時点で……?」

 

『我が、人間を……滅ぼしてやる』

 

 その言葉で、空間にひびが入って割れるようにして消えた。

 

 次へ移行する前に、芙二は立ち止まって考える。もしかして、この時点でカイン・アッドレアはこの世界を滅ぼそうとしていたのか?と。なら、その力が開花するのはいつ頃だろう、と考える。

 

 ドン、と背中を強く押される感覚がした。

 どうやら、次へ進めという催促らしい。

 

 随分長い記憶を、見ているなと芙二は思った。まぁ期間が期間なだけに、仕方ないかと納得した。

 

 次はこれまでとは、違った空間だった。

 

 どこかの施設が火の海に包まれていく。人の悲鳴や絶叫が聞こえ、所々崩れていく。土煙と黒く燃え上がる炎が芙二を覆う構えることなく、包まれる。

 

 チリ、チリと焼かれたような感覚に見舞われるが、大したことないと目の前で起きている光景を見続けていた。近くにはカイン・アッドレアはおらず、煤に塗れた白衣の男が二人こちらへ向かってきた。

 

 こちらは見えていないようで、男二人で仲良く責任のなすりつけ合いをしていた。

 

『ひぃ、だから、俺は嫌だったんだ! どこの国で売られたクソガキとも知れないモンをモルモットにするのは!!』

 

『はぁ!? お前、ノリノリで殴ったり、注射器を刺していただろう! 俺たちは皆、殺されても仕方ない人間なんだよ!!』

 

『や、いやだ! 俺にはまだやるべきことが……!!』

 

『うるせぇな! もう船も壊された、通信も破壊されたんだ! どうやっても死の未来からは逃げらんねぇ!!』

 

『あ、そうだ。まだ助かる。俺が、お前みたいな薄情者を殺して暴れるモルモットに献上すれば』

 

『バカな考えは止せ! 実を言っちゃあ俺だって……』

 

 バァン、という乾いた音が耳を貫く。芙二は動じない。さっきよりもずっとラクだからだ。

 男が拳銃で同僚を撃ち殺した。ただそれだけのことだ。

 

芙二「このまま、男が狂って殺しまわるのを見させられるのはな――」

 

 つまらない、と思った芙二は周りを散策する。

 今回は最初と同じようにして、行くのだと分かった。

 

 スタスタ、とひたすら歩く。目的地はない。

 カイン・アッドレアはここのどこかにいると、思うし。

 

 所々、瓦礫や死体で埋もれていてうまく歩けなかった。

 

 

 そう思っていると、誰かの話し声が聞こえてきたのでそちらへ駆け足で向かう。

 

『なぁ、知ってるか。ダブりの艦娘(サラトガ)さんよ、この島はこれでお終いらしい。意識の無いお前さんを犯すのは面白みに欠けるが……どうせ、やっていても……ぶぎっ!!』

 

 瓦礫に埋もれていて、意識のないサラトガを下品な眼差しをしながらあまつさえ犯そうと口にしている白衣の男は力任せに瓦礫を退かそうと奮闘しているところに影が差す。

 

 男は正体に気がつく前に頭を握り潰されて、後ろへ倒れた。しかしサラトガは目を覚まさなかった。

 その影に対して、感謝しようと前を見るとそこには一本の角が生え、背からは天使の翼が生えている半人判龍となったカイン・アッドレアがいた。

 

芙二「まさか、この段階で変化していたのか!」

 

 と、小さな声で呟くように言う。サラトガから聞いた話と合致したからだ。

 謎の声は、カイン・アッドレアが判人判龍と成ったからで、サラトガはたまたま命を救われた。

 

 それだけだった。そしてカイン・アッドレアは瓦礫に埋もれるサラトガを見て、一言。

 

『種族は違えど我と同じく、世界に呪われた子よ。貴様の生に幸あれ』

 

 そういうと瓦礫に埋もれるサラトガの元へしゃがみ、頭を撫でた。

 

 カイン・アッドレアは立ち去ると、空間がまた歪んだ。

 次は龍神となった原因だろうか、と思った。ここまでだと、彼女が龍神に成りえる理由はあれど至ってはいない。

 

 だとすると、次だ。次で分かる。

 

 次は真っ暗な空間だった。

 何が起きたのだ?と思うと、急に轟音が響き、空間に光が入り驚く。

 

『■■■■■■■■!!』

 

『うるっさいなぁ!! 貴様は我の糧になれば、いいだけのこと!!』

 

 目の前には祀られていた神とカイン・アッドレアの戦闘が起きていた。

 

 祀られていた神は物凄く怒っている。理由は分からないが、カイン・アッドレアの態度からして護っていた民でもなんでも食われたからだろう。

 

