なんでこっちは早く書けるんだろうか?
昼食を食べ終えた芙二は冷葉がいる執務室を訪ねる。
扉をノックし、ドアノブに手を掛けたとき室内にいるであろう冷葉が声を掛けてきた。
冷葉「扉の前にいるのは芙二か? もう少しで一区切りなんだ。入室は待ってくれ」
芙二「了解した。用件だけ先に言ってもいいか?」
扉越しで悪いが、と思いながら執務している冷葉に話しかける。すぐには返ってこなかった。
やっぱり忙しいもんなのかな、と思いつつも許可が出るまで待っていた。
五分ほどたったとき、再び室内から声が聞こえてきた。
大淀「提督、入室を許可します」
芙二(大淀もいるのか)
と許可が出たのでドアノブを捻って入室する。やはり中には大淀と冷葉、それに朝潮と霞がいた。
芙二「や、二人とも。午前の哨戒の報告かな? ご苦労様。冷葉、報告中なら俺は後にするわ。謹慎中の俺が昼間っからお邪魔してもあれだろ?」
朝潮「司令官! お疲れ様です! いえ、私と霞のことはお気になさらないでください。それにたった今終わったばかりなのでこれにて失礼します!」
と、芙二に対して真面目に敬礼し、大淀に報告書を渡すと霞の手を引いて足早に扉へ向かった。
朝潮はビシッと一礼し、退室し霞は最後に部屋を出る前、芙二を少しだけ疑うような眼差しを向けたがすぐにいつもの表情に変え、退室していった。
芙二は邪魔したかな、と思ったが本人が気にするなと言ってるのでそれ以上は気にしなかった。
冷葉「や、芙二。さっきも言ったがこれから休憩なんだ。あまり時間は取れないが、少しなら構わないぞ。大淀さん、お茶を入れてもらってもいいかな」
大淀「分かりました。提督と冷葉補佐はソファにおかけくださいね」
そういうと、棚の方へ歩いて行く。促された芙二と冷葉は対面になるように座る。冷葉の休憩時間を取っちゃ悪いなと思っていたので速攻切り出した。
芙二「冷葉、運んでくれたことを――」
冷葉「ちょいと待ってくれ。お前これから今朝のことについて謝礼の意を込めて何か贈るつもりだった? なら、大丈夫だ。気持ちだけもらっておく。昨日の夜のことは、何も言わないでおく。他に何か言う事はあるか?」
芙二「分かった。今夜、外出をしたい。いやする。それで連れて行く艦娘だが叢雲を連れて行くつもりだ」
冷葉「なるほど。確かに外出する際は誰か一人付けると言ったが、叢雲の許可を取ったのか? 大淀さんー! 今叢雲ってここにいるー?」
大淀「確か今日は哨戒でいない、と思いますー!」
冷葉「はーい! 教えてくれて、ありがとうー!」
と、冷葉と大淀のやり取りが終わった。
冷葉にもう一度、しっかりいう。
冷葉「お前と叢雲で確認取れてるんだったら大丈夫だけど、どこに行くん? 町? 商店街?」
芙二「葉月さんのところ。
冷葉「ふむ。分かった。外出許可を出そう。少し驚いたが、お前は案外律儀なんだな。お前の能力だったら誰にも勘づかれずに抜け出せれると思うけど」
芙二「はは、今は一応人間側だからね。それに急用でもない。相手が起きてなかったらとっとと叢雲つれて帰るよ」
冷葉「不穏な言葉が聞こえたような気がしたが、まぁいいとしよう。あ、一昨日の海軍のおっさん……観測所の職員から伝言だ。明日の昼間、こっちに来るそうだ。応接室で対応頼むわ」
芙二「了解っと。俺のシナリオを無理矢理通してるから、ぼろが出ないようにしとかないとな。後で南西諸島海域の深部へ行こうかな?」
冷葉「そのことなんだが、確か全員こっちの被災者救済センターみたいなところ……だったような気が。そこで避難して生活してるらしい」
芙二「分かった。で、俺のシナリオに合わせてくれた張本人の名前は――分からんから、縁を辿るわ。少なからずあそこの島民全員、俺と縁を結べたでしょ」
冷葉「外出すんの? 誰か連れてく?」
芙二「いんや今日も明日も行かん。ただ、おっさんとの話し合いで必要かどうかを判断する。ちなみに蘇生された人間の記憶処理は終わって改変に成功してる、はずと思いたい」
なるほど、と頷きながら大淀の淹れてくれたお茶の入った湯呑みを手に取る。
ずずっと啜りながら飲んでいたのだが、ふと大淀がなにか話したがっていた様子だったので
声を掛けた。
大淀「えっと提督、私も伝言を預かってまして……」
相手は?と冷葉が聞く。芙二はだいたい予想がついていたので、大淀に感謝しつつ茶を飲んでいた。
大淀「相手は東第三鎮守府の
多いな、と冷葉。
続けて、そういえば、着任してひと月経つのに、東第三の神城提督以外はほとんど放置だったな、と手を顎に当てて言った。
芙二が内容は?と問う。
大淀は少し震えて、話し出す。肩が小刻みに震えながら話し出したので向こうは相当怒ってるなと勝手に解釈した芙二と冷葉。
大淀「ひと月後の六月二十日、東第二鎮守府にて会議を行うのでどちらかが必ず参加してくれ、と。返事はなるべく早く返してほしい、と。ここは提督が参加するという事で大丈夫ですか?」
芙二「そうしてくれると助かる。そいじゃ、俺はこれにて――」
話が終わったので、とっとと退散しようとする。
そんなとき、冷葉が呼び止める。
なんだ?と言いながら振り向くと、朝何をしてああなったのかを聞かれた。
芙二(そうさなぁ……自分の記憶を見てたらぶっ倒れてました。なんて言えないなぁ)
表情を変えず、少しだけ考える。ここで、ちょいと嘘を吐こうと決めた。
芙二「実は夜通しでちょいと作業をしててな。休憩しようと思ったんだけどそこから記憶がないんだ」
これで誤魔化せる、と内心笑うが、冷葉と大淀は溜息をついた。
ドアノブに手をかける芙二に対して、二人はこういった。
冷葉「監視の目をつける必要はあるか?」
大淀「冷葉補佐。妖精さんの協力を煽りましょう。この人、絶対に悪いと思ってません!」
冷葉は阿保をみるような眼差しを、芙二に向け、大淀は変に目をぎらつかせていた。
そんな二人を見て愛想笑いを浮かべる。
芙二(あ、これはやった。完全にやらかしましたわ。素直に言っとくべきだったけど、通用する相手じゃないし余計に拗れる気が……というか、既に詰みじゃね?)
このままでは、変に監視の目がつくと確信したので、そそくさと退室していったのだった。