一話で済ませようとしたら出来なかった。次で幕間1は終わります。
芙二が謹慎処分を下された日の夜の事だ。
夕食後、前の作業に戻りしていたので時間を忘れるほど夢中になっていた。
ようやく、終わりが見えひと息つく。
椅子から立ち上がり、時計に目をやると時間は既に二十二時を回っていた。
すぐに視線を戻し、ストレッチをしていると突然扉がノックされる。
『どうぞ』というが誰も入ってこない。
芙二「誰だ? こんな時間に尋ねてくるのは冷葉か艦娘の誰か、か……」
不審に思い扉へ近づく。そしてドアノブに手をかけようと伸ばそうとしたらカチャと音を立てた。
芙二「ん? なんだ? 今、音がしたような」
勝手に鳴った驚愕するもすぐに冷静を取り戻し考える。
扉の前には誰かいるが、応答しないので仕方なくスキルを使用する。
気配察知で誰かを視ようとするとき、ドアノブが回り扉が開いた。
八崎「夜分に失礼します。芙二殿」
芙二「こんばんは、八崎さん。俺になんか用? 知っての通り俺は謹慎処分中だからね。外出は出来そうにない」
八崎「知ってますよ。それくらい。これから少しだけ時間ありますか?」
芙二「何をするんです? 俺はありますけど、八崎さんは大丈夫です? 明日も仕事あるでしょ?」
八崎「ありますけども、時間は遅めにしてあるので今夜寝るのが二時、三時になっても構いません」
なるほど、と相槌を打つ芙二。
それで、と続ける八崎。
八崎「どちらでしょうか。あるのなら――――演習場へ。夜間演習を誰かしら行っているでしょう。艦娘の皆さんには悪いですが少しだけ時間を頂きましょう」
芙二「演習場……ということは戦闘ですか? いや戦闘というよりかはじゃれ合い、と言ったところですかね」
八崎「そうですね。本当の殺し合いじゃないですよ。流石に私の身が持ちません。なので」
芙二「手加減をしてほしい、と?」
八崎「それもありますけど、私のレベルに合わせてくれると助かります。ほら、私のような人間離れした憲兵は少ないじゃないですか」
と、いう。確かにそうだな、と頷く。
芙二「こういうときは紫月に……神威憲兵にお願いしたらいいのでは?」
八崎「神威……彼の異名を知ってるのですね。彼は今現在、工廠にいます。なにをしてるのかは、分かりませんけど。まぁ夕張さんと明石さんがついているので変な事はしてない、と思います」
芙二「あ――そういえば、神威憲兵と
八崎「今こうして、誘っている私がいうのもなんですけどダメなのでは?」
芙二「だよなぁ。まぁ自重して、工廠に入り浸るかなぁ」
八崎「あ、泊地内だと大丈夫なんですね」
芙二「だと思うよ。でないと、向こうのストレスが半端ないだろうし。さて、演習場へ向かおうか」
そういうと、了解ですといい共に演習場へ足を運んだ。
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芙二と八崎が到着し、場内へ入る。ゲートを抜けると砲撃音と水飛沫の音が席まで聞こえてきていた。
まず演習場では艦娘が二手に分かれ各艦隊、六名で演習を行う。
普段は両艦隊、六名ずつなのだが今夜は二名ずつと少数で行われていた。
それに今夜のこの時間は夜戦演習の真っ只中なのか、音は絶えずに響く。寮から少し離れて作られていることが功を奏したようだ。
こんな時間に砲撃音が近くで聞こえてきていたら、気になって寝れないだろう。
艦娘のみならず、周囲から苦情もんだと思う。
これからのことを考えた後に、芙二は消音処理を自分を中心に半径三百メートル広げる。
一応の処置のためだ。まぁほとんど聞こえないだろう。
念のため外からの音は聞こえるようにしとくか