芙二「なるほど。それで神すらも喰らった、というわけか。で、残りの負の部分は吾が喰らったと。なるほどね、カイン・アッドレアは神殺しすらやってのけたわけか。そりゃあ強いわな」

 

 なんて考えていると、祀られていた神が自爆覚悟でカイン・アッドレアごと死のうとするが効かないようだった。

 

 祀られていた神は死に、肉体から引きずり出した光り輝く魂を飲み干した。

 すると、半人半龍だった彼女は龍神へと至った、というわけか。

 

 先ほど戦闘した、龍の姿となり産声を上げた。

 しばらくして一帯の海からは深海棲艦が顔を出す。

 

 皆、目は虚ろでカイン・アッドレアのいる島へ向かって進みだした。

 

芙二「魅了された、のか? ……っとここで終わりのようだ」

 

 自分の手を見ると、さらさらと光の粒へ変わっていく。

 結果として、記憶に干渉出来てよかった。

 

 分かったことは、この世界の人間がクズということ。

 それとまだ被害者がいるということ。 

 

芙二「っぁ――! 戻ってきたぁ!」

 

 記憶の中から戻ってきた実感をする。空気が美味く感じる。

 さて、カイン・アッドレアはどうなっているか?と思って見て見ると蹲って苦しんでいる。

 

芙二(これからどうやって怨念関係を抽出しようか)

 

 と、考えているとき。ふいに彼女の身体から黒いモヤが溢れだす。

 モヤは空気中に漂うことなく、下へ落ちる。彼女の足へ絡みついていく。

 

 払おうとするも、近づけない。

 ただ蹲るのを止め、立っているカイン・アッドレアはブツブツ何かを呟く。

 

……我の怒りは、我の嘆きは、この程度で止まらぬ……

 

貴様に分かるか? この憎しみが、怒りが、嘆きが……!!

 

『もうよい、一時的とはいえ龍神となった貴様を殺して魂を喰らえばおつりがくるというものよ』

 

 そういうと、黒いモヤはますます増えて、彼女を包む。

 すぐに破裂音と共に黒いモヤは噴き出して芙二ごと呑み込む。

 

芙二「……ッ! 最悪だ。でも最高の展開だ。このまま行けば……!」

 

 空を見上げると、龍化したカイン・アッドレアが居た。

 しかし先ほどとは違い身体からは黒いオーラが溢れていた。

 

『ギゥゥァァアァァ――――!!!!』 

 

 世界ではなく、芙二を憎み恨む咆哮は空気を震わせる。

 地上にいる芙二目掛けて、自身が持つ大技を放つ。

 

 

既に忘れし、我が理想郷(ロスト・シャングリラ)ァァ!!』

 

 

 龍化したカイン・アッドレアを囲うかのように大きな光の輪が出現していく。

 輪は形を変えて、一つ一つが巨大なエネルギー球と変わろ混ざる。

 

 混ざったエネルギーはもはや破壊の権化となった。

 

 一つでこの島を滅ぼせるものが芙二目掛けて、降らされた。

 まともにくらってしまえば、芙二のみならず南西諸島海域の深部一帯が滅ぼされてしまうだろう。

 

芙二「いよいよ、持ってやべぇな。俺でもここまでは予想してなかったわ」

 

 殺意を向けられている、当の本人は冷や汗を流しながら頬を掻く。

 切り札はさっき見せてしまった。しかしこのままだと確実に死ぬ。

 つか、応援に来てくれてる冷葉も死ぬ。艦娘も自分を信じてくれた、シェリルさんや葉月さん、メイさんに申し訳なくなる。

 

芙二「さて、一か八かだ。俺が一時的とはいえ、龍神化しているのならば限定的ではあるが自分についている呪いも呼び起こせるんじゃないか?」

 

 流石に嫌な予感はするけどね。

 反動で魂がどっか行っちゃう……幽体離脱、長期版!的なやつね。

 

芙二「まぁ悩んでいる暇はないでしょ。()()()()()……【祟禍再臨(すいかさいりん)】」

 

 白き滅びのエネルギー球がゆっくりと迫ってくる中、芙二は意識が落ちたように力なく倒れた。

 

 

 




 天獄龍の持つ大技:【既に忘れし、我が理想郷(ロスト・シャングリラ)

   概要    :
 
 天獄龍の持つ大技であり、使用後は天獄龍の周りに光の輪が出現する。
 そして輪は十二のエネルギー球となり一つに混ざり、超巨大なエネルギー物体となる。

 威力は【白き終末(ホワイト・ノヴァ)】よりも強く災害そのもの。
 下手に刺激すると超白爆発を起こし、全てを灰燼へ帰す。
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