とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 三章開幕です。
 更新頻度は少ないですが、よろしくお願いします。


第三章 深海の海月は陽の光(そら)へ手を伸ばす
三章 1話『龍神少女の目覚め』


 五月 十二日 十四時 十七分 

 

 葉月宅にて

 

カイン「ん……うぁ」

 

 葉月宅の一室にあるベッドで寝ていた一人の少女が目を覚ます。名はカイン・アッドレア。 

 先日、南西諸島の深部海域にて芙二と死闘を繰り広げた彼の世界の住人だ。

 

 目を覚ましたカイン・アッドレアは起き上がる。身体に掛けられていた毛布がパサリと音を立ててベッドの下に落ちた。

 

 寝起きで頭は動かず、ただただ落ちた毛布を見つめていた。

 

カイン(ここはどこだ? 確か我は……ッ! そうだ、我はッ!)

 

 意識が落ちる前を思い出し、ハッと目を開きベッドから降りる。

 

カイン「我はあの人間に負けて……外はどうなっている?」

 

 そう、呟きながら裸足のまま扉へ向かう。

 ドアノブを回して、部屋の外へ出るとそこにはメイド服を着たブラウン髪の少女が立っていた。

 

 手には水の入ったバケツと雑巾。背は自分よりも少しだけ高いくらい。メイド服を着た少女は自分を見るなり、バケツと雑巾を落とし驚いた様子でどこかへ走って行った。

 

カイン(なんだ? 我を見たらどこかへ……)

 

 ビチャ、と冷たい感触が足元から伝わった。

 足元を見ると、そこには先ほどのメイドが持っていたバケツが倒れ辺りに水溜りを作っていた。

 

カイン(あぁ、やりおったな。しかしどうして、我は生きておるのだ)

 

 濡れた足元に伝わる、冷たい水の感覚。その場でペタペタと水溜りを踏みしめる感触。

 自分の頬を手で触れると伝わる熱。そしてもう片方の手を胸に当てると鼓動する心臓を感じ取れた。

 

カイン(やはり生きておる。自分を滅するつもりで大技を放ったのに、五体満足なのはおかしい……それに)

 

 心臓の鼓動を感じていた、手を胸の方へ移動する。

 前よりも大きくなっているような気がする。といっても前は気にする余裕などなかったが。

 

カイン(あとでフジという人間……いや龍人について聞いてみよう)

 

 と内心決める。すると、先ほどのメイド服を着た少女と着物を着た薄緑髪の淑女、黒髪の青年がいた。

 

メイ「言った通りですよ! あ、でもバケツを落っことしてしまいましたのでモップを取って来ます」

 

 二人に対して、メイド服を着た少女は言っていた。言われていた方はまだ半信半疑の様だった。

 が、しかしカイン・アッドレアの足元に広がった水溜りを見て思い出したのか、モップを取りに行くと言ってまたどこかへ行ってしまった。 

 

シェリル「あれだけの戦闘を繰り広げたのに……龍神だからか回復するのが早いのかしら?」

 

葉月「俺に振られても困ります。龍人族でもないですし、それに陛下とタケミカヅチ様以外で龍神を見るのは初めてですよ。それと激戦後のことなんて知らないですよ」

 

 黒髪の青年は困った表情をしていた。

 カイン・アッドレアは『我だって、理解していないのにこの青年でも説明はつかないだろう』と思って見ていた。

 

 じっと見つめていたのか、黒髪の青年は自分に対して名を名乗った。『葉月 黒(ハヅキ クロ)』というらしい。自分がなんて呼べばいいかと問うと『(クロ)』でいいと言われたのでそうさせてもらう。

 

 クロ、と心の中で繰り返し言う。

 それは覚えるためという最もな理由だ。

 当分世話になると思ったから、覚えないわけにはいかなかった。

 

カイン「それで、そっちの淑女は……確かシェリル、だったか?」

 

シェリル「はい。私は龍人族のシェリル・フェリアスといいます。えっとカインちゃんでいいかしら?」

 

カイン「それで構わない。が、ちゃん付けは止めてほしい。どこかくすぐったい感じがする」

 

 呼び捨てでいい、というがシェリルは止める素振りは見せなかった。

 しかしシェリルは言葉を続けた。

 

シェリル「あ、カインさんとカインちゃん。どっちがいい?」

カイン「さん付けは、いやだ。かといってちゃん付けもな……まぁ好きにしてくれ」

 

 これは変わらないと思ったのでそのまま好きにしてくれ、と言う。

 

葉月「さて、本題に入ろう。カイン、お腹は空いてないかい?」

カイン「腹か……そうだな。寝ていたから、それなりには」

 

 それじゃ、少し遅いけど昼食にしようと葉月はいう。シェリルも私も手伝います、と続く。

 ありがとう、とシェリルの方を向いて礼を言って、カインの方を向き直す。

 

葉月「じゃぁリビングへ行こうか。シェリルさん、俺は先に行って準備しとくから」

シェリル「はーい。それじゃ、カインちゃん。行きましょう?」

 

 葉月はさきにキッチンへ向かった。

 残ったシェリルとカインの元にモップを持ったメイド服を着た少女が自らを【メイ】と名乗った。

 

メイ「そこで葉月様とすれ違いまして、話は聞きました。私もあとで向かいますので、先に向かってください」

 

 そういうとせっせと水溜りを拭き始める。

 シェリルはカインの手を引いて、リビングへ向かうのだった。

 

 

 

 

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