隣にいる八崎に声を掛けようとしたが、彼女は彼女で艦娘達の戦闘に釘付けと言った感じだったので場内へ視線を切り替える。
一方では足柄が誰かに砲撃を行っていた。その先には夕立がおり、飛んでくる砲弾の間を縫うように避けていき、距離を確実に詰めていっていた。
深海化した時雨との戦闘で改二になり性能が向上したのは、もちろん深海棲艦との戦闘や仲間との研鑽により夕立自身は他のトコと比べて贔屓めなしに強いと言えるだろう。
芙二(ゲームのころは犬っぽいと思っていたが……こうも一緒にいて思うがありゃ番犬か? それとも狂犬か)
なんて、自分の知るデータ同士を比べてみたが失礼か、とそれ以上は考えなかった。
逆に足柄はどうなんだろう?と彼女に注目する。
彼女は建造からここに配属となった。初期勢と比べれば劣るかもしれないが、それ以上に食らいつく姿勢があってこれからの成長が楽しみだ。ついさっきまで忙しかったからみんなの練度を見れてない。
今の練度を調べて、足りていたら改または改二の許可を出してもいいかもしれないな、と足柄を見ながら頷く。
八崎「芙二殿? どうかされたんですか?」
芙二「あ、いやね……」
隣に居る八崎に聞かれたが、少し苦笑いをして誤魔化す。
彼女達の今後を考えていた、なんて今は言わなくてもいい。
芙二「あ、そろそろ決着がつきそうだ」
と、話題を自分から変える。
八崎が『あっ』と声を漏らし、視線をあちらに戻したときに決着はついたようだ。
芙二(まぁ夕立の圧勝だよなぁ)
中破までとはいかなくても、ある程度損傷した足柄が海上で座っていた。
その隣には夕立がニコニコして何か話している、が聞き取れない。足柄が悔しそうな顔で言い返していた。
八崎「やはり夕立さんは強いですね。最初はボロボロの瀕死だったのに、あそこまで強くなるとは……」
分かりますよ、と芙二。
二人から視線を外すとまぶたを閉じて想像する。
実際に艦娘の成長幅は個人で異なるが夕立はその中でもトップクラスに入ると思う。
芙二「あ、芙二殿。気付かれましたよ」
え?と八崎に言われて先ほどの二人のほうへ視線を戻すと夕立が手を大きく振っていた。表情は明るく疲れなど感じさせない。
少し微笑みながら手を振り返す。
なにかこちらに向かって言っているが聞き取れないぞ、と思い言い返そうとする。
芙二「夕だ――――」
そのとき、一番大きな水飛沫が上がった。
そっちを見るとそこにも悔しそうな顔をした川内と冷酷の眼差しを向けた青い目をした叢雲がこちらを見ていた。
芙二「叢雲……?」
自分と目が合ったような気がした。
パクパクと何かを言っているように見えた。
叢雲から視線を外してなんだ、と八崎に聞くが分からないと言われた。
なので少しだけ呟くような小さな声を出しながら考えていた。
芙二「あれは、なんて……
(お り て こ い)」
降りてこい、とそう言われたような気がした。
そうなのか?と思ってまた視線を戻すと叢雲の表情は変わっておらず、ただ一回だけ頷くだけだった。
芙二「……八崎さん、ちょいと失礼」
と言って場内へ降り立ち、さも当然のことのように水上を歩いて叢雲に近づく。
急に降りてきた芙二に叢雲以外は驚くのだが、叢雲は青い目のまま口を開いた。
叢雲「こんな時間に来てもいいの? 一応、謹慎処分を下されたんだから大人しくしているのがいいんじゃないかしら」
芙二「確かにそうだな。だが、別に俺は」
叢雲「泊地の外に行ってないから、事項を破っているわけではないと言いたいのね。私闘は許可されているの?」
芙二「分からない。でも……」
叢雲「戦闘でボロボロになっておきながら、舌の根の乾かぬ内に……なんとやらなんて言われそうね」
芙二「ぅぐ。そう言われると耳が痛い。軽い運動だから、多めに見て」
