とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 夏休みに入った。
 八月は更新頻度が少ないです。

 短編を一つ書こうと思っているからですね。はい。
 駄作で稚拙な文章ですが、読む方のの暇つぶしになれば幸いです。


幕間2 芙二、自分の記憶に触れる

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 昨夜、八崎に誘われた演習場でのじゃれ合い(戦闘)が終わり、別れたあと芙二はシャワーに入り寝た。

 

 目が覚めたら朝の六時前であった。執務をしないとはいえ、そのまま二度寝するわけにはいかない。だからいつものルーティンを終え、食堂へ行こうかと考えていたが気づく。

 

芙二(あ、もう食堂へ行かなくてもいいのか。厨房には間宮さんや伊良湖さんがいる。今日の朝食の時間は七時過ぎだったような)

 

 立ち止まり考えていた。

 厨房だったら冷葉が居れば事足りる。自分並みに鍛えたのだから、そこらの給糧艦娘と同等の動きをこなすことが出来ると思う。何かあったら行けばいいだけ、と思って部屋に留まった。

 

芙二(とりあえずコーヒーでも飲むか)

 

 インスタントコーヒーの残りはどれぐらいだろうか、と思いながら瓶の置いてある棚へ向かった。

 

 

 

.1

 

 

 

 コーヒーを淹れたが、猫舌なのでテーブルに置いて冷めるまでの時間を有効活用するためにタブレットを立ち上げる。

 

芙二「最後に確認したのはいつだったか。艦娘達(みんな)の練度を知らなくちゃなー」

 

 なんて言いながら【所属艦娘リスト】というページを開く。

 

 五十音順に並べられた項目の一つ一つに目をやる。艦娘の欄には練度とステータス、改装、近代化改修の内容が記載されている。一人一人で全く違うのだ。だから増えた分、キチンと確認する必要がある。

 

芙二「お、全体的に上がってるな。改へあげてない()は改への準備を工廠へ話に行かないとな。改二へ改装できる()も、か」

 

 項目を見ながらそう独り言を呟く。夜出かける前に工廠へ赴くか、と決める。

 練度を確認した後は、資材数も確認する。貯蓄は十分あるように感じたのでこの調子でやってもらおう、と思ったのだった。

 

芙二「そろそろコーヒーはぬるくなったかな?」

 

 湯気の消えたマグカップを手に持ち、啜る。ちゃんとコーヒーはぬるくなっており、猫舌を気にせず一気に飲み干した。

 コト、とマグカップを置いて次は何をしようかと、考える。

 

芙二(そういえば一昨日、やりそびれたことがあったな)

 

 そう思いながら、マグカップを流し台へ持って行く。

 再び座り、自分に干渉する。正確には自分の記憶を覗こうと、考えた。

 

 前は来客があったので出来なかったが、今なら朝食前でなんとかなるような気がした。

 一応来客の気配を察知できるように自分を中心にして、半径十メートルの範囲をマークする。

 

 これで来ても対応が出来る、はずだ。

 出来なかったら、謝ればいい。

 

芙二「それじゃ、自分の頭……記憶を覗いてみよう」

 

 

 

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 入って、そうそう壁にぶち当たった。扉があるのだが、夥しい数の錠前が扉を閉ざしていた。

 自分の心の扉を前にして、思う。

 

芙二(俺の心は拒絶していたのか。どうしてだ? 二百年もの長い歳月が俺を変えてしまったのか? ジーゴ・カラミティが言っていた渇望はこの先にあるというのか)

 

 夥しい数の錠前を前にして、とてつもない不安に襲われる。

 ジーゴ・カラミティは転生前の自分を知っているような素振りだった。

 

 二百年は元人間には耐えられない時間だったのか?という疑問が湧いて出てきた。

 だが、すぐに考えないようにする。これ以上考えると、不安の沼に嵌まって抜け出せないような気がした。

 

芙二(ジーゴ・カラミティがなんだ。俺は俺だ。俺の奥底に眠る渇望の正体を確認するまでは……)

 

 そう思いながら錠前を解く。一つを解くと他の錠前は開錠され、消えてなくなった。

 この現象を見て、自分への干渉はご法度なのかもしれないと思った。

 

芙二「そいじゃ、扉の中へはいりますよっと」

 

 扉を押して、中へ入る。直後は目を開けられないくらいの眩しさに包まれるが、やがて収まった。

 

 ゆっくり目を開く。『あ』と声が出る。

 そこに見えたものは時々思い起こされる、懐かしい情景だったからだ。

 

 

.3

 

 

 

芙二「本当に懐かしいな」

 

 目の前にはスクリーンから映し出される自分の思い出が、生きた証が誕生(さいしょ)から上映されていた。自分の後ろにひとつ椅子があったのでそこに腰かける。

 

芙二「そういえば、俺は双子だった。名前は――――思い出せない、か」

 

 死後、何かの拍子に思い起こされてもここまで鮮明な記憶はこれが初めてだった。

 

芙二「五月二十九日の二十一時……六分に俺は産まれた」

 

 今呟いた自分の言葉をもう一度繰り返す。転生したのだから、これは前世の記憶だ。

 母親の顔はよく見えないが、産まれたばかりの自分を見るのは複雑な気持ちになった。

 