叢雲「……はぁ。ところで、私の
芙二「今は橙色の瞳だけど、さっきは青い色だった。もしかして深海化が進行した?」
叢雲「そうね。司令官には何を言っても無駄だもの。正直に話すわ。私はいずれ深海棲艦に成るのだけど殺しておく?」
芙二「いや、殺さないが。今はまだ幼体、直接抽出する方法が分からない。けど、近いうちには出来るようになると思うからそこまで耐えてくれ」
叢雲「幼体?」
芙二「深海化を発症した艦娘の中でわりと初期を幼体と勝手に呼ぶようにしている。それ以外は成体かな。その状態だと深海何とか姫か既に分類わけされている深海棲艦と同じような形になると思っている」
川内「なるほどね。急に会話に入るようで悪いけど、提督達はこれからここ使う? 私たちは今日これ以上は使わないからいいよ。それと観戦してもいい?」
二人の会話に川内が入って来る。足柄も夕立もいつの間にか寄ってきていた。
芙二「おっとそうだった。ありがとう、川内。観戦か、いいぞ。叢雲、その話はあとで話そう」
川内に許可を出すと足柄と夕立と共に席の方へ移動していった。損傷をしてるのに、普通に動けるなんてタフだなぁと見ながら思っていた。
叢雲「そうね。この話は長引きそうだから明日の夜でもいいかしら?」
予定を聞かれたので、頭の中で予定表を開いて確認する。
芙二「明日の夜か、すまない。そこは予定が入っている。外出する予定だから誰か共に来てもらう予定だ」
叢雲「場所を聞いてもいいかしら?」
芙二「場所は……葉月さんのところ。だから、ここが動き始めたぐらいの艦娘を連れて行く予定」
叢雲「なら、私が行っても構わないわね。明日からは哨戒があるのだけど、明後日はフリーだから付き合ってあげるわよ」
芙二「なら、その旨を冷葉にでも話しておこうか」
叢雲「そうしてもらえると助かるわ」
と、言ったところで話は終わる。芙二は八崎の方を見て『すみませんー! 話終わったんで、降りてきてもいいですよー!』と声を掛ける。
少しだけ頷いた八崎は席から飛び降りるのではなく、ゲートから出てきたようだ。
八崎「芙二殿ー! 私は芙二殿のように長時間、水上を歩くことは出来ません!! だから――」
だと、思うよといいながら付与する。これで水上を陸と同じように動けるだろう。
芙二「一応やっといた! 一時間なら全然大丈夫だと思う!」
ありがとうございます、と八崎。
小走りできたかと思えば、水上を陸と同じように飛んだり、跳ねたりしている。
キャー、キャーと楽しさに満ちた声を出している。
そこへ芙二が一言。芙二に足元にはどこからか取り出した、戦斧と軍刀が水上に刺さっていた。
芙二「で、まぁ叩きつけたり、斬りつけたりするとこうなる」
八崎「へ? なにを……」
戦斧を片手に思いきり水上へ叩きつけるとドッパァン!と音と共に大きな水飛沫が上がった。衝撃は波を伝い水上が荒れた。
芙二「とまぁ、一応の確認ね。水だけど思いきり叩きつけるとこうなるよっていう。逆に斬りつけると――」
戦斧をしまって、軍刀を抜刀しようとするところで八崎が『もう十分ですから!』と言ったので両方しまい距離を取って適当に構える。
八崎も構える。
目つきがさっきとは変わって、真剣な眼差しを向けてくる。
芙二もそれに合わせる。二人の間には時間が止まっているのではないかと、思わせる雰囲気が漂い始める。事実、二人のすぐ足元は少しも波紋が生じていない。
叢雲達が誰が言おうか、話し合っていたとき頭上からふいに声が聞こえた。
『決闘、開始!』
その声と共に止まっていた水面は動き出した。
所々、大きさ様々な水飛沫が上がるのだった。
すげぇ初めて4444文字だ。
ミスタが失神しそうな数だぁ(ジョジョ五部より)