 祖母と両親に囲まれて、自分の成長が見える。ハイハイする我が子を両親は驚きながら、急いで録画していた。自分だけではなく、向こうもハイハイしたようで驚きのあまり父親は嬉し泣きしていた。

 

 母親も嬉し泣きしながら、誰かに電話をかけている様だった。

 

芙二「その頃もあった。まぁみんな通る道だよな」

 

 そう言いながら、スクリーンを見つめていた。時間の流れが早いのを表しているのか、それとも先を見せたがっているのか。どちらにせよ、芙二の意志とは関係なく次に流れる。

 

芙二「俺が生まれて、二年経ったのか。また双子だ。だとすると、あれはたしか■■と■か」

 

 二年上の自分達にすれば、今産まれたばかりの双子の姉妹は両方妹だが。

 母親は泣いて、二人を抱きしめている。父親も泣いて、ビデオカメラを回していた。

 

芙二「ここは聞いたことがなかった。まぁ今更か」

 

 向こうでは俺の存在そのものが消え失せてんだ。いつか並行世界に行く用事があったら、と考えたこともあったが不審者で一発通報間違いなしだろう、と思いながら少しだけ笑った。

 

 ここからまた時間が飛ぶ。

 引っ越しをして、幼稚園に入園して。男の子の双子、しかも一卵性双生児。つまり見た目そっくり。

 

 両親ですら間違えるのに、先生たちが間違えないわけがない。

 

芙二「幼稚園もそうだけど、小中高とほとんど同じ見た目で声も似てて、服のセンスも……でも妹たちは違ったな」

 

 自分はそうだったな、と。小さい頃親と名前を思い出せない方と出かけてたらそんな言葉を聞いたような気がする。しかし自分は中学で人格に支障をきたすことが起きた、ような。

 

 思い出せないから、また先で見れるのだろう。

 あの頃は妹たちは可愛かった。笑った顔なんて、うん、天使!……今思えば、だけどね。

 

 あんなときには『可愛い』くらいしか思ってないだろうし。

 ? なんで今、顔を思い出せたんだ? あいつに至っては名前も顔も思い出せないのに。

 

芙二「あ。思い出せない方は確か兄だった気がする」

 

 スクリーン内で食事をしていたとき、ピーマンを兄が食べてなかったとき祖父母が『■■、□もピーマン食べようね。■■はお兄ちゃんだけど――――』なんて言っていた。

 

 その後はイヤイヤながらピーマンをしっかり食べていた。その後すぐに苦みでえんえんと泣いていたが。よし、思い出せない方は兄としよう。妹たちは姉と妹で。

 

芙二「確かその時は小学校……二年か三年だったような」

 

 スクリーンを見ていても、記憶は曖昧だ。鮮明に起こされるものとそうでないもの。その差が一向に分からない。

 

芙二「なんで分からないんだろうか」

 

 しばらく頭を捻っていたが、分からない。次の映像を見ていたら、分かるだろう。

 そう思い頭を上げる。そこには【WARNING-警告-】と記されていた。

 

芙二「警告……? 次はそれほどまでに――――」

 

 と、言いかける前に【WARNING-警告-】と表示されたものは崩れ以下の文章が出てきた。

 

『これ以上の視聴はあなたの精神に甚大な被害をもたらすと考えられます。それでも視聴しますか?視聴するなら口頭で「はい、続きを望みます」と一言お願いします。視聴しない場合は「いいえ、ここで辞めます」と一言お願いします』

 

 この先は俺の精神に甚大な被害?

 先を見せたかったわけじゃないのか?

 

 それともなんだ?キッチリ警告文は出しとくスタンスなのか?

 考えても分からない。とりあえず続きを望んだ。

 

芙二「はい、続きを望みます」

 

『了解しました。責任は一切負いません。体調が優れなかったり、精神が歪み、破滅へ向かってもそれは自己責任です』

 

 と、意味深な文章が表示されるがすぐに消えた。

 

 精神が歪み、破滅に向かう?それはどういう――――なんて考えていたらスクリーンが動き出した。

 

芙二「お、いよいよか」

 

 そう呟いてスクリーンを見たとき、芙二は自分の記憶から追い出されたのを感じた。

 

 

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芙二「あ、れ。ここは……?」

 

 目を覚ますと横になっている。

 それにここは医務室?どうして医務室にいるんだ?としかめっ面になりつつも考える。

 

明石「提督! 気がついたんですね!」

 

芙二「明石、か? 俺は……」

 

明石「朝食を呼びに行った冷葉補佐が自室で倒れている提督を見つけてここまで連れて来てくれたんですよ。詳しいことは冷葉補佐から聞いてくださいね」

 

芙二「分かった。ありがとう」

 

明石「いえいえ、お気になさらず。お礼は冷葉補佐に言ってくださいね」

芙二「そうする。いま、何時だ?」

 

明石「今の時刻はもうすぐで十時ですね。朝食は一応あると聞いているので貰ってきますね。少し待っていてください」

 

 そう言って明石は退室していった。

 残された芙二はもうそんな時間になっていたのか、と思いながら再度目を瞑るのだった。

 

 

 





 少しだけ、芙二の過去に触れました。
 合間、合間にこんな感じで幕間を投下できればいいなと思います。